土木学会論文集E1(舗装工学)
Online ISSN : 2185-6559
ISSN-L : 2185-6559
71 巻, 3 号
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舗装工学論文集第20巻
  • 富山 和也, 川村 彰, Riccardo ROSSI, Massimiliano GASTALDI, Claudio MULATTI
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     従来,舗装路面の機能評価は,車両走行時の快適性および安全性に立脚したものが主であり,潜在的な精神疲労に及ぼす影響は不明であった.そこで,本研究では,ドライビングシミュレータを用いた走行試験を実施し,生体脈波計測に基づく心拍変動解析により,「受動疲労」と定義した,路面性状由来の精神疲労を考慮した平坦性評価について検討した.その結果,心拍変動の高周波成分(HF)および低周波・高周波成分比(LF/HF)に着目し,国際ラフネス指数(IRI)との関係をモデル化することで,車両走行時の時間変化に依存した,受動疲労に基づく平坦性評価が可能であることを示した.また,幹線道路における,受動疲労を考慮したIRIの許容水準について検討したところ,5.2mm/mが目安となることがわかった.
  • 富山 和也, 中村 博康, 増戸 洋幸, 城本 政一, 渡邉 一弘
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_9-I_16
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     近年,道路ストックの点検に対する需要の高まりを背景に,多種多様な路面プロファイラが開発されている.一方,効果的な路面点検には,異なるプロファイラから得られた結果を相互に関連付ける必要がある.このような背景から,NPO法人舗装診断研究会では,2014年に,国内で使用されている路面プロファイラの,実態把握と調和を目的とした共通試験を実施している.本研究では,本共通試験結果を用いて,国際ラフネス指数(IRI)測定値の汎用性,反復性,再現性および移植性の観点から,国内の実態に即した,プロファイラの有効性とその検証方法について示した.加えて,プロファイラ測定値を真のプロファイラと関連付けるため,相互相関関数に基づく路面プロファイラの一致度について検証し,IRI算出誤差との関係について明らかにした.
  • 江口 利幸, 田中 裕士, 川村 彰, 富山 和也
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_17-I_23
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     世界標準の平坦性指標である国際ラフネス指数(IRI)は,局部的な路面の変状に対して,過小評価されるという課題がある.本研究では,局部変状区間の縦断プロファイルを9オクターブバンドに分割し,分割したバンドごとの最大振幅を算出する手法により,局部変状評価に適したIRIの算出延長を明らかにした.また,道路利用者が不快と感じる路面の補修推奨値を,路面評価型ドライビングシュミレータを用いた被験者評価試験により検討した.その結果,局部変状路面の補修推奨値として,10m評価基準長のIRIを8mm/mとすることを提案した.また,高速道路によせられた道路利用者の意見と,その区間のIRIを照査したところ,提案した補修推奨値の妥当性が確認できた.
  • 亀山 修一, 金森 弘晃, 井上 昌幸, 浅田 拓海, 川端 伸一郎
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     国土交通省による総点検実施要領(案)【舗装編】では,舗装路面の点検方法として従来の路面性状測定車による方法に加え目視点検が導入されたが,目視点検を採用した事例や研究が乏しいため,ほとんどの自治体ではコストの高い従来の点検方法を採用している.本研究では,目視点検として,歩きながら点検する歩行点検と走行車両から点検する走行点検の2方法を考え,路面性状値が既知の舗装において両点検を実施し,その精度について検討した.歩行点検の正解率はひび割れとわだち掘れが約80%,縦断凹凸は約60%であり,点検経験を積むと正解率が向上した.走行点検ではひび割れとわだち掘れが約60%,縦断凹凸は約70%であり,経験を積むとひび割れでの損傷レベルが大きい箇所で正解率が上昇することが分かった.
  • 全邦釘 , 橋本 和明
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_31-I_38
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     ひび割れ率はアスファルト舗装の損傷を定量的に評価する指標の1つである.その算出にあたっては,路面のひび割れをスケッチした後に計算を行う必要があるが,手作業となるため膨大な労力が必要となっており,さらにはひび割れ開口幅などの重要な情報を得ていないという問題もある.そこで様々な自動化手法が考案されているが,どのような精度のよい手法であっても一定の誤検出や未検出,人間との判定の相違は避けられない.そこで本研究では自動検出手法により得られた結果を人力で微調整することの出来る半自動検出手法を構築した.この手法は画素単位でひび割れを判定できるため,ひび割れ開口幅や面積などの計算が容易であるという利点もある.そして本手法を舗装撮影画像に適用した実験により,ひび割れ検出における本手法の有用性を確認した.
  • 田中 俊輔, 安倍 隆二, 高橋 尚人, 武市 靖, 木村 孝司
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_39-I_46
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     本論文では,粗面系舗装におけるすべり止め材散布に着目し,すべり止め材散布が舗装の性能に与える影響と散布効果を明らかにすることにより,すべり止め材散布の適用区分や散布方法について検証した.舗装性能の観点からは,粗面系舗装が有する性能の主な要因である路面テクスチャと透水機能に着目し,すべり止め材散布による影響を室内試験で検証した.散布効果の観点からは,実道を想定した室内走行試験を行い,すべり摩擦係数や路面のすべり止め材残存量を確認し,粗面系舗装でのすべり止め材散布効果を検証した.その結果,すべり止め材散布が粗面系舗装の性能に与える影響を考慮した散布適用区分と,粗面系舗装の路面テクスチャがすべり止め材の飛散抑制やすべり抵抗の向上に寄与することにより散布効果が高まることを明らかにすることができた.
  • 藤本 明宏, 山田 慎也, 田中 俊輔, 高橋 尚人, 武市 靖
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_47-I_54
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,SMA舗装および排水性舗装に対する路面すべり推定法の適用性を向上させるために新たに室内試験を実施した.また,路面すべり推定法を用いた数値シミュレーションから密粒度舗装,SMA舗装および排水性舗装における凍結防止剤事後散布の有効性を調べた.
     結果,(1)密粒度舗装,SMA舗装および排水性舗装における散水量と平均氷膜厚の関係を定式化した,(2)SMA舗装および排水性舗装における鉛直損失塩率と平均氷膜厚の関係を定式化した,(3)気象,路面状態,舗装の種類および交通を考慮して事後散布後の路面すべり摩擦係数を推定可能にした,(4)舗装の種類,温度,散水量,散布量および時間交通量が事後散布後の路面すべり摩擦係数に及ぼす影響を明らかにした.
  • 安倍 隆二, 上野 千草, 大山 健太朗, 木村 孝司
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_55-I_63
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     積雪寒冷地では,CO2排出量の削減を目的とした中温化舗装技術の適用可能な時期が明確ではなく,品質管理手法についても確立されていない.そこで,寒冷期におけるCO2排出量の削減を目的して,中温化舗装技術を用い混合温度を低減した舗装の試験施工を行い,適用可能な条件を評価した.その結果,寒冷期に混合温度を低減した使用方法では,運搬時,敷均し時,転圧時の温度低下による締固め度の低下が見られ,このような使用方法は適さないことを明らかにした.さらに,寒冷期施工においては中温化舗装技術の低温下における施工性改善および品質低下防止効果の特長を生かし,温度低減を行わない使用方法で品質の向上が図られることを確認した.
  • 加納 孝志, 新田 弘之, 佐々木 厳, 川上 篤史
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_65-I_71
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     アスファルト舗装発生材の再生利用が開始されてから30年以上が経過している.現在供用中のアスファルト舗装の半数以上は過去に一度以上再生されたものであると考えられ,今後は,複数回繰り返し再生されたアスファルト舗装発生材が増加していくものと考えられる.
     そこで,一般的に使用されている再生用添加剤の中から飽和成分の多いものを選定し,試験室内で促進劣化と再生を繰り返し,アスファルト混合物およびアスファルトの性状がどのように変化していくのかを確認した.その結果,再生回数が増加すると再生混合物や再生アスファルトの物理的性状が低下する傾向が見られた.また,再生アスファルトの組成や酸化度,分子量分布において,酸化物などの蓄積と考えられる影響が見られた.これらの傾向は,再生骨材の配合率が多いほど顕著であった.
  • 加納 孝志, 秋葉 正一, 加納 陽輔, 湯川 誠二郎, 田湯 文将
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     組成の異なる再生用添加剤と針入度の大きな石油アスファルトを用いて,繰り返し再生したアスファルト混合物およびアスファルトの性状の変化を検討した.その結果,再生用添加剤などの組成の違いによって再生アスファルト混合物の工学的性状や再生アスファルトの物理的,化学的性状に変化の程度に差が見られ,飽和分が少なく芳香族分の多いものを用いた場合に再生アスファルト混合物や再生アスファルトの性状の変化が少ないことがわかった.
  • 小島 崇幸, 佐藤 尚
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_79-I_85
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     東日本高速道路(株)(以下「NEXCO東日本」)では,再生加熱アスファルト混合物(以下「再生混合物」)の適用性について検討を進めているが,現時点では本線舗装への適用について基準化はしていない.しかし,平成16年新潟県中越地震(以下「中越地震」)及び平成23年東北地方太平洋沖地震(以下「東日本大震災」)では,被災した路線の本復旧工事に限定して,舗装切削材を基層及びアスファルト安定処理路盤に再利用している.このうち中越地震から供用10年目を迎える再生舗装を検証するため,路面性状調査,FWD調査,コア採取による室内試験を行い,その結果,現時点で走行に支障となる損傷がないことを確認した.
  • 菅野 真弘, 大木 秀雄, 八谷 好高
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_87-I_91
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     空港舗装補修最適化システムAirPORTSをいくつかの空港のアスファルト舗装へ適用を試みた.その結果,明らかになった課題に対する解決策についての研究開発を行って,システムの高度化を図るべく新システムの構築を行っている.今回改良を加えた点は次の3点である.舗装性能の評価項目としてPRIに加えて,ひび割れ,わだち掘れ,平坦性といった表面性状のほか,アスファルト混合物層と路床の疲労度も取り込んだ.また,舗装の性能変化の定量化として直線モデルのほか種々の曲線モデルを設定可能とした.さらに,将来交通量・航空機の変化への対応として,検討対象期間の長期化とその間の航空機種と便数を任意に設定可能とした.
  • 高橋 茂樹, 小野 義道, 佐藤 正和
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_93-I_101
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     高速道路の供用年数が伸びるに従い,アスファルト舗装の経年劣化や下層の脆弱化により,路盤からの厚層打換補修を強いられる箇所が近年増加している.このような状況を憂い,供用後約20年を経た高速道路において,補修履歴のない健全部と数度の補修を繰返してきた損傷部を比較する形で,大規模な開削調査を実施した.本プロジェクトは,実道におけるアスファルト舗装の損傷実態の把握と原因の究明を行うものであり,調査の結果,高速道路における疲労ひび割れや永久変形の発生事例が確認され,アスファルト混合物の層間接着や路盤の滞水による脆弱化等,現地の舗装において長期耐久性の鍵を握っているポイントを明らかにした.
  • 亀山 修一, 斎藤 昌之, 長屋 弘司, 田中 俊輔, 川端 伸一郎
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_103-I_110
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     北海道型SMAの施工に当たっては,機能性の面ではテクスチャを確保すること,耐久性の面では締固め度を大きくすることが必要となるが,両者を満足する最適な転圧方法については検討されていない.本研究では,現場転圧を室内で模擬するために,ローラコンパクタによる転圧(鉄輪転圧)後に供試体上にゴム板を敷いて転圧(ゴム転圧)を行い,転圧に伴うテクスチャと耐久性の変化を測定した.その結果,締固め度については両転圧方法による違いは見られないが,テクスチャについてはゴム転圧の影響が大きいことが分かった.また,転圧が北海道型SMAの耐流動性,骨材飛散抵抗性,耐摩耗性に及ぼす影響を明らかにした.さらに,施工現場において転圧に伴う密度とテクスチャの変化を測定し,室内試験結果と比較した.
  • 辻本 陽子, 新田 弘之, 西崎 到
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_111-I_117
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     ポリマー改質アスファルトバインダは塑性変形抵抗性や摩耗抵抗性、はく離抵抗性等に優れており,重交通路を中心に普及している.近年では,CO2排出量削減や作業環境改善策として中温化ポリマー改質アスファルトバインダの開発も進んでおり,既に複数メーカーから市販されている.一般的に,アスファルトバインダの物理性状はDSR試験から得られるパラメータによって評価されてきたが,改質アスファルトバインダの非線形粘弾性状を適切に評価できないことが指摘されている.本研究では,国内で流通している複数の中温化ポリマー改質アスファルトバインダの性状を調査し,基本性状の相違を明らかにするとともに,物理性状評価に対して繰り返しクリープ試験(MSCR試験)の有効性を検証したので報告する.
  • 田中 俊輔, 安倍 隆二, 亀山 修一, 丸山 記美雄
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_119-I_126
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     北海道型SMAは,粗い路面テクスチャと耐久性を併せ持った混合物であり,品質を満足させるためには,材料,配合設計,施工などで十分な検討が必要である.特に施工段階における転圧は大きな影響を与える.しかしながら,転圧方法と路面テクスチャや密度・締固め度など品質との関係は不明確な点がある.本論文では,北海道型SMAの適切な施工方法に関する研究の一環として,施工段階の転圧方法に着目し,苫小牧寒地試験道路における試験舗設,および北海道開発局が管理する高規格幹線道路における試験施工で調査を行った.その結果,北海道型SMAにおける路面テクスチャと密度・締固め度には相反する関係があること,水平振動ローラを用いた転圧方法が耐久性向上の観点から有効なこと,舗設端部の一部で品質の低下が見られることを確認した.
  • 森石 一志, 富樫 健司, 中村 博康, 渡邉 一弘
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_127-I_133
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     著者らは,これまでに高密度レーザスキャナを搭載した改良型MMSで取得した三次元点群データを用いた路面変状の把握状況の再現性の確認や三次元点群データを基にした新たな路面評価手法を提案してきたが,舗装の構造的健全性と路面変状の関連性は明確にできていない.そのような中,土木研究所構内において路床面から新設された舗装区間があることから,当該工区を利用することとし,評価単位および測線間隔を短くして三次元点群データを構造的健全性の関係性の検証を試みた.その結果,評価区間を短くしてもこの手法による路面変状の把握状況の再現性は確認できたものの,構造的健全性と路面変状の関連性については明確にならず,今後初期圧密(初期わだち)の影響を考慮した検討が必要であると考えられる.
  • 佐藤 克己, 秋葉 正一, 加納 陽輔, 赤津 憲吾
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_135-I_143
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     本論文は,重交通路線で実施された地中レーダーによる空洞探査結果とFWD試験結果を分析・整理し,重交通路線に存在する空洞の簡易評価手法を提案するものである.このため,まず,調査された空洞の規模および位置が空洞直上のたわみに与える影響を把握した.つぎに,等方性円板による空洞の危険性に対する簡易評価手法用いて,舗装の健全性を考慮した空洞の評価を実施した.その結果,分類された空洞は危険性の大小をおおむね適切に評価されていることを確認し,重交通路線に存在する空洞でも非破壊で空洞の危険性を評価できることを示した.さらに,分類された空洞の深さおよび信号幅と舗装の健全性から,補修の優先順位の評価方法を提案した.
  • 川名 太, 中村 博康, 高橋 茂樹, 竹内 康, 松井 邦人
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_145-I_152
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     FWD試験で得られるたわみの逆解析法には,たわみのピーク値に注目した静的逆解析とたわみ波形を用いた動的逆解析があり,いくつかの逆解析プログラムが開発されている.従来の舗装の逆解析プログラムは,載荷板の接地圧分布として等分布荷重しか取り扱えない場合が多い.しかしながら,載荷板の接地圧分布は,測定対象に応じて異なるため,種々の接地圧分布に対して計算が可能になれば,ソフトウェアの汎用性が向上するものと考えられる.そこで,本研究では,既往の研究において開発されている動的逆解析ソフトウェアWave BALMの順解析部にインバースパラボリック分布およびパラボリック分布の非線形接地圧分布が考慮できる動的解析プログラムを組み込み,接地圧分布が逆解析の結果に与える影響について検討を行った.
  • 上浦 正樹, 川名 太, 松井 邦人
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_153-I_160
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
     小型FWDによる動的逆解析によって路盤・路床などの変形係数を求める場合,接地圧分布の種類を定める必要がある.しかし試作した接地圧測定装置には測定範囲に限りがあることから,本研究では市販されている感圧紙を用いて0.01 mm以下の間隔で接地圧分布を推定した.この結果を動的逆解析に反映させるため典型的な接地圧分布に対する共通する式を導き,これに基づき感圧紙で得られた接地圧分布を推定する方法を提案した.以上の成果を踏まえて動的逆解析プログラム(Wave BALM)の一部を改良し,現場試験より改良前の結果に対し有意差があることを確認した.
  • 渡邉 一弘, 久保 和幸
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_161-I_168
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     筆者らは,アスファルト舗装の疲労が供用に伴いどのように蓄積していくか把握することを目的に,舗装各層に土圧計等の計測機器を埋設した実大舗装供試体に対して繰返し載荷試験を実施している.既報にて,路面の雨水湛水の有無が舗装の疲労蓄積に大きく影響すること,地下水がなく路面が乾燥している条件下では路盤層以下には損傷が及ばない可能性があること等を明らかにしたところである.本報では,長期に渡る繰返し載荷試験及び地下水位の条件を変えた同試験の結果より,路面に雨水湛水がなく地下水位を与えない場合は長期に渡り構造的健全度を保持すること,及び上層路盤上面に至る高い地下水位下では,急激にアスファルト混合物層・路盤層の弾性係数が低下して構造的健全度が低下することを実証的に確認したことを報告する.
  • 風戸 崇之, 本松 資朗, 洲 尚樹, 西澤 辰男, 竹津 ひとみ
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_169-I_176
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     コンポジット舗装の更なる高耐久化を図る方策として路盤上面にアスファルト中間層を用い,その効果の力学的解析を試みた.建設中の高速道路において,実物大の試験施工を実施し,長期間に渡り舗装内部の温度およびひずみを計測したデータを分析し,舗装用3DFEMプログラムを用いたコンポジット舗装の温度応力および輪荷重応力を解析するモデルを構築した.それらを用いてコンポジット舗装の疲労度を計算した.その結果,アスファルト中間層を用いることで,疲労度を約10%低減する効果があることを明らかにした.
  • 伊藤 友一, 水上 純一, 大塚 之, 神谷 誠
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_177-I_184
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     東京国際空港においては,国際線航空需要の増大に対応するため,我が国初の大型土木PFI(Private Finance Initiative)事業として国際線エプロンを中心とする施設の整備を実施した.本事業におけるエプロン舗装は,構造物としての耐久性,補修の容易性等を検討し,無筋(NC)コンクリート舗装を採用し,耐久性を照査する疲労度設計手法を用いて設計を実施している.航空機の脚荷重により舗装版に発生する応力は,FEM解析を用いた手法により算定している.その妥当性を確認するためにラフテレーンンクレーンによる荷重載荷試験および走行する航空機によるひずみの計測を実施し,比較を行った.比較の結果,FEM解析を用いた手法により載荷試験の結果を概ね再現することができたが,航空機荷重による計測では,計測結果が解析結果より小さな値を示す箇所もあった.
  • 石川 達也, 木次谷 一平, 所 哲也
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_185-I_192
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     本研究では,積雪寒冷地で観測される地盤の凍上・融解現象を簡略モデル化した応力変形・熱伝導・飽和-不飽和浸透連成FEM解析プログラムを開発するとともに,当該プログラムを用いて凍上試験の数値実験を行い,試験結果との比較検討により,導入した支配方程式の妥当性や解析パラメーターの設定方法など提案する数値解析手法の適用性について検証した.また,実務設計レベルでの利用を想定し,凍結融解作用を受けるアスファルト舗装の数値シミュレーションを行い,凍上時および融解時の舗装構造の力学挙動を把握するとともに,道路舗装の理論的設計方法を用いて,路床の凍上・融解現象がアスファルト舗装の構造設計に及ぼす影響を評価した.その結果,凍上・融解現象がアスファルト舗装の疲労破壊に強い影響を及ぼすことを明らかにした.
  • 高橋 貴蔵, 桃谷 尚嗣, 伊藤 壱記, 渕上 翔太, 谷川 光
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_193-I_200
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     既存のバラストから置き換えた砕石に急硬性モルタルを注入することで形成するプレパックドコンクリートの圧縮,曲げおよび曲げ疲労強度を実験により確認し,圧縮強度との関係を示した.また,実物大軌道模型を用いた載荷試験により,プレパックドコンクリートを道床に用いた軌道の耐力および沈下抑制効果を確認するとともに,若材齢時において初列車を通過させることが可能であることを確認した.さらに,有限要素解析により算出したプレパックドコンクリートの応力と各種強度を用いた性能照査により,新幹線用のアスファルト路盤上におけるプレパックドコンクリート道床の適用について,安全性と使用性を評価した.
  • 中村 貴久, 桃谷 尚嗣, 伊藤 壱記, 村本 勝己
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_201-I_209
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     土路盤上のバラスト軌道において,道床・路盤が不健全な箇所は道床交換すると共に路盤改良を行うことで健全な状態を保持することができる.一方で,そのような箇所の路盤改良ではバラストが発生土として廃棄されることが多い.そこで,筆者らは発生バラストに低強度グラウトを充填する新しい路盤改良工法の開発を行っている.本工法は,道床交換の際に発生する道床バラストを活用することで環境負荷の軽減とともに作業時間の短縮を目指したものである.本研究では,要素試験により発生バラストを用いた改良体の強度特性を把握した.また,路盤剛性の低い粘性土路盤の実物大模型試験を行い,本路盤改良工法の沈下抑制効果を確認した.さらに,路盤剛性の低い鉄道営業線において試験施工を行い,本工法の路盤改良効果を検証した.
  • 新井田 良一, 新田 弘之, 西崎 到
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     セメントコンクリート再生路盤材からは六価クロムが溶出する可能性があるため,溶出の確認が行われるようになっている.これに伴い,六価クロム溶出低減技術も開発されるようになっているが,還元物質を用いる対策の場合,JISの分析法を用いることができず,評価が難しいのが現状である.本研究では,独自に開発した還元物質共存下でも容易に六価クロムを分析できる方法を用いて,自然由来の物質や入手が容易な物質の中から,還元効果が期待できる物質を選定し,六価クロムの溶出低減効果を検討した.その結果,比較的入手が容易な一部の果汁や還元糖の中に六価クロム溶出低減効果が高いものがあることを把握した.
  • 川尻 峻三, 川口 貴之, 高柳 剛, 中村 大, 山下 聡
    2015 年 71 巻 3 号 p. I_217-I_223
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
     鉄道における有道床軌道では路盤陥没が発生する場合がある.しかし,路盤材料に対する繰返し載荷前後での剛性変化や飽和度上昇時の沈下特性に関する実験データは少ない.そこで本研究では,実際の道路で使用されている路盤材料に対し,繰返しおよび浸水三軸試験,ベンダーエレメント試験およびX線CTスキャンを行い,浸水時の沈下特性および繰返し載荷に伴うせん断剛性率の変化とそのメカニズムについて検討した.その結果,繰返し載荷に伴い体積ひずみは増大するものの,浸水時の体積圧縮は確認できなかった.また,繰返し載荷に伴うせん断剛性率の増加は,間隙比変化のみでは説明できず,配位数の増加傾向と符合することが明らかとなった.
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