土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
71 巻, 2 号
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和文論文
  • 田村 洋, 佐々木 栄一
    2015 年 71 巻 2 号 p. 173-185
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/20
    ジャーナル フリー
     地震時の鋼部材溶接止端部においては,ごく浅い表面亀裂を起点として脆性破壊が誘発される場合があると考えられる.その際の発生条件には溶接部形状が大きく関与するため,既存の手法では破壊発生限界の評価は困難となり,危険側の予測を与える可能性を残している.本研究では,鋼材内部におけるマイクロクラックの発生・進展過程を考慮した修正ワイブル応力に基づき,低温破壊実験と数値解析によって地震時脆性破壊を想定した破壊発生限界の評価を行った.その結果,修正ワイブル応力の限界値が止端半径,初期亀裂深さ,温度等に依存しない材料固有の特性値とみなせ,これを用いることで一般性の高い破壊予測が可能となることが示された.その上で,実構造物への適用例として鋼製橋脚隅角部の破壊限界評価を試み,破壊確率を定量的に扱う手法を示した.
  • 伊藤 義人, 吉野 彰宏, 酒見 真志, 佐藤 遼一
    2015 年 71 巻 2 号 p. 186-198
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/20
    ジャーナル フリー
     アルミニウム合金押出形材を用いた,景観に配慮した新しい形式の橋梁用防護柵支柱を開発し,静的載荷実験とその数値解析シミュレーションを行った.最初に,板材から切り出した断面寸法が実寸であるモデル供試体で実験を行い,その変形性能を明らかにした.その後,ダイスを製作し,押出形材を製作し,実防護柵の指定の幅に切断した支柱の供試体を製作した.新たに開発した多室ホロー断面の押出形材の支柱は,防護柵設置基準・同解説で要求されている橋梁用ビーム防護柵支柱の極限支持力などの性能を持つことを,静的載荷実験と数値解析シミュレーションによって明らかにした.また,支柱幅を変えることによって,異なる種別の防護柵に適用できることも示した.
  • 廣畑 幹人, 伊藤 義人
    2015 年 71 巻 2 号 p. 208-220
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/20
    ジャーナル フリー
     既設鋼橋の補修溶接部の品質向上を目的に,現場で使用できる簡易熱源(シート状セラミックヒーター)を用いた熱処理による残留応力緩和効果を検証した.すみ肉まわし溶接継手を対象に一連の実験を実施し,選定した熱源により,熱処理に要求される温度履歴が高精度に管理できることを確認した.溶接部には母材の降伏応力にほぼ等しい引張残留応力が生じていたが,熱処理により残留応力がほぼゼロに緩和されることが分かった.また,高温クリープ特性を考慮した熱弾塑性解析により熱処理過程をシミュレーションし,残留応力の緩和メカニズムを明らかにした.一方,疲労試験を行い,溶接ままの継手に比べ熱処理により残留応力を緩和したすみ肉まわし溶接継手は低応力範囲(100MPa)において疲労寿命が2倍程度になることを示した.
  • 山階 清永, 山口 隆司, 高井 俊和, 彭 雪
    2015 年 71 巻 2 号 p. 221-233
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
     鋼I型断面の下フランジ連結部では,千鳥配置と矩形配置を組み合わせた砲台配置と呼ばれるボルト配置を採用した高力ボルト摩擦接合継手が多く見受けられる.砲台配置の継手では,継手外側において,抵抗断面を大きく確保できるという利点がある.しかし,砲台配置において,ボルトが8列を越える,多列となった場合の設計法は明確となっていない.本論文では,8列を超える砲台配置の設計法を検討することを目的とし,砲台配置の継手に対して,弾塑性有限変位解析を行った.解析におけるパラメータはボルト配置,ボルト列数およびすべり降伏耐力比とし,それぞれのパラメータが継手のすべり強度およびすべり発生までの荷重伝達メカニズムに与える影響について検討した.その結果,多列砲台配置に対する現行の設計法が安全側の設計であることを確認した.
  • 藤田 豊, 木全 宏之, 堀井 秀之
    2015 年 71 巻 2 号 p. 234-243
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
     堤体に鉛直ジョイント有する重力式コンクリートダムを対象に,三次元動的クラック進展解析を用いて耐震安全性の検討を行った.鉛直ジョイントの摩擦特性にはMohl-Coulombの破壊規準を適用し,ダム堤体-基礎岩盤-貯水連成系モデルを用いて三次元動的クラック進展解析を行い,鉛直ジョイントに伴う特有のクラック発生,進展挙動について精緻に評価した.また,三次元動的クラック進展解析から得られるリガメント残存高さと入力地震動の加速度レベルの関係を検討し,鉛直ジョイントを有する重力式コンクリートダムの定量的な耐震安全性評価を試みた.
  • 川崎 佑磨, 寺村 直人, 伊津野 和行, 岡田 慎哉
    2015 年 71 巻 2 号 p. 244-254
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
     我が国の橋梁には,1995年に発生した兵庫県南部地震以降,積層ゴム支承が積極的に導入された.近年,経年劣化や地震などにより,積層ゴム支承の損傷が報告されている.しかし,ゴム支承内部を含めた損傷度評価が困難であり検査手法もないのが現状である.本研究では,非破壊検査法の一つであるアコースティック・エミッション(AE)法を用いた損傷評価について検討した.
     事前にせん断試験を受けた供試体を使用して,繰返し圧縮載荷による試験を行った.その結果,もっとも大きな負荷履歴を有する供試体において特徴的なAEパラメータ挙動が確認され,マイクロスコープによる観察においても内部の損傷が確認された.さらに,現地計測においても同様の結果が得られ,交通荷重による加振のみでAE法によるゴム支承の損傷評価ができることを示した.
  • 柳澤 則文, 大山 理, 栗田 章光
    2015 年 71 巻 2 号 p. 255-266
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
     近年,不審火,放火,沿線火災あるいは車両事故による炎上により,一般橋梁や高架橋の火災事例が国内外を問わず数多く報告されている.しかしながら,橋梁では,トンネルのような大規模な火災事例は少なく,火災時における性能照査手法は必ずしも明確に示されていない.一方,性能照査を行う場合,高温状態での終局耐力をより正確に評価するため,2種類以上の外力が同時に作用する場合の相関関係を把握することが重要となる.そこで,鋼合成桁を対象に高温時の相関関係について検討を行った.
     本文では,その検討結果を踏まえ,火災時における橋梁の性能照査において必要とされる終局耐力相関曲線を提示する.
  • 竹谷 晃一, 佐々木 栄一
    2015 年 71 巻 2 号 p. 267-276
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
     橋梁振動を対象とした同調質量系発電デバイスを提案するとともに,その基本特性について検討した.同調質量系発電デバイスは,従来橋梁の制振のために設置される同調質量ダンパー(TMD)を応用し,ダンパーが吸収する振動エネルギーをもとにEnergy Harvesterとして活用するものである.本研究では,橋梁振動を対象とした同調質量系発電デバイスの有利な装置構成と設計に関する検討を行うため,単質点系と二質点系の同調質量系発電デバイスを提案し,解析を行った.その結果,二質点系は発電装置の減衰比に対する鋭敏性が小さく,蓄電において有利であることを導いた.微変動する橋梁の固有振動数に対しても,二質点系はパラメータ設計によって柔軟に対応できることを示した.
和文報告
  • 川崎 佑磨, 中尾 尚史, 伊津野 和行
    2015 年 71 巻 2 号 p. 199-207
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/20
    ジャーナル フリー
     橋梁に対する津波荷重を考える上で,数値解析手法の整備は欠かせない.本研究では,津波を模擬した流れによって矩形断面の桁模型に作用する力と圧力を,オープンソースの数値解析コードOpenFOAMで計算し,水理実験結果と比較して考察した.乱流モデルとして標準k-εモデルとSST k-ωモデルを用い,桁模型上流における水位と流速の時刻歴を与えて二次元の非圧縮混相流解析を実施した.その結果SST k-ωモデルでは,抗力,揚力,流力モーメントとも,時間的な変化をよく再現することができた.圧力分布に関しては,桁模型下面の波が到達する側において,負圧が生じる部分が解析では実験より小さく評価されたのに対し,上面における圧力分布は精度よく再現することができた.
和文ノート
  • 高橋 和也, 本田 敦, 野澤 剛二郎, 土肥 哲也, 小川 隆申
    2015 年 71 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/20
    ジャーナル フリー
     列車速度500km/h領域の超高速鉄道のトンネルでは,微気圧波の低減対策として坑口にトンネルより大きな断面積を持つ角型の緩衝工が設置されている.緩衝工をトンネル断面と同じ円型にすると,建設コスト低減などの利点がある一方で,緩衝工の効果が減少したり,突入時の空気振動が発生する恐れがある.本報告では,超高速鉄道における微気圧波の低減効果を確保し,かつ空気振動を十分なレベル以下とする円型緩衝工の可能性を検証することを目的とする.そのために,1) 緩衝工の断面形状をパラメータとした1/31スケールの模型試験と,2) 山梨実験線に設置した円型緩衝工の現地計測を行い,これらの結果より円型化による微気圧波ならびに空気振動への影響を確認することで,その有効性を明らかにした.
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