土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
71 巻, 3 号
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和文論文
  • 四條 利久磨, 青木 圭一, 広瀬 泰之, 鈴木 俊光, 越村 俊一
    2015 年 71 巻 3 号 p. 277-294
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,高速道路橋で一般的に用いられている箱桁断面を対象に,津波入射波形状の違いが作用する津波波力に及ぼす影響を,水理模型実験により検討した.その結果,最大津波高,流速が同じでも津波入射波形状が異なれば,作用する波力も大きく異なることが明らかとなり,最大波力は,津波入射波の波面勾配を関数とした整理が可能であることが分かった.また,数値解析により水理模型実験の再現を行った.その結果,津波が橋桁に衝突する際の波力は2次元解析により再現できる一方,橋桁水没時の波力を評価するには,3次元解析により,断面周りの渦の3次元構造を再現する必要があることを明らかにした.
  • 八ツ元 仁, 藤原 慎八, 星隈 順一, 谷口 哲憲, 北村 岳伸, 玉越 隆史
    2015 年 71 巻 3 号 p. 295-314
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
     近年,道路ボックスカルバートは断面の大型化や構造の複雑化が生じてきており,それら道路ボックスカルバートの地震時限界状態については未だ不明な点が多い.本研究では,道路ボックスカルバートの耐震性能の照査法を構築する検討の一環として,地震時限界状態を把握するために模型供試体による気中での正負交番繰返し載荷実験を行った.実験により,ボックスカルバートの内面側と外面側の損傷の関係や主鉄筋の降伏の進展過程等を把握するとともに,道路ボックスカルバートの地震時における最終的な破壊状態を確認した.また,道路ボックスカルバートの地震時限界状態の評価手法として2次元骨組み解析を採り上げ,実験の再現解析を行った.そして,解析結果と実験結果の比較を通じて,2次元骨組み解析の再現精度やその適用範囲について評価を行った.
  • 舘石 和雄, 早田 直広, 判治 剛, 清水 優
    2015 年 71 巻 3 号 p. 315-326
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
     すみ肉溶接継手のルート破壊に対しては,のど断面応力を用いた疲労照査法が示されているが,実際にはのど断面応力が定義できない場合も多い.本研究では,これに代わる手法として,有限要素解析で求めた未溶着部の開口変位を用いる方法について検討した.未溶着部の変位は,応力と比較して要素サイズによる影響が小さく,比較的粗い要素分割によっても安定的な値が得られる.解析結果に基づき,1mmの要素を配置して解析を行い,未溶着部先端から1mmの位置での変位に着目することを提案した.き裂進展解析および過去に行われた疲労試験の結果をその変位で整理した結果,変位と疲労強度には高い相関があり,のど断面応力による方法と同等の精度で疲労強度を推定できることが明らかとなった.
  • 本田 敦, 高橋 和也, 野澤 剛二郎, 土肥 哲也, 小川 隆申, 飯田 雅宣, 藤野 陽三
    2015 年 71 巻 3 号 p. 327-340
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
     列車速度500km/h領域の超高速鉄道では,トンネル坑口から微気圧波が発生する恐れがあるが,多孔板を有する緩衝工を入口側坑口だけでなく,反対側坑口にも設置することで効率的に微気圧波を低減することが可能となる.本論文では,超高速鉄道における微気圧波について,十分なレベルまで低減することに加え,沿線騒音および建設コストの低減も考慮した標準的な緩衝工を提案することを目的とする.そのために,1) 列車突入による圧縮波発生から微気圧波放射までを数値的に再現する微気圧波評価手法を示し,2) その微気圧波評価手法を用いて両坑口の緩衝工における多孔板の開口率および設置延長をパラメータとした検討を行い,3) 中央新幹線の全てのトンネルに適用可能な標準的な緩衝工としての多孔板の開口率および設置延長を提案した.
  • 坂井 公俊, 室野 剛隆
    2015 年 71 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/20
    ジャーナル フリー
     複雑な層構成や局所的な軟弱層を含む地盤に対して,地震動レベルによらず適用可能な1自由度モデルによる非線形動的解析法の提案を行った.これは今回提案した地盤の静的非線形解析により地盤全体系の非線形特性を把握し,これを等価な1自由度系に置換することで,簡易かつ高精度な応答評価を可能としたものである.提案法を実地盤に適用することで,詳細な多自由度モデルによる応答を良好に再現できることを確認した.
     さらに多数の地盤に静的非線形解析を実施し,これを一般化することで,地盤の固有周期のみをパラメータとした等価1自由度モデルの構築方法を提案するとともに,応答予測の精度も確認した.本手法を用いることで,地盤のボーリング情報等が十分に揃っていない地域においても,簡易かつ経済的に地震時要注意箇所の抽出が可能となる.
  • 伊藤 義人, 吉野 彰宏, 酒見 真志, 佐藤 遼一
    2015 年 71 巻 3 号 p. 352-366
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
     多室ホロー断面を持つアルミニウム合金押出形材を支柱に用いた新たな橋梁用ビーム型車輌防護柵が,防護柵設置基準・同解説に基づいて開発された.支柱の静的曲げ実験が行われ,得られた支柱の極限支持力を部材選定域グラフにプロットして所定の範囲に入ることが確認された.この防護柵支柱は多室ホロー断面の上部支柱と下部支柱の2つのアルミニウム合金押出形材を,嵌合とステンレスボルトを用いて接合した新しい形式であるので,本研究では衝撃荷重下の動的な挙動を重錘衝突実験と数値解析により求めた.また,この支柱を用いた橋梁用防護柵の車輌衝突シミュレーションを行い,その結果,新たに開発された本防護柵は十分な性能を有していることを明らかにした.
  • 後藤 芳顯, 水野 剛規, 山田 忠信
    2015 年 71 巻 3 号 p. 367-386
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
     トラスのリダンダンシー評価では,死荷重などの常時荷重に加え,部材破断時に作用する衝撃力を破断後の構造系が支えうることを弾性解析により静的に照査する手法が通常用いられる.しかし,弾性解析では衝撃力が大きく評価されるので,照査を満足する構造系は過大になりがちである.これを防ぐには,部材破断後の構造系の変形能とエネルギー吸収能を高めることで衝撃を緩和できる照査法が必要である.ここでは,より合理的で実用的なものして,部材破断後の構造系のエネルギー吸収能がその運動エネルギーを上回ることを照査するエネルギー照査法を提示した.本照査法では,静的複合非線形解析に基づくPushover解析で各エネルギーが近似的に評価できるので,動的解析は一切用いる必要がない.照査法の妥当性は精緻な動的複合非線形解析で検証した.
  • 篠原 聖二, 杉山 裕樹, 金治 英貞, 橋本 国太郎, 杉浦 邦征
    2015 年 71 巻 3 号 p. 402-415
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,鋼管集成橋脚におけるせん断パネルの1)寸法,2)アスペクト比,3)接合方法,及び4)正負交番載荷における繰り返し回数がせん断パネルの損傷過程と終局モードに与える影響について明らかにするために,実大せん断パネルを用いた正負交番載荷実験を行った.実験の結果,本研究において対象とした対角線長が1500mm程度の大型のせん断パネルの場合は,せん断パネルの面外変形の発生は伴うものの,パネルのせん断座屈ではなく,最終的にはせん断パネルの周囲の溶接部の低サイクル疲労に伴うき裂の進展により終局に至った.これは既往の幅厚比パラメータが同程度で小さなサイズのせん断パネルとは異なる終局モードであり,せん断パネルの寸法及び製作方法は損傷過程や終局モードに影響を与えることが明らかとなった.
  • 土屋 智史, 千々和 伸浩, 原田 光男, 三島 徹也, 前川 宏一
    2015 年 71 巻 3 号 p. 429-448
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
     LNG地下タンク群と周辺地盤で構成されるタンクヤード全体の地震時応答挙動を3次元非線形解析で再現し,複数の近接タンク群の相互作用と地震時加速度応答を現地実測結果と比較検討した.近接タンク群を全て考慮し,拘束圧依存性を考慮した地盤材料モデルと多方向に交差するひび割れ群を考慮可能なRC構成則を用い,地盤ボーリング調査データを詳細に反映した3次元地盤-構造モデルを用いることで,多方向に振動する地震時挙動を概ね再現できることを確認した.近接するタンク同士の群効果により,複雑なタンクのオバリング振動を呈する結果が得られた.さらにレベル2地震動に対する非線形応答解析を実施してLNG地下タンク群の変形と損傷状態を算定し,終局限界状態の照査を行った結果,構造安全性は余裕度をもって確保されていることを示した.
和文報告
  • 南 邦明, 糟谷 正
    2015 年 71 巻 3 号 p. 387-401
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
     本報告は,橋梁で一般に使用されるSM490Y(SM520も含む), SMA490W, SM570QおよびSMA570Wの溶接施工で用いられるガスシールドアーク溶接の溶接材料の化学成分を明確にすることを目的として,溶接材料の現状調査を行ったものである.調査は,ソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤを対象とし,638枚の溶接材料ミルシートから,炭素(C), 珪素(Si), マンガン(Mn), 燐(P), 硫黄(S)の主要5元素を調査した.さらに,耐候性の材料については,耐候性を高める合金元素である銅(Cu), クロム(Cr), ニッケル(Ni)も調査し合わせて8元素を調査した.これらの結果とJIS溶接材料規格値および鋼材の化学成分との比較を行い,溶接材料の化学成分の現状を明確にした.さらに鋼材の化学成分との違いを溶接割れや硬化の観点から考察を加えた.
  • 三木 千壽, 古東 佑介, 佐々木 栄一, 齋藤 一成, 石川 裕治
    2015 年 71 巻 3 号 p. 416-428
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
     限られた資源の中,適切な橋梁維持管理を実現するうえでまず重要となるのは,橋梁にどのような荷重が作用し,どのような応答を示すのかを把握することである.特に都市部の橋梁では,以前より過積載車両の通行が問題となっており,疲労が重大な損傷となる鋼橋では,活荷重状態を把握することは極めて重要である.本研究では,重量車両特性を把握するためのWeigh-in-Motionを含むリアルタイム全自動処理機能を有する光ファイバセンサを用いたモニタリングシステムを開発し,首都高速道路の橋梁に適用した.そして,5年間にわたる長期継続的モニタリングを実施し,短期的,長期的に変動する荷重状態およびその応答について分析した.
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