土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
66 巻, 1 号
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地震工学論文集第31巻
  • 長尾 毅, 山田 雅行, 野津 厚
    2010 年 66 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    設計入力地震動の合理的な評価を行うためには,深層地盤による増幅特性を適切に考慮する必要がある.強震観測が行なわれている地点ではスペクトルインバージョンによって増幅特性を評価することが可能であるが,強震観測の行なわれていない地点では別の何らかの方法で増幅特性を推定する必要がある.本研究では,強震観測が行なわれていない地点のうち,常時微動観測によって堆積層が薄いと判断される地点を対象に,増幅特性を簡易に評価する方法を検討した.提案する方法は低周波数側の振幅をエリア別に評価し,これに堆積層の地盤データに基づく伝達関数を考慮するものである.
  • 森本 吉輝, 西川 隼人, 池本 敏和, 宮島 昌克
    2010 年 66 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    著者らは地震波形の収集が困難な自治体観測点を対象に,最大地動加速度と計測震度の地盤増幅度からサイト特性を推定する手法を提案している.この手法はサイト特性の周期0.1~1秒における任意区間の平均増幅度は精度良く推定できたが,周期1~2秒では推定精度が良くなかった.本研究では周期1~2秒のサイト特性の推定精度を向上させるために,地震動の周期1~2秒成分の相対的な強さと相関がある最大加速度比をサイト特性推定の際に考慮した.推定にあたり,M7前後の地震観測記録から計算した最大加速度比とサイト特性の周期1~2秒の増幅度の相関を調べたところ,両者に良好な相関が見られた.地盤増幅度と最大加速度比をパラメータとする式によってサイト特性を求めたところ,周期1~2秒におけるサイト特性の観測値と推定値の相関係数が向上した.また,ほとんどの周期帯で相関係数が0.9を超えていた.
  • 西川 隼人, 宮島 昌克
    2010 年 66 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文ではパーセバルの定理と極値理論により導いた地震動スペクトルと地盤増幅度の関係式に基づき,地盤増幅度の地震規模依存性を調べた.最大地動加速度と最大地動速度を対象に得られた関係式と模擬地震波形から求めた地盤増幅度を比較したところ,良い対応が見られた.続いて,震源スペクトルのパラメータであるコーナー振動数fcや高域遮断振動数fmaxによる地盤増幅度の変化を調べるために,地盤増幅度をfcやfmaxによって表現した.この過程でfcの地盤増幅度への影響は最大地動速度が最大地動加速度に比べて大きいこと,fmaxによる影響は最大地動加速度では明瞭に見られるが,最大地動速度では小さいことが明らかになった.モーメントマグニチュードMWと地盤増幅度の関係を調べたところ,最大地動速度の地盤増幅度はMWによる影響が顕著であった.
  • 野口 竜也, 小野 祐輔, 清野 純史, 堀尾 卓司, 久保 正彰, 池田 達紀, Rusnardi Rahmat Putra
    2010 年 66 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,インドネシア・パダン市において60点の単点3成分観測および12地点の微動アレイ観測を実施し,地盤構造の推定を行った.パダン市では2009年スマトラ島沖の地震(Mw7.6)の際,特に沖積平野に位置する市街地で甚大な被害が発生している.本研究による微動探査の結果,微動アレイ観測記録の解析から,S波速度80~1900m/sの地下構造モデルを推定できた.工学的基盤までの表層地盤のS波速度は80~300m/sであった.H/Vのピークは明瞭な単峰型が多く,ピーク周期は海岸部で長くなる傾向があり,1.5~3.0秒であることがわかった.S波速度構造,H/Vの特徴から軟弱な沖積層がこの地域全域に広く分布していることがわかった.基盤深度については,工学基盤(Vs=500m/s層)までの深さが最深部で100mに達することがわかった.
  • 野津 厚
    2010 年 66 巻 1 号 p. 40-51
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    内陸地殻内地震の震源近傍で観測されるやや短周期パルスは構造物に対して大きな影響を与えるものと認識されている.1995年兵庫県南部地震に関する研究では,断層の破壊伝播方向で観測されたやや短周期パルスが特性化震源モデルで再現できることが明らかにされている.しかし,最近のいくつかの逆断層地震では,必ずしも破壊伝播方向とは言えない位置においてやや短周期パルスが観測されており,それらの再現に対しても特性化震源モデルが有効であるかについては十分に調べられていない.そこで,本研究では,2007年新潟県中越沖地震を対象とした強震動シミュレーションを行い,非破壊伝播方向におけるやや短周期パルスへの特性化震源モデルの適用性について検討を行った.
  • 冨澤 幸一, 西本 聡, 三浦 清一
    2010 年 66 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤中の杭の水平抵抗の増加を図るため杭周辺に複合地盤を形成する手法において, 同工法の耐震設計法の確立に向け, 複合地盤の基底土層の地盤条件が杭の耐震性能に及ぼす影響を解析的に検討した. 一連の2次元静的・動的非線形有限要素法解析の結果, 静的荷重に対すると同様に杭周辺の複合地盤の拘束効果により, レベル1およびレベル2地震動において杭頭変位量が25~30%程度低減され, 耐震性能が向上することが確認された. また, 杭に対する複合地盤の改良深さは工学的に杭特性長1/βが基本となるが, 地震時保有水平耐力法の適用性および地震時の効果的な杭変形の抑制を図るためには, 良質な地盤を基底条件(目安値:砂質土N値=15以上, 粘性土N値=8~10)とする必要性が確認された.
  • 野津 厚, 高橋 英紀, 遠藤 敏雄
    2010 年 66 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    シールドトンネルなど地下構造物の縦断方向の耐震検討では,構造物に沿った地震波のみかけの伝播速度の評価が重要である.既往の研究では表面波の位相速度を利用することで安全側の評価を行う方法などが提案されているが,地盤の軸ひずみに関して実状に即した評価を行うことを目的とする場合に,みかけの伝播速度としてどの程度の値を用いるべきであるかについては,これまで十分な検討が行われてこなかった.そこで,本研究では,M5.3~M8.0の13の地震に対するシールドトンネルにおける地震観測結果,および,セグメントリング間の相対変位の計測結果に基づき,地震波の見かけの伝播速度に関する検討を行い,見かけ入射角依存性など,見かけの伝播速度に関するいくつかの特徴を明らかにした.
  • 畑 明仁, 志波 由紀夫
    2010 年 66 巻 1 号 p. 73-83
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    筆者らは,地盤物性のばらつきが地盤の地震時応答のばらつきに与える影響について1次元モデルを用いた検討を行ってきた.1次元モデルは地震応答の特徴を捉える1次近似としては有効な情報を提供するが,一方で,1次元モデルは成層地盤を想定した簡略化モデルであるため,水平方向にも物性のばらつきを持つ実際の地盤の応答性状とは異なる傾向を示している可能性がある.そこで本検討では,水平方向にも地盤物性のばらつきを考慮した2次元モデルを用いた逐次非線形解析にモンテカルロシミュレーションを適用して,地盤物性のばらつきが地震応答解析結果のばらつきに与える影響を検討した.その結果,水平方向の地盤物性のばらつきを考慮した場合,その最大応答値のばらつきは地盤モデルの平均固有周期にほぼ支配されるため,地盤全体系としての周期特性に影響を与えない地盤物性のばらつきは最大応答値のばらつきに影響を与えないことが明らかとなった.
  • 濱田 政則, 樋口 俊一
    2010 年 66 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    我が国の大都市圏の湾岸部には造成年代の古い埋立地が広く存在し,それらの多くは護岸,地盤とも液状化対策が施工されておらず,将来,これらの地域を襲う大規模地震により,液状化と側方流動を生じる可能性が極めて高い.既存の埋立地,特に危険物施設や高圧ガス施設が建設されている埋立地の安全を図ることは,近傍の大都市圏市街地の安全性にとっても重要な課題である.本研究では,液状化地盤の側方流動を防止するための効果的,経済的な工法の開発を目的として,鋼矢板による地中壁,セメント系材料による地盤改良および抑止杭など各種の対策工法の変位抑制効果を遠心力載荷場での模型実験で比較検証した.さらに,実験結果をもとに対策工に作用する外力評価を行い,対策工の設計と施工のための基礎的な知見を得た.
  • 宇野 州彦, 塩尻 弘雄, 李 京奉
    2010 年 66 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    これまでのPMLにおいては,地震動のような不規則波を入力する例を示していなかった.理由として,PMLを用いた場合には,入力地震動として加速度のみを規定すればよいのでなく,速度時刻歴と変位時刻歴も必要となってくる.波形の積分においては,以前より誤差の問題が議論されており,様々な積分法が提案されている.そこで本検討では,提案されている数種類の積分法によって得られた速度および変位波形が,対象モデルにどのような影響を及ぼすのかを確認し,地震動を入力した場合においても有効であることを示し,PMLの有用性を向上させる.またさらに,PMLパラメータや入力方法,表面波の影響を検討し,PMLおよびConvolutional PMLの有効性を示した.
  • 羅 休, 川西 智浩
    2010 年 66 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    鉄道構造物を経済的に建設するために,免震基礎の採用が考えられる.しかしながら免震基礎は,構造物への地震時慣性力を低減することができるが,その反面,エネルギー吸収される構造物では,応答変位が大きくなり,列車走行安全性の確保が困難となる場合がある.そこで本研究では,経済性を損なうことなく大地震時における列車走行安全性を確保するために,従来の免震設計概念に捉われることなく,免震効果と列車走行安全性の両者を満足させる滑り系応答方向転換型免震基礎を提案した.また,静的と動的な模型実験,および幾何学的非線形性を考慮できる3次元数値解析を実施し,提案した新しい免震基礎の効果と走行安全性の改善を確認した.
  • 岩下 友也, 原 基樹, 吉永 寿幸, 山口 嘉一
    2010 年 66 巻 1 号 p. 115-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    近年,地震観測網が高密度に配備され,震源近傍の地震動が観測されるようになってきた.震源近傍の地震記録では短周期成分が卓越した地震動も観測されている.本論文では,短周期成分がダムの耐震性能に与える影響を検討した.重力式コンクリートダム及びロックフィルダムについて,ダム規模やダム形状を変化させた二次元FEMモデルを用いた動的解析を実施した.0.1sec以下程度の短周期成分の有無を変化させた模擬地震動や実測地震動を入力した解析結果を比較した.重力式コンクリートダムでは,堤体の1次固有周期が,短周期領域になるような堤高の低い40m以下程度のダムでは堤体の堤踵部や下流面付近の引張応力に若干の違いが生じるが,その大きさは総じて小さく,大規模な引張クラックなどは発生しない.堤高50m程度以上のダムの場合は,発生引張応力やクラックに対する地震動の短周期成分の影響は,ダム堤体の高標高部に限られる.ロックフィルダムの場合は,固有周期は重力式コンクリートダムのそれより大きく,入力地震動の短周期成分がフィルダムの応答やすべり変形量に大きく影響を与えることはない.
  • 野田 茂, 大藪 高弘, 香川 宗文, 横井 良典
    2010 年 66 巻 1 号 p. 135-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    継手構造管路における異形管の地震時挙動は100%明確でなく,伸縮可とう離脱防止メカニカル継手の有効性も十分に調べられていない.また,継手特性の相違が管体の曲げモーメント・応力・歪などの応答に及ぼす影響は十分に解明されていない.そこで,本研究では,修正伝達マトリックス法を用いた擬似静的地震応答解析法を用いることにより,継手特性を変えて地震波入射に伴う地盤の変位・歪,管体の曲げモーメント・応力,継手の伸縮・回転応答比率などを調べた.その結果,異形管部では曲げモーメント・回転が卓越しやすいことなど,直管に比べた異形管(曲管・T字管)の地震時挙動特性が明らかになるとともに,伸縮可とう離脱防止メカニカル継手(S-MD継手)の有効性が検証された.
  • 鈴木 俊光, 葛 漢彬, 小野 恵亮
    2010 年 66 巻 1 号 p. 148-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,本来完全溶け込み溶接が必要な部位に溶接未溶着部が残っている溶接構造物の繰り返し載荷実験結果を元に,シェル要素を用いたFEM解析により延性き裂の発生の検証を行った.本研究では未溶着高さ分を板厚から減ずる共に,溶接脚長を考慮した換算板厚を用いることで解析を実施した.その結果,比較的未溶着高さが小さい供試体で見られた未溶着以外からの延性き裂発生は比較的精度良く推定することができるが,未溶着部から延性き裂が進展したケースについてはシェル要素を用いた解析ではその推定が困難であることが示された.
  • Richelle ZAFRA, Kazuhiko KAWASHIMA, Tomohiro SASAKI, Koichi KAJIWARA, ...
    2010 年 66 巻 1 号 p. 162-171
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    This study presents an investigation on the response of polypropylene fiber reinforced cement composites to uniaxial compression, tension and cyclic loading. A series of experiments were conducted on specimens 350 mm high with cross-section of 105 mm by 70 mm tapering to 70 mm by 70 mm at the center. The effects of cyclic loading on the stress-strain envelope including unloading and reloading paths in both compression and tension were examined. It is found that unloading and reloading do not essentially change the shape of the stress-strain envelope. Reverse cyclic loading affects the tensile response of the material if the uniaxial compressive strength during loading was exceeded and not to affect the tensile response if the compressive strength was not exceeded.
  • 三神 厚, 小長井 一男
    2010 年 66 巻 1 号 p. 172-178
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,常時微動を用いた簡易な地盤調査と,それとの精度のバランスを考えた地盤モデル化手法を組み合わせる新しい方法を提案するものである.線状地下構造物の耐震解析では,2地点間の軸方向ひずみの評価が重要で,広域にわたって地盤の地震応答を評価する必要がある.ここでは,地表の単点で実施する常時微動測定によって,実際の多層地盤を卓越振動数の等しい基盤上の一様表層地盤に置き換える.この簡易な地盤モデルは,特に低い周波数帯で多層地盤の応答を良く表現し,一方,高次モードの近似は良くない.そこで,地盤深さ方向に1次の振動モードを仮定し,さらなる簡便化を図る.例として不整形な多層地盤の固有振動問題を考え,詳細な地盤物性を与えた3次元有限要素解析と本地盤モデルによる解析とを比較したところ,ほぼ同様な結果が得られた.
  • 木下 幸治, 上田 清弘
    2010 年 66 巻 1 号 p. 179-187
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    溶接継手部の低サイクル疲労強度評価法として公称ひずみ範囲に基づく評価手法の確立が進められているが,この評価手法を確立する上で板厚の影響を明らかにしておく必要がある.しかし,その影響に関する研究例は少なくその影響は必ずしも明確ではない.本研究は十字溶接継手止端部の低サイクル疲労強度に及ぼす板厚の影響を明らかにすることを目的として,板厚を変えた十字溶接継手試験体の曲げによる低サイクル疲労試験とその弾塑性FEM解析を実施した.その結果,板厚の増加による止端部の局部ひずみの増加に伴い疲労強度が低くなること,その低下は止端部の局部ひずみの増加より評価できることが確認された.
  • 大塚 久哲, 古川 愛子, 相部 岳暁
    2010 年 66 巻 1 号 p. 188-195
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    現行の耐震設計では,地震による“揺れ”については多くの研究がされおり,その対策について検討されている.しかし,断層運動による”ずれ”の影響が考慮されている研究はまだ少ない.そこで,本研究では地盤-地中構造物-断層系の詳細な3次元有限要素解析を行い断層変位による地中構造物への影響を評価する.更に地震の揺れに対する対策として利用されている免震層の断層変位に対する適用性についても検討する.
  • 五十嵐 晃, 長谷川 直哉
    2010 年 66 巻 1 号 p. 196-200
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    橋梁の地震時性能を確保するため水平力分散支承や免震支承を用いた橋梁形式がしばしば採用されているが,こうした構造では免震支承のエネルギー吸収性能を考慮しても,地震時に上部構造において大きな変位が生じることを前提とした設計が必要となる.しかしながら,大きな遊間を設けることでそうした相対変位を許容した場合,建設コストや維持管理,走行性等の問題要因となる.こうした橋梁における相対変位を抑制する方策として,免震支承等で支持された上部構造である橋桁に同調質量ダンパー(TMD)を適用する方法に関して検討を行った.強震時の効果の向上を図るため免震支承として用いられる積層ゴム支承の非線形性を考慮した同調条件を求め,弾性応答を仮定した同調パラメータとの相違を示すとともに,地震時の桁変位の低減効果はTMDと桁の質量比が10%程度までの範囲で大きな地震時桁変位低減効果が得られる場合があることを数値シミュレーションにより示した.
  • 五十嵐 晃, 西川 晃司
    2010 年 66 巻 1 号 p. 201-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,非線形復元力特性を持つ多自由度系の逐次の接線剛性行列を推定する手法として最小更新法に着目し,推定精度や推定更新公式の特性について検討を行った.応答塑性率,降伏耐力,入力波,緩和バイリニアモデルの設定など振動モデルの種々の条件設定に基づいて,得られた変位および復元力データを入力データと見なして各ケースにおける接線剛性行列の推定計算を行った.入力データにノイズが存在する場合の影響についても検討した.最小更新法は,非線形復元力特性を持つ多自由度系の接線剛性行列の低次の固有値の変化が良好な精度で推定できることを確認した.また,精度が最も高い更新式が振動モデルの条件により異なることを示した.
  • 有賀 義明, 平野 悠輔, 猪子 敬之介, 竹内 幹雄, 小黒 明, 浅賀 裕之, 村上 正明
    2010 年 66 巻 1 号 p. 208-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    地上に比べて地下では地震動の加速度振幅が小さい傾向があるため,一般に,地下は地上よりも耐震上有利であると思われている.しかし,地盤や構造物の地震時の相互影響によっては,地震動が増幅したり,構造物の地震時安全性に大きな影響が生じたりする可能性があると推察される.そこで,地下に地下街があり,地下街の両側に高層ビルが建っている場合を想定して三次元動的解析を行い,高層ビルの地震時挙動が地下街の耐震性にどのような影響を及ぼすかについて検討した.その結果,地下街の両側に建っている高層ビルは,互いに逆位相で挙動することがあり,その場合,地下街と高層ビルの接続部では大きな地震時応力が発生することを確認することができた.
  • 松村 政秀, 高田 佳彦, 北田 俊行
    2010 年 66 巻 1 号 p. 216-223
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    座屈に対する補強が必要な既設鋼製橋脚の補剛板の補強には,縦補剛材および補強フランジを追加・設置する縦補剛材補強工法が採用されている.この方法では,縦補剛材を溶接接合により,補強フランジを高力ボルト接合により追加・設置するのが通常であり,供用中の橋脚部材へ補強部材を溶接する場合の溶接部の健全性の確保や1つの断面の補強に溶接接合と高力ボルト接合という異なる工程を要するため,施工性と経済性の改善が期待されている.本研究では,板パネルの座屈強度を改善するため,L字形の補強部材を溶接接合に代わり高力ボルト接合により追加設置する方法に着目して,梁柱形式の鋼製柱を用いる繰返し載荷実験を実施し,この方法の有効性を実験的に検証している.その結果,補強部材をボルト接合する場合にも,溶接接合する場合と同等な補強効果が期待できることがわかった.
  • 古川 愛子, 小野 達也, 大塚 久哲
    2010 年 66 巻 1 号 p. 224-232
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,数キロヘルツの高振動数で構造物を起振することのできるアクチュエータを用いた振動実験によって,損傷の有無の検出と損傷位置の推定をする方法について検討を行った.損傷を検出する指標として,起振振動数におけるフーリエ振幅を用いた.理論,実験,数値計算を通した検討により,振動形状の山となる位置に損傷が存在する場合,フーリエ振幅が変化し易いことがわかった.様々な振動数で起振すれば,損傷がある場合はいずれかの振動数に対して損傷位置が振動形状の山となり,フーリエ振幅に有意な差が見られ,損傷の存在を検出できることがわかった.また,フーリエ振幅に有意な差が見られるいずれの振動数でも振幅の山となっている地点に損傷がある可能性が高いと考えられ,損傷位置の推定に利用できる可能性のあることがわかった.
  • 吉田 誠, 田代 聡一, 合田 和哉, 清宮 理
    2010 年 66 巻 1 号 p. 233-241
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    アンカーで耐震補強された岸壁の耐震性は数値解析などで確かめられてはいるが,実際の地震時挙動を確認した事例は少なく,アンカーによる耐震補強効果について十分には明らかにされていない.そこで,グラウンドアンカーによるケーソン式岸壁の耐震補強効果を明らかにすることを目的として,大型水中振動台による模型振動実験を実施した.その結果,ケーソン変位抑制時のアンカーおよび岸壁の動的挙動を明らかにするとともに,ケーソン式岸壁にアンカーを適用した場合の留意点を指摘した.さらに,本実験を対象として,ケーソンの滑動,転倒および支持力について安定計算を行った結果,耐震補強によるケーソン安定性向上への貢献度がケーソンの破壊モードに応じて異なることが明らかになった.
  • 森 伸一郎, 古川 将也
    2010 年 66 巻 1 号 p. 242-251
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,2009年12月17日から始まった伊豆半島沖群発地震を利用して,小規模アースダムとしてのため池堤体の地震観測を行い,微小震動レベルにおけるため池堤体の地震応答特性について明らかにすることである.対象ため池は谷池であり上下流の2つのため池が隣接し,2つの堤頂と基盤の3点で観測した.観測は19,20日の2日間行い,極微小から小地震による震度2の地震を含む微小振幅の30の地震動の記録を得た.その結果,振幅の大きく異なるフーリエスペクトルの地震動でも,基盤に対する堤頂のフーリエスペクトル比はおよそ一定の形状を示し,各堤体で固有の振動特性を示すことがわかった.また,地震時と微動のフーリエスペクトル比は類似しており,微動による調査法は有効性を確認できた.
  • 大原 美保, 田中 聡, 重川 希志依
    2010 年 66 巻 1 号 p. 252-259
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    現在,各地で大地震の危険性が懸念されており,これからの地震被害軽減のためには住宅の耐震化推進が急務である.本研究では,住宅の被害調査時に撮影された被害写真を活用し,「構造被害写真から学ぶ住まいの耐震教育ツール」の開発を行った.まずは,地震被害調査等から指摘されている住宅の被害要因と住宅再建上の問題点から学習すべき内容を整理し,構造被害写真に基づいて耐震性能の低下要因や耐震化対策を学ぶWeb教材を開発した.その後,被験者に教材にアクセスしてもらい画面閲覧直前・直後での意識変化を計測し,情報提供による耐震対策意欲の変化を定量的に把握するとともに,より効果の高い情報提供方法を検討した.
  • 今井 俊雄, 小池 武
    2010 年 66 巻 1 号 p. 260-269
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,既設工業用水パイプラインシステムの地震防災投資について性能設計の観点から事業利害関係者(Stakeholders)である利用者,事業運営者,設計者・施工者間で合意形成されるべき目標性能値の決定法ならびに最適な地震防災投資の在り方について論述したものである.利用者である企業はBCP(事業継続計画)の観点から地震時要求性能の実現を要請し,事業運営者である水道事業体は施設の平常時・地震時の安定供給の観点から地震防災・維持管理投資を計画するが,両者の目標性能値は必ずしも一致するものではない.本研究では,地震リスクマネジメント手法を用いて,利害関係者が合意できる目標性能値を満足する地震防災投資規模の決定法を提案する.
  • 辻原 治
    2010 年 66 巻 1 号 p. 270-277
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    緊急時の避難行動をシミュレートする研究が近年行われるようになった.実用化の過程において,シミュレーションと実際の避難行動の整合性を比較検討し,その適用性について検証することが重要である.一方で,実際に適用する場合,解析モデルの作成が非常に煩雑で膨大な労力を必要とする.このことが避難シミュレーションの普及の妨げになりかねない.本研究では,電子地図を利用した解析モデル自動作成システムを構築し,セルオートマトン(CA)による避難行動シミュレーションを例示する.
  • 鈴木 猛康
    2010 年 66 巻 1 号 p. 278-287
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    災害対応管理システムは,市町村の災害対応業務を,情報共有化の観点から支援する情報システムである.災害対応管理システムは,機能の簡素化とオープンソース化により,他地域への普及・展開を可能とする設計方針に基づいて,新潟県見附市を試験フィールドとして開発された.本論文では,災害対応管理システムの開発経緯とシステムの基本的な機能について,新潟県見附市の実災害対応の事例の紹介を含めて説明している.次に,災害対応管理システムの山梨県の2市町への展開について述べている.町丁目名と公設避難所名の設定ならびにGIS表示のためのこれらの緯度,経度データ登録を行うことにより,本システムを山梨県中央市ならびに市川三郷町の災害対応管理システムとして展開するプロセスを示している.さらに,より有効な市町村の災害対応支援を可能とするため,地域住民の情報共有ツールである地域防災SNSとのシステム連携,病院のトリアージを支援するトリアージ管理システムとのシステム連携について,災害対応管理システムのシステム連携機能の開発と,これら機能の有効性を検証する評価実験を報告している.
  • 中澤 博志, 菅野 高弘, 村上 弘行
    2010 年 66 巻 1 号 p. 288-301
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    多様な施設が設置されている空港では,地盤が液状化した場合,様々な施設が機能しなくなることが懸念される.特に,地震後において平坦かつ所定の支持力が要求される滑走路では,液状化による地盤変状に伴う不等沈下等の被害が予測されるが,被害が局所的であっても全面的に供用ができない可能性があると考えられる.滑走路における局所的な変状や不同沈下量を予測するためには,事前に地盤の状況を詳細に把握しておく必要があるが,敷地内において平面的に点の調査であるボーリング調査では限界がある.そこで,本論文では,滑走路地盤の液状化調査を目的に,既存ボーリング調査結果の補間手法として幾つかの物理探査を実際の滑走路地盤で実施し,その結果を用いた簡易検討を実施した.
  • 鳥居 宣之, 余川 千咲
    2010 年 66 巻 1 号 p. 302-309
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    現行の木造住宅の耐震診断のひとつである「限界耐力計算による方法」による耐震診断では,住宅に作用する地震力を求める際に表層地盤による加速度の増幅率Gsを必要とする.表層地盤による加速度の増幅率を算出する際,表層地盤の非線形性を考慮するためには,非線形地震応答解析等を行う必要がある.しかし,一般住宅を対象とした場合,物性値の設定や煩雑な計算を要するため,適用可能な地点が限られる.本研究では,その都度非線形解析を行うことなく,入力地震動特性,表層地盤特性,周期特性を考慮した表層地盤による加速度の増幅率Gsを簡便に得ることができる増幅率算定テーブルを作成した.
  • 中井 正人, 宮島 昌克
    2010 年 66 巻 1 号 p. 310-316
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    東南海・南海地震発生時には,地震に伴う揺れと津波の発生が想定される.わが国の大都市では,水道水源を河川に求めている例が多いが,地震に伴う津波の遡上により取水停止と取水停止に伴う浄水処理の停止を余儀なくされる可能性がある.このことから筆者らは前報で,浄水処理停止による浄水処理性能への影響を,溶存酸素やアンモニア態窒素を指標にして実験的に検証した.本稿では,前報に引き続き東南海・南海地震における浄水場のリスクを評価するために,主要な浄水処理プロセスであるろ過池,沈澱池を模型により再現し,振動台を用いて地震動が浄水処理機能に与える影響について実験的に把握した.
  • 豊田 安由美, 庄司 学
    2010 年 66 巻 1 号 p. 317-327
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,ライフライン機能の寸断による影響が顕在化する巨大都市型災害の代表例として首都直下地震災害を念頭に置き,首都圏における電力・都市ガス・通信システムの被災を想定して,広域応援の際の道路交通支障の影響を定量的に検討した.交通支障の指標として震度曝露距離,混雑度重み付距離及び混雑時平均所要時間を用い,東京都に隣接する8県から都内の応急復旧活動時における拠点への広域応援に関する効率性を定量的に評価した.
  • 三輪 滋, 古川 愛子, 清野 純史
    2010 年 66 巻 1 号 p. 328-341
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    接着剤で石材間を接着する耐震補強工法は広く採用されているが,接着剤には経年劣化の問題があることから,経年劣化による接着面の強度低下に関する検討を行い,施工後の補修の必要性に関する知見を得ることは重要な課題である.本研究では,経年劣化による接着剤の強度低下の程度を調べるため,まず,最も多く墓石に使用されている変性シリコン接着剤で接着した2枚の石材片の促進耐候性試験を実施し,材齢0,1,5,10,20,30年に相当する試験体を作成した.つぎに,一軸引張試験および繰り返しせん断試験を実施し,経年劣化によって強度がどのように変化するかを調べた.さらに,個別要素法に基づく数値解析によって,経年毎の墓石の地震時挙動を再現し,接着剤の耐震補強効果を検討した.
  • 古川 愛子, 清野 純史, 土岐 憲三
    2010 年 66 巻 1 号 p. 342-351
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    3次元個別要素法を用いた動的解析では,剛体要素の並進運動と回転運動の方程式をそれぞれ解く必要がある.並進運動の方程式は2階の微分方程式であり,安定性,精度,実装の容易さの点で好ましいとされるLeap-frog法が時間積分手法としてよく用いられている.一方,回転運動のEulerの運動方程式は1階の微分方程式であり,どのような時間積分手法を採用するのが良いかについては,あまり研究がなされていない.本研究では,Eulerの運動方程式をLeap-frog法に基づいて積分する手法を提案した.提案手法による計算結果を,Euler法と既往のLeap-frog法に基づく計算結果と比較することにより,安定性,計算時間,精度の点で提案手法が優れていることを示した.
  • 大矢 陽介, 竹信 正寛, 菅野 高弘, 小濱 英司
    2010 年 66 巻 1 号 p. 352-362
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    基礎地盤が置換砂となっている防波堤は,地震時に置換砂の液状化により大きく沈下すると予想されている.この沈下量が大きければ,地震後に続く津波や高潮から沿岸地域を防護することはできない.したがって,地震による液状化の発生を予測し,防波堤の沈下量を精度良く把握することが性能設計では重要となる.本論文では液状化が発生した基礎地盤の変形とそれに伴う防波堤の沈下量を把握するため,大型模型振動実験を実施した.その結果,防波堤は基礎地盤の過剰間隙水圧の上昇とともに大きく沈下し,基礎地盤はケーソン下より外側へ押し出されるように変形した.また,実験の再現性を確認するため二次元有効応力解析を実施し,実験結果と良く整合した基礎地盤や捨石マウンドの変形を得た.
  • 谷口 靖博, 宮島 昌克, 杉本 亮輔
    2010 年 66 巻 1 号 p. 363-370
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    水道基幹管路の耐震化率は約12%(平成19年度)であり,耐震化の必要性が叫ばれているが,耐震化を促進するにあたっては,水道料金値上げ等による耐震化費用の捻出が前提となり,地震時の断水被害と住民の耐震化費用の負担は社会的ジレンマであると言われており,水道事業者と住民とのリスク・コミュニケーションの醸成により耐震化水準を決定する必要がある.本研究では,リスク・コミュニケーションの1手法であるCAUSEモデルを適用することによって,耐震化費用の支払意思額を調査した.その結果,現在水道事業体が行っている耐震化事業のPR手法に比べ,CAUSEモデルを適用した方が支払意思が高くなることが判明した.
  • 宮島 昌克, 藤間 功司, 庄司 学, 鴫原 良典
    2010 年 66 巻 1 号 p. 371-376
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,津波によるライフライン被害について検討したものである。今世紀中ごろまでに東南海・南海地震が発生するのではないかと言われており,この地震により紀伊半島から四国沿岸に至る広範囲において津波が来襲することが危惧されている。まず,津波によるライフライン被害の特徴を過去の被害事例から明らかにする必要があるが,近年,日本国内で津波によりライフラインが被害を受けた事例はほとんど見当たらない。そこで,浸水被害という点では多くの共通点を有すると考えられる,日本国内における高波,高潮によるライフライン被害事例に着目して被害の特徴を明らかにした。さらに,2009年9月にサモア諸島南方沖を震源とする地震において津波被害を蒙った米領サモアのライフライン被害について現地調査結果を基に考察した。最後に,津波被害の特徴と対応策について考究した。
  • 丸山 喜久, 松崎 志津子, 山崎 文雄, 三浦 弘之, ESTRADA Miguel
    2010 年 66 巻 1 号 p. 377-385
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    筆者らは,地球規模課題対応国際科学技術協力事業「ペルーにおける地震・津波減災技術の向上に関する研究」の一環としてJSTからの援助を受け,2010年2月27日に発生したチリ地震の被害調査を実施した.調査は地震から約1ヶ月後の4月2~8日にかけて実施した.本論では被害調査の概要と調査結果および地理情報システム(GIS)を用いた分析を行い地震,津波被害の特徴について述べる.具体的には,被災地域における衛星画像と現地調査写真を比較し,地震による建物被害がどの程度把握できるか検討を行う.また,標高データ(DEM)を利用し,津波被害が生じている地域の地形的特徴を分析する.
  • 川島 一彦, 運上 茂樹, 星隈 順一, 幸左 賢二
    2010 年 66 巻 1 号 p. 386-396
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2010年2月27日3時34分(現地時間)、南米チリのコンセプションの北北東115kmのマウレ沖を震央とするモーメントマグニチュードMw8.8の大地震が発生した。この地震は、断層の長さが南北に450-500kmという巨大地震であったことから、橋梁の被害も首都サンティアゴからコンセプションの南部地域に至るまでの広い範囲で生じた。著者らは、(社)土木学会調査団土木構造物グループとして、31箇所の46橋の被災調査を行った。調査の結果、今回の地震による橋梁の被害の主な特徴としては、〓端横桁や橋軸直角方向への移動制限機構が省略された比較的新しいPC桁橋において上部構造の橋軸直角方向への移動に伴ってPC桁への損傷や落橋が生じたこと、〓ゴム支承が桁や下部構造と結合されていない斜角の小さい橋において、桁が鉛直軸周りに回転して落橋した橋があったこと、〓地盤の液状化等の地盤変状も要因となって生じたと思われる被害が見られたこと、等であることがわかった。
  • 熊木 芳宏, 宮島 昌克, 降矢 拓也
    2010 年 66 巻 1 号 p. 397-402
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    水道管路の耐震化には, 布設替え時の優先順位を定めることが重要である.この指標として平成20年厚生労働省令が定められたが,ダクタイル鋳鉄管K 形継手の耐震性の判断について,判断の指標である「よい地盤」の基準が明確にされていないため水道事業体が苦慮している状況にある.本論文では,平成7年兵庫県南部地震以後の主な地震被害事例について,地震被害と地盤条件との関係を微地形区分に着目して検討することにより,ダクタイル鋳鉄管K形継手が耐震適合性を有する地盤条件を明らかにした.
  • 橋本 隆雄, 吉田 雅穂
    2010 年 66 巻 1 号 p. 403-413
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震では,長岡ニュータウン中央地区において10~35mの高盛土の街区で戸建住宅が液状化により甚大な被害を被った.これらの被害に対して,筆者らは,これまでに建物調査,土質調査,地下水位観測を実施して液状化が発生した地盤要因の被害分析を行ってきた.その後,建物の沈下修復対策が行われたが,さらに,2007年新潟県中越沖地震が発生し,同じ箇所に沈下が生じた.そこで本論文では,これら2つの地震による宅地地盤被害の特徴および,変状がある箇所について建物内外のレベル測定機器等を用いた詳細な建物調査を行い,その建物沈下修復対策の効果を分析した.その結果,無処理に対して耐圧板工法及び鋼管圧入工法は,十分な沈下抑制効果があることが明らかとなった.
  • 大塚 悟, 藤澤 誠二, 落合 弘和, 磯部 公一, 高原 利幸
    2010 年 66 巻 1 号 p. 414-424
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は新潟県中越地震の家屋被害を地理情報システム(GIS)上に整備して,地形分類との相関関係について調査した結果を報告する.地震による家屋被害分析はこれまでは被災データの統計分析により行われることが多いが,本研究では全家屋データを用いて全壊,大規模半壊,半壊の発生率を算出し,家屋被害分析する点に特徴がある.また,GISを用いて地形分類ごとの家屋被害発生率や,震央からの距離の影響を分析することにより,地形分類による家屋被害特性の差異を示した.また,家屋被害の差異を表現する指標の適用性を,地震被害データを基に検討した.
  • 張 広鋒, 薄井 稔弘, 星隈 順一
    2010 年 66 巻 1 号 p. 425-433
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,橋梁構造物に対する津波作用力の軽減対策の構築を目的として,上部構造の側面にフェアリングを取り付けることによって津波作用力を軽減させる方法の考案およびその軽減効果の検討を行ったものである.検討では,計20種類の形状のフェアリングに対して水路実験を実施し,フェアリングによる津波作用力の軽減効果およびその軽減効果に及ぼすフェアリングの形状の影響を考察した.検討の結果,フェアリングによる津波作用力の軽減効果はその形状に大きく影響され,適切な形状を有するフェアリングを用いることにより,上部構造への津波作用力が軽減できることを確認した. 
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