土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
67 巻, 3 号
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和文論文
  • 西川 隼人, 森本 吉輝, 宮島 昌克
    2011 年 67 巻 3 号 p. 454-463
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     本論文では地震波形が得られていない自治体観測点を対象に,最大地動加速度と計測震度の地盤増幅度と微動H/Vスペクトルによって増幅スペクトルを推定する手法を提案した.まず,中部地方の地震観測点の記録を用いて,回帰分析により,最大地動加速度と計測震度の地盤増幅度,応答スペクトルの増幅スペクトルを求めた.続いて,地盤増幅度と増幅スペクトルの相関関係を調べたところ,周期1秒付近までは両者に良好な相関が見られた.周期1秒より長周期の増幅スペクトルの推定精度を向上させるために,微動H/Vスペクトルを周期をパラメータとする関数で近似させて,増幅スペクトルの推定に用いた.地盤増幅度と微動H/Vスペクトルの近似関数をパラメータとする式によって増幅スペクトルを推定したところ,周期1秒以上での推定精度が向上した.
  • 井口 進, 内田 大介, 平山 繁幸, 川畑 篤敬
    2011 年 67 巻 3 号 p. 464-476
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     近年,鋼床版のデッキプレート(以下,デッキ)とUリブの溶接ルート部を起点にデッキに進展する疲労き裂が報告されている.本研究では,このような疲労き裂を対象に,デッキとUリブ溶接部における疲労寿命を,Uリブ溶接部の近傍に設定した参照ひずみによって評価することを試みた.まず,ルート部の応力に対する参照ひずみの位置に関する検討を行った.次に,実物大模型による移動輪荷重試験結果と実橋での応力測定結果を整理するとともに,FEM解析を実施して参照ひずみとルート部の応力との関係を調べた.また,これらの結果に基づき,デッキとUリブ溶接部における疲労寿命評価を行った.さらに,デッキの板厚がデッキとUリブ溶接部の疲労耐久性に与える効果を定量的に示した.
  • 片出 亮, 渋谷 一, 香月 智, 嶋 丈示
    2011 年 67 巻 3 号 p. 477-492
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,鋼製透過型砂防堰堤の巨礫捕捉性能を確率的に評価する手法について提案したものである.まず,捕捉性能を土石流中の巨礫が連続して到達する場合に,連続する数個によって閉塞を完成できる確率を幾何分布モデルによって評価するものと定義した.その際,巨礫によって堰堤格子が閉塞される格子形状と粒径の組み合わせの幾何的条件を定義して,対数正規分布に従う礫によって閉塞必要条件が達成される確率をモンテカルロ法により計算した.続いて,閉塞成功確率を考慮した格子閉塞確率を提案した.そのうえで,礫捕捉実験を行い,閉塞確率のパラメータ同定を行った.最後に,これらを組み合わせた閉塞確率近似式によって透過型砂防堰堤の捕捉面形状の異なる堰堤の捕捉性能や,部材欠損に伴う捕捉機能の低下について検討例を示した.
  • 森 猛, 白井 聡也, 佐々木 一哉, 中村 充
    2011 年 67 巻 3 号 p. 493-502
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     主桁・横桁交差部の主桁ウェブに生じた疲労き裂に対して,添え板ボルト締めストップホール法により補修した場合の疲労強度を明らかにする目的で,交差部を模擬した部分を含む桁試験体の疲労試験を行っている.また,この補修部の疲労破壊起点を明らかにする目的で,桁試験体補修部を模擬した小型平板試験体の疲労試験も行っている.さらに,添え板ボルト締めストップホール法の補修効果とストップホール法あるいはボルト締めストップホール法の効果を疲労試験を行うことにより比較している. そして,添え板ボルト締めストップホール法による補修部の疲労強度は,ボルト締めストップホール法よりも高く,高力ボルト摩擦接合継手と同程度であるという結果を示している.
  • 原田 光男, 鬼束 俊一, 山谷 敦, 松尾 豊史
    2011 年 67 巻 3 号 p. 517-529
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,地震の作用を受けるLNG地下タンク躯体の耐荷機構を明らかにするため,実機タンク躯体を模擬した縮尺模型を用いて正負交番多方向水平載荷実験を行った.その結果,変位方向と平行となるウェブにおいてひび割れたコンクリートが圧縮ストラットを形成し,卓越断面力である面内せん断力に抵抗すること,最終的にはウェブ中腹部にひずみの局所化領域を形成し,応力の伝達が阻害され軟化に至ることが分かった.また,これらの現象を,材料の非線形性を考慮した3次元FEM解析によって精度良く再現できることを確認するとともに,コンクリートの主圧縮ひずみを1つの指標として変形性能を評価できることを示した.
  • 増井 大輔, 翠川 三郎
    2011 年 67 巻 3 号 p. 531-538
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究は工学的基盤以深の地盤増幅特性の簡便な評価手法を提案することを目的として,関東平野で観測された地震記録を用いて,工学的基盤以深の地盤増幅率と基盤深度および周期との関係,地震毎の増幅率の変化とみかけ入射角度との関係を整理し,その簡便な評価式の定式化を行った.まず,鉛直に入射される場合の地盤増幅率について,基盤深度,周期をパラメータとした回帰式を求め,これにみかけ入射角度,基盤深度,周期をパラメータとした地震毎の地盤増幅率の変化についての回帰式を掛け合わせることで評価した.この評価式による工学的基盤以深の地盤増幅率は,既往の研究結果と調和的であり,また他地域である大阪平野での観測記録を良く説明することから,その適用性を確認した.
  • 松岡 弘大, 貝戸 清之, 渡辺 勉, 曽我部 正道
    2011 年 67 巻 3 号 p. 545-564
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     列車の急速な高速化に伴い,RC鉄道高架橋,およびその構成部材においても,共振の発生とこれに伴う構造物音への対応が必要となってきている.本研究では,構造物音の評価や予測に不可欠なRC鉄道高架橋の部材振動特性を明らかにするために,実際のRC桁式高架橋とRCラーメン高架橋のスラブ部材を対象とした列車走行試験を行い,振動特性を同定した.これにより,RC桁式高架橋では130Hz付近で中間スラブ,RCラーメン高架橋では50Hzを超える周波数帯域で同じく中間スラブの局所的な部材振動モードが存在することを確認した.さらに,これらの部材振動モードは車軸間隔との高次共振により列車走行時に卓越成分を形成することを実証的に明らかにした.
  • 原田 光男, 茂木 寛之, 権守 英樹, 山谷 敦
    2011 年 67 巻 3 号 p. 565-582
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,より合理的な耐震性能照査を実現するため,地盤-LNG地下タンク躯体連成動的非線形解析手法の適用を検討するものである.
     研究では,まず,LNG地下タンクの地震観測記録のシミュレーション解析を行って,地盤と構造物のモデル化や動的応答解析手法の適用性を評価し,次いで,この解析手法を用いて実機LNG地下タンク躯体のレベル2地震動に対する耐震性能照査を実施した.その結果,レベル2地震時の損傷はひび割れが生じる程度に止まり,現行の耐震性能照査法で照査されたLNG地下タンク躯体はレベル2地震動に対して十分安全であることが確認できた.しかし,一方では合理化の余地が残されていることも明らかになった.
  • 白旗 弘実, 水口 陽介, 三木 千壽
    2011 年 67 巻 3 号 p. 597-615
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     鋼製橋脚隅角部の疲労損傷が報告されている.既往の疲労試験結果から,疲労損傷は隅角部の三溶接線交差部に生じる溶接の三角柱状の溶け残り(未溶着部)から発生していることが示されている.国土交通省などが行った既設構造物の疲労損傷調査によると,矩形断面の鋼製橋脚には主に3種類の板組パターンがあることがわかっている.溶接品質管理に関する既往の研究ではあまり扱われなかった2つの板組パターンを本研究の対象としている.人為的に未溶着部の残された試験体を作製し,超音波探傷試験を行った.三溶接線交差部は超音波探触子のアクセスが困難で,すべての方向からの探傷ができないことも多いが,板組の情報を活用し,未溶着部の各面の位置を推定するための探傷方法を提案した.未溶着部からと思われるエコーを受信し,欠陥像を再構成した.
  • 武田 篤史, 田中 浩一
    2011 年 67 巻 3 号 p. 628-643
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     制震構造は,性能とコストを両立する上で非常に優れているが,その設計法は未だ確立されているとは言い難い.そこで,本研究は制震構造の設計法に資することを目的とした振動台実験を行なった.振動台実験は,非線形領域を含むRC構造物と摩擦型ダンパーが共同して抵抗する状況を再現するものであり,ダンパー有無の2ケースとした.実験の結果,摩擦型ダンパーの有効性や地震動レベルに応じた摩擦型ダンパーの働きが明らかになった.さらに,動的解析により,ダンパーのモデル化について考察を行った.
和文報告
  • 齊藤 泰, 米山 治男, 川上 泰司, 日下部 治, 清宮 理, 今井 隆
    2011 年 67 巻 3 号 p. 503-516
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/20
    ジャーナル フリー
     東京ゲートブリッジでは大規模地震に対応するため超大型の機能分離型すべり免震支承を採用した.機能分離型すべり免震支承は鉛直反力を支える鉛直支承と水平反力に抵抗するゴムバッファーの2つの支承部材からなり,鉛直支承のすべり面での摩擦抵抗によりエネルギー減衰を図るものである.ここで,すべり面の摩擦係数が設計上の重要な要素となる.本論文では,すべり面の摩擦係数の面圧依存性,速度依存性等の力学特性をせん断載荷試験により調べた.また,動的応答計算によりこの要因が本橋の地震応答に及ぼす影響を調べるとともに,採用した機能分離型すべり免震支承が設計地震動に対して許容値以内であることを確認した.
  • 山本 泰幹, 長井 正嗣
    2011 年 67 巻 3 号 p. 616-627
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/20
    ジャーナル フリー
     近年,鋼少数鈑桁橋の建設数が増加しているが,そこではPC床版や合成床版が多く採用されている.これらの床版に比べて軽量で,かつRC床版と同等以上の耐久性が期待できる床版として,鋼とコンクリートの複合形式の床版(以下,縦リブ複合床版と呼ぶ)を開発した.本論文では,新たに開発した縦リブ複合床版の連続合成桁への適用を目的に,試験桁に正・負曲げを作用させた載荷実験を行った.具体的には,今後の世界のスタンダードである限界状態設計法の構築に対応し,連続合成桁の中間支点部を対象とした負曲げ作用時の床版コンクリートのひび割れ性状に着目した載荷実験,および支間部を対象とした正曲げ作用時の終局時の挙動と正曲げ強度に着目した載荷実験を行った結果について述べる.
和文ノート
  • 米田 昌弘
    2011 年 67 巻 3 号 p. 539-544
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     歩行外力は個人差が大きいと予想され,たとえば体格の異なる男女では歩行外力も含めた歩行特性は大きく異なる可能性がある.歩行外力を厳密に測定するには特別な実験装置が必要となることから,多くの歩行者を対象として数多くの歩行特性データを収集するためには,より簡単で簡便な算定法の開発が望まれる.そこで,本研究では,歩行にともなう人体の加速度応答をFFTでスペクトル解析した結果(パワースペクトル)を用いて,歩行外力(鉛直と水平の衝撃力比)を算定する方法について検討した.その結果,本手法で算出した歩行外力には男女で体格差や個人差が認められたが,算定値は既往の測定値と非常に良く一致した.
英文論文
  • Weiwei LIN, Teruhiko YODA
    2011 年 67 巻 3 号 p. 583-596
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/18
    ジャーナル フリー
     In continuous composite steel-concrete structures, cracking of the concrete slab in the hogging moment region decreases the global stiffness of composite steel-concrete structures and reduces the effect of continuity, thus making the structural behaviour highly nonlinear even for low stress levels, so special consideration is necessary. An experimental investigation on the behaviour of steel-concrete composite beams in hogging moment region is presented in this paper. A total of four specimens were tested under point load in the mid-span. Two of the composite beams with headed studs as the shear connectors, while the other two specimens are using Perfo-Bond Strips (PBLs) as the connection devices between the steel girder and the concrete slab. Ultimate load bearing capacity of composite sections in negative moment region was calculated and compared with experimental values. Crack formation, crack widths development process and strain distribution of the composite section before and after cracking were observed and presented in this study. Interface slip distribution was also given. Research results indicate that the current specifications such as AASHTO, JSCE, and EUROCODE-4 can provide appropriate values for ultimate strength of a composite girder under negative bending moment.
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