土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
68 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.28
  • 山城 賢, 村上 邦宏, 吉田 明徳
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_300-I_305
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     造波風洞水路により波と風を同時に作用させて越波の水理模型実験を行うことを想定し,一波毎の越波量を計測するための手法を提案した.その計測手法は,水路に設置された護岸模型の前面での流体運動(波の打上げや越波)を可視化し,高速度カメラで撮影して,その記録からPIV(Particle Image Veloci-metry)により流速ベクトルを求め,それをもとに越波量を算出するというものである.本研究では,まず,高速度カメラの撮影条件およびトレーサーについて検討し,次いで,越波流量の算出における問題点と対処法を示し,最後に,計測精度について検証した.その結果,本計測手法は,微量な越波については改善の余地があるものの,ある程度以上の越波流量であれば十分な精度で計測できることがわかった.
  • 大東 秀光, 大江 一也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_306-I_311
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     建設から数十年経過した既設海岸構造物に対し,現在の最新の知見,実験・計測設備,解析技術等を用いて現設計の妥当性を照査することにより,合理的・経済的な補修・改修計画を策定できる可能性がある.そこで,既設の越波排水路を有する低天端護岸を対象として,不規則波水理模型実験により越波特性を再評価した.その結果,現設計は,越波量に対して安全裕度を有していることおよび越波による衝撃波力が越波排水路の安定性に大きな影響を及ぼすことがないことを確認した.また,数値波動水路(CADMAS-SURF/2D)を用いて実験の再現計算を実施し,検討対象護岸形式に対する越波特性の検討手法としての適用性を確認した.
  • 辻本 剛三, 濱森 彩, 柿木 哲哉, 宇野 宏司
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_312-I_317
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     浜崖等を含む遡上域の侵食対工法の1つとして,河川の側壁護対策に活用されている自然石を用いたcable tied blocksに類似したコンクリートブロックをワイヤーで連結した構造物による,遡上波の特性を室内実験と数値モデルで調べた.遡上波は低周波成分が卓越し,連結ブロックの設置に伴いより低周波成分側となり,また,波のエネルギーの減衰が顕著になる.遡上高さや遡上率は従来のsurf similarity parameterで整理することが可能であるが,勾配と切片がやや異なる.また,連結ブロックの設置条件により遡上率は砕波形態により変動幅が大きくなるが,遡上高さの連結ブロックの設置条件の影響は顕著でない.数値モデルでは連結ブロックの形状と流体抵抗を考慮することで遡上波の変化を表現することが可能である.
  • 松下 紘資, Thieu Quang Tuan, Nguyen Quang Luong, Le Tuan Hai, 滝 泰臣
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_318-I_323
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     異常気象や台風の大型化により設計波高を超える外力が作用する頻度が高くなっており,消波ブロックを利用した消波構造物の重要性が高まっている.本研究では,かみ合わせの強化を目指した2種類の新しい消波ブロックを用いた傾斜堤において水理模型実験を実施し,新型ブロックの安定数算定式を提案した.さらに既存ブロックとの比較により,傾斜堤用消波ブロックとしての安定性能について考察した.その結果,いずれの新型ブロックも同種の既存ブロックに比べて,非常に高い安定性能を有していることがわかった.さらに2種類の新型ブロックのうち,軸を持つ形状の新型ブロックは,被害が始まってからの波高の増加に伴う被害の広がりが遅く,構造的に崩れにくく粘り強さを持っていることがわかった.
  • 山城 賢, 原田 恵, 吉田 明徳, 児玉 充由, 有馬 龍昭, 児島 和之, 入江 功
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_324-I_329
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     既設及び新設潜堤を対象に,景観に配慮して常に水面下にあるという潜堤本来の機能を損なうことなく,岸側の水位上昇を抑えかつ波高低減効果を高める工法として,天端上に設置する新たな特殊異形ブロック(モーゼブロック)を考案した.このブロックは平面形状が正三角形であり,ブロックによる嵩上げによって波高低減効果が高まる効果と,波の岸向位相と沖向位相とで抵抗に差を生じさせることで沖向きの平均流を発生させ,潜堤岸側の水位上昇を緩和する効果を期待するものである.本研究では,このブロックの効果が実際に発揮されるか確認するため断面2次元造波水路による模型実験を行った.その結果,ブロックの設置位置は潜堤天端の岸側が効果的であること,ブロックを複数列設置することで,波高低減効果と平均水位上昇の抑制効果が向上することなどの知見を得た.
  • 平山 隆幸, 藤本 啓伸, 松見 吉晴, 太田 隆夫, 大野 賢一
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_330-I_335
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設の設計に対して性能設計法の導入が図られている現状においては,消波工の累積損傷に伴う性能劣化特性を明らかにする必要がある.既往の研究では,被覆層の被災断面に対する消波性能の変化に着目し,反射率や越波流量の変化について検討されているが,明確な因果関係を見出せるまでに至っていない.本研究では,傾斜被覆堤を対象に,性能指標を反射率と越波流量として,数値波動水路による不規則波実験より,被覆層の法面被災および天端低下が同時に生じる複合被災の場合の被災進行に伴う消波性能の変化特性を不規則波の波群性より検討する.次に,データ間の因果関係が不明確な情報処理に有効であるニューラルネットワークを用い,被覆層損傷に伴う断面変化における消波性能および越波低減性能に関する評価システムの開発を目指すものである.
  • 松林 卓, 森田 浩史, 岩波 光保, 安井 利彰, 水谷 征治, 川端 雄一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_336-I_341
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     消波ブロックで被覆されたケーソン式防波堤では,ケーソン壁に消波ブロックが繰り返し衝突して壁に穴が開く場合があるが,予防保全的な対策はなされず,事後的な補修を繰り返しているのが現状である.既設の防波堤ケーソンでは,消波ブロックや上部コンクリートの存在が施工上の支障となり,合理的な予防保全的補強方法が確立されていない.筆者らは,地盤改良技術の一つである高圧噴射攪拌工法に着目し,既設防波堤ケーソンを対象とした予防保全的耐衝撃補強工法を考案した.考案した補強工法は,施工性に関する検討を行い,施工が可能である見込みを得た.また,補強効果について,防波堤ケーソンを部分的にモデル化した試験体を製作し,補強の有無をパラメータとした繰返し衝撃載荷試験を実施して検証を行った.その結果,本工法の実施により,ケーソン壁の耐衝撃性を向上させることができることがわかった.
  • 富安 良一, 高橋 英紀, 西川 丈博, 森 京介, 天野 俊
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_342-I_347
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,社会資本ストックの有効活用の観点から既存岸壁の耐震強化が望まれている.しかしながら,岸壁の継続的な供用が望まれるため,供用しながら施工できる比較的高価な耐震強化工法が用いられる場合が多い.そこで本研究では,岸壁を供用しながら,より経済的に耐震強化する方法を動的数値解析によって検討した.対策工法として,デタッチドピア形式を利用した耐震補強法を提案し,数値解析によって経済的に耐震性能を高められることを示した.ただし,クレーンレール位置での応答加速度が大きくなり,この大きな加速度に耐えられるクレーンを合理的に設計することが難しい.そこで,異なる固有周期を有するクレーンを用いて計算を行い,岸壁とクレーンの動的相互作用に対する応答加速度の関係について検討し,これを利用することで応答加速度を低減できることを示した.
  • 宮下 健一朗, 長尾 毅
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_348-I_353
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     著者らは,桟橋の設計において鋼材重量最小化を目的関数,杭のモーメントが全塑性モーメント以下となることを制約条件とした最適化問題として照査用断面を設定する方法を既往の研究で示している.しかしながら,既往の研究における検討は,地盤変形の影響が大きくなる地盤剛性のコントラストが大きい地盤条件に限定していた.また,液状化層が厚いケースでは精度が低かった.本研究では,まず,地盤剛性のコントラストが小さい地盤条件において提案法の適用性を検討した.次に,液状化層が厚いケースにおいて,提案法の精度を向上させる地盤バネ特性を示し,修正した照査用断面設定法で液状化層が厚いケースにおいて適切な断面を設定できることを示した.
  • 土田 孝, 嶋川 奈津実
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_354-I_359
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     3種類の浚渫海成粘土を用い,さまざまな含水比,セメント添加率で作製したセメント処理土の強度が時間の経過とともにどのように発現していくかを調べた.浚渫土を利用したセメント処理土の強度発現傾向は,養生時間約72時間以内では強度と養生時間が両対数上で直線関係となり,72時間以降は時間の対数と強度が直線関係となっている.今回調べた3つの海成粘土において,セメントを添加後の1時間以内の強度は,セメント粒子を固体として計算した添加後の含水比を添加前の粘土の液性限界で正規化した値によってほぼ決まっていた.一方,養生時間72時間以内における両対数グラフ上での強度と養生時間の関係の勾配は,粘土の種類によらずセメント処理土の固体分に対するセメント添加率でほぼ決まるという結果が得られた.以上の結果を用いて作製した若齢期におけるセメント処理土の強度予測式は,実験による実測強度を良好に説明した.
  • 古谷 宏一, 横田 弘, 橋本 勝文
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_360-I_365
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,無筋コンクリート胸壁を対象とした現地調査からひび割れ性状に関する情報を蓄積し,確率統計手法に基づき劣化状況を把握することにより,目視により簡易に測定できる鉛直ひび割れ幅から施設の耐力低下に大きな影響を及ぼすと考えられるひび割れ深さを推定する式を提案した.また,得られた知見に基づき,ひび割れの生じた胸壁を解析モデルに置換え,ひび割れ深さ,ひび割れ本数,構造部材の寸法および想定する荷重を変化させた非線形有限要素解析を行い,構造性能の低下を評価した.その結果,劣化状態と構造性能(耐力)との関係を定量的に明らかとし,無筋コンクリート海岸構造物の耐力低下に基づいて,鉛直ひび割れ幅およびひび割れ本数を指標とする新しい劣化度判定基準を提案した.
  • 塩崎 禎郎, 宇佐美 俊輔, 大久保 浩弥
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_366-I_371
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     桟橋のレベル2地震に対する耐震性能照査では,液状化を考慮した地震応答解析プログラムFLIP等を用いて検討されている.その際,鋼管杭が塑性化して要求性能を満足できない場合,板厚を増加させるなどの試行錯誤が必要となる.港湾工事で用いられる鋼管杭は,引張強度400N/mm2級と490N/mm2級の2種類がほとんどであるが,490N/mm2級よりも高強度の鋼管杭が適用可能となれば,低コストな施設の建設が可能になる.そこで,熱延帯鋼から造管した引張強度570N/mm2級の高強度鋼管杭の港湾構造への適用を目指して,1)耐震性能確認のための単杭による正負交番繰返し載荷実験,2)桟橋構造を模した組杭による正負交番繰返し載荷実験,3)腐食性状確認のための浸漬試験,を実施して従来材と同等に扱えることを証明した.また,設計方法の提案を行った.
  • 白石 悟, 永井 紀彦, 川口 浩二
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_372-I_377
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では2007年3月に宮城中部沖に,同年4月に岩手南部沖に設置されたGPS波浪計による観測データを用いて洋上係留ブイの鉛直動揺およびそれを用いて評価される波高について検討した.GPS波浪計ではブイに搭載されたGPSアンテナが衛星信号を受信して,その位置を時々刻々とらえ,そのデータに基づき波高を計測する.波高はブイ運動より間接的に得られる情報であることから,ブイ運動の特性を精度よく把握した上で評価する必要がある.観測結果および計算値によるブイの波高に対する応答倍率を比較したところ有義波周期6s以上では両者はよく一致したが,有義波周期6s以下の場合にはブイの鉛直運動の増幅の影響により波高が大きく計測されている可能性があった.そこで,ブイの応答特性の計算値に基づき波高を評価することにより,有義波周期6s以下の条件においても,より実際の波高に近い数値が得られる可能性を指摘した.
  • 中村 孝幸, 川村 善郎, 山根 広己
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_378-I_383
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     既に著者らは,閉鎖性の強い内湾域における水質改善を目的として,通常波浪の作用下で波動運動を原動力として海域の鉛直混合を促進する浮体式構造体の開発を進めてきた.そして,係留支持された浮体の動的安定性や動揺時における鉛直混合効果などの基本的な水理機能を検討して,浮遊状態になると,仮想固定時と比較して,混合機能が半減することなどを報告した.そこで,本研究では,以前の研究で課題となっていた堤体下方の平均流の特性を検討すると共に,浮遊状態における混合促進型構造体の改善工法を模索し,鉛直混合機能をより有効に発揮できる断面を究明する.
  • 木田 英之, 出口 一郎, 中村 孝幸, 井内 國光, 境 大輔, 古木 弘
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_384-I_389
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は、湧昇流を生成する為に海底に設置された構造物について,波と流れが共存する場における流体力を,水理模型実験および3次元湧き出し分布法による数値解析法に基づき検討を行った.その結果,作用流体力の主たる部分が慣性力である事を示し,出会いの周波数の影響により有効慣性力係数が変動する事を明らかにすると共に,モリソン式を準用した波流れ共存場での,湧昇流生成構造物に作用する流体力の簡易算定法を提案した.
  • 古牧 大樹, 金山 進
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_390-I_395
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     浚渫による濁り影響予測計算は,広域的な範囲を対象としたものが主流であり,濁りの発生という素過程について直接的に取り扱われる例は少なく,類似した工種・仕様の事例に基づく汚濁発生源単位に基づくことが多い.環境負荷の軽減されたグラブや工法が登場する中,汚濁の発生自体を物理モデルで取り扱う手法への期待は大きい.本研究は,このための第一段階に取り組んだものであり,非格子を特徴としたSPH法を使用してグラブ形状,挙動を正確に再現することで,グラブ浚渫に伴う流れを清水のみを対象として確認し,汚濁発生機構に及ぼす影響について検討した.
     既往の室内実験の再現計算を行ったところ,本手法は再現性が良いことが確認された.下降~掘削~上昇まで,グラブを一連の動作で計算することで,より現実的な流れの予測計算を行える可能性が示された.
  • 平野 辰昇, 重松 孝昌, 金澤 剛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_396-I_401
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     浚渫窪地の埋め戻し工事を実施する際には,土砂投入に伴って誘起される流動によって,窪地内部の無酸素・硫化物水塊が周辺水域へと流出しないように配慮する必要がある.その対策のひとつとして,鉛直管を用いて土砂を投入するトレミー工法が採用されることがある.本研究では,鉛直管を用いた土砂投入に伴う流動および濁りの移動過程が計算できる数値モデルを開発した.開発したモデルを用いて,パラメトリック解析を行った結果,濁水塊の水平流速および水平運動量の抑制には土砂投入量による制御が,また,濁水塊の厚さの抑制にはクリアランスによる制御が有効であることが明らかになった.さらに,土砂堆積量の水平分布を検討した結果,水底を進行する濁水塊の流動に影響を及ぼすのは微細粒子であることがわかった.
  • 山田 吉彦, 川上 哲太朗, 川崎 一平
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_402-I_407
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海洋立国を目指す我が国では, 2007年に海洋基本法を制定した. この海洋基本法では, 地方自治体が同法の理念にのっとりその自然的社会的条件に応じた施策を策定することになっている. この法に従い竹富町(沖縄県)は, 独自に竹富町海洋基本計画を策定し, 海洋環境の保全と海洋の利活用を進めてゆく方針を固めた. また, 隣接する石垣市ではさらに海洋開発, 海洋保護区の設定も視野に入れた計画を策定することとなった. 海洋都市を意識する地方自治体は, 海洋基本法のもと,海洋とともに地域社会の将来像を構築しつつある. この地域における海洋基本計画は, 海洋基本法の理念が国民に定着するための指針となりえる.
  • 榎 正浩, 藤田 健志, 島谷 学, 石原 慎太郎, 鈴木 高二朗, 佐々木 淳, 関本 恒浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_408-I_413
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     人工島形式の開発は,臨海部埋立方式に比べ,海岸線の保持機能や環境リスクからの隔離等種々の利点を有している.本研究では,分析項目として事業化の成否要因などに重点を置き,将来の人工島建設プロジェクトに資することを目的として,過去の人工島建設プロジェクト事例を調査分析し評価を与えるものである.なお,調査対象となる人工島建設プロジェクトは, 事業化され事例に加え,事業化に至らなかった事例を含めている.
  • 島谷 学, 石原 慎太郎, 榎 正浩, 藤田 健志, 鈴木 高二朗, 佐々木 淳, 関本 恒浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_414-I_419
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海上に建設される人工島は用地利用の自由度が高く,物流・交通拠点や都市機能,工業用地といった機能を発揮するだけでなく,廃棄物処分や浚渫土受入などにも対応し,今後も沿岸域の諸問題を解決する方策として期待される.本研究では,これまでの人工島建設事例から整理した人工島に求められる機能をもとに,現在の社会情勢や建設地の地域性などを考慮しながら具体的な人工島建設プロジェクトを提案した.また,人工島建設に必要な埋立材として利用する浚渫土や廃棄物の発生状況についても整理を行った.
  • 伊藤 義将, 木村 光俊, 玉上 和範, 足立 吉宏, 吉原 到, 鈴木 高二朗, 佐々木 淳, 関本 恒浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_420-I_425
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,閉鎖性海域では海洋環境の改善を目的とした多くの環境改善プロジェクトが実施されている.これらのプロジェクトに対する基礎的,技術的,社会経済的な側面からの調査及び考察は過去にも行われているが,横並び的な比較研究はあまり行われていない.
     本研究は,閉鎖性海域の環境改善プロジェクト事例をレビューし,実現性や成否にかかわる項目の調査や考察を行うとともに比較を行った.その結果,プロジェクトの成功に寄与すると考えられる重要な5つのキーワードを導き出した.それらは1. 地元の要望,2. 円滑な事業推進の内的要因,3. 環境法令・政令・条約等の制定,4. 関係者の連携・参画,及び5. 試験施工の結果が良好,である.今後の提案に際し,これらのキーワードに多く対応していることがその実現性を高める上で重要であると考えられる.
  • 足立 吉宏, 吉原 到, 玉上 和範, 伊藤 義将, 木村 光俊, 鈴木 高二朗, 佐々木 淳, 関本 恒浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_426-I_431
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     全国の閉鎖性海域では,過去の沿岸部の開発によって失われた浅場や干潟を回復させるため,また底質の悪化を抑制するため多くの環境改善プロジェクトが実施されている.伊藤ら1)は実施された環境改善プロジェクトの実現性や成功性にかかわる項目の調査や考察を行うとともに比較研究を行った.本研究は,それらを踏まえて,閉鎖性海域における環境改善プロジェクトの提案手法の構築と具体的なモデル案を提案することを目的とする.
     環境改善プロジェクトの事業成立のポテンシャルを計る手法として,環境改善プロジェクトの成功に寄与すると考えられる重要なキーワードを用いて評価する手法を提案し, ケーススタディとして東京湾の京浜港を対象海域と設定し,環境改善プロジェクトのモデル案を提案した.
  • 高橋 英紀, 森川 嘉之, 津國 正一, 福武 毅芳, 鈴木 亘, 竹花 和浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_432-I_437
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     液状化対策として,深層混合固化処理工法などの固化処理技術を利用して,液状化層を格子状に改良する工法がある.この工法の液状化対策としての有効性は過去に多くの実験や解析で実証されている.本研究では,この工法の経済性をより高めるために,固化体を部分的に液状化層内に留める工法について検討を行った.液状化層内に留めた固化体およびその側方に非液状化層まで着底させた固化体を構築し,液状化層内に留めた固化体の水平変位量を低減し,格子内部のみならず固化体下部の地盤での液状化を抑制することを試みた.動的な遠心模型実験の結果,部分的に固化体を液状化層内に留めたとしても,液状化を抑制する効果が発揮されることが確認された.
  • 大久保 陽介, 小濱 英司, 楠 謙吾
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_438-I_443
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     直杭式横桟橋のレベル1地震動に対する性能照査は,桟橋の固有周期及び杭仮想固定点における加速度応答スペクトルを用いて照査用震度を算出し,算出された外力を用いて骨組み解析を実施することにより,杭に発生する応力照査を行う方法が港湾基準に例示されている.一方,杭と地盤の動的相互作用を考慮できる解析手法として,2次元非線形地震応答解析を用いた照査方法が提案されている.本研究では,現行設計法と2次元解析を行った場合の桟橋応答について比較を行った.その結果,現行設計法と2次元解析での上部工加速度の違いは現行設計法における桟橋の固有周期を算出する際の地盤反力係数及び桟橋の減衰定数の設定が原因であり,これらを2次元解析と同等とすることにより上部工加速度を2次元解析結果と合わせることができた.
  • 高橋 英紀, 大橋 照美, 藤井 照久, 金子 智之, 水野 匠
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_444-I_449
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     東京国際空港は海上を埋め立てて造成された空港であり,地震時に空港内の多くの箇所で地盤が液状化する可能性が高く,液状化対策が急がれている.既設の滑走路等の空港施設直下の液状化対策としては静的圧入締固め工法(以下,CPG工法)が多く採用されている.改良範囲や改良率の設計においては,CPG工法を適用した地盤に対して動的数値解析を実施して地震後の地表面変位を求め,許容勾配に収まることを照査する必要がある.このため,動的数値解析においてCPG工法による改良効果を適切にモデル化することが重要である.本論文では,CPG工法の試験施工で得られた応力分布を再現できるモデル化手法を検討した.また,この手法で動的数値解析を実施し,その改良効果を調べると共に,改良率の違いが地表面変位に与える影響について検討した.
  • 高橋 英紀, 森川 嘉之, 吉田 誠, 川崎 廣貴, 田口 博文, 丸山 憲治
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_450-I_455
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,液状化対策の地盤改良工法としてよく利用されるものに,格子状固化処理工法がある.この工法の経済性をより高めるため,固化体を液状化層下部の非液状化層に着底させずに,液状化層内に留める方法が提案されている.本研究では,この方法を液状化を生じる可能性がある岸壁背後地盤に適用し,その対策効果について実験的に検討を行った.その結果,岸壁や地盤の変位量,応答加速度特性,間隙水圧の上昇量の観点から,着底型の改良による液状化対策効果が最も大きいものの,浮き型の改良であっても,液状化対策効果が十分に見込まれることが確認された.
  • 長尾 毅, 桒原 直範
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_456-I_461
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     性能設計体系への移行により,港湾構造物の耐震性能照査は,使用目的を勘案して構造物に要求される性能を満たす許容変形量を設定し,作用する地震動に対して構造物の残留変形量が許容変形量以下になることを確認する照査体系となった.現在のところ,地震作用による構造物の変形量を精度良く推定する手法としては,2次元地震応答解析が挙げられる.しかし,当該手法は計算負荷が大きいことから,これに替わる簡易な耐震照査手法の確立が望まれている.筆者らは既報において,傾斜式護岸を対象に,液状化を許容しない条件下で簡易的に護岸の天端鉛直変位を評価する照査手法を提案している.本研究では,既報の手法を拡張し,液状化を許容した条件下での傾斜式護岸の簡易耐震照査手法を提案したものである.
  • 中房 悟, 小林 薫, 森井 俊広, 松元 和伸
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_462-I_467
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     キャピラリーバリアの機能を効果的に発揮させるためには,砂材と礫材の粒径差を大きくするのが有効である.しかし,数十年に及ぶ長期の供用において,地震力作用などに伴い上部の砂材が下部礫層へ移動することが想定され,砂礫が混合することでキャピラリーバリアとしての機能低下が懸念される.この課題に対して,礫材の代替材として破砕した貝殻を下部層に用いることで,キャピラリーバリアとしての機能を損なわず,上部の砂材が下部の貝殻層へ移動することも同時に防止できる可能性を見出した.
     本論文では,土柱法による保水性試験と小型振動台を用いた振動実験の結果を基に,貝殻を用いたキャピラリーバリアに適した保水性と砂混入防止を両立できる破砕した貝殻の種類,粒径,粒度分布および破砕方法について明らかにした.
  • 平井 俊之, 長尾 毅
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_468-I_473
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     性能設計体系への移行により,岸壁等の構造物の設計法は,安全率による評価から破壊確率や変形量を評価する方法へと変わりつつある.残留変形量を確率的に評価するためには,地震動の強さ等のばらつきの影響を考慮するために2次元の地震応答解析を相当数実施する必要があり,現状では多くの労力が必要である.本研究では,重力式岸壁を対象として,入力地震動のばらつきにより生じる残留変形量のばらつきを簡易的に評価する手法について検討を行った.その結果,サイト増幅特性とサイト位相特性をばらつかせた地震応答解析結果のばらつきは,平均及び平均±標準偏差のサイト増幅特性を用いた計3ケースの地震応答解析を行うことによって簡易的に評価できるとの可能性が示された.
  • 山崎 智弘, 澤田 豊, 鶴ヶ崎 和博, 磯貝 悠美子, 古市 謙次, 野々村 千里, 山田 幸一, 片岡 雅貴
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_474-I_479
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     管理型処分場の遮水材として使用されるサンドマスチックは,環境中の特に高温域において強度低下し変形追随する機能を有している.サンドマスチックを傾斜堤外周護岸の側面遮水工(遮水シート)と底面遮水工(難透水層)の接続材料に適用する際の設計に資する知見を得るために,遠心力模型実験により強度特性を把握し,FEM解析により土質定数の影響や,遮水シートの影響等を評価した.
     遠心力模型実験の結果,サンドマスチック上に一定厚の土被りによる拘束を与えることで偏荷重が作用しても変形が抑制できること,25℃以上でのみかけの粘着力は2.5kN/m2と評価できること,作用する荷重が小さければみかけの粘着力も小さくなることが確認できた.FEM解析の結果,内部摩擦角の大きな材料を使用することや,遮水シートの摩擦係数が大きな場合は,護岸安定が増大することが確認できた.
  • 海野 寿康, 林 健太郎, 浅田 英幸, 居場 博之
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_480-I_485
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,人工材ドレーンによる過剰間隙水圧消散工法が施工された仙台港や東京港の2011年東北地方太平洋沖地震の調査結果を示すとともに,遠心載荷模型実験による過剰間隙水圧消散工法の液状化抑制効果の検討結果を示す.現地調査の結果,複数のドレーン施工箇所において十分な液状化抑制効果を発揮できたことを確認した.一方,遠心載荷実験の結果,間隙水圧の消散効果についてドレーンへの排水により加振中に発生する過剰間隙水圧比を低い値で納めることや振動終了後,早期に過剰間隙水圧を消散させ水圧が高い状態を短時間に抑えることを示した.改良地盤では,せん断中のドレーンへの排水により有効応力が回復することや地盤密度が増加することにより,振動中に剛性が回復する結果となった.
  • 田中 裕一, 山田 耕一, 大久保 泰宏, 渋谷 貴志, 中川 雅夫, 赤司 有三, 一村 政弘, 山越 陽介
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_486-I_491
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     カルシア改質土は,カルシア系改質材と浚渫工事で発生する浚渫土を混合した材料であり,強度発現,pH上昇抑制等の特性がある.カルシア改質土を,埋立材として利用すること,管中混合方式で施工することを想定して室内試験と実験工事を実施し,強度特性の確認と造成地盤の評価を行った.
     一軸圧縮試験の結果,気中打設に対する水中打設の強度比は0.63となった.また,事前に実施した室内配合試験から,現場と室内の強度比を求めると1.05となった.カルシア改質土を打設した地盤に対する電気式コーン貫入試験,一軸圧縮強試験等の結果から,深度方向にほぼ均一な地盤が形成されていることを確認した.また,カルシア改質土の一軸圧縮強さquとコーン指数qcには,pc=12.1×quの関係があることを確認した.
  • 増田 龍哉, 久保田 健, 志村 吉彦, 寺澤 一雄, 小野 裕司, 福岡 大造, 五十嵐 学, 滝川 清
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_492-I_497
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     日本の閉鎖性海域の多くは,貧酸素水塊の発生等の環境悪化に伴う諸現象が問題となっている.このような環境悪化問題の対策として,浚渫や覆砂による底質改善策が行われているが,海域環境の再生には未だ至っていない.さらに,浚渫事業では浚渫土の処理が問題となっており,覆砂事業では使用する海砂が環境保護等の観点から採取が禁止されつつあるため,砂の代替材の確保が望まれている.
     著者らは,閉鎖性海域における底質環境改善とリサイクル材の有効活用を目的とし,浚渫土とペーパースラッジ燃焼灰を混合したPS灰造粒物を開発した.本研究では,開発されたPS灰造粒物を実海域へ適用する前段階として,生物毒性試験及び野外暴露試験により生物に対する安全性を評価し,現地実証試験を行うことでPS灰造粒物の現地適用性について検討を行った.
  • 直井 恒雄, 渡部 要一, 新舎 博, 日高 征俊, 白神 新一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_498-I_503
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     東京都の新海面処分場Cブロックにおいて,真空圧密を利用した粘性土層の減容化事業を実施した.対象となる粘性土層は,均質な在来粘土層とその上に処分した砂分を多く含む浚渫土層である.本減容化事業では事前予測沈下量の90%以上の沈下量を目標として工事を実施しているが,浚渫土層の中に存在する中間砂層の堆積分布を正確に把握し,沈下量の評価に反映する必要があった.そこで,本文ではドレーン打設時のマンドレル貫入抵抗値から中間砂層の堆積分布を詳細に把握した.また,減容化のための圧密挙動に関しては,中間砂層を排水層とみなした圧密理論と実際の沈下挙動を比較し,予測沈下計算方法が十分に適用できることを明らかにした.
  • 久保田 謙作
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_504-I_509
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海岸構造物の損傷・磨耗状況や消波ブロックの被災状況を知ることは,海岸構造物を維持・管理する上で極めて重要である.しかしながら,これまで消波護岸の海中部の磨耗状況を詳しく調査した例は殆どなく,磨耗のメカニズムも殆ど明らかにされていない.したがって,護岸や消波ブロックの磨耗・損傷の現地調査データの蓄積が望まれている.本論文では,新潟県親不知海岸における高速道路高架橋の波浪対策護岸工の磨耗調査を詳しく行い,損傷メカニズムを明らかにしている.さらに,現地海岸の構成材料および海象状況に応じた対策法を策定,実施しており,現時点でのその効果についても紹介している.これらの調査・対策法は,同様な波浪および海岸等の自然条件下で磨耗対策を実施する際に役立つものと考えられる.
  • 岩波 光保, 西田 孝弘, 加藤 絵万, 川端 雄一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_510-I_515
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,「ライフサイクルマネジメントのための海岸保全施設維持管理マニュアル(案)」に基づき実施された点検結果を分析し,海岸保全施設の劣化予測に資する知見を蓄積することを目的とした.そのために,上記マニュアルに基づく点検結果を分析し,その課題を抽出するとともにマルコフ連鎖モデルに基づいて劣化進展速度(遷移率)を算出した.その結果,海岸保全施設の遷移率は概ね対数正規分布に従うこと,施設形式や建設地域に依存した遷移率の明確な傾向は確認されず,一定の割合で劣化進展の速い施設が存在することなどを示した.また,今後の課題として,建設年,施設形式,点検・補修履歴などの情報のデータベース化を推進するとともに,点検診断結果に基づく健全度判定および劣化予測の手法を高度化する必要があることを指摘した.
  • 菅付 紘一, 水田 洋司, 藤田 浩一, 伊井 洋和, 佐々木 公彦, 高橋 洋一
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_516-I_521
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,直立消波ブロックのような多段積み構造体に対して,ブロック間にゴムマットを設置することでブロック構造体の耐震性を向上させる方法を提案した.提案法の検証のために模型実験と数値解析を実施し,提案法の有効性を確認した.まず,振動台加振実験よりゴムマット有無の場合の振動特性を把握した.次に,ゴムマット無しについて崩壊に至るような外力を選定し,同条件においてゴムマット設置有りの効果を確認した.さらに,対象とした実験について数値解析を行い,同定化を計ることで解析の妥当性を確認した.それらの結果から,ゴムマットを設置した場合の振動特性を明らかにし,耐震性向上に繋がる有効な効果を確認することができた.
  • 足立 一美
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_522-I_527
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     港湾施設については保有すべき性能の規定化が図られ,2007年より実務における運用がなされている.中でも廃棄物埋立護岸については技術マニュアルが公表され,これにもとづいて設計・施工・管理がなされている.しかし,とりわけ東日本大震災を契機として漏水による周辺環境の保全の観点から,レベル2地震動に対する耐震性能を評価することが求められてきている.本研究では,レベル2地震動に対する埋立護岸および遮水工の耐震性能を有限要素法による2次元動的有効応力解析(FLIP)により評価した.この結果(残留変形)にもとづき,2次元および3次元静的全応力解析手法(ALID)を用いて,遮水工(矢板)の性能評価を行った.その結果,隅角部における応力集中に対処するため,維持管理に注意を要することなどが分かった,
  • 曽根 照人, 桒原 直範, 山本 修司, 水谷 雅裕, 近藤 武司, 森本 徹, 井合 進, 一井 康二
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_528-I_533
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     防波堤は高潮や津波から背後地の資産や生命を護るための重要な施設である.将来,来襲するであろう津波や高潮に対する防護機能を確保するために実施する,設計や防災計画を検討する上では,地震時の防波堤の沈下量を適切に把握することが非常に重要である.沈下量を精度よく把握する手法としては,有限要素法による2次元地震応答解析(以下,2次元解析)が挙げられるが,この手法は計算負荷が大きく,多くの断面の照査を行う上では実務上の観点からは現実的では無い.そこで,本研究では,これに替わるものとして堤防タイプの沿岸構造物のチャート式耐震診診断システムに,防波堤重量に関する補正係数,及び堤体の物性に関する補正係数を加えることにより,重力式防波堤のチャート式耐震診断手法を提案し,被災事例等の3事例について概ね再現できることを確認した.
  • 宮里 聡一, 清野 聡子, 田井 明, 波田 安徳, 細井 尉佐義
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_534-I_539
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     長崎県対馬市で近年水産資源が年々減少しており漁業に影響が出ている.そこで日本で初めて市という枠組みで,海洋保護区の設定手法の検討が行われている.海洋保護区の設定には地元漁民との合意形成を図る必要がある.そこで本研究は合意形成を図る手段として,適切な保護区域を選定するための方法論の確立を目的とする.その第一段階として,長崎県対馬市を対象として聞き取り調査と漁業者と共同現地観測を行った.地理情報システムを用いて調査結果の集積・可視化を行った.その結果,海底地形と潮の流れと漁場には密接な関係があることが示唆され,その関係性から保護すべき場所を考慮する必要があると考えられる.また,GISを用いたデータの可視化は海洋保護区設定にとって効果的な手段であることが示された.
  • 北島 剛, 堀部 耕二, 瀬戸口 喜祥, 佐々木 崇雄, 高木 利光
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_540-I_545
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,佐賀県が海岸漂着物処理推進法第14条の規定に基づき「海岸漂着物対策地域計画」(案)を策定する上において重要なポイントとなっている海岸漂着物対策を重点的に推進する区域(以下「重点推進区域」という)の選定について,関係機関へ行ったアンケート調査等を実施して検討を行った.重点推進区域として選定する条件として,対策を必要とする海岸の条件を5タイプに分類し,そのいずれかに該当する区域とした.また,先進して取組がなされている地区をモデル地区として設定し,他地区への波及を図る仕組みも提案した.
  • 袖山 和志, 櫻木 義己, 萩原 照通, 柴田 あずさ
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_546-I_551
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,社会資本整備を行うにあたり,景観への配慮が求められるようになってきたが,消波ブロック個々の形状と景観について詳細に論じた研究はなかった.そこでアンケートを実施し,消波ブロックの形状特性と景観(調和感)の関係について検討を行った.アンケートの結果,丸みを帯びたブロックは調和感が高く,角張った形状のブロックは調和感が低い傾向にあることが分かった.また,調和感を評価する指標として,「交線長(ブロックの稜線と谷筋の長さの和)」,「球形度」,「ブロック角度の最大と最小の差」および「突起(脚部)の数」の4項目を採上げ,アンケート結果をもとに指標の有効性を調べた.いずれも調和感との間に強い相関が見られたが,特に球形度においてより強い相関があり,評価指標としてより有効であることが分かった.
  • 岡田 昌彰, 福部 大輔
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_552-I_557
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年,臨海工業都市において「新たな観光資源」として工場夜景が注目されている.一方,事業の進捗に対し当地における沿岸域景観の現況やその評価実態に関する基礎的研究は行われていない.
     本研究では堺泉北臨海工業地帯を対象とし,現地調査による景観形成要素の抽出・整理,及び当地の景観を対象としたウェブ上のブログに掲載された写真の内容ならびに言及内容を昼夜別に比較・分析し,夜景の評価実態ならびに選定される視点場の特徴について把握した.その結果,(1)夜景においては非現実のSF的な「別世界」を投影する傾向が見られること,及び(2)障害物が少なく,水面を挟むことで「ひき」が確保でき,あるいは「まとまり」として景観を捉えやすい視点場が多数撮影されていることなどがわかった.
  • 川上 佐知, 菅野 孝則, 田中 英治, 中元 雄二, 林 貴行, 高浜 繁盛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_558-I_563
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     各地で干潟の造成が進められる中,造成技術の開発はある程度進んだが,依然として多くの課題が残されている.そこで自然の不確実性が伴う干潟造成事業では,継続監視を続けながらその前提の妥当性を検証しつつ,状態変化に応じた管理を進める「順応的管理」の手法が注目されている.ただ,長期に渡りこれを実践した例は未だなく,必ずしも知見として十分であるとは言えない.
     広島県では,広島港五日市地区の港湾整備事業に伴い県内有数の水鳥の飛来地である河口干潟が大部分消滅することとなったため,ミチゲーションの考え方に基づき,昭和62年度より代替地となる約24haの人工的に干潟を造成した.しかし,当時は鳥類を対象とした干潟造成に係る知見は極めて不十分であった.さらに,当該干潟は軟弱在来粘性土地盤の上に,浚渫粘性土を有効活用し造成されたため,干潟面の継続的な圧密沈下が予測された.よって,追跡調査を続けながら,干潟環境の形成と変化を監視し,鳥類飛来地としての干潟環境の再生を進めていくこととした.
     本研究は,今から20年余り前,まだ「順応的管理」という言葉が十分認知されていない時代から進められてきた五日市地区人工干潟における順応的管理の実践とその効果について検証するものである.
  • 宮田 康人, 松永 久宏, 薮田 和哉, 林 明夫, 山本 民次
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_564-I_569
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     塊状製鋼スラグの生物着生基盤機能の長期的検証を行うことを目的として,2002年3月に広島県因島の海域において造成した塊状製鋼スラグ潜堤材について,9年後(2011年)まで追跡調査を行った.その結果,製鋼スラグ潜堤材には,施工1年後から9年後の調査まで海藻の着生種数は,天然転石と同等もしくは同等以上であり,また時間とともに種類数が増加傾向であったこと,魚類,メガロベントス,マクロベントスが天然転石と同程度に着生したほか,絶滅危惧種として隣県の岡山県レッドデータブックに掲載されているマクロベントスも観察されるなどの知見が得られた.以上の結果から,製鋼スラグ潜堤材は,海藻着生場,底生生物生息場,および魚類の蝟集の場などとして施工から9年間にわたり機能が継続していることから,製鋼スラグ潜堤材の有用性が確認された.
  • 亀山 剛史, 松山 哲也, 安岡 かおり, 掛川 寿夫, 末永 慶寛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_570-I_575
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     先の東日本大震災では,海域環境にも負の影響をもたらし,多くの水産資源生産力の低下を招いている.特に,海底に存在する有害金属イオンの海域環境からの除去および流出の抑制は最重要課題であり,適切な浄化および処理技術の開発が望まれている.
     本研究は,焼成骨粉(HAP)を紛体として,産業副産物(鉄鋼スラグ)を骨材とした多孔質コンクリートを製作し,底質中に含まれる有害金属類を吸着かつ安定不溶化可能な底質改善技術の開発を目的とした.同時に,吸着した金属類の中から有用な物質を再資源化する技術も検討した.
  • 足立 吉宏, 吉栖 伸輔, 中野 公聖, 中村 誉之, 片山 貴之
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_576-I_581
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     近年, 我が国では自然環境に対する意識が高まり,多様化するニーズに対応するとともに,過去に影響を受けた自然環境を少しでも取り戻すことを目的として,港湾施設に環境機能を取り入れていくことが検討されている.
     この度,国土交通省九州地方整備局より実海域現場実験の許可を得て,細島港におけるケーソン仮置き場において2010年3月から2011年9月にかけて実験を実施した.本研究では細島港ケーソン仮置き場に設置されたコンクリートケーソンの直立面に貝殻施設を設置し,海藻類,小型動物,魚介類の生息状況の調査を行い,生物多様性の向上など生物生息の改善効果が得られることが確認できた.
  • 作野 裕司
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_582-I_587
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,韓国が2010年に打ち上げた世界初の静止海色衛星GOCIのクロロフィルa(Chl.a)プロダクトの精度評価を内湾のMODISデータと実測データを使って検証することが目的である.研究には,東京湾における2011年9月,11月,12月のGOCI/実測Chl.aデータセットが使われた.検証の結果,「GOCI Chl.aとMODIS Chl.a」,「GOCI Chl.aと実測Chl.a」はそれぞれ有意な相関(相対誤差はそれぞれ43%,41%)があった.またGOCI Chl.aと実測Chl.aの関係式から東京湾のGOCIデータを補正すれば,40μg/lを超えないような実測Chl.aの範囲では比較的,Chl.aの時系列変化とよく一致した.
  • 矢北 孝一, 滝川 清, 秋元 和實, 増田 龍哉, 森本 剣太郎, 森 敬介, 島崎 英行
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_588-I_593
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     八代海域で採集した試料を対象に,海域底泥表層の硫化物濃度を簡便・効率的に推定する手法について,土色計およびデジタルカメラ画像のマンセル,L*a*b*HSV等の表色系の色彩データを用いて基礎的検討を行った.その結果,土色計で得られたマンセル色相,L*a*b*色彩データを説明変数とする重回帰分析とa*b*色彩データを説明変数とした最良回帰式で有意性が認められ,硫化物濃度推定の可能性が示された.底泥表面に非接触で校正板を必要としない手法の検討では,デジタルカメラ画像の各色彩データを主成分分析し,説明変数としてBL*a*b*Hを選定した.これらを説明変数とした最良回帰式より,推定式の有意性は認められ,デジタル画像からの推定式の可能性も示された.また,色相a*が硫化物濃度の推定式に与える影響が大きいことが分かり,土色計の説明変数と共通する結果となった.
  • 中下 慎也, 河内 友一, 吉岡 一郎, 日比野 忠史
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_594-I_599
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     ヘドロの集積する閉鎖性内湾における本質的な水環境改善対策の一つとして,ヘドロを石炭灰造粒物によって覆う手法が確立されてきた.しかしながら,水理条件の厳しい水域における海砂代替材としての石炭灰造粒物の施工例は少なく,工学的検証が不十分である.
     本研究では実海域に造成した石炭灰造粒物基盤を模した室内実験を行い,石炭灰造粒物の流体力学特性を明らかにすることを目的としている.まず,現地調査として石炭灰造粒物基盤を試験的に施工した水理条件の厳しい水域の波と流れについて明らかにした.次に,模型実験として現地水域で測定された波・流れを考慮した種々の波と一方向流における地盤材料の移動量に関する検討を行った.最後に,流速分布,底面せん断応力,および間隙水圧の詳細な測定から地盤材料の安定機構について考察した.
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