土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
77 巻, 4 号
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和文論文
  • 蓑輪 圭祐, 下村 匠, 川端 雄一郎, 藤井 隆史, 富山 潤
    2021 年 77 巻 4 号 p. 134-149
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

     温湿度,降雨,日射の環境作用がコンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響を把握するため,同時に作製した角柱試験体を全国 4 地点で屋外暴露し,水分量と収縮量の経時変化を測定した.その結果,各地の一年間の収縮量はほぼ同等であったが,季節ごとの収縮の進行が異なることが明らかとなった.温湿度の変動・日射・降雨の影響を考慮できるコンクリートの水分移動および収縮に関する数値解析法を用いた検討により,湿度の変動と降雨が収縮量に及ぼす影響が大きいことを明らかにした.湿度の変動と降雨の影響を考慮する係数を平均湿度と降雨時間割合から算出し,平均湿度に乗じた見かけの相対湿度を乾燥収縮予測式に用いることで,屋外におけるコンクリートの収縮を簡易的に予測できることを示した.

  • 杉野 雄亮, 小澤 満津雄, 谷辺 徹, 常藤 光, 祐川 真紀帆
    2021 年 77 巻 4 号 p. 150-163
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     リング拘束供試体法をポリマーセメントモルタル(PCM)に適用し,爆裂深さ分布を評価した.また,拘束応力と水蒸気圧から爆裂発生時の内部応力状態を調べた.PCMのポリマーセメント質量比(P/C)は20%とし,ポリマー無添加のモルタル(NCM)を比較用とした.加熱曲線は,RABT30とした.P/C=20%のPCMおよびNCMの面外直ひずみは,拘束応力から計算した.さらに,爆裂発生時の面外直ひずみを引張破壊ひずみと仮定し,P/Cと引張破壊ひずみの関係式を提案した.上述の関係式を用い,引張ひずみ破壊発生時間を推定した.その結果,P/C=5~20%のPCMは,リング拘束供試体の爆裂発生時に引張ひずみ破壊が生じた.加えて,水蒸気圧の作用が確認された.一方,ナイロン繊維を混入したPCMは,水蒸気が逸散し,爆裂が抑止されると考えられた.

  • 畑 実, 杉本 克美, 林 悦朗, 岩佐 行利, 井川 秀樹, 宮澤 伸吾
    2021 年 77 巻 4 号 p. 164-176
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,セメントを使わない硬化体(IBPM)を用いた下水道管の実用化を図ると共に,様々なプレキャストコンクリート製品へのIBPMの適用も視野に入れた検討を行うことを目的としている.IBPMにはフライアッシュと高炉スラグ微粉末を中心に,下水汚泥焼却灰の粒度調整灰とシリカフュームを加えた4種類の産業副産物を用い,アルカリ刺激剤として水酸化カルシウム,収縮低減用に膨張材を添加している.本研究では,蒸気養生を行ったIBPMモルタルの強度発現性に及ぼす構成材料と混合比率の影響を評価した.また,IBPM製ヒューム管の実物大供試体による水理実験を実施した結果,塩化ビニール管と同等の粗度係数が得られた.また,IBPM製RC梁の曲げ載荷実験により,セメントを用いた場合と同等の曲げ性状を有することが明らかとなった.

  • 金澤 健, 中村 拓郎, 坂口 淳一, 川口 和広
    2021 年 77 巻 4 号 p. 177-186
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     極限解析の上界定理を用いて,凍害による材料劣化が生じたRC棒部材に対し,実験結果の回帰式等を用いず,軸力と終局モーメントの相関曲線を解析的に得られる力学モデルを構築した.構築したモデルは,実構造物のコア供試体から取得した劣化深度に基づいて速度場を分割することで,劣化域の耐力への寄与を評価することが可能である.凍結融解試験後に曲げ破壊を生じた21体の実験結果との比較により,構築したモデルが平均で±5%の算定精度を有していることを確認した.さらに,著しい劣化により撤去された既設RC床版から切り出したはり部材の曲げ解析を行い,実験結果と比較することで,劣化深度を指標とした力学的合理性のある健全度評価の可能性を示した.

  • 大山 幸輝, 兵頭 正浩, 西口 雅也, 緒方 英彦, 石井 将幸
    2021 年 77 巻 4 号 p. 187-195
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     埋設管の耐力評価手法として内面載荷法が提案されており,これまでに劣化した不とう性管への適用性が実証されてきた.一方,農業用管路は管種別延長の約9割をとう性管が占めており,とう性管への応用も求められる.そこで本研究では,管や地盤の劣化状態を評価することを目的に,土被り圧の異なる模型地盤内の薄肉硬質塩化ビニル管(VU管)に内面載荷法を適用し,埋設とう性管の地盤内挙動について考察した.その結果,VU管は土被り圧が大きくなるとともに荷重-変形量の傾きが大きくなり,曲線形挙動から線形挙動になることがわかった.また,繰返し載荷を行ったVU管における荷重-変形量の傾きは,土被り圧の大きさによらず載荷1回目の応力履歴によって地盤の剛性が大きくなるため,2回目以降の傾きの値が上昇することがわかった.

  • 井向 日向, 下村 匠
    2021 年 77 巻 4 号 p. 196-209
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,鉄筋コンクリート部材のひび割れ幅の経時変化やたわみを予測する上で重要である,鉄筋コンクリート部材の引張剛性を対象としている.載荷前の乾燥収縮,持続荷重,持続載荷と載荷中の乾燥収縮の複合を実験変数とした系統的な鉄筋コンクリート部材の一軸引張試験を行い,鉄筋コンクリート部材の引張剛性に及ぼす持続荷重と乾燥の影響を明らかにした.さらに,実験結果から得られた知見を用いて,鉄筋コンクリート部材に生じるひび割れ幅の経時変化を算定し,土木学会コンクリート標準示方書のひび割れ幅算定式における収縮及びクリープの影響を表すひずみの値を再評価した.

  • 吉田 英二, 大島 義信, 石田 雅博, 山本 貴士, 服部 篤史, 高橋 良和
    2021 年 77 巻 4 号 p. 210-229
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     定着部の構造やケーブルの配置が複雑かつ立体的なPC箱桁でケーブルの破断が発生した場合には,ケーブル破断が耐荷力に与える影響については必ずしも明らかでない.本研究では,定着部付近のケーブル破断を模擬した1/2スケールのPC箱桁供試体の載荷試験を実施するともに,3次元非線形FEM解析より立体挙動の分析を行なった.その結果,片側の桁端部のウェブに破断箇所がある場合,または両側の桁端部のウェブの対角位置に破断箇所がある場合で,それぞれ破壊性状が異なることを明らかにした.また,それらの破壊性状は実務で適用される一次元の梁モデルで想定する挙動と乖離する可能性があることを踏まえ,立体的な挙動を再現できる計算手法を用い評価する必要があることがわかった.

  • 加藤 雅基, 大窪 一正, 山下 悠貴, 阿曽 将太, 二羽 淳一郎
    2021 年 77 巻 4 号 p. 230-246
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     パラメータをウェブ配置,ウェブ幅,断面勾配とした計15体の超高強度繊維補強コンクリート(UFC)はりに静的4点曲げ試験を実施し,UFCはりのせん断耐荷性能に及ぼすそれらの影響を考察した.その結果,各パラメータの違いにより,最大荷重前後の挙動やウェブと上下フランジの破壊領域が異なる,三種類の破壊形態が確認された.それらのうち,試験体の広い範囲で破壊が生じた破壊形態では,せん断強度が向上する傾向が認められた.また,ウェブ一本の幅の増加に伴い,発揮できるせん断強度が低下することが明らかとなった.最終的に,UFCはりのせん断強度に影響する様々な要因を考慮に入れて,せん断強度とウェブ一本の幅の関係式を回帰分析によって導き,その妥当性を検証した.

  • 飯塚 豊, 岡野 素之, 森田 俊哉
    2021 年 77 巻 4 号 p. 247-266
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     プレキャスト部材同士の接合の合理化を目的とし,重ね継手の周囲をスパイラル鉄筋で拘束した拘束型重ね継手を提案し,接合する主鉄筋径がD13,D16,D19,D22,D25の5タイプの継手について,継手単体の引張試験を行った.その結果,主鉄筋の重ね長さをD13タイプは主鉄筋径の8倍,その他のタイプは9倍とし,スパイラル鉄筋の補強筋比をいずれも6.2%とすることで,SD345の鉄筋継手としての性能を発揮することがわかった.そして,最小径と最大径の継手を用いて接合した部材の構造実験(曲げ,せん断およびじん性)を行った結果,接合部がない部材と同等の構造性能を有することがわかった.また,この継手と既往のカプラー式継手の比較では,プレキャスト部材の材料費で約20%,施工費で約10%の改善が図れる可能性があることがわかった.

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