土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
69 巻, 3 号
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和文論文
  • 宮地 一裕, 中村 俊一, 鈴村 恵太
    2013 年 69 巻 3 号 p. 429-438
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/20
    ジャーナル フリー
     橋梁用高強度ケーブルに従来より用いられている亜鉛めっき鋼線の防食性能を向上するために,新たにアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼線を開発した.アルミニウムと亜鉛でめっきされた直径5mmの鋼線を製造し,腐食促進試験を実施した.鋼線は,相対湿度60%,相対湿度100%および湿潤状態の異なる3つの腐食環境下を150日間,40℃で恒温恒湿装置内に保持した.相対湿度60%および100%の腐食環境下での腐食による質量減量は,湿潤環境下よりも遥かに小さく,両者のめっき鋼線ともほぼ健全であった.湿潤環境下での腐食量は大きかったが,亜鉛めっき鋼線に比べてアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼線の質量減量は遥かに小さく,防食性に優れていた.これは,アルミニウム・亜鉛合金めっき層は緻密で鉄層と剥離しにくいためであった.
  • 宇佐美 勉, 今瀬 史晃, 舟山 淳起, 野中 哲也
    2013 年 69 巻 3 号 p. 439-451
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/20
    ジャーナル フリー
     同一断面の鋼製(SM400)またはアルミニウム合金製(A6061S-T6)座屈拘束ブレース(BRB)を斜材に設置した剛結鋼トラス構造に,一定鉛直力(死荷重想定)と繰り返し水平力(地震力想定)を破壊に至るまで載荷した実験を実施し,トラスの損傷過程および変形性能の比較を行った.その結果,鋼BRBは軸方向剛性およびひずみ硬化による強度上昇がアルミニウム合金BRBに比べ大きいため,鋼BRBトラスは損傷が主構造まで拡がることが分かった.このことは,橋梁の耐震性向上を目的に横構・対傾構にBRBを使用する場合,BRBの軸方向剛性・強度を過度に高めることは,周辺部の部材・部位に損傷を広げるため,注意が必要であることを示唆している.
  • 彭 雪, 山口 隆司, 高井 俊和, 村越 潤, 澤田 守
    2013 年 69 巻 3 号 p. 452-466
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/20
    ジャーナル フリー
     近年,部材の合理化を図った鋼橋の普及により,高力ボルト摩擦接合継手は大型化し,ボルトが多列化する傾向にある.このような大型継手において,ボルト列数や板厚がすべり係数に与える影響については,不明な点も残っている.本研究では,ボルト列数,母板の断面形状,すべり/降伏耐力比,連結板/母板降伏耐力比などがすべり挙動に与える影響やすべり係数低下のメカニズムの解明を目的とし,FEM解析を行った.その結果,多列となる場合に各ボルト列の分担摩擦力が不均一となり,すべり係数が低下すること,断面形状における板幅の影響が大きいことを明らかにした.
  • 南 邦明, 吉原 伸行, 徳富 恭彦, 鈴木 茂弘
    2013 年 69 巻 3 号 p. 467-480
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,りん酸塩処理した溶融亜鉛めっき接合面の高力ボルト摩擦接合継手における適切なボルト軸力導入方法およびすべり耐力を明確にすることを目的とした研究である.本研究では,ボルト径およびボルト長をパラメータとした試験体を作成し,ナット回転法を用い,その回転角を変化させてボルト締付けを行った.そして,ボルト導入軸力を調べ,さらに,リラクセーションも考慮して適切なボルト軸力が導入されるナット回転角を提案した.提案したナット回転角を用いてすべり試験体を作成し,すべり耐力試験を実施した.これらの結果から,提案したナット回転角の妥当性を検証した.
  • 舘石 和雄, 吉田 守孝
    2013 年 69 巻 3 号 p. 481-490
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/18
    ジャーナル フリー
     溶接継手の疲労寿命のばらつきを,破壊力学に基づいたき裂進展解析とモンテカルロシミュレーションによって推定することを試みた.き裂進展解析に用いられるパラメータのばらつきを考慮するのみでは,実験値のばらつきを十分に再現できないことが明らかとなった.そこで,き裂進展解析そのものが有する不確定性を,少数の疲労試験結果を基に推定した.これを考慮することにより,実験結果のばらつきをよく再現することができた.さらに,少数の疲労試験体から継手等級を決定するための計算例を示した.
  • 大倉 一郎, 寺川 勝大
    2013 年 69 巻 3 号 p. 491-504
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     面内せん断を受けるアルミニウム長方形板の耐荷力を有限要素法による弾塑性有限変位解析によって明らかにする.考慮するアルミニウム合金は,熱処理アルミニウム合金A6061-T6,A6005C-T5と非熱処理アルミニウム合金A5083-Oである.解析においては,接合による残留応力と初期たわみ,さらに,6000系の熱処理アルミニウム合金においては接合部の強度低下を考慮する.接合を有する6000系アルミニウム合金の長方形板のせん断耐荷力の上限は,接合部の0.2%せん断耐力であることを示す.解析結果に基づいて,面内せん断を受ける長方形板の耐荷力曲線を与える.
  • 土居 賢彦, 静間 俊郎, 中村 孝明
    2013 年 69 巻 3 号 p. 505-515
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     水力発電所は,火力発電所の起動電源としての役割を担うため,水力発電所の機能維持は非常時の電力供給の面から重要である.また,発災時において調整池下流側設備が健全であれば,上流側からの取水が停止しても調整池の貯水により,一定時間の発電が可能である.つまり,調整池は緩衝材(Buffer)としての役割を有し,火力発電所の起動電源としての役割を担うことができる.本研究は地震時の発電機能の信頼度や復旧期間を評価し,これを基に耐震化の優先順位を合理的に定める方法の整備を目的とする.本論は送水能力の余力や調整池のBuffer効果,ならびに構成設備の損傷相関を考慮した水力発電水路施設の地震時信頼度,復旧曲線の評価手法を整備する.また,水力発電所の水路施設の事例に適用し,調整池のBuffer効果や損傷相関の影響について考察する.
  • 杉崎 光一, 阿部 雅人, 鈴木 修
    2013 年 69 巻 3 号 p. 516-526
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     構造物の変位応答は性能を知る上でよく利用されているが,計測には固定点が必要なため,道路や河川上では利用が困難である.著者らは,不規則振動理論を用いて,慣性計測である加速度応答から,微積分によらずに代数的に,変位応答の統計値を導出する方法を提案している.その方法では,高振動数成分を多く含まない地震応答や,風荷重や常時微動といったランダム応答が対象である.それに対して,列車荷重等の連行する荷重を対象とした場合は,静的な載荷によるものと,走行することによって生じる動的な振動が混在するため,構造物固有の振動特性だけでなく,周期的な外力の特性を考慮する必要がある.本研究では,列車荷重の特性を考慮し,加速度応答から最大変位を推定する方法の基礎理論を提案し,シミュレーションや実測結果から有効性を示した.
  • 松岡 弘大, 貝戸 清之, 徳永 宗正, 渡辺 勉, 曽我部 正道
    2013 年 69 巻 3 号 p. 527-542
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究ではシミュレーションモデルに実測データを取り込み,モデルパラメータを自動的に修正する逐次データ同化を利用することで,列車走行時の橋梁で計測された加速度応答から変位応答を推計する方法論を提案する.具体的には動的な有限要素解析を逐次データ同化手法の1つである融合粒子フィルタの枠組みに組み込むことで,加速度応答を取り込みながらシミュレーションモデルとその出力結果を逐次修正する方法論を構築した.また,RC単純桁橋とRCラーメン高架橋を対象とした数値計算,および実橋での加速度応答計測への適用を通じて提案手法の有効性を検証した.その結果,モード減衰比の推計精度に課題が残るものの,列車走行時の変位応答はいずれの橋梁でも精度よく推計できることを確認した.
  • 篠崎 裕生, 浅井 洋, 牧 剛史, 睦好 宏史
    2013 年 69 巻 3 号 p. 543-556
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     モルタル円柱やモルタルを充填した鋼管を,鋼板孔に配置して鋼板とコンクリートのずれ止めとして機能させることを考案した.本研究では,円柱部材の直接せん断試験および押抜き試験を実施して,これらずれ止めのせん断耐力やずれ性状を確認した.モルタル円柱のせん断耐力は,モルタル圧縮強度の一次関数で表すことができること,モルタル充填鋼管のせん断耐力は,モルタルと鋼管各々のせん断耐力の和で表すことができることを確認し,せん断耐力評価式を提案した.また,モルタル充填鋼管のずれ定数や残留ずれ変位は,孔あき鋼板ジベルと同等であることを明らかにした.
  • 金 哲佑, 北内 壮太郎, 杉浦 邦征, 川谷 充郎, 甲斐 正義
    2013 年 69 巻 3 号 p. 557-571
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,既存のゲルバー鋼トラス橋の一部材を破断させ,大型車両の繰り返し走行から得られる橋梁振動応答により実橋の時系列線形システムモデルのシステムパラメータを同定することで,橋梁ヘルスモニタリングを行う可能性について検討した.橋梁損傷検知のための指標として橋梁の固有振動数および減衰定数に加え,本研究では自己回帰モデルのモデル係数(AR係数)で構成される損傷検知指標(DamageIndicator: DI)も採用し,損傷前後の変化を調べた.DIは推定の際のばらつきが小さく,損傷導入位置付近で損傷前後の変化が相対的に大きくなる傾向が見られた.また,統計的分析の一手法であるMahalanobis-Taguchi System (MTS)をDIに適用した結果,橋梁の損傷検知の実現可能性を確認した.
  • 中尾 尚史, 糸永 航, 野阪 克義, 伊津野 和行, 小林 紘士
    2013 年 69 巻 3 号 p. 572-585
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では橋梁に作用する津波外力の発生メカニズムを解明し,津波外力の低減方法を検討することを目的として,4主桁断面模型を用いて橋桁に作用する圧力を実験により計測した.津波作用直後に上流側の床版張出し部に津波が作用することで,上向きの津波外力と,上流側が持ち上がる向きの流力モーメントが作用し,その後,模型上面に流れ込む流れにより,下向きの津波外力が作用することが分かった.次に,床版張出し部に津波が作用しないように鉛直および三角形の流れ制御板を取り付けたときの津波外力を調べた.鉛直に流れ制御板を取り付けた場合は上向きの津波外力を,三角形の流れ制御板を取り付けた場合は水平方向の津波外力を低減させる効果があることがわかった.
和文報告
  • 村越 潤, 木ノ本 剛, 春日井 俊博, 児玉 孝喜, 辻井 豪
    2013 年 69 巻 3 号 p. 416-428
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/20
    ジャーナル フリー
     既設鋼床版の疲労き裂への対策として,鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装による補強工法が提案されている.この補強工法は,既設の舗装を剛性の高いSFRCに置き換え,デッキプレートとSFRC舗装を接着材により一体化させることで,鋼床版の局部応力の大幅な低減を図るものである.著者らは,同工法の実橋への適用にあたって,耐久性に係る信頼性を確保するために,小型試験体を用いた接着材接合面の強度試験,SFRC舗装を敷設した実大鋼床版試験体を用いた輪荷重走行試験を行い強度,耐久性を評価するとともに,試験結果や既往の施工事例等を踏まえ設計・施工法をとりまとめた.本文ではこれら一連の検討結果のうち,補強工法の概要を説明するとともに,接合面の耐久性の評価に関わる試験内容及び試験結果について報告する.
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