土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
69 巻, 4 号
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地震工学論文集第32巻(論文)
  • 野村 尚樹, 宮島 昌克, 藤原 朱里, 山岸 宣智
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_528-I_538
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     近年,我が国では多くの地震が発生し多くの犠牲者が発生した.地域住民の地震あるいは津波に対するリスク認知が不十分なために被害が拡大したと言われ,多くの地域ではそれらを教訓に自主防災活動に取り組み始めた.しかし,地域におけるリスク認知度に大きな個人差があり,活動の弊害になっていることも事実である.本研究では,2007年能登半島地震を経験した輪島市臨港地域周辺の住民を対象としたワークショップを実施し,地域の脆弱性や地域間におけるリスク認知の不十分さを整理した上で,地域住民と行政が双方向的なリスクコミュニケーションを行うことで地域防災力向上の可能性について研究を行うことを目的とする.
  • 田中 宏司, 山崎 泰司, 石田 直之, 鈴木 崇伸, 杉山 俊幸
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_539-I_548
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     通信管路設備は,地下に布設するケーブルを効率的に運用・保守するだけでなく,地震時にはケーブルに作用する外力を低減する性能が求められる.管路設備の耐震性能を効率よく向上させるには,通信用地下ケーブルの耐震性能の把握が不可欠であり,収容物であるケーブルの限界状態に応じた性能設計が必要とされる.本研究は,管路設備が地震外力により破損した状態を想定して,収容した地下通信ケーブルに外力を与え,ケーブルの修復限界である張力と屈曲角の関係を明確にした.さらに修復限界の考え方に基づいて地震時の管路の変形を通信サービスに影響を与えないレベルに低減する対策技術の事例について整理した.
  • Prem Prakash KHATRI, Riki HONDA, Hitoshi MORIKAWA
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_549-I_558
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     Gravity anomaly is one of efficient methods to evaluate underground structure, which is essential for estimation of ground motion due to earthquakes. Data observation is, however, costly since it requires expensive devices. In order to overcome this problem, Morikawa et al. have been working to develop a mobile gravimeter that uses force-balance (FB) accelerometer. In comparison to the conventional spring type gravimeters, it is less costly, compact and can be carried by relatively small carriers. However, it raised problems that the observed data are severely contaminated by various kinds of disturbances such as engine vibration and carrier motion. Therefore an appropriate data processing method for extracting gravity anomaly signal from such observed data is required.
     For that purpose, we propose to use the statistical independence property of gravity anomaly and other noisy data. The gravity anomaly and other noises are generated from different sources and it can be safely assumed that they are independent.
     As a scheme of considering independence of signals, blind source separation techniques are used. Second Order Blind Identification method (SOBI) separates the target sources by assuming that source and noises are un-correlated at various time-lags. Similarly, Independent Component Analysis (ICA) separates the sources by maximizing the independence of linearly transformed observed signals. It is proposed to use one of ICA-based algorithms, ThinICA, that implements the maximization of independence among source signals at various time-lags and thus incorporates the advantages of both SOBI and ICA.
     The proposed method is applied to the data observed at Toyama Bay, Japan. It is observed that the motion of carrier (ship) influences the performance of de-noising algorithm. Under certain favorable data acquisition environment, the proposed method was able to salvage the gravity anomaly data from the noise-contaminated data with the accuracy sufficient for the purpose of identification of gravity anomaly distribution.
  • 成吉 兼二, 山本 吉道
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_559-I_570
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     巨大地震によって発生した大津波が来襲すると,大規模な地形変化が発生し,侵食・洗掘による構造物の倒壊等の被害が生じる.2011年東北地方太平洋沖地震津波は,東北地方を中心に甚大な被害をもたらし,各地で侵食・洗掘被害が発生し,多くの構造物が倒壊した.また,津波の越流やその戻り流れによって,堤防・護岸等の法先が洗掘されている箇所が複数見られた.本研究では,まず,著者らが2011年東北地方太平洋沖地震津波来襲後に宮城県と福島県で実施した構造物法先の洗掘被害調査について報告する.また,津波による構造物法先の洗掘量算定法を提案する.次に,平面二次元の地形変化予測数値モデルで掃流砂量式の係数を適切に選ぶことによって,津波による海底侵食が生じた宮城県気仙沼湾で再現計算を行う.
  • 松田 泰治, 足立 幸郎, 宇野 裕惠, 佐藤 知明, 五十嵐 晃, 土田 智
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_571-I_582
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     多径間連続構造の耐震性向上策の一つとして,反重力すべり支承(Uplifting Slide Shoe : UPSS)が提案されている.UPSSは常時状態の橋桁の温度収縮を水平面部のすべりで吸収し,地震時には上沓が下沓をすべり上がることで水平変位を鉛直変位(位置エネルギー)に変換させて,水平方向の応答を低減するものである.本研究では,ゴム支承やUPSSを用いた多径間連続橋を対象に,温度変化等に起因する桁伸縮による不静定力の影響を考慮した地震応答解析を行い,応答結果を分析することで,UPSSの有効性を明らかにした.
  • 松田 泰治, 大熊 信之, 秋永 裕貴
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_583-I_591
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     コンクリートアーチダムの中には,建設後50年近く経過するものも多く,大規模地震時の安定性への社会的関心の高まりもあり,より合理的な耐震性能照査が必要となっている.アーチダムの耐震性能照査においては基礎岩盤を考慮したモデル化が行われているが,固有値解析の際に基礎岩盤の質量を考慮すると堤体の振動モードの抽出が困難になることが指摘されている.また,アーチダムのように半無限的に広がる基礎岩盤の上に建設される土木構造物の地震応答解析を行う際には,解析領域と自由地盤との間の境界条件を適切に設定しなければならない.以上より,本研究では固有値解析を実施する際の岩盤質量の与え方に関する検討と,地震応答解析を行う際に実現象を精度よく再現するための境界条件の与え方について検討を行った.
  • 宮本 宏一, 松田 泰治, 宇野 裕惠, 藤本 匡哉
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_592-I_600
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文は,橋梁の制震設計に際し,粘性型と履歴型の制震ダンパーを組み合わせた性能の設定方法と実橋梁モデルへの適用性を応答スペクトルを利用して検証したものである.まず,ゴム支承を用いた分散橋に制震ダンパーを適用した1質点系モデルに対し,制震ダンパーの目標変位と必要抵抗力を求める非線形応答スペクトル曲線を設定した.その後,既設橋梁を対象にゴム支承と制震ダンパーを設置し,制震ダンパーの性能をパラメトリックに変化させた橋梁全体系非線形動的解析を行い,提案手法による推定応答値との対比を行った.この結果,橋梁の周期特性や地震動特性により推定精度は異なるが,提案手法により目標変位を概ね推定できることを確認した.
  • 土居 裕幸, 田中 良英, 大坪 祐介, 中野 歩, 中西 泰之, 有賀 義明
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_601-I_608
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     洪水吐ゲートは,大規模地震に対するダムの耐震性能照査を行う上で重要な構造物であるが,その動的挙動には不明な点が多い.そこで,重力式コンクリートダムの洪水吐ゲートに対し,地震時の動的挙動に関する基礎データを得ることを目的として,起振実験および地震観測を行った.次に,3次元FEMモデルを用いた固有値解析,地震観測記録の再現解析から,起振実験および地震観測記録の再現性を検討し,ゲートの耐震性能照査に適用可能な解析モデルの構築を試みた.その結果,ゲートの地震時の動的特性を概ね良好に再現できる解析モデルが構築でき,洪水吐ゲートの耐震性評価の信頼性向上にもつながる成果を得た.
  • 佐藤 知明, 五十嵐 晃, 松田 泰治, 足立 幸郎, 宇野 裕惠, 二木 太郎, 白石 晴子, 土田 智
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_609-I_621
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     UPSS(反重力すべり支承)は平面すべりと斜めすべりを組み合わせたすべり支承であり,地震時の運動エネルギーは位置エネルギーに変換されながら,摩擦減衰,粘性減衰および橋脚の塑性履歴減衰により消費される.斜面角度が小さい場合には振動系は長周期化されるので摩擦減衰は大きくなるが,橋脚の消費エネルギーは小さくなる.逆に,斜面角度が大きい場合には短周期化されるので摩擦減衰は小さくなるが,橋脚の消費エネルギーが大きくなるというトレードオフの関係にある.これは,UPSSでは斜面角度により応答周期を自在に調整できることによるものであり,本論文では,応答周期を元に入力地震波の加速度応答スペクトルを用いて応答を評価できることを示した.
  • 藤本 啓介, 浅井 光輝, 一色 正晴, 館澤 寛, 三上 勉
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_622-I_629
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日,東北地方太平洋沖地震により発生した津波により木造家屋だけでなく,橋梁,堤防などの土木構造物までもが大きな被害を受けた.本研究では,地上への津波遡上現象と同時に構造物に働く流体力を評価するため,地形だけでなく重要な構造物までを同時に考慮に入れた3次元流体解析を試みた.本論文では,複雑な地形を3次元問題としてモデル化し,メッシュフリー解析法の一つであるSPH法に着目し,航空測量,深浅測量などの測量データより解析するまでの一連の手順を提案した.また解析対象として,独自のX字状の巨大な津波堤防を有していた岩手県宮古市田老地区を取り上げ,数値解析結果と被害調査報告による浸水域とシミュレーション結果を比較し,3次元津波遡上シミュレーションの現状と今後の課題を議論し,その有用性を示した.
  • Saleem M. UMAIR, Muneyoshi NUMADA, Kimiro MEGURO
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_630-I_641
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     Fiber reinforced polymer (FRP) has become a popular material in the past few decades. It has been extensively used for strengthening and retrofitting of concrete structures. High strength to weight ratio, high initial stiffness, linear elastic behavior and ease in application has made it material of good choice for the seismic retrofitting and strengthening of masonry structure. There are many guidelines proposed by many researchers to determine the amount of FRP based upon the seismic base shear requirements. But, there is no theoretical, numerical and experimental researches to determine the optimum placement and quantity of FRP to reduce the cost of retrofitting.
     In this research, an attempt has been made in order to find the optimum quantity and placement of FRP for strengthening brick masonry wall system. Required objectives are achieved by performing diagonal compression test on ten masonry wallets. Masonry wallets were carrying different volume and arrangement of FRP strips. Response of masonry wallets with different volume and configuration of FRP strips are recorded using a digital acquisition system. Experimental results are carefully analyzed in order to propose an optimum and efficient retrofitting procedure of masonry wallets with FRP. Experimental results shows that correct retrofitting scheme can not only increase the efficiency but can also reduce the retrofitting cost and effort.
  • 竿本 英貴, 吉見 雅行
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_642-I_649
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     家具や什器の地震時応答挙動は,当然ながら家具等が設置されている構造物の地震時挙動に強く影響される.従来行われている家具の地震応答解析では,バネ-マスモデルを用いた構造物の地震時応答解析結果を利用して家具の応答解析を行うことが行われており,構造物の形状の影響は十分に考慮されていない.ここではZ字型の形状を有する構造物を対象として有限要素法により地震応答解析を行い,構造物内での任意の位置での加速度を得た.得られた加速度を新たに作成した家具シミュレータに入力することで,構造物の影響を考慮した家具の地震時応答解析を行った.家具の解析結果を実際の被災時の状況と比較し,定量的な評価を通じて家具の地震時応答がほぼ再現されていることを確認した.
  • 小野 祐輔
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_650-I_660
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     地震時における斜面の崩壊は大変形を伴う挙動であり,有限要素法などのメッシュ依存型の解析法ではその取り扱いが困難となることが多い.そこで,大変形問題の取り扱いが容易なSPH法の適用を行った.本研究では,まず,SPH法による斜面の地震応答解析において,有限要素法に相当する精度を達成するための新たな計算式を提案した.次に,レイリー減衰のSPH法への導入を行った.さらに,斜面の地震時崩壊挙動の解析では,解析に用いる粒子密度とレイリー減衰によって滑り面の発生過程に違いが現れることを示した.
  • 坂下 克之, 志波 由紀夫
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_661-I_677
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     複数の破壊モードをもつ土木構造物を対象とした地震時フラジリティー評価において「いずれかの破壊が起こる確率」は,それぞれの破壊モードに対して個別に評価した損傷確率よりは大きくなると考えられる.本論文では,複数の破壊モード間の確率変数の相関を考慮した損傷確率の評価方法として,1つの確率変数による応答と耐力の確率密度分布の畳込積分で評価が可能となる方法を提案する.提案手法を,曲げおよびせん断の2つの破壊モードをもつ地中構造物の設定モデルに対して適用・評価した結果,本提案手法による損傷確率は,曲げ破壊およびせん断破壊それぞれの単独の損傷確率よりは大きく,2つの破壊モードを独立事象とした場合の和事象確率よりは小さくなる,ということが確認された.
  • 池田 隆明, 小長井 一男, 片桐 俊彦, 清田 隆
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_678-I_687
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,東京湾臨海部の埋立地の多くで液状化が発生した.東京都江東区新木場地区も液状化が生じた地域の一つであるが,液状化の発生・未発生範囲は明瞭に分かれており,埋立材料や埋立方法の違いが原因と考えられた.新木場地区では,工学的基盤を含めた複数の深度で地震観測を行う鉛直アレー地震観測が行われている.観測地点では液状化は確認されなかったが,ごく近傍地点で液状化が確認されている.二地点の工学的基盤の地震動は同じと想定されるため,液状化の発生の有無は表層地盤の液状化強度の違いが原因と考えられた.本研究では,有効応力非線形解析から,液状化した地点の液状化強度を検討した.その結果,埋立土層の液状化強度はRL20=0.18程度以下であると推定された.
  • 松田 哲夫, 五十嵐 晃, 古川 愛子, 大内 浩之, 宇野 裕惠, 松田 宏
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_688-I_702
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     多径間連続橋の耐震システムである免制震すべりシステムでは,免震支承やすべり支承に対する地震波の入力方向の影響は小さい.これに対し,制震ダンパーは回転しながら部材軸方向に機能するため,面的な実地震動に対し地震波を2方向に入力したほうが現実的である.そこで,相補直交関係にある2波の標準波や,標準波とヒルベルト変換による相補直交成分波を用いて2方向同時入力し,制震ダンパーのような回転機能を含む振動系の応答では,1方向入力の応答との相違や,直交成分の位相差に起因する回転性能の影響を受けることを明らかにした.さらに,後者の2方向同時入力では加速度が「反時計回り」と「時計回り」の2通りの回転特性が発現するため,それぞれの応答値を平均することで.1方向入力による応答と整合する結果が得られることを確認した.
  • 藤田 航平, 市村 強, 堀 宗朗, Lakshman Lalith Wijerathne MADDEGEDARA, 田中 聖三
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_703-I_713
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市を構成する個々の構造物に着目した高分解能な地震被害想定を行うため,地盤構造を考慮した高速な構造物地震応答解析システムを開発する.ここでは,地理情報システムに蓄えられたデータから都市の地盤・構造物を自動的にモデル化し,設計実務で使われる地盤・構造物の地震応答解析を適用することで地盤・構造物の特性を反映した構造物地震応答解析を行う.東京のような大都市の地震被害想定に適用できるよう,高性能計算(High Performance Computing, HPC)手法を使って多数の構造物を高速に解析できるシステムとした.高性能計算機上でこのようなシステムを使うことで,数十万棟の構造物の応答解析や,入力地震動・地盤・構造物の性質にばらつきを与えた多数の解析ケースを短時間で解析できるようになる.
  • 水野 智雄, 山岸 宣智, 宮島 昌克
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_714-I_726
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2006年に耐震改修促進法が改正され,行政において,住宅の耐震診断・耐震改修の促進が図られている.しかし,特に密集市街地では,居住者の高齢化が進展していることや,老朽空き家が多く存在していることから,地区外からの転居を促し,転居の機会に耐震化も誘導する取り組みなどが必要であると考えた.そこで,本研究では,金沢市内の密集市街地を研究の対象とし,金沢市内への転居の可能性のある地区外の居住者を対象としたアンケート調査を実施して,転居の機会に耐震化が行われる可能性を探った.
  • 西川 隼人, 加登 文学, 高谷 富也, 宮島 昌克
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_727-I_733
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では地震動による木造家屋被害の推定に表層地盤情報を活用することを目的として,表層30mの平均S波速度(AVS30)と木造家屋応答の関係を調べた.検討は京都府舞鶴市を対象とし,市内のボーリング地点におけるS波速度構造の評価や等価線形化法による地盤応答解析を実施した.各対象地点において地盤応答解析で得られた地表波の加速度応答スペクトと木造家屋の最大応答変形角Rの関係を評価したところ,降伏せん断力係数Cyが大きくなるほど,短周期の加速度応答スペクトルがRに影響を及ぼすことが分かった.最後にAVS30とRの関係を調べたところ,Cy=0.1,0.3の木造家屋のRAVS30と相関があることが明らかになった.
  • 鍬田 泰子, 大野 顕大
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_734-I_741
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震による被害は,津波や液状化による被害が顕著であったが,震源断層が巨大であったために広域で強震動が観測され,地震動による被害も少なからず発生した.本研究では,東北地方太平洋沖地震の宮城県北西部を対象にして,水道管路被害のデータベースを構築し,中山間地域を主とする水道管路の被害傾向を把握した.分析の結果,中山間地域に多く敷設されている小口径塩化ビニル管の脆弱性を定量化することができた.さらに,塩化ビニル管については,既往の知見よりも被害が少なくなる結果が示された.また,地震動との関係では,管路敷設密度が低いと管路被害率のばらつきが大きく,一方,狭い範囲で地盤条件が異なる場合は適切な被害率を得られないことがわかった.
  • 仲村 成貴, 塩尻 弘雄, 上島 照幸, 有賀 義明, 大湊 周作
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_742-I_749
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     高経年化した実在アーチダムにて常時微動および地震動の長期間にわたる連続観測が実施されている.この長期継続観測では天端上の2箇所に加速度計を設置し,ダム固有振動数とダム貯水位やダム堤体温度との関連性を調査することを目的としている.一方,アーチダム全体系の振動特性を把握して連続観測のベンチマーク資料とすることを目的に,連続観測とは別途にセンサーを高密度に配置して常時微動観測を短期間で実施した.本論文では,高密度なセンサー配置による常時微動観測結果から得られたアーチダム全体系の振動特性の把握と,それらを表現できる三次元有限要素モデルの作成により,微小振幅時におけるダム堤体コンクリートと基礎岩盤の物性値を同定した結果について述べる.
  • 奥村 与志弘, 後藤 浩之
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_750-I_757
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     プレート境界で設定するすべりに対して分岐断層で設定するすべりがどの程度であるべきかについての知見はこれまで十分に得られていない.本研究では,プレート境界で発生した破壊が浅部に向かって伝搬する場合に,プレート境界に破壊が伝搬する場合と分岐断層に破壊が伝搬する場合とで,どのように違うのか力学的に考察した.また,発生する津波の特徴の観点から両シナリオの違いを整理した.
  • 稲谷 昌之, 後藤 浩之, 盛川 仁, 小倉 祐美子, 徳江 聡, Xin-rui ZHANG, 岩崎 政浩, 荒木 正之, 澤田 純男, ...
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_758-I_766
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では内陸部の宮城県大崎市古川地区において地震動による構造物被害が多く発生した.古川地区の中でも一部地域に被害が集中していることから,その原因の一つとして地盤震動特性の違いが考えられる.そこで,本研究では古川地区に展開されている超高密度地震観測のデータを利用して地盤震動特性の違いを検討した,古川地区内の地盤が各点毎に構造の異なる一次元水平成層構造であると仮定して地盤モデルを推定したところ,被害が集中した地域において表層地盤が厚くなる傾向が見られた.ただし,推定した地盤モデルを用いて時刻歴観測波形の再現を試みたところ,一部の観測点には再現出来ない特徴的なフェーズが認められた.このことは,表層の地盤構造を一次元水平成層構造でモデル化するという従来の枠組みでは,古川地区の地震動を説明する上で本質的に不十分であることを示唆している.
  • 縣 亮一郎, 市村 強, 兵藤 守, 堀 高峰, 平原 和朗, 堀 宗朗
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_767-I_776
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     想定断層破壊シナリオ(将来発生が想定される断層破壊)の適切な設定により,地震被害想定の高度化が期待される.その設定方法として,過去の地震データに加え,断層状態(海溝型巨大地震の発生が懸念されるプレート境界面の固着状態など)の推定結果に基く方法が考えられる.この手法では,地殻構造の詳細なデータを用いた大規模地殻変形解析と地上・海底での地殻変形観測データを組み合わせて断層状態推定を行う.しかし,地殻構造の高詳細な数値解析用モデル構築の困難さから,実現は難しいとされてきた.本研究では,高性能計算の技術を活用し,地殻構造の高詳細な三次元有限要素モデル構築手法及びそれを用いた地殻変形解析手法を開発した.西南日本での地殻変形解析結果から,断層状態推定結果の本手法による確度改善の可能性が示唆された.
  • Viet Dung NGO, Akira MURATA, Masakatsu MIYAJIMA
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_777-I_789
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     Estimation of dynamic characteristics of subsurface of ground such as predominant period, amplification factor, shear wave velocity play an important role in researchs of the effects of long-period ground motion earthquakes on high-rise buildings in big cities. Microtremor observations in Hanoi and HoChiMinh cities of Vietnam were conducted and the predominant period of the ground at the sites could be estimated from the horizontal to vertical (H/V) spectral ratios of microtremors by using the Nakamura method. The obtained results show that the grounds of the mentioned two cities have considerable possibility of resonance with long-period ground motions. Then, the spectral accelerations in bedrock of Hanoi and HoChiMinh cities were estimated by attenuation relationship of Uchiyama and Midorikawa 2006 with the far-source rupture faults. Next, the accelerations on ground surface of the above two Vietnamese cities were estimated by using spectral ratio of microtremor and inverse Fourier transform. Finally, the time history analysis was conducted for 8 high-rise buildings in Hanoi and HoChiMinh cities by using the obtained accelerations. The results of the final step show that far-source rupture faults have considerable possibility to generate long-period ground motions that cause certain large behaviors of high-rise buildings in the Vietnamese cities.
  • 小林 將志, 水野 光一朗, 倉岡 希樹, 野澤 伸一郎, 石橋 忠良
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_790-I_797
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震により被害を受けた鉄筋コンクリートラーメン高架橋の柱部材について,被災状況を調査し,被害分析を行った.被害調査では標準設計で設計された耐震性能が同程度の高架橋が連続する地区を対象とし,当該地震により被害を受けた高架橋柱の損傷度や損傷部位について着目した.調査の結果,損傷が柱上部の特定の位置に発生することがわかった.また,損傷状況を踏まえて,被災した高架橋を対象とした再現解析を実施し,損傷の伸展過程についての推察ならびに地震による作用の推定を行った.
  • 藤生 慎, 石川 哲也, 高田 和幸
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_798-I_806
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     宮城県気仙沼市は東北地方太平洋沖地震で甚大な被害を受けた.気仙沼市は三陸海岸に位置しリアス海岸であったために比較的津波からの避難がしやすい地形であると考えられる.しかし,1,305人の死者・行方不明者が発生した.津波避難者がどのような心理状態で避難行動を行ったのか明らかにされていない.そこで本研究ではヒアリングデータを用いて言語解析を行い,アンケート調査ではわからない津波避難者の心理状態を明らかにすることを目的とした.ヒアリングデータを用いて共起分析をした結果,徒歩による避難を行った者と自動車による避難を行った者で心理状態が異なることが明らかとなった.
  • Wenjin ZHANG, Hiroshi MATSUZAKI, Kazuhiko KAWASHIMA
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_807-I_820
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     It has been shown based on previous research that damage of RC bridge columns can be mitigated and ductility capacity can be enhanced by implementing polypropylene fiber-reinforced cement composites (PFRC) at the plastic hinge. The bridging action of polypropylene fibers which can mitigate crack propagation and widening of cracks has similar action with the lateral confinement by tie bars. Thus, it is likely that use of PFRC can reduce amount of tie bars required for ductility capacity enhancement. This paper shows a feasibility study for reducing an amount of tie bars by implementing PFRC at the plastic hinge. Based on a hybrid loading experiment and a nonlinear dynamic response analysis, it is shown that it is feasible to reduce an amount of tie bars by half by using PFRC though failure of the column slightly increases.
  • 石田 勇介, 野口 竜也, 香川 敬生
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_821-I_828
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,鳥取平野を対象とした地震動評価に資する3次元地盤構造モデルの構築を目的としている.そのために,対象領域内で共通の物性値(ρ,VPVS)を設定した上で,位相速度または重力異常データに対して層厚を同定項とする逆解析を行い,既存の各探査地点における地盤構造モデルを再推定した.その結果を用いて2次元3次Bスプライン関数により空間補間することで3次元地盤構造モデルの構築を試みた.また,本研究により構築したモデルおよび地震調査研究推進本部により提案されているモデルを用いて1943年鳥取地震(M7.2)を想定した地震動シミュレーションを実施し,それらの結果を比較することにより本研究モデルの妥当性を検討した.また,1943年鳥取地震時の建物被害率分布との比較により本研究モデルの有用性を定性的に確認した.
  • 大矢 智之, 太田 啓介, 松崎 裕, 川島 一彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_829-I_838
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,実大橋脚模型の震動台実験とこれに合わせた縮小模型実験に基づき,震動実験時に生じたひずみ領域における実大橋脚と模型橋脚の鉄筋強度の違いがRC橋脚の破壊特性及び曲げ復元力に及ぼす影響を検討した.その結果,鉄筋強度の違いを考慮して設計した縮小模型は,実大橋脚模型の曲げ復元力を約7%大きく評価することが明らかとなった.この違いは,縮小模型の方が実大橋脚模型よりも,かぶりコンクリートの剥落やコアコンクリートの圧壊の進展は小さいことが原因と考えられる.
  • 市川 翔太, 中村 香央里, 松崎 裕, Elgawady Mohamed, 金光 嘉久, 山野辺 慎一, 川島 一彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_839-I_851
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     設計地震力を超える大きな地震力の作用下では,軸方向鉄筋の局部座屈や破断及びコアコンクリートの圧壊等が生じる結果,曲げ破壊先行型であっても応答変位の増大とともにRC橋脚の曲げ復元力は低下する.被災後も継続使用でき,その後の補修も要しないダメージフリー橋脚を実現するためには,塑性ヒンジ部の損傷を防ぐことが重要である.塑性ヒンジ部の損傷を防ぐ方法の一つとして超高強度繊維補強コンクリートを適用する方法がある.本研究は,塑性ヒンジ部の損傷の軽減や変形性能の向上を目的として,プレキャスト超高強度繊維補強コンクリート(UFC)及びアンボンド鉄筋を用いて,せん断抵抗メカニズムとしてUFCセグメント内をRC構造とした橋脚を提案し,ハイブリッド載荷によりこの橋脚の耐震性能を実験的に実証したものである.
  • 沼田 宗純, 目黒 公郎
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_852-I_860
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,時間先取りで災害状況を予測し,最適な災害対応を実現するための「災害状況の時間的・空間的な推移モデル」を構築することを目的とする.これを実現するための基礎的な検討として,本稿では,ランニングスペクトル解析を用いた災害状況進展過程の解析システムを開発する.そして,ケーススタディとして,これを福島民報の解析に適用した.その結果,解析時間幅Bが短ければ,上位に多様なキーワードが登場し,解析時間幅Bが長くなれば,平滑化の効果が大きくなり,少数の種類のキーワードが上位を占めることが確認された.本開発システムは,今後の災害における大量の情報処理において,災害の時空間的な推移を解析するために,非常に有効な手法となる.
  • 齊藤 剛彦, 三神 厚, 中野 晋
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_861-I_871
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     著者らはこれまで南海地震の揺れの体験談を多数集めて,震源特性の推定を行ってきた.その際,常に問題となるのが体験談の解釈の不確実性の問題であった.本研究は,南海地震と同じく海溝型巨大地震である東北地方太平洋沖地震の強震観測記録とそれから推測される揺れの体感,さらに実際の体験談を併せて用いることで,昭和南海地震の体験談の解釈の方法について検討を行うものである.例えば昭和南海地震では「揺れが水平動から上下動に変化した」や「揺れが段々激しくなった」という体験談が複数得られ,著者らは多重震源理論に基づき解釈を試みていた.今回,東北地方太平洋沖地震で得られた強震記録を用いて標準的な体感を表す振動レベルを算出したところ,水平動から上下動への変化や揺れが段々激しくなったと体感したと思われる強震記録が複数の観測点で得られていることが明らかになり,これまで著者らが行ってきた体験談の解釈法がある程度確からしいことが確認された.
  • 野津 厚
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_872-I_888
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の発生を受け,南海トラフにおいても,従来より規模の大きいMw9.0程度の巨大地震を想定し,強震動評価が行われるようになってきた.その場合に用いられる震源モデルは,既往の強震記録を通じて,巨大地震への適用性が検証されたものでなければならない.本研究では,震源モデルとして,東北地方太平洋沖地震など既往の巨大地震への高い適用性を示すSPGAモデルを用い,南海トラフの地震(Mw9.0)に対する強震動の評価を行った.その際,事前の予測が困難なSPGAの位置については,極めて多くのケースを考慮できるよう計算上の工夫を行った.その結果,SPGAの中でも特に厳しい地震動を生じるものが対象地点に近い場合には,従来の設計で想定されている地震動よりもはるかに強い地震動となること等がわかった.
  • 常井 友也, 清野 純史, Freddy Duran C.
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_889-I_902
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     下水道整備の進展に伴い,管路延長は約42万kmにのぼるなど施設ストックが増大している.これに伴い,管路施設の老朽化等に起因した道路陥没も増加傾向にあり,平成21年度の発生件数は約3800箇所にのぼっている.特に,近年,下水道管路施設の老朽化は著しく早急な対策が急がれる.掘削条件や道路交通への影響等々を考慮して,非開削による管更生工法が注目されている.管更生工法は様々な工法が立案されているが,管径がφ800mm未満では自立管タイプの工法が主に採用される.自立管には更生材単独で土圧等の外圧に耐える強度が求められるため,一般に厚みが大きくなり,施工性や断面確保が難しくなるという課題がある.本研究では,土圧等の外圧に耐える高剛性部と地下水や土砂の浸入を防ぐライニングを備えた構造の自立管を考案し,下水協会規格の埋設,偏平実験とFEM解析によりその安全性の検証を行うものである.
  • 田中 聖三, Fangtao Sun , 堀 宗朗, 市村 強, Maddegedara L. L. WIJERATHNE
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_903-I_908
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,津波力によるRC構造物の破壊を扱う数値解析手法を開発する.開発項目は,大規模ソリッド有限要素法解析コードへの亀裂発生・進展の解析機能の実装と,3次元非圧縮性粘性流体解析を使う津波解析の連成を行う.亀裂発生・進展の解析機能には,複雑に形成される亀裂面を表現できる粒子離散化手法を利用する.津波解析には,自由表面を表現する界面捕捉法と安定化有限要素法を用いる.大規模造波水路内でのコンクリート版の破壊実験を再現する数値実験を行い,実験値との比較から開発された解析手法の性能を評価する.なお本論文では津波解析を行い,得られた圧力を構造解析の荷重条件とする一方向の連成解析とした.解析結果として,津波解析では実験値と良好な圧力の時刻歴が得られ,破壊解析では,津波外力によるコンクリート版の亀裂進展を解析することが可能であった.
  • 田中 努, 鈴木 猛康
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_909-I_918
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,まず,継手の開きを地盤が拘束する影響について筆者らが提案した評価方法を見直し,多くの実トンネルにおける継手剛性の変化量と動的解析結果に現れる地震時応答への影響を再評価した.次に,ひびわれ発生による覆工剛性の変化を考慮して解析を実施し,解析結果に現れる地震時応答の変化を評価した.最後に,これらに基づき,地震時のトンネル縦断方向の地盤ひずみがあまり大きくならない場所では,継手に過度に期待せずに,縦断方向の鉄筋を,その引張降伏強度を覆工コンクリートの引張強度を上回るように配置すること,地盤ひずみが大きくなる場所では,地盤の継手の開きを拘束する影響を考慮して継手を配置し,覆工の平均ひずみを低減させることを基本とする耐震設計法をまとめた.
  • 宮森 保紀, 内海 晃太, 清水 俊明, 山崎 新太郎, 大塚 久哲
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_919-I_931
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は北海道釧路市を対象として,既往の津波災害ならびに 2012 年に公表された最大の想定津波について纏めるとともに,今後の減災対策の構築に向け基礎的な検討を行ったものである.釧路市では明治期以降は人的被害を伴う津波災害は報告されていないものの,それ以前には大規模な津波が発生した可能性がある.想定される最大津波に対して,既存の建築物や道路施設を緊急で一時的な避難場所として用いることについて現地調査を踏まえた検討を行った.その結果,建物への一時的な避難や自動車による道路施設への避難を効果的に行えば,人的被害を防止することはおおむね可能と思われる結果が得られた.
  • 片岡 正次郎, 金子 正洋, 松岡 一成, 長屋 和宏, 運上 茂樹
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_932-I_941
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震の津波で上部構造と橋脚1基が流出した国道45号小泉大橋の地震・津波被害再現解析を実施した.現地で計測した余震波形から本震時の地震動を推定し,それを入力する地震応答解析を実施した.橋桁に孤立波を作用させる水路模型実験で得られた津波力が数値波動水路解析によりほぼ再現可能であることを確認した上で,数値シミュレーションで再現した津波を作用させる津波応答解析を実施した.その結果,地震作用では致命的な損傷には至っていないもののP3橋脚基部には損傷が発生した可能性があること,津波作用により支承の水平耐力とP3橋脚のせん断耐力を超過することがわかった.
  • 森 伸一郎, 鵜久森 潤
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_942-I_957
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では,広範囲で極めて甚大な人的・物的被害が生じた.人的被害の99%超が津波による.津波リスクに対する住民の避難行動の実態を知り,その特徴と避難の正否から見た問題点を明らかにするために,津波避難行動に関する509件の新聞記事を収集し,内容分析に基づいて,岩手県,宮城県の住民の津波避難行動形態と地域・生死・男女について統計的に分析した.その結果,生死別の比較から,事前避難の有効性が確認され防災活動中の切迫避難の死亡リスクが両県で際立って高かった.地形と津波歴史の異なる両県で避難行動に大きな違いがあった.また男女別の比較から,男性では両県で避難前防災活動が最多である一方,女性では岩手で用事後避難,宮城で切迫避難が最多であった.
  • 五十嵐 晃, 松島 弘, Mishra Huma Kanta
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_958-I_964
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     発展途上国向け低コスト用の廃タイヤパッドを用いた免震材料の利用が提案されているが,その性能は明確に調査されていない.本研究では廃タイヤパッドの材料同定を熱分解ガスクロマトグラフィーにより行い,変形性能を水平せん断試験と有限要素解析を用いて行った.熱分解ガスクロマトグラフィー分析により廃タイヤパッドの材料を天然ゴムであると同定した.せん断試験ではせん断ひずみ100%相当の変形性能を有することを示し,解析結果とも概ね一致する結果が得られた.
  • 村田 晶, 清水 諒, 宮島 昌克, 伊藤 直洋
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_965-I_972
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     日本は大規模災害となるような地震が多く発生する地域であり,近年も東北地方太平洋沖地震をはじめ大規模な地震災害が頻発している.それに伴う石造構造物の被害も多く発生しており,特に灯篭や墓石は石材を積み重ねた単純な不安定構造物であることから,多くの被害を受けている.墓石に関しては,兵庫県南部地震を契機に様々な補強方法の考案や検証が行われてきたが,灯篭に関しての耐震対策の検証は現状ほとんど行われていない.そこで,今回は石灯篭に着目し,無補強と有補強の石灯篭に対して地震時応答特性と耐震補強方法について実験的研究と解析的研究を行った.石灯篭に心棒を通す補強法をとったが,振動台実験や解析結果から,本方法は灯篭の倒壊防止に有効な対策となることがわかった.
  • 高田 和幸, 藤生 慎, 小野村 広平
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_973-I_979
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,東北地方を中心に甚大な被害を及ぼした.特に地震に伴って発生した津波による人的・物的被害は大きく,広範囲に及んだ.津波による人的被害が拡大した一つの原因として,自動車による避難が円滑に行えなかったことが挙げられている.自動車による避難について事後的検証を行なうことは,今後の津波避難のあり方を検討する上で必要不可欠であると考えられる.そこで本研究では,気仙沼市の市街地を対象地区に設定し,東北地方太平洋沖地震時の自動車による津波避難の状況を再現する手法について研究した.なお本研究では,自動車交通流の解析手法である確率的利用者均衡配分モデルを用いてシミュレーションを行った.現況再現性の高低については,地震発生後の道路の渋滞状況に関する目撃情報と,シミュレーションにより再現された渋滞状況とを比較して評価した.
  • Meghdad SAMAEI, Masakatsu MIYAJIMA, Masato TSURUGI, Abdolhossein FALLA ...
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_980-I_988
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     The goal of this study is to estimate source and path attenuation parameters of recorded earthquakes in Tehran province, Iran so they can be used for strong motion prediction purposes. For this, we have used four well recorded earthquakes recorded on Iran Strong Motion Network (ISMN). Assuming a simple geometric spreading of 1/r we have estimated Q factor for S-wave attenuation by characterizing spectral amplitude decay with distance at discrete frequencies. We propose the form of Q(f)=73f0.72 for attenuation of S-wave in Tehran province. We show that the proposed attenuation quality factor is in the range of Q factors that have been proposed by the other studies. We have also estimated source parameters, such as seismic moment (M0), corner frequency (fc) and Brune stress drop (Δσ) for each earthquake. We have fitted Brune source model to the observed spectra of motion by a grid search for least squares. Stress drop for studied earthquakes ranges between 7.7 to 37.1 MPa (77 to 371 bars).
地震工学論文集第32巻(報告)
  • 羽田 新輝, 葛 漢彬, 速水 景, 鈴木 俊光
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_989-I_1001
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,鋼製橋脚隅角部における十字継手部の溶接脚長や溶け込み深さの分布による,延性き裂の発生・進展への影響を明らかにすることを目的とし,鋼製橋脚隅角部の十字継手内に溶接未溶着が内在する実験供試体を製作,繰り返し載荷実験を行った.また,各供試体における溶接脚長および溶け込み深さのデータを計測・整理・分析し,これらのパラメータが延性き裂発生・進展に与える影響についての検討を行った.その結果,荷重低下の要因となる最大のき裂の進展箇所に関して溶接脚長が大きく影響し,溶接脚長の小さい箇所はき裂が進展しやすく,また,溶け込み深さが小さい場合においても,溶接脚長が十分に大きければその部分でき裂は大きく進展しないという結果を得た.
  • 野村 尚樹, 宮島 昌克, 山岸 宣智, 藤原 朱里
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1002-I_1012
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     近年,我が国では多くの地震が発生し,多くの犠牲者が発生した.地域住民の地震あるいは津波に対するリスク認知が不十分なために被害が拡大したと言われ,多くの地域ではそれらを教訓に自主防災活動に取り組み始めた.しかし,地域におけるリスク認知度に大きな個人差があり,活動の弊害になっていることも事実である.本研究では,2007年能登半島地震を経験した輪島市臨港地域周辺の住民を対象としたアンケート調査を実施し,地域住民の地震津波災害に関する意識を把握し,防災リスクマネジメント研究の1つである防災リスクコミュニケーション研究の基礎的資料とすることを目的とする.
  • 柳原 純夫, 村上 ひとみ
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1013-I_1020
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     石巻市内の仮設住宅を対象に実施されたポスティングアンケート結果から本庁地区についての各避難者の避難手段と津波が到達するまでの移動距離を抽出し整理した.そのデータを元に避難経路,移動パターンについて検討した.その結果次のことが明らかとなった.1)自動車避難が半数を占める 2)徒歩避難,自動車避難ともに近隣の避難場所に移動したケースが多い 3)自動車避難の1/4は一度自宅に戻っている4)自動車避難の2/5は渋滞に巻き込まれている 5)自動車避難で一度自宅に戻った場合,平均的な避難可能時間は約17分であった.
  • 荒井 秀和, 阿曽 克司, 宮島 昌克, 喜多 敏春, 野村 尚樹
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1021-I_1033
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     日本海側は海溝型地震による津波の発生の可能性が低いとされており,太平洋側に比較して津波に関する調査や対策の検討が不足している現実がある.このような中,石川県ではこれまでの知見と東日本大震災後に中央防災会議等で議論された内容を踏まえ,石川県に影響の大きな津波波源を設定し陸域遡上の検討を行った.具体的には,既往の海底地質調査結果から活断層の連動等を考慮し津波波源として設定し,最新の航空レーザー測量データ等を用いた遡上解析を実施し,陸域の浸水状況を把握するともに近海での津波収斂箇所を把握した.また,今回想定した最大クラスの想定波源は、沿岸に既往最大津波以上を発生させることができた.
  • 三神 厚, 辻野 典子, 齊藤 剛彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1034-I_1048
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     昭和南海地震において,高知市に襲来した津波波高はさほど高くなかったにもかかわらず,河川堤防が決壊し,高知市は長期にわたり甚大な浸水被害に苦しめられた.当時の地震被害調査報告によれば,高知市内の11箇所で堤防が決壊したと報告されているが,著者らの知る限り,断片的な被害情報はあるものの,それらが1つにまとめられた資料はない.著者らは利用可能な様々な資料をもとに,昭和南海地震による高知市の堤防被害箇所の推定を行ってきた.最近になり「高知市震災復旧工事箇所」なる資料を見出し,また高知大学地震観測所より被害写真の提供を受けたので,著者らの推定結果との比較を行ったところ,概ね整合した.「高知市震災復旧工事箇所」等,新たな情報をもとに堤防被害の要因について再検討したところ,1600年以降の埋立地や地形分類,Vs30の値が被害の程度を左右していることなどがわかった.
地震工学論文集第32巻(ノート)
  • 香川 敬生
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1049-I_1052
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2007年10月から運用されている緊急地震速報は,様々な課題を抱えつつも多くの被害地震を速報してきている.運用上の課題として,震源近傍で間に合わないこと,また自分の現在居る地点のローカルな情報を反映した精度が得られないことが挙げられる.一方でP波初動を用いたエレベータなどの緊急停止が行われており,自治体には計測震度計が設置され事後評価に用いられている.しかし,これらの機器はそれぞれの目的で個別に設置されており,融合した活用には至っていない.市販されている計測震度計と緊急地震速報を組み合わせて,第1段階としてP波センサーによる推定震度,第2段階で緊急地震速報を用いて現地震度を推定し,第3段階では実際の揺れによる計測震度を評価する,といった三段階で震度情報を出力する「三段階震度計」を試作した.
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