ラオス国のナムニアップ 1 水力発電所では,167mのコンクリート式重力ダムと27万kWの発電所を建設している.ダムの建設によって,大規模な貯水池ができる.そこには約500世帯 3,500人の住民が住んでいた.住民の多くは,少数民族のモン族で,山間部の電気,水道,電話もないところに住み,焼き畑,狩猟や森林からの産物の採取を収入源としていた.また,父系社会で一夫多妻制が続き,精霊崇拝に基づく独特の文化を継承してきた.住民との移転交渉は困難を極め,長い間なかなか進展しなかった.その反対理由は同国における過去の移転の失敗や,少数民族モン族の歴史的背景や,将来への不安であり,これらに対しどうやって住民が移転に了解するまでに至ったかを,調査・計画,補償のプロセスをたどりながら,明らかにした.
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