土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
70 巻, 2 号
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和文論文
  • 山口 浩, 佐々木 栄一, 峰沢 ジョージヴゥルペ
    2014 年 70 巻 2 号 p. 150-160
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     橋梁の無線モニタリングシステムにおいて橋梁の交通荷重による振動を利用した振動発電技術が注目を集めている.従来の研究は発電量のみに着目しているが,発電電圧に着目することで外部振動情報も取得可能だと考えられる.本研究では発電電圧が振動速度に依存するエレクトレット発電素子に着目し,パッシブに振動速度を測定できるセンサの開発を行った.数値シミュレーションより現状の発電波形を分析し,新しい発電素子を提案した.定常加振実験により発電波形と外部速度の関係を明らかにし,周波数領域上で外部速度に変換する手法を提案し,変動加振実験においてその有効性を検討した.実橋梁においても計測を行い,開発したセンサの実用性を示した.
  • 室野 剛隆, 佐藤 忠信
    2014 年 70 巻 2 号 p. 161-175
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     構造物の耐震設計基準では,地震動特性は標準的な設計加速度応答スペクトルが与えられている場合が多い.動的解析法に必要な時刻歴波形は,設計応答スペクトルに適合することが要求されるが,従来は弾性応答スペクトルに適合するように作成される.しかし,L2地震を対象とした耐震設計体系下では,このような適合波形で照査すると,構造物の非線形応答特性を的確に評価できない.そこで,本研究では,複数の非線形応答スペクトルに適合する地震波形を決定する方法を開発する.本方法は,等価線形化法を用い,目標スペクトルへの適合方法として,原波形に時間と振幅調整をしたRickerウェーブレットを重ね合わせ,このウェーブレットの振幅を調整することにより,任意の塑性率に対応した非線形応答スペクトル群に適合した模擬波形を作成するものである.
  • 伊藤 靖晃, 白土 博通, 松本 勝
    2014 年 70 巻 2 号 p. 176-189
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     完全剥離型矩形柱に作用する変動圧力を測定し,変動揚力の空間相関に対する辺長比や気流性状の影響について定量的に評価した.変動揚力の空間相関は背圧係数のみには依存せず,BD = 1.0矩形柱では一様流中より乱流中の相関の方が高くなること,一様流中ではBD = 1.0矩形柱よりBD = 2.0および2.8矩形柱の相関の方が高くなることを示し,完全剥離型矩形柱の変動揚力の空間相関を定める主な要因は後流に形成される渦の強度と渦のスケールであることを明らかにした.さらに,相関係数の分布を表す近似関数を提案し,限られた領域の計測データから相関の分布を推定することを可能とした.また,抗力係数から変動揚力の相関係数を一定の精度で推定できることを示すとともに,精度向上に向けて得られた知見をまとめた.
  • 佐藤 成, 竹信 正寛, 小濱 英司, 清宮 理
    2014 年 70 巻 2 号 p. 190-209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     レベル2地震動を想定した鋼板セル式岸壁の遠心場における振動実験および2次元,3次元有限要素法によるシミュレーション解析を行い,岸壁構造物の3次元的な地震時挙動に着目した基礎的な検討を行った.実験により,岸壁構造物は沈下および傾斜を伴いながら前面側へ水平変位する剛体的な残留変位を生じるが,振動中のセルおよびアークは円周方向,鉛直方向に複雑な挙動を示すことが確認された.解析では概ね整合的な変位挙動を再現できたが,2次元モデルは中詰土のせん断変形を大きく見積もる傾向にあった.3次元モデルでは背後側のセル下端において大きなミーゼス応力が発生した.現行基準による設計結果は概ね安全側となるが,円周方向,鉛直方向応力の連成挙動には十分注意が必要であることが判明した.
  • 森 猛, 島貫 広志, 田中 睦人
    2014 年 70 巻 2 号 p. 210-220
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     UIT (Ultrasonic Impact Treatment)による高い疲労強度改善効果はいくつかの実験的研究により確かめられている.また,UITが疲労強度を向上させる要因は,止端形状改善よりも圧縮残留応力の導入にあることが知られている.鋼材静的強度を高くすることで,導入できる圧縮残留応力は高くなり,より高い疲労強度改善効果が得られると期待される.
     本研究では,溶接継手の中でも疲労強度が低いとされる面外ガセット溶接継手を対象として,UIT処理を施した溶接継手の疲労強度に対する鋼材静的強度の影響について検討する.また,圧縮残留応力の効果のメカニズムを明らかにする目的で溶接止端に生じた疲労き裂の進展挙動と開閉口挙動についても検討する.
  • 藤山 知加子, 松村 寿男, 高須賀 丈広
    2014 年 70 巻 2 号 p. 227-237
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     3次元非線形有限要素解析を用いた輪荷重走行試験の再現解析を通して,ロビンソン型合成床版の実供用下での破壊過程の推定を行った.はじめに,既往の輪荷重走行試験を再現するための感度解析を行い,鋼・コンクリート境界面の初期付着力の値を定めた.次に,このモデルで得られたコンクリートおよび鋼材のひずみの推移を詳細に調べ,破壊過程の分析を行った.特に,コンクリート内部の水平ひび割れに着目し,その発生と進展過程を示した.最後に,静的解析を実施し,輪荷重走行試験の再現解析で得た挙動との比較を行ったところ,静的載荷による破壊過程は,移動荷重下とは異なる結果となった.以上より,合成床版の耐疲労性能評価を行う際には破壊モードの推定が重要であり,破壊モードに応じた限界状態と管理水準の設定が必要であることを示した.
  • 吉田 純司, 杉山 俊幸
    2014 年 70 巻 2 号 p. 238-251
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/20
    ジャーナル フリー
     実務における免震構造物の動的解析では,高精度で利用しやすい免震デバイスの力学モデルが必要とされている.本研究では,バイリニアモデルを拡張し,免震用積層ゴム支承が大変位時に示すハードニングや最大経験ひずみ依存性を精度よくかつ簡易にモデル化する手法を提案する.まず,ハードニングについては,バイリニアモデルを完全弾塑性バネと弾性バネに分離し,それぞれにせん断ひずみの関数を乗じることで再現する.次に最大変形量依存性については,ゴムの準弾性構成モデルを1次元に縮退して弾性バネに導入する.最後に,免震橋梁を簡易的に表す2質点系モデルを用いて,提案した復元力モデルの地震応答解析を実施し,大地震時においてハードニングおよび最大経験ひずみ依存性は最大応答の予測に有意な影響を及ぼすことを示す.
  • 今井 篤実, 長澤 慎, 石田 和生, 佐野 大樹, 紀平 寛
    2014 年 70 巻 2 号 p. 252-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
     表題に示す技術の確立を目指し,裸使用耐候性鋼橋梁の調査に適用しているイオン透過抵抗法を,さび安定化補助処理仕様耐候性鋼橋梁の診断に応用する研究を行った.さび安定化補助処理材の劣化挙動に関する定量的データが少ない事情に鑑み,14年沖縄の海岸地帯に曝露された模擬橋梁試験体を対象に調査した.診断基準に資する基礎データを体系的に集積することができた.破壊法によるさび断面構造の顕微鏡観察法と,非破壊法であるイオン透過抵抗法による測定値の相関性も検証され,イオン透過抵抗法の有用性が明らかになった.
  • 徳永 宗正, 曽我部 正道, 渡辺 勉, 川村 力, 小野 潔
    2014 年 70 巻 2 号 p. 265-281
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
     従来の鉄道構造物の耐震設計では,地震時列車荷重を列車重量の30%を上限として考慮する手法が用いられてきたが,この手法の妥当性は十分に示されていない.本論文では,鉄道車両の動的影響を考慮した鉄道構造物の耐震設計法を提案することを目的に,数値解析による検討を行った.その結果,車両系の動的効果により,地震動の周波数特性,構造物の塑性化の程度,構造物の降伏振動数に依存して応答塑性率は最大で-50~+20%の間で変化すること,列車の集中荷重効果により,列車重量を等分布で想定するよりも構造物の地震時応答は大きくなることが明かとなった.加えて,耐震性能評価における列車重量の簡易モデル化手法として,動的解析の場合には車両系の動的効果を等価重量率を用いて評価する等価重量法を,静的解析の場合には等価慣性力法を提案した.
  • 吉田 善紀, 小林 裕介, 内村 太郎
    2014 年 70 巻 2 号 p. 282-294
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル フリー
     鋼鉄道橋の部材の振動発電を利用したモニタリングシステムを開発した.これは,列車通過時の部材の振動による圧電素子の発電を利用して,橋梁の変状のセンシングを行い,センシング結果を列車に無線送信するものである.本研究では,実橋梁の部材に圧電素子を貼り,各種条件を変えて列車通過時に発生する電圧を測定することで,電力を得やすい部材や,使用する圧電素子の形状・材質,および回路の種類を検討した.さらに,得られた知見を基にプロトタイプのモニタリングシステムを構築し,実橋梁において列車通過時の動作を検証した.その結果,部材の振動発電によりセンシングおよび無線送信を行い,走行している列車でセンシング結果を受信することに成功した.これらより,開発したモニタリングシステムが実橋梁で正常に稼働することを確認した.
  • 佐藤 忠信
    2014 年 70 巻 2 号 p. 295-305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/18
    ジャーナル フリー
     地震動位相を線形遅れ部とそれからの変動部に分解した上で,変動部の位相差分過程を独立同分布と仮定できるならば,位相が振動数領域でのブラウン運動過程として定義されることを誘導する.さらなる一般化には,位相差分の相関性を考慮する必要性を明示し,位相がフラクタルであることを示す.この特性を満たす最も単純な確率過程が非整数ブラウン運動過程(fBM)であり,fBMにより模擬された地震動位相が地震動特性の再現性に優れていることを確認する.その上で,地震動位相の不確定性が震動振幅特性に及ぼす影響を明らかにする.すなわち,求められた位相の確率密度関数を用いて地震動位相に対する期待値計算を行って,位相の不確定性がフーリエ振幅の減衰特性として評価できることを示す.この結果,地震動位相の数理的特性が明確にされる.
  • 保田 尚俊, 塚田 和彦, 朝倉 俊弘
    2014 年 70 巻 2 号 p. 306-318
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
     無限に広がる地盤内の円筒形線状地中構造物に地震波が入射した際,その構造物に生じる軸方向の変形を応答変位法により評価することに関して,弾性波動論にもとづき再考した.その結果,次のことが明らかとなった.一般的な地震波による線状地中構造物の応答評価においては,地盤ばね定数と入力する地盤変位を適切に扱った応答変位法は,構造物に生じる軸方向の変形を上手く評価でき,弾性波動論の厳密解とも良く一致する.地盤ばね定数の算定には,軸直交方向の見かけの波長を考慮したものを用いる必要がある.また,入力する地盤変位としては,地中構造物を取り除き,空洞だけとした地盤の空洞壁面変位を用いることが正しいが,構造物や空洞がない一様な地盤での地震時変位を用いた場合でも誤差は小さく,しかも安全側の評価を与える.
和文報告
  • ジャルワリ トゥルキ, 中村 俊一, 鈴村 恵太
    2014 年 70 巻 2 号 p. 319-332
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
     新たに開発した橋梁用高強度アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼線を平行に束ねたストランドの耐食性を,従来より用いられている亜鉛めっき鋼線ストランドと比較研究した.試験ストランドは,相対湿度60%,相対湿度100%および湿潤状態の異なる3つの腐食環境下に150日間,40℃で恒温恒湿装置内に保持し,腐食促進させた.アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼線ストランドは,相対湿度60%および100%の腐食環境下での腐食による質量減量は,湿潤環境下よりも遥かに小さく,ほぼ健全であった.湿潤環境下での腐食量は大きかったが,亜鉛めっき鋼線ストランドに比べて質量減量は小さく,耐食性に優れていた.これは,アルミニウム・亜鉛合金めっき層が緻密で鉄層と剥離しにくいためである.さらに,ストランド内の鋼線は外層・内部・中心の順で腐食量が大きかった.
和文ノート
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