土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
68 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.28
  • 松山 正之, 由比 政年, 石田 啓
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_600-I_605
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     石川県加越海岸は,福井県境から能登半島付け根の滝崎に位置する砂浜海岸である.本研究では,金沢港以北に位置する延長約32kmの北部加越海岸を対象とし,1998~2010年に取得された深浅測量結果を用いて,海浜地形変動の基本特性を解析し,沿岸方向変化に着目して比較検討を行った.領域南端で金沢港に隣接する内灘地区において急速な堆積が進む一方,その北側では侵食が著しいこと,また,領域北端付近の羽咋地区においても,汀線後退が加速傾向にあることが確認された.海浜単位幅あたりの土砂量変動は,汀線位置変化と全般に対応する形となったが,領域北側においては,汀線の後退傾向に反して土砂量は微増・安定となるなど,汀線近傍と沖側で地盤高変動の傾向に相違が見られた.
  • 澁谷 容子, 松原 雄平, 黒岩 正光, 八尾 規子
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_606-I_611
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海岸侵食が激化する中で,構造物などを設置する従来のハード的整備から養浜工法などのソフト的な対策が施されることが多くなっている.それにともない,数値モデルの開発や現地実験および水槽を用いた室内実験などが行われている.しかし,養浜土砂の挙動を把握し,その後の地形変化を予測することは困難であり,効果的な養浜工法の指標はないのが現状である.著者らも養浜土砂の挙動を明らかにした等深線変化モデルの開発を行ってきたが,粒径の異なる養浜土砂の移動速度の同定に検討の余地を残していた.そこで,本研究においては粒径の異なる養浜材を用いた室内実験により,養浜土砂の移動およびその後の地形変化を調べ,養浜土砂の移動速度と波浪特性および養浜土砂の粒径との関係づけを行った.
  • 祭田 佳奈江, 鷲田 正樹
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_612-I_617
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,岸沖漂砂による地形変化量が卓越する海岸において,保全施設規模を検討し,効果を検証するために岸沖・沿岸漂砂両方を考慮したモデル「岸沖・沿岸漂砂統合モデル」の開発を行ったものである.
     地形変化特性を把握するために,波浪と岸沖方向の地形変化の関係に着目した.波高3m以上で岸沖漂砂による地形変化が生じ,波高4mを境界として漂砂方向(岸向・沖向)が反転することを明らかにした.この特性を踏まえ,4つのモデル(SBEACH,Camenen・Magnus,渡辺ら,ファンデルワーフらのモデル)を用いて,実測波浪による検証計算を行った結果,ファンデルワーフらのモデルが適していた.このモデルを基本に,波浪変形計算部分と粒径についてモデルの改良を行い,沿岸漂砂と岸沖漂砂を同時に計算出来るモデルを開発した.
  • 澁谷 容子, 松原 雄平, 黒岩 正光, 山田 隆史
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_618-I_623
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海岸保全を行ううえで,海域に直接土砂を運び入れるソフト的な対策が行われることが多くなってきている.一般に,海岸保全対策を講じる際には将来予測を行うことが必要不可欠であり,養浜などのソフト的な対策を行うときも同様である.このような状況から,養浜土砂の動きおよびその後の地形変化を予測可能な数値モデルの提案を行ってきた.しかし,養浜時に作用する波浪の違いで,その後の地形が大きく異なると考えられることから,養浜土砂の挙動および波浪特性の変化を考慮した等深線変化モデルの開発を行った.モデル地形による数値実験により養浜時に作用する波浪の影響を調べ,さらに鳥取県西部の皆生海岸において現地適用を行った.
  • 芹沢 真澄, 宇多 高明, 宮原 志保
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_624-I_629
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     細長い(aspect ratioの大きい)湖では,長軸方向のフェッチが長いため,長軸に沿った汀線に対する入射角が45以上と大きくなり,この結果汀線形状が大きく変化して尖角岬の発達や湖の分裂が起こる.本研究では,芹沢らのBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)をこの種の湖浜変形予測に応用し,浅い湖の分裂過程を3次元的地形変化として説明可能なことを明らかにする.
  • 宇多 高明, 細川 順一, 中西 勇人, 古池 鋼, 石川 仁憲
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_630-I_635
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     神奈川県湯河原海岸では過去埋立地が造成されたが,造成区域北側の自然海浜では侵食が起きた.また,埋立地護岸の前面水深が約5mと深いため越波が著しく,このため消波施設として-6mから-8mの海底面上に人工リーフ2基が建設され,さらに1基の建設が2006年に建設された.本研究では,このような人工的改変を受けた湯河原海岸において,埋立地北部の狭まった海浜を養浜により広げる手法についてBGモデルを用いて検討した.
  • 黒崎 弘司, 由比 政年, 石田 啓
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_636-I_641
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海象特性や漂砂のメカニズム解明には,沿岸波浪や地形変動モニタリングの技術開発が不可欠である.本研究では,鈴木ら(2008)の手法に基づき,ネットワークカメラを活用した画像観測システムを構築し,石川県珠洲市鉢ヶ崎海岸に適用して長期連続観測を行うとともに,現地測量との比較やメガカスプ地形の変動解析を通じてその適用性を検証した.その結果,ネットワークカメラによる汀線位置の定量化手法は十分な精度を有することを確認した.また,メガカスプの発生・消滅と入射波特性との相関解析に本システムを適用し,鉢ヶ崎海岸におけるカスプ地形の発達特性と入射波特性との関係を示した.
  • 清水 達也, 宇多 高明, 熊田 貴之, 中橋 正, 保田 英明
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_642-I_647
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     九十九里浜北部(飯岡漁港~片貝漁港)を対象として,空中写真を基に汀線および保安林の外縁線位置を読み取り,砂浜幅の変化を調べた.これらの検討に加え,著しい地形変化が観察された区域における1947~2010年の海岸の変遷について拡大空中写真を基に比較した.この区域では,飯岡漁港の防波堤による波の遮蔽域へと沿岸漂砂の逆流が起き,またその南側の旭~野手海岸では侵食が急速に進んでいることが明らかになった.
  • 宇多 高明, 熊田 貴之, 清水 達也, 渡邉 徹
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_648-I_653
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     茨城県大洗港周辺の海浜変形に関する既往研究では,大洗港の南側または北側区域に絞った研究がなされているのみで,この地域全体の漂砂環境を明らかにした研究は行われていなかった.また,この地域では2011年3月11日の大津波により著しい海浜変形も生じた.これらを考慮し,本研究では,那珂川河口から大洗港を挟んで成田・上釜海岸までの全域を対象として大津波の影響も含む,近年の地形変化特性を明らかにした.
  • 大貫 崇, 小林 昭男, 宇多 高明, 芹沢 真澄, 遠藤 将利, 野志 保仁
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_654-I_659
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     千葉県房総半島南部に位置する南房総市の江見・和田海岸に流入する長者川と,鴨川市の東条海岸に流入する夜長川と天神川河口を対象として,河口砂州の変動と沿岸漂砂の河口横断機構について現地実測を基に調べた.河口砂州形状の変化は,長期的には空中写真により,また短期的にはGPS測量によって調べた.これらを基に,河口位置の変動量から河口での沿岸漂砂量を推定する手法を提案した.
  • 玉井 昌宏, 辻本 剛三
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_660-I_665
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     海浜砂の色彩は,景観や生態系など海浜の持つ様々な機能と関係しているにもかかわらず,これまで海岸工学分野において研究対象になってこなかった.本研究では,我が国の23の海浜において採取した砂の色を定量的に分析し,相対比較することにより,各々の海浜の色彩の個性を明らかにした.加えて,それらの砂の供給源になると想定される近隣河川の流域地質特性の面から色彩の成立条件について検討した.海浜の色彩は,明暗と茶色黒色系統で座標化することが可能で,前者は苦鉄質火山岩と珪長質岩石類との比率に,後者は珪長質の火山岩と深成岩との比率に関係することが明らかになった.例えば,鹿児島県内の海浜は総じて茶色系統の暗め色彩であるが,これらが苦鉄質火山岩類に影響されていることなど,各地域における地質構成と海浜色彩の関係がわかった.
  • 宇多 高明, 清野 聡子, 三波 俊郎, 高瀬 和博, 柴﨑 誠, 酒井 和也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_666-I_671
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     宮崎県の大淀川河口から青島に至る延長約11kmの赤江浜では侵食が進んできている.この原因を調べるために,空中写真の判読により赤江浜の変遷調査を行うとともに,汀線変化解析を行った.また,2004年8月の台風16号時には異常に浜崖が発達したことから,そのときの侵食状況について現地踏査データをもとに明らかにし,さらに侵食と密接に関連すると見られる大淀川河口付近での過去の浚渫状況についての分析を行うことにより,赤江浜の海浜変形機構について考察した.
  • 宇多 高明, 野志 保仁, 熊田 貴之, 酒井 和也, 本橋 修二, 菊池 泉弥
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_672-I_677
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     常陸那珂港の沖防波堤建設に伴う阿字ヶ浦海岸の変形実態を調べた.まず,2010年11月5日には無人飛行機による空中写真撮影を行い,これと既往の空中写真をあわせて1984年から2010年まで7時期の空中写真を比較し,海岸の変遷を調べた.また,空中写真から汀線位置を読み取り,1984年を基準とした汀線変化量を算出した.さらに1996, 1999, 2002年に行われた深浅測量のデータを用いて地形変化解析を行い,阿字ヶ浦海岸では沖防波堤による波の遮蔽域形成に伴って北向きの沿岸漂砂が誘起され,これによって地形変化が起きたことを明らかにした.
  • 宇多 高明, 小澤 宏樹, 星上 幸良, 清水 達也, 野志 保仁
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_678-I_683
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     伊豆大島の間伏海岸は,長さ650mのポケットビーチである.この海岸では過去侵食が起きたが,その原因は明らかではなかった.本研究では,過去の空中写真を判読し,また深浅データを分析して海浜変形について調べるとともに,2011年2月4日には現地踏査を行って侵食原因について考察した.この結果,間伏海岸では過去に行われた海砂利採取の影響で海浜土砂量が減少したが,近年はほぼ平衡状態に達していることが分かった.
  • 宇多 高明, 細川 順一, 中西 史一, 宮原 志帆, 芹沢 真澄, 石川 仁憲
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_684-I_689
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     神奈川県三浦半島南部に位置する初声海岸を対象として,BGモデルを用いて養浜の効果検討を行った.当海岸では,初声漁港の防波堤による波の遮蔽効果に起因して南向きの沿岸漂砂が誘起されたことにより,漁港の北側では侵食が進んできた.漁港内への砂の堆積を防止するために,突堤を造らずに現状の砂浜を維持するソフトな手法として,漁港防波堤背後の前浜から北側へのサンドリサイクルについて検討した.検討結果によれば,500m3/yrのサンドリサイクルでも高い効果が出ることが分かった.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 宮原 志帆, 芹沢 真澄, 三波 俊郎, 住田 哲章
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_690-I_695
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     沖防波堤の建設に伴って波の遮蔽域に大量の砂が溜まり,航路や泊地の維持に課題を抱える大津漁港を対象として,芹沢らのBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形モデル)を用いて各種対策実施時の地形変化予測を行った.この結果,現況のまま放置する案では堆砂がさらに進むこと,対策として西防波堤の先端にこれと直角方向に100mの防砂堤を新設すれば港内堆砂を大きく軽減可能なことが分かった.
  • 戸巻 昭三, 佐藤 寿彦, 竹沢 三雄, 後藤 浩
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_696-I_701
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     北海道日本海沿岸の石狩海岸に建設された石狩湾新港は,当初西側海岸に面して防波堤を建設する予定であったが,港内に長周期波の発生が予想されることから,その建設を行わずに今日まで経過した.
     そこで本論文は,深浅測量や波浪などの現地観測データに基づき,石狩川からの漂砂供給が石狩湾新港によって遮断されて,侵食性となった西側海岸の特徴,その付近の海浜流や海浜変形シミュレーションなどから,石狩湾新港西側海岸の港内への漂砂流入防止対策について考察した.
  • 横田 雅紀, 大谷 優衣, 山城 賢, 橋本 典明, 春日井 康夫, 本田 一光, 井芹 絵里奈
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_702-I_707
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     関門航路の水深管理を目的として長期間にわたり取得されてきた深浅測量データを整理し,今後の効率的な浚渫計画及びエリア別の埋没対策検討に資する目的で水深変化特性の把握を試みた.その結果,継続的な浚渫により2010年時点ではほぼ全域で12m以上の水深が確保されていることが確認された.また,浚渫箇所を除くと関門海峡内における水深変化は小さく,関門海峡南端の湾曲部における平均水深は±0.1mの範囲内で推移していることが確認された.さらにマルチビーム音響測深機を利用し高精度な深浅測量が実施されるようになったとされる2006年度以降の土量変化を整理した結果,変化量は小さいものの関門海峡中央付近は堆積傾向であることが確認できた.
  • Widyaningtias, Hitoshi TANAKA
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_708-I_713
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     The depth of closure in Sendai Port is estimated using 10 years bathymetry data and proposed as a longshore variation. The hydrodynamic condition is simulated using Boussinesq equation (Peregrine, 1967) which was modified by applying long wave theory. Using wave data from 1991 to 2003, 20% wave height in deep areas is applied as a representative wave. From the modeling, bottom velocities in the x and y directions are obtained. The result is used to calculate the maximum bottom velocities just outside the boundary layer. The effect of wave reflection is observed using the velocity distribution and maximum bottom shear stress. By integrating the velocities in the x and y directions, the area that is influenced by reflected waves can be observed. The results are depicted as a spatial map. The longshore variation of the depth of closure is overlaid on the results to confirm the influence of wave reflection for its variation.
  • 関口 陽高, 諏訪 義雄, 野口 賢二, 渡辺 国広, 伊藤 幸義, 岩佐 隆広
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_714-I_719
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     サンドパック工法は,現地の砂を繊維素材で構成された袋材に詰める海岸保全のための工法である.土木工事に使用される繊維素材のものとして大型土のうや袋詰め玉石工など仮設材として使用されているが,コンクリートなどの従来の海岸構造物に比べて実績も少なく耐久性について未解明な部分が多い.特に海岸で使用する場合は,紫外線による劣化に加えて海塩などの影響も加わり繊維素材にとって厳しい環境下であると考えられる.そこで,本研究では,実際に海岸に繊維基布の試験体を設置し引張強度と貫入抵抗強度試験を行い,劣化現象を確認した.また,サンシャインウェザーメーターを用いた促進暴露試験と屋外暴露試験の結果より繊維基布の残存強度を推定する方法を提案した.
  • 渡辺 国広, 宇井 正之, 二階堂 竜司, 細谷 州次郎, 高田 保彦, 諏訪 義雄, 野口 賢二, 関口 陽高
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_720-I_725
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     サンドパックで構築された海岸構造物について,16ヶ国47事例を対象に文献調査を実施したところ,14事例で変状の発生が確認された.この知見をもとに変状連鎖フローを作成したところ,機能損失につながる変状連鎖を防ぐには,サンドパックの移動,前面の洗掘,水みちの拡大,袋材の損傷の4点への対策が特に重要であることが明確となった.海中構造物についての変状形態を把握するために水理模型実験を実施したところ,サンドパックの安定性は充填率や波浪の作用方向にも大きく依存することが明らかとなり,所要重量以外の要素も考慮した安定性照査手法を開発することが必要と考えられた.
  • 宇多 高明, 引山 誠, 小澤 宏樹, 星上 幸良, 清水 達也, 野志 保仁
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_726-I_731
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     琵琶湖(北湖)北部に流入する鴨川の河口西側に隣接する近江白浜の侵食に対し,突堤と養浜による対策の有効性を等深線変化モデルで示した.これに基づいて突堤2基の新設と800m3の養浜が行われたが,施工後の現地踏査によれば予測結果とほぼ同様な結果が得られ,河川流出土砂量の減少に伴う周辺湖浜の安定化に本手法が有効なことが明らかになった.
  • 芹沢 真澄, 宇多 高明, 宮原 志帆
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_732-I_737
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     急勾配海岸において海岸線方向が急変する場所で発達する円弧状砂州の特性を移動床模型実験によって調べた.8時間の波作用後,砂州上に突堤を設置することにより突堤の沿岸漂砂阻止効果を調べた上で,実験結果に対してBGモデルを適用したところ,海岸線急変部での砂州の変形がうまく計算された.さらに,海岸線方向の急変部にできた砂州上に離岸堤が設置された場合の地形変化についても実験と計算を行い,突堤と離岸堤の漂砂制御効果の比較を行った.
  • 山野 貴司, 藤原 隆一, 野村 浩二
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_738-I_743
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     筆者らはこれまで低天端有脚式離岸堤について,緩勾配条件における堤体周辺の局所洗掘特性の把握について検討を行った結果,杭周辺での局所洗掘に加え,堤体沖側では不透過堤の場合のN-タイプの洗掘形状となることを確認した.本研究では,海底が急勾配な条件に対して同様の移動床水理模型実験を実施した.その結果,緩勾配の場合と同じく洗掘深が大きくなるのは岸側の杭周辺であること,また波高の大きい条件ではplunging型の砕波の影響を強く受け,堤体岸側で全域的な洗掘,沖側では堆積することがわかった.また,砕石による対策工は急勾配条件においても有効であるが,対策工に隙間が生じるとその部分から流入する流れによって洗掘されるため,隙間を生じさせないように設置することが重要である.
  • 田井 明, 齋田 倫範, 米倉 瑠里子, 扇塚 修平, 清野 聡子
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_744-I_749
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     九州北部に位置する博多湾は,背後に福岡市を控えた海表面積が約133km2の比較的小規模な閉鎖性内湾である.博多港の航路の維持管理や湾内の和白干潟や今津干潟の自然保護などが課題として挙げられ,近年では赤潮や貧酸素水塊などの水環境も悪化している.以上のような問題を解決していくための第一歩として,本研究では博多湾の数値シミュレータを開発し,実測データの解析と併せて,潮汐・潮流と底質輸送の基本特性と湾内の埋め立ての影響について検討を行った.その結果,実測データの解析から半日周潮は長期的に減少傾向であることが明らかとなった.また,湾内の浸食・堆積傾向について知見が得られた.
  • 熊井 教寿, 大呑 智正, 滝川 清, 松下 訓, 川岸 寛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_750-I_755
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     国土交通省九州地方整備局では,環境整備船「海輝」を用いて,有明・八代海の環境特性の把握を目的として,水塊構造調査,定点連続水質調査並びに底質・底生生物調査を実施している.2010年度の結果,有明海の浅海域である三池港沖の底層付近において,DOが3mg/Lの値を示す水塊が確認された.また,八代海の球磨川沖の底層付近において,DOが3mg/L以下の値を示す水塊が確認された.有明海において,底質及び底生生物のクラスター解析による分類の組み合わせより7つのグループに細分類することができ,様々なパターンの底質環境を持つ海域であることが明らかになった.
  • 大塚 文和, 廣實 信人, 川西 利昌, 増田 光一
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_756-I_761
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は、福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質が東京湾に流入する経路を整理すると共に、2011年3月から12月の10ヶ月間について大気中からの降下量及び主要河川(江戸川、荒川、多摩川)を通しての流入量について試算し、流入量の定量的な把握を行った。大気中からの降下量については、都道府県ごとに実施されている放射性物質の降下量調査結果を基に、重み付き補間法を用いて東京湾内湾への降下量を推定した。また、河川については、各河川から導水している浄水場における浄水残土中のセシウム濃度を基に試算した。なお、河川においては放射性物質は流量の増減に強く影響を受けながら移動・堆積等を繰り返し、ある程度の期間内では海域に流入していくものとして、平均的な流入量として試算した。その結果、大気からの降下量と主要河川からの流入量の合計は、約12TBqとなることが明らかとなった。
  • 早川 博, 加藤 淳子, 中山 恵介, 崇田 徳彦, 中内 勲, 石田 哲也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_762-I_767
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     網走湖における塩水遡上流入量は潮位と湖水位の水位差に密接に関係しているが,それ以外の要因として風の影響が考えられる.本研究は塩水遡上流入量に及ぼす風の影響を評価するため,長期観測データの統計解析により塩水遡上流入量と水位差,風速との相関分析を行い,風向・風速別にその相関を明らかにした.また,多変量解析手法の一つである主成分分析を適用し,各データ個体の主成分得点を指標として塩水遡上流入量と相関の強い個体を抽出して,観測データを分類した.主成分分析により得られた水位差,風の影響を強く受けるデータを対象に重回帰分析した結果,風速を説明変数に加えることによって既往の水位差だけの単回帰式より推定精度を向上させることができた.
  • 齋藤 孝, 滝川 清, 園田 吉弘, 高日 新也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_768-I_773
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     八代海では,Chattonella antiqua赤潮による漁業被害額が昭和63年以降100億円を超えており,C.antiqua赤潮は水産業にとって難題となっている.本研究では,C.antiquaの増殖と水質環境要因の関係を明らかにするためにCCAを用いた.CCAの結果,I軸の固有値は平成18~19年,St.1~9のそれぞれで0.081~0.209,0.072~0.237の範囲であった.C.antiquaの増殖に関与する水質環境要因として,成層強度,底層の酸素飽和度,水温,DIN/SiO2-Si及びDIN/PO4-Pが抽出され,これら要因が影響する強さは発生海域で異なることが明らかとなった.CCAによる要因抽出手法は,今後,HSIモデル等による赤潮発生予測手法を開発するに際して,有効に活用できるものと考えられる.
  • 李 佑東, 水谷 法美, 許 東秀
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_774-I_779
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,密度差のある波と流れの相互作用による波の変形を解析するため,既存の数値モデルに塩分と温度に対する3次元移流-拡散方程式を導入して新しい数値解析モデルを開発するとともに,水理実験結果との比較によりモデルの妥当性と有効性を検討した.さらに,この数値解析モデルにより波と流れの相互作用による波の変形に及ぼす密度差の影響を考究するとともに,河口域における密度差を考慮した流速と波高の変化について考察した.
  • 平山 克也, 森内 政弘, 伍井 稔, 加地 智彦, 玉田 崇
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_780-I_785
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     台風0418号及び台風0423号に伴う高波により海岸護岸背後の国道で通行障害が発生した高知県室津港海岸を対象として,波の砕波・遡上に加え越波計算が可能な平面2次元ブシネスクモデルを用い,道路通行規制実績から見た当時の越波状況の沿岸分布に関する再現計算を行うとともに,代表12断面において修正仮想勾配法を,さらにそのうち3断面でCADMAS-SURF/2Dを適用して得られた打ち上げ高及び護岸越波量と比較し,その妥当性を検討した.
     ブシネスクモデルにより推定された越波状況は,護岸消波の影響または平面的な波浪変形が比較的小さいと思われる代表断面において,それぞれ1次元的な手法による結果とよく一致するとともに,これらを考慮すべき代表断面及びその他の沿岸方向の各護岸においても,妥当と判断される結果を得た.
  • 加島 寛章, 平山 克也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_786-I_791
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     台風の大型化や経路の変化により来襲頻度の増加が指摘される周期14s以上の長周期うねりは,通常の設計波に比べて水深の深い海域から海底地形の影響を受け,屈折や浅水変形により高波浪となって沿岸域に来襲し,越波浸水災害を引き起こす場合が多い.しかし,これまで着々と整備された海岸護岸に対し,従来と同じ手法で必要な対策を講じることが難しい場合には,既設護岸が有する防護効果を最大限活用することが必要である.本研究では,平面的な越波浸水・排水過程を再現可能なブシネスクモデルにより,長周期うねりを対象とした越波浸水・排水計算を行い,既設護岸における排水能力を考慮した護岸背後への越波や浸水過程について明らかにするとともに,簡易浸水対策としての土嚢仮設堤の効果について検証を行った.
  • 田島 芳満, Siddique MOHSIN
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_792-I_797
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本論文では,数値波動モデルにおける砕波帯周辺での流れ場の再現特性を卓越的に規定する砕波減衰モデルに着目し,異なるモデルによる流れ場再現結果の比較を通じてその特性を把握することを目的とする.波動モデルには修正ブシネスク方程式を用い,砕波減衰モデルには,一般的に良く用いられる抵抗型および拡散型の砕波減衰項に加え,砕波する波峰の前面に形成される大規模渦へのエネルギー輸送をモデル化したSurface Rollerモデルを導入し,それぞれ波高や底面軌道流速,さらには波谷下における戻り流を比較した.その結果,いずれのモデルも波高や平均水位の変化を妥当に再現するものの,軌道流速の非対称波形や戻り流れの再現性はモデルにより大きく異なり,大規模渦へのエネルギー輸送と質量輸送を考慮することにより再現性が向上することが分かった.
  • 金山 進
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_798-I_803
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     ペレグリン型のブシネスク方程式を連成させた多層波動方程式に対して,線形分散関係の固有ベクトルとして導かれる減衰定常波の特性を調べることにより,ステップ地形での波浪解析に対する基本的な適用性を検討した.波動モデルの固有ベクトルは分割層数と同じだけ存在し,1つは進行波,他は減衰定常波に対応する.層を等分割とした場合の固有ベクトルは微小振幅波理論によるものと次数毎に類似し,分割層数を大きくするほど高次の固有関数が再現できる.変則な層分割を用いた場合の固有ベクトルは,微小振幅波理論とは異なった形状となることがあるが,ステップ地形の散乱解析に多層波動方程式の固有ベクトルを用いたところ,等分割の場合に限らず,反射率,透過率および流速分布は解析解と良好に整合した.
  • 山下 正輝, 泉宮 尊司
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_804-I_809
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     衛星リモートセンシングによる有義波高の測定においては,水位と水面勾配の結合確率分布が用いられ,従来の手法では観測域の水位分布をGauss分布に従うものと仮定している.しかしながら,波の非線形性の影響が強い場合は,この仮定は成立しない.波の非線形性により変化するskewnessやkurtosisを考慮した分布推定法としてGram-Charlier級数を用いる方法があるが,この方法では確率密度の値が負となる欠点がある.本研究では,波の非線形性とskewnessやkurtosisとの関係について考察し,それらを考慮したGram-Charlier級数に代わる新たな結合確率分布推定法を提案する.実測値や従来法との比較から,本手法は分布の歪みを適切に表し,実測値と比較的良好なる一致を示すことが見出された.
  • 仲井 圭二, 橋本 典明
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_810-I_815
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     周期600s以上の長周期波成分は,「気象性長周期波」と呼ばれ,波浪と関連が深い600s以下の成分とは異なる原因で発生すると言われている.この600s以上の成分の季節変動を中心に調べたところ,以下のことが分かった.
     (1)600s以上の成分波高は,600s以下の成分波高と異なる季節変化を示すが,日本海側は太平洋側よりは600s以下の成分と似た変化をする.(2)ほぼ同緯度の太平洋側と日本海側の2地点を対象した場合,600s以下の成分に関しては,両地点で相関がないのに対し,600s以上の成分では相関が見られる.この特徴は,5年間のデータを用いた波候解析からも,特定の擾乱時の解析からも明らかになった.
  • 田中 真史, 松本 朗, 半沢 稔
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_816-I_821
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     多くの港湾で長周期波による荷役障害が問題となっている.対策の一つとして,防波堤背面に設置されるマウンド構造物が提案されているが,既存断面の構造物幅は30m以上であり,断面の小型化が求められている.本論文では,既存の干出型マウンド構造物よりも小型の長周期波対策工を提案する目的で,天端が静水面に位置する没水型断面の消波特性を水理模型実験により明らかにした.
     没水型は干出型より長周期波の反射率を低減でき,特に消波ブロック二層被覆形式はその効果が安定的であった.例えば水深10m,周期60秒の条件において,干出型の構造物幅30mの場合と同等の反射率となる没水型の所要構造物幅を計算すると,約16mとなった.これにより,工費の縮減および水域の狭隘な中小港湾への適用性の向上が実現するものと思われる.
  • 関本 恒浩, 中嶋 さやか
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_822-I_827
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     関本ら(2011)による急勾配斜面を有するリーフ地形に対する水理模型実験データを用い,リーフ上における不規則波の変形とwave set-upについて解析を行った.本研究では,波高の出現確率特性について調べるとともに最高波高,有義波高,rms波高等の波浪統計量について詳細に調べた.波高分布は,リーフ上の波の分裂の影響が見られるものの,砕波により失われる波高の大きな部分の確率が残存する確率に再配分されることが確認した.また,不規則波の統計量は最高波高を除き,比較的安定していることを確認した.さらに,リーフ上における波の再生条件を検討するとともに,リーフ上の最高波高は,孤立波の砕波限界波高によって評価できることも確認した.
  • 関本 恒浩, 中嶋 さやか
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_828-I_833
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     中嶋ら(2011)による急勾配斜面に接続するリーフフラットの長いリーフ地形に対する水理模型実験データを用い,リーフ上における規則波の変形とwave set-upについて詳細に解析を行った.本研究では波高として水位変動のrms値から算出したrms波高Hrmsを用いて波浪エネルギーの評価を行った.リーフ長が長い条件では,平均水位は時間的空間的に変動するが,長周期変動も含む全水深dd=η+h,ηはwave set-upを含む長周期変動,hは静水深)で無次元化した波高Hrms/dに着目すると,リーフ上における波の再生条件として0.28±0.1を得た.また,Hrms/dを用いて波の減衰過程についても評価した.さらに,流れのある場合の砕波に伴うリーフ上の波の特性についても調べた.
  • 李 光浩, 福田 直也, 水谷 法美
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_834-I_839
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     波流れ共存下における人工リーフ周辺の水面変動およびエネルギー輸送機構を3次元直接数値解析により考究した.河川流の有無,人工リーフの透過性の有無により,人工リーフ周辺の水面変動やエネルギー輸送がどのような影響を受けるのか検討した.数値実験結果から,河川の流れの存在により,人工リーフ背後の波高増大,エネルギー輸送機構の変動を引き起こし,特に波高分布の変化に比べ,エネルギーフラックス分布の変化の方が大きいことを明らかにした.また,人工リーフ周辺の波高やエネルギー輸送は,人工リーフが不透過である場合と比べ,透過性である場合に,河川流の影響を受けやすいことを解明した.
  • 萩平 裕樹, 池田 奈保子, 山城 徹, 城本 一義
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_840-I_845
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     気象庁が公開するメソ数値予報モデル(MSM)の地上気圧データを用いて,九州西岸での副振動の発生に関連した東シナ海上の微気圧変動の伝播特性を調べた.地上気圧の連続画像にPIV解析を適用することによって,東シナ海上を110~150km/hの速度で東方へ移動し,九州西岸において大きな副振動を発生させる微気圧変動を2~6時間前のMSMデータからみつけることができた.この結果は,MSMデータが九州西岸での副振動の発生予報に有効であることを示唆している.
  • 村上 智一, 深尾 宏矩, 吉野 純, 安田 孝志
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_846-I_851
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,現在気候下の最大級台風による三河湾での高潮と高波の科学的実態解明を目的として,台風渦位ボーガスを組み込んだ大気-海洋-波浪結合モデルを用い,台風の進路と中心気圧が互いに従属関係にある200個の熱力学的最大級台風をさまざまなコースで三河湾に来襲させ,高潮や高波を予測した.
     その結果,三河湾の既往最大潮位偏差2.75mを上回る高潮が三河湾の広い範囲で発生し,特に湾西側奥の高浜および湾東側奥の前芝では,潮位偏差がそれぞれ4.0mおよび3.7mに達することがわかった.この高浜および前芝での高潮は,既往最大を1m近く上回るものであり,その超過継続時間もそれぞれ70分および80分となることから,三河湾の湾奥では大きな高潮災害が発生する危険性があると言える.
  • 川崎 浩司, 大橋 峻, 鈴木 一輝, 村上 智一, 下川 信也, 安田 孝志
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_852-I_857
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,Myersによる台風モデル,単層流動モデル,波浪モデルSWAN,CIP法に基づく氾濫モデルによって構成される高潮・高波氾濫モデルを用いて,東京湾における既往の台風による高潮場を計算し,観測値との比較からモデルの適用性・妥当性を検証した.さらに,今世紀末に発生しうる可能最大級台風による気象推算結果を用いて,東京湾における可能最大級高潮を数値解析するとともに,東京港における高潮氾濫の予測計算を行った.その結果,地球温暖化に伴う最大級台風によって,東京港周辺地域で大規模な高潮・高波氾濫が生じることを示すとともに,高潮氾濫状況の特性を明らかにした.
  • 木梨 行宏, 山城 賢, 姫野 慎太郎, 中野 俊夫, 横田 雅紀, 橋本 典明
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_858-I_863
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     地球温暖化により,これまで以上に強大な台風の来襲が懸念されており,それによる高潮災害に対する適応策を考える上では,より精度の高い高潮推算が望まれている.本研究では,可変格子を設定でき,複雑な海岸線を表現できる非構造格子を用いた海洋流動モデルFVCOMを高潮推算に適用し,その有用性を検討した.FVCOMの高潮推算への適用にあたって,まず,オリジナルのFVCOMでは考慮されていない気圧場を取り込めるようにモデルを改良した.ついで,対象領域である有明海・八代海での適切な計算領域および格子幅の検討を行った.推算結果と観測値および代表的な構造格子モデルであるPOMによる計算結果との比較から,高潮推算におけるFVCOMの有用性が確認された.
  • 塩崎 信一, 金 洙列, 松見 吉晴, 太田 隆夫
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_864-I_869
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,ニューラルネットワークを利用して山陰沿岸におけるリアルタイム高潮予測システムを開発し,その適用性について検討を行ったものである.高潮偏差の波形において異なる特性を持つ単一台風情報(台風0418号)と複数台風情報(台風0418号と0314号)を結合した学習データを用いて,台風0415号による境港での高潮偏差の予測実験を行った.学習データに用いる入力データの種類(台風位置,気圧,気圧変化量,風速,風向,潮位,高潮偏差)とその観測所数によって高潮予測精度が異なることが分かった.気圧,気圧変化量,潮位及び高潮偏差を用いた場合,最も観測値に近い予測結果が得られた.風速と共に観測所数を増やすと最大観測値の予測値に改善が見られた.予測時間については,1~2時間後の予測結果が観測最大値に近く,その発生時刻と同時刻の予測結果が得られた.
  • 鈴木 武
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_870-I_875
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     地球が温暖化すれば,海面上昇と台風強大化によって高潮による浸水リスクが増大する.そのため,全国の高潮浸水による被害リスクを,将来の海面上昇と高潮偏差の増大を外生的に与えて推計し,その地域分布を表すリスクマップを作成した.そのマップでは,三大湾,瀬戸内海,有明・八代海地域でリスクが大きい一方,北陸,東北,北海道地方では有意なリスクがみられる場所が限定的である.高潮や津波による浸水の被害ポテンシャルを把握するため,作成した浸水被害モデルを使い,陸域が浸水した場合の被害額を様々な浸水水位で計算し,浸水水位と浸水被害額の関係を表す関数を作成した.関数によれば,東京湾,大阪湾および瀬戸内海がT. P. 5mまで,茨城・九十九里と南海・東南海がT. P. 10mまで被害額の増加割合が大きい.
  • 越智 聖志, 木村 克俊, 宮武 誠, 上久保 勝美
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_876-I_881
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     2006年10月,北海道のオホーツク海に面した猿払村において,国道238号の海岸道路が高波により被災した.本研究では,2次元水理模型実験を行って被災時の状況を再現するとともに,応急復旧工の効果について検討した.現地においては,約12時間にわたって高波が法面を遡上し,路肩が侵食したことが明らかになった.応急復旧工は,土のうを2段積みとし,その前面に消波ブロックを設置することにより,設計波条件に対して,それ自体の耐波安定性と道路の安全通行を確保することが確認された.さらに,2007年1月に来襲した高波時に現地観測を行って,これらの防波性能および耐波性能を検証した.
  • 山本 吉道, 五百蔵 政文, 比嘉 了規
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_882-I_887
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     砂浜,または,極浅海域に在る海岸堤防や護岸の場合,強力な波力によって,本体が直接的に破壊される事例は少なく,繰り返される高波来襲によって,前面洗掘が進み,やがて堤体内の裏込め材が吸い出されて,破壊に至る事例が多数ある.それゆえ,前面洗掘量と吸出し量の予測法の確立は,海岸防災の観点から極めて重要である.本研究では,まず,前面洗掘量について,十分な予測精度を有することを,実測データとの比較から確認したCaら1)の数値モデルを用いて,簡単に予測できる算定図が提案される.つぎに,被災事例との比較などから,洗掘と吸出しの再現性を確認した水理模型実験データを用いて,裏込め材の中央粒径の影響を考慮した,吸出口における有効せん断抵抗力式が提案される.
  • 高木 泰士, Nguyen Danh Thao, Miguel Esteban, Tran Thu Tam, Hanne Louis ...
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_888-I_893
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     ベトナムは南北に長い海岸線を有し,沿岸域災害の危険性が高い国と考えられる.しかし,北部や中部と比較して,一般的に南部地域は台風や高潮災害の危険性が小さいと考えられてきた.本稿は,ベトナム南部沿岸域の災害,特に高潮脆弱性の検証を試みるものである.急成長を遂げる海岸都市において現地調査を行い,著しい海岸侵食により危険に瀕している集落や河川中洲の極めて低平な地帯に広がる集落を確認した.住民インタビューでは台風を危惧する声は皆無に近かった.一方で,過去60年間の台風経路分析より,北部や中部と比べて,台風の発生がおよそ1/2から1/3と無視できない頻度であることを示し,また50年前には1m程度の高潮が発生したことを数値解析に基づき明らかにした.これらの結果より,近年における最大クラスの台風が当該都市を襲った場合の危険性について指摘した.
  • 高畠 知行, 柴山 知也
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_894-I_899
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,東京港での高潮・津波の伝播特性を数値計算モデルにより予測したものである.高潮数値解析では,様々な経路を通過する台風を視野に入れて検討を行い,東京港に発生しうる最高水位とその台風経路を明らかにした.津波数値解析では,元禄地震津波,三浦半島断層群-鴨川低地帯地震津波,慶長地震津波の3つの津波を対象として解析を行った.その結果,慶長地震津波の場合に東京港で最も高い水位上昇が発生すること,東京湾全体では湾奥部よりも湾口部で高い水位が生じることが分かった.氾濫数値解析では,防護構造物の機能不全時を仮定して計算を行い,東京港沿岸部における津波氾濫の可能性を明らかにした.計算により江東デルタ地区や堤外地の多くで陸上氾濫が生じることが予測され,東京湾岸部における津波防災対策の再検討の必要性を示唆する結果を得た.
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