土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
72 巻, 4 号
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地震工学論文集第35巻(論文)
  • 庄司 学, 宮崎 史倫, 若竹 雅人, 伊藤 陽, 鈴木 崇伸
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_523-I_541
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震による通信埋設管の被害を受け,これらの地震対策が喫緊の課題となっており,それに活用するための埋設管のスクリーニング手法の開発が求められている.本論文では,東北地方太平洋沖地震による強震動の作用を受けた通信埋設管の被害率に関するデータセットに基づき,管種,亘長及び微地形区分の観点からみた被害率間の数量関係から埋設管の脆弱性の判断基準を定義した上で,被害率と地震動強さの関係を地震被害関数としてモデル化し,これらを活用した埋設管のスクリーニング手法を提案する.また,本スクリーニング手法の適用事例をあわせて示す.
  • 党 紀, 佐藤 拓, 五十嵐 晃, 林 訓裕, 足立 幸郎
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_542-I_554
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,多数の新品支承の実験結果に基づく事前分布を用い,少数の劣化ゴム支承(リング沓)の載荷実験データとベイズ法により,経年劣化を生じたゴム支承の変形性能の確率分布の推定を行った.これにより,確率分布の推定にあたって事前情報となる実験データの不確定性も考慮され,同様の基準で製作されたゴム支承が許容ひずみまで破断しない確率等の情報が得られた.さらに,劣化または新品支承を有する多径間連結桁橋の例を設定し,多数の地震観測記録を用いた漸増動的解析(IDA)を実施し,劣化ゴム支承の変形能のばらつきを考慮した橋梁構造の耐震性能を確率論的に評価した.劣化支承の新品支承への交換および橋脚の耐震補強の有無により,構造の地震時の先行破壊モードやその確率等への影響を定量的に評価した.
  • 井上 和真, 渡辺 和明, 五十嵐 晃, 畑 明仁
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_555-I_568
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     土木構造物の耐震設計,耐震性能照査では,応答スペクトルに適合した地震波を用いて,水平1方向と鉛直方向の組合せによる動的解析が行われる.近年の設計手法や解析手法の高度化に伴い,地震時挙動の3次元性を考慮した耐震検討が行わるようになり,従来の水平1方向に加えて,直交する水平成分の入力地震動の設定も必要となるケースが出てきている.本研究では,従来の設計・照査用の応答スペクトルに基づいて設定された直交方向の応答スペクトルと2方向応答スペクトルに適合する水平2方向入力地震動の作成法を提案した.併せて,多数の強震動の観測記録の水平2方向特性の分析として,応答スペクトルと加速度軌跡の傾向を示した.
  • 齊藤 剛彦, 清水 俊明, 宮森 保紀
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_569-I_579
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,釧路市の低平地を対象に,現地調査により避難可能構造物の選定を行い,既存構造物を利用した津波避難の可能性について,避難の条件を複数設定してその影響を検討した.積雪寒冷地における冬季の津波避難を想定したところ,歩行速度と収容人数が減少したことにより避難可能範囲が縮小した.また,早期避難と構造物の収容力の確保を想定したところ,避難時間と収容人数が増加したことにより避難可能範囲が大幅に拡大した.そこで,避難開始時間を地震直後から津波襲来の直前まで変化させたところ,カバー率の低下の傾向は地区によって異なることが分かった.避難訓練などにより避難開始時間が早まることが期待されるが,地区によっては早期避難だけでは解決できない可能性がある.
  • 橋本 隆雄
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_580-I_591
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2014年11月22日午後10時8分ごろに発生した2014年長野県北部地震によって多くの宅地が被害を受けた.そこで,長野県では11月23~25日に宅地被害の目視による概略調査から,12月上旬に北安曇郡白馬村,小谷(おたり)村,大町市,上水内郡小川村の被災宅地危険度判定を実施した.本論文は,この被災宅地危険度判定調査結果から被害状況について各地区及び被害項目ごとに分析を行ったものである.白馬村大出地区及び白馬村堀之内・三日市場地区では断層が地表面に露出し大きな被害が集中し,小谷村,大町市,小川村及び白馬村蕨平地区では地震動による地すべり等の地盤変状被害が顕著であることが明らかとなった.
  • 上田 恭平
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_592-I_603
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     地盤・構造物系の地震時被害を数値解析により推定する場合,解析に必要な地盤物性は確定値として用いられることが多い.しかし,地盤物性のばらつきを考慮すると,その設定には常に不確実性が伴うこととなる。本研究では,ケーソン式岸壁を対象に,地震時挙動に及ぼす地盤物性値の影響を把握するため,液状化層の地盤パラメータを変化させた感度解析を実施した.その結果,ケーソン下の置換砂における内部摩擦角の不確実性が,地震後のケーソン天端の残留変形量のばらつきに最も寄与することがわかった.また,微小変形解析では地盤物性のばらつきが地震時のケーソン変形量に及ぼす影響を過大に評価してしまう危険性があり,大変形解析により幾何学的非線形性を適切に考慮することで,より合理的な耐震性能の評価が可能になることが明らかとなった.
  • 水谷 司, 飯島 怜, 武田 智信, 築嶋 大輔, 佐々木 崇人
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_604-I_618
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震において新幹線高架橋上のPC(プレストレストコンクリート)製電車線柱が多数傾斜・折損し復旧に時間を要したため,電車線柱の地震対策が急務である.本研究では,新幹線高架橋上のPC製電車線柱の耐震性能を精度よく評価するため,電車線・電線,調整桁などまで考慮した高架橋・電車線柱の三次元連成系骨組みモデルを構築し,地震応答解析により各構造要素間の連成の影響や動的特性を明らかにした.その上で,既存のPC製電車線柱の大規模地震対策として,現行対策である高靭性化補強および鋼管ビームによる門型化,今回新たに提案したTMDによる震動制御について,連成系モデルによる機能評価,費用,施工,メンテナンスなどの側面から多角的に比較検討し,相対的に安価で機能性や施工性に優れたTMDによる震動制御の優位性を示した.
  • 梅本 洋平, 岩本 靖, 堀越 直樹, 大塚 久哲
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_619-I_633
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     橋脚の耐震補強において,大規模な仮設や浚渫が必要となる河川内での施工や空頭制限を受ける場合など,周辺環境や既設構造物による厳しい制約条件下では,施工が困難で工事費が高額となるなどの課題がある.これらの課題を解決する方法として,著者らは,土中に圧入した鋼板により既設橋脚を巻き立て,既設橋脚と鋼板との隙間にフーチングに定着したアンカー筋を設置することで橋脚基部の曲げ補強を行う工法を考案した.本稿は,考案した工法において,施工面では狭隘な空間における施工性と品質の確認を行うとともに,設計面では既往の耐震補強工法との比較とあわせて,履歴特性や損傷の進展状況,補強効果を実験的に明らかにしたものである.
  • 加藤 友哉, 猪飼 豊樹, 山口 雄涼, 賈 良玖, 葛 漢彬
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_634-I_645
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,レ形開先溶接を行ったT型継手の繰り返し曲げ実験により明らかにされたき裂の発生・進展および破断までの挙動についてまとめたものである.溶接ビードの有無,切り欠きの存在および切り欠きの位置がT型溶接継手の性能に及ぼす影響を調べている.その結果,溶接ビードを取り除くことでき裂は発生しにくくなり,対して溶接ビードや切り欠きが存在するとひずみ集中部が出来るため,延性き裂の発生から破断までに与える影響が大きいことがわかった.
  • 野口 竜也, 西川 隼人, 吉田 昌平, 香川 敬生
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_646-I_658
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     鳥取県では1943年鳥取地震,2000年鳥取県西部地震が発生しており,地盤構造の影響により被害状況の相違が報告されている.鳥取県内においては,微動探査の実施により地盤震動特性の把握および地盤構造が推定されている.本研究では,まず鳥取県内の地震観測点の地震記録を用いたレシーバー関数の結果を整理し,その結果と物理探査の結果を基に地盤モデルの再構築を試みた.次に鳥取県内の地震観測点のサイト増幅特性や地盤増幅度を評価し,全体の傾向を把握した.さらに地盤調査結果を地震観測点以外の地点のサイト特性評価に適用することを検討するために,改定した地盤構造モデルによるSH波伝達関数や平均S波速度,微動H/Vとサイト特性の関係を調べた.
  • 長澤 浩平, 曽根 照人, 山本 龍, 井合 進, 澁谷 啓
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_659-I_675
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     神戸市内の海岸保全施設を対象に,南海トラフ巨大地震に伴う最大クラスの津波に対して減災を目的とした対策工の検討を行った.まず,津波に先行する地震動に対する変状を動的有効応力解析および簡易法で設定した.施設の変状を設定するのに必要な検討対象全域の,埋立土および沖積砂質土の液状化強度を限られた土の繰返し非排水三軸試験結果より得られる液状化強度比と補正N値から設定した関係式より求めた.次に,施設の変状を考慮した津波シミュレーションより堤内地の浸水エリア,浸水深を推定し,対策が必要な箇所の選定および対策案を検討したものである.
  • 畑 明仁, 片岡 正次郎
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_676-I_690
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震は東北地方から関東地方の広範な地域に渡り,多数の橋梁に対し様々な被害をもたらした.その被害は津波によるものだけでなく,地震動によって被災した橋梁も多数あることが報告されている.本論は,東日本全域にわたる推定地震動強度と橋梁被害データとを関連付け,東日本大震災における地震動強度と橋梁被害の関係についてマクロ分析を行った結果をまとめたものである.検討の結果,橋長が長くなった場合や構造形式が連続桁である場合の橋梁の被害率が高いこと,竣工年代と被害率の関係には必ずしも強い相関が表れないことなどが統計的に示された.
  • 山田 雅行, 伊藤 佳洋, 長尾 毅, 野津 厚, 長坂 陽介, 大岩根 尚
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_691-I_699
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     比較的小さな盆地構造(カルデラ)を有する薩摩硫黄島において,臨時地震観測によってサイト増幅特性の算定を行い,一方で,常時微動観測(単点H/Vおよびアレイ観測)を行い,地盤モデルの推定を行った.硫黄島港および薩摩硫黄島飛行場において算定したサイト増幅特性と,常時微動に基づく地盤モデルに対して一次元重複反射を用いて算定した伝達関数の比較を行った.港湾および飛行場の伝達関数は,0.2~0.3Hz付近にピークは見られるものの,それほど明瞭なピークは見られず,サイト増幅特性には盆地構造による3次元的な効果や,地震波の入射方向の効果が含まれているものと考えられる.また,港湾と飛行場のサイト増幅特性の0.2~0.3Hz付近の共通の特徴から,両地点は深い構造を共有していると推察され,実際のカルデラ構造が従来の解釈より複雑である可能性が示唆された.
  • 南 貴大, 藤生 慎, 中山 晶一朗, 高山 純一
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_700-I_707
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     近年,橋梁の長寿命化の検討が行われるようになってきた.高度経済成長期に建設された橋梁は耐用年数を迎え,架け替えや長寿命化の検討が行われている.石川県でも計画的かつ予防保全的維持管理に転換し,橋梁長寿命化を図っている.そのため橋梁定期点検が5年に1度の頻度で行われており,各部材ごとの健全度と橋の重要度によって各橋梁の優先度が記録されている.しかし石川県またはその周辺には森本富樫断層帯をはじめ多くの活断層が存在し,地震によって橋梁が被災する可能性が高く,地震リスクを考慮していない既存の橋梁補修優先度決定法では地震が発生した場合,莫大な損害を受けることが予想される.そこで本研究では定期点検結果を用いて地震リスクを考慮した補修優先度決定法を主成分分析を用いて提案する.
  • 小野寺 周, 松崎 裕, 鈴木 基行
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_708-I_718
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     免震橋梁において,設計地震動を超過した強度を有する極大地震動の作用下では,免震支承のハードニングの生起やRC橋脚の塑性化進展の可能性があり,その結果として生じ得る部材の終局的な損傷に対して設計上の配慮が必要である.本研究では,キャパシティデザインの観点から,極大地震動に対する免震支承-RC橋脚系の損傷部材の明確化と地震時安全性の向上を図るための検討を行った.その結果,免震支承のハードニング開始点における水平耐力がRC橋脚の終局耐力よりも大きくなるように耐力格差を設けることで,万一の終局的な損傷をRC橋脚だけへと確実に誘導でき,さらに,損傷が誘導される部材であるRC橋脚の変形性能を高めることで,極大地震動に対する地震時安全性の向上が図られることを示した.
  • 党 紀, 蛯沢 佑紀, 五十嵐 晃
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_719-I_732
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     免震ゴム支承の水平2方向載荷実験やハイブリッド実験が過去に行われているが,少数の特定の地震波に対する結果に限定されている.本研究では,高減衰ゴム支承の水平2方向復元力モデルとして提案された修正Park-Wenモデルを用いた橋梁モデルを対象に,100セットの地震記録を使用した漸増動的解析(IDA)を行った.水平2方向地震動を受ける免震橋の応答は,水平1方向地震動を独立に入力した結果と比較し,その相違を確率論的に評価した.またこの結果に基づき,免震橋の耐震性能照査における2方向入力を用いた応答解析の代替手法として,免震支承の2方向復元力の相互作用を考慮しないモデルを用いた解析や橋軸方向および橋軸直角方向の1方向入力による動的解析のみを行い,統計的な信頼区間を考慮して定めた補正係数を乗じて照査に用いる方法を提案した.
  • 三好 忠和, 常田 賢一
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_733-I_747
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2009年に発生した駿河湾を震源とする地震を契機として,盛土のり面緊急点検が実施され,特に危険性の高い盛土については耐震性評価を行っている.耐震性評価はニューマーク法によっているが,一般的に安全側とみなされる設計地震動が用いられている.しかし,2011年に設計地震動が見直され,従来は安全側とみなされていた地震動が必ずしも安全側の評価とならないことが懸念された.これまでに道路および関連施設の盛土のり面を対象に,タイプの異なる地震動について耐震性評価を行い,残留変位量と影響素因との相関を明らかにした.本稿では盛土内の地震応答の影響について検討し,設計地震動のタイプの違いによる残留変位量の大小関係について精査した.さらに,降伏震度と残留変位量の相関からレベル2地震動における残留変位量の簡易推定法を提案した.
  • 片岡 正次郎, 田崎 賢治, 具志 一也, 松本 幸司
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_748-I_755
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     東北津波により12径間中8径間が流出した国道45号歌津大橋の津波被害再現解析を実施した.沿岸部の津波を非線形長波理論に基づく平面2次元の差分法を用いた津波伝播解析で計算し,さらに橋梁周辺はOpenFOAMによる3次元津波解析(気体・流体の混相流解析)で再現した.3次元津波解析で算出された上部構造の各点に作用する時々刻々の圧力による津波荷重を上部構造断面モデルに載荷する時刻歴解析を実施し,各支承反力の時刻歴を算出した.反力と支承の破断耐力を比較した結果,流出した区間では海側の支承から鉛直上向きの力で破断する一方,流出しなかった区間では支承は破断しないことが示され,実被害と整合していた.大きな鉛直上向きの力には,空気層の影響が大きいことがわかった.
  • Ahmed WAHID UDDIN, 大澤 脩司, 藤生 慎, 髙山 純一, 中山 晶一朗
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_756-I_767
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     円滑な緊急輸送のため,防災拠点を相互に連絡する道路として緊急輸送道路が指定されている.しかし,災害時には緊急輸送道路の被災も想定されるが,これまでそのような検討は十分行われていない.本研究では河川氾濫による道路の冠水,地震による建物倒壊に伴う道路閉塞,両者の複合ケースを考慮した緊急輸送道路を用いた県庁と市町村役場間の到達可能性を分析した.その結果,県庁と市町村役場間の緊急輸送道路には市町村役場まで到達不能になる冠水リスクが多く存在すること,高い計測震度が予想される地域では建物倒壊による道路閉塞によって,市町村役場まで到達不能となる可能性が高いこと,複合ケースでは,冠水被害を受けなかった区間で建物倒壊に伴う道路閉塞が生じることで市町村役場まで到達不能となる可能性が高まることが明らかとなった.
  • 宮本 崇, 入原 渉, 鈴木 猛康, 藤田 航平, 市村 強
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_768-I_776
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     複雑な表層地盤構造を呈する甲府盆地では,地震時には局所的な地震エネルギーや地盤ひずみの集中により,ローカルサイト効果に起因する震災の帯の発生が懸念される.このような現象は,通常の被害想定で用いられる1次元解析では評価できないため,高精細なメッシュで表層地盤を3次元的にモデル化した解析が必要である.そこで本稿では,甲府盆地の3次元地震応答解析を試みる.甲府盆地の表層地盤と同様の物性値を有する仮想的な地盤モデルに対する3次元地震応答解析から,不整形表層地盤における地盤ひずみ集中のローカルサイト効果を検討した上で,甲府盆地の地盤モデルに対する3次元地震応答解析を実施し,実地盤における表層での地震時の地盤ひずみ集中効果の定量的評価を行う.
  • 大矢 陽介, 川端 雄一郎
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_777-I_789
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     桟橋構造物の地震後の供用可否判断や最適な修復シナリオ構築に活用することを目的に,地震力や地震後の供用荷重によるRC上部工の損傷が,後続の地震に対する耐震性能に与える影響を模型実験および数値解析より評価した.また,地震応答解析においてRC上部工の損傷を考慮するための桟橋のモデル化方法を提案し,模型実験および被災事例の再現解析で検証した.その結果,余震時の地震力に対する桟橋の残存耐力は,本震時に経験した水平変位と供用時の上部工荷重による上部工の損傷によって低下することが分かった.また,地震応答解析より,RC上部工の損傷を考慮しても余震時の桟橋の残留水平変位は変わらないこと,上部工の損傷が大きくなるほど杭上部で曲率は小さくなるが,地中部では損傷が大きくなっても杭の曲率の変化は小さいことが分かった.
  • 梶尾 辰史, 谷本 俊輔, 片岡 正次郎, 松本 幸司, 佐々木 哲也, 庄司 学
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_790-I_809
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     南海トラフ巨大地震・首都直下地震の発生が懸念されている中,河川堤防と併せて,都心部に多く存在する河川の特殊堤についても耐震対策が検討されている.しかし,河川特殊堤の地震時挙動等についてはこれまで十分に研究が進められていない.本研究では特殊堤の効果的な耐震対策工法の検討や現行設計手法の適用性を検証するために動的遠心模型実験を実施した.この実験計測値を基に地盤改良による耐震対策工への作用荷重の設計値と実験値を比較することで抵抗力の土水圧や底面摩擦力に差異が生じていることが確認でき,耐震対策工の作用荷重モデルの課題や改善点を明らかにした.
  • 宮本 崇, 本田 利器
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_810-I_820
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     耐震性能照査に用いられる設計地震動の設定プロセスでは,与えられた条件を満たす波形が一意に定まらず無数の設計地震動の候補が想定されうる問題がある.これに対し,想定される地震動群の性質を反映した代表波を合成する代表波の開発を行っているが,その初期段階としてこれまでに地震動波形をその性質に応じてクラスタ化する手法を構築しており,本稿ではこの手法の観測地震動記録群への適用性を検証した.震源特性や伝播経路特性などの物理特性に条件を課した地震動波形群をクラスタリング対象とし,非線形10自由度系を耐震性能照査の対象構造物に設定した条件下において本手法を適用した結果,様々な部材への最大変位や履歴吸収エネルギーの影響に応じた波形群のクラスタが形成されていることが確認でき,提案手法の適用性が示された.
  • 高橋 良和, 秋山 充良, 片岡 正次郎, 本田 利器
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_821-I_830
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,設計で考慮する事象を超えた事象への対応についての関心が高まり,「危機耐性」という概念が共有されるようになってきた.しかしながら,その理念は理解されつつあるものの,それを如何に耐震設計体系に実装すればよいのか,まだ試行段階にある.一方で,危機耐性のような考え方は,技術者にとって全く新しい概念ではなく,例えば道路橋示方書では,地震時にも支承部が安定して挙動することを求めながらも,支承部の破壊を前提として機能する落橋防止システムの採用が記載されている.本論は,平成24年道路橋示方書を対象に,危機耐性に資することができる概念,事例を抽出し整理するとともに,国内外の動向を踏まえ,危機耐性に配慮した設計に対する課題を整理する.
  • 佐藤 忠信
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_831-I_841
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     地震動位相を線形位相遅れ部とそれからの変動部に分離し,位相変動部を対象とし,現時点で判明している位相差分の確率特性を明示する.まず,観測記録から位相差分の2乗和平均特性と自己相関特性を抽出し,位相差分の確率密度関数の特異性を明らかにする.抽出された特性を表現できる確率過程として,ルベーグスチルシス型積分方程式の表記法を提案する.積分核で2乗和平均特性と自己相関特性を具現化し,積分関数で確率過程の確率特性を表現するものとする.その上で,積分関数を規定する確率過程に独立同分布と分散の存在を仮定できるときには,抽出された2特性が的確に再現できることを示す.さらに,位相差分の分布特性が差分間隔の大きさによらず,ベキ乗則に従うことを明らかにし,積分関数が満たさなければならない一般的確率特性について言及する.
  • 山下 典彦, 前川 広基, 宮脇 幸治郎, 太田 充紀, 三浦 輝之
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_842-I_855
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     高度経済成長期に大量に整備された構造物の劣化を評価することは,維持管理や更新を行う上で重要であると共に,構造物の耐用年数期間内に生じると考えられる損傷や劣化に伴う評価法を確立する必要がある.本研究では,3種類の単柱矩形RC橋脚を対象とし道路橋示方書耐震設計編(H24年版)で耐震設計を行い,得られた柱基部でのM-φ関係を回転1自由度系の曲げモーメント‐回転角に適応し,離散ウェーブレット変換及びウェーブレットスペクトルにより加速度応答波形の特徴抽出を行った.さらに,ウェーブレット変換と経年劣化との関係を調べるために,残留変位に着目し,変位及びウェーブレット係数の増分の相関性を検討した.
  • 中垣 規子, 小濱 英司, 楠 謙吾, 村上 功一
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_856-I_870
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震により,東日本各地の港湾において多大な被害が発生した.岸壁被害の中には,地震動の作用に加え津波作用により被害が拡大したと考えられるものも見られた.対象とする相馬港の岸壁においても,タイワイヤー破断等の大きな被害が見られ,地震動以外に津波作用が影響したと考えられた.まず,排水条件を考慮できる有効応力有限要素解析により,地震動の作用による解析を行ったところ,対象岸壁では地震動による被害の程度は小さいことがわかった.よって,地震後の津波作用により被害が拡大したと考えられた.そこで,地震動作用後の津波作用の影響をモデル化し,地震動から津波作用までの一連の解析を実施した.その結果,背後の残留水圧の増加を考慮し強制水圧として与えることにより被災状況を再現できることがわかった.
地震工学論文集第35巻(報告)
  • 藤木 昂, 秦 吉弥, 古川 愛子, 村田 晶, 常田 賢一, 宮島 昌克, 湊 文博
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_871-I_883
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本稿では,2014年長野県神城断層地震において深刻な住家被害等が発生した白馬村神城地区を対象に,本震時に作用した地震動を広域かつ高密度に評価した.具体的には,まず,特性化震源モデルに基づく強震波形計算を行い,神城地区内における常時微動計測地点(計232地点)における本震時の地震動を推定した.次に,推定地震動を入力波とした墓石の転倒解析を実施し,転倒率に関する実績値と推定値を比較することによって,推定地震動の適用性について確認を行った.最後に,推定地震動の指標値と住家の被災実績との関係に基づくフラジリティカーブを構築し,地震動指標に関する考察を行った.
  • 湊 文博, 秦 吉弥, 山田 雅行, 鍬田 泰子, 小山 真紀, 中嶋 唯貴, 常田 賢一
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_884-I_894
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本稿では,1993年北海道南西沖地震における青苗地区での強震動を推定し,強震動作用中の避難不可能時間を評価した結果について報告する.具体的には,青苗地区において高密度常時微動計測を行い,得られた結果に基づき同地区内の既存強震観測点(K-NET青苗)などにおける地盤構造を評価した.そして,K-NET青苗(沿岸域の低地)およびJMA松江(山域の高地)を対象地点としてサイト増幅・位相特性を評価した.次に,経験的サイト増幅・位相特性を用いた強震動評価手法と特性化震源モデルの組合せを用いて,本震時にK-NET青苗およびJMA松江に作用した地震動を推定した.最後に,推定地震動による瞬間計測震度の時刻歴を計算することで,K-NET青苗およびJMA松江での強震動作用中の避難困難時間を比較検討した.
  • 永尾 浩一, 中澤 博志, 神宮司 元治, 末政 直晃
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_895-I_904
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     不飽和化工法は,安価かつ施工がシンプルなことから,2011年東北地方太平洋沖地震以降,住宅の液状化対策としての利用が考られている.本工法は既に施工性の確認はなされているものの,出来型の確認手法については未だ確立されていないのが現状である.そこで,著者らは東北地方太平洋沖地震で液状化が確認された千葉県浦安市内の不飽和化地盤において,間隙水圧計測を伴う動的コーン貫入試験による液状化層の不飽和化の確認を試み,コーン打撃時に生じる過剰間隙水圧計測結果に違いが認められた.本研究では室内で土槽地盤を用いた簡易的なコーン試験を実施し,間隙水圧応答特性把握を行った.その結果,若干ではあるが,コーン内部のセンサーで捉えた間隙水圧とコーン近傍で発生する過剰間隙水圧に違いがあることが認められた.
  • 東野 晋也, 丸山 喜久, 猪股 渉
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_905-I_915
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,2005年千葉県北西部地震の際に東京ガスのリアルタイム地震防災システムSUPREMEが高密度に観測した地表面地震記録と,強震動予測により求めた工学的基盤(露頭)波を用いて,表層地盤の増幅特性を推定し,SUPREMEが搭載している広域地盤データと比較した.この結果,広域地盤データから推定される地盤増幅特性は,供給エリアの広範で概ね適切であるものと評価された.さらに,2011年東北地方太平洋沖地震を対象に増幅特性を推定した既往研究と比較しても,その整合性が確認された.
  • 岡本 敏郎, 種田 智憲
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_916-I_925
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震により,特に千葉県湾岸では住宅の傾斜やライフラインの被害など生活基盤に多大なる影響が生じ,中でもマンホールの被害数は多かった.本研究では,重量化工法の中でも上部型と均等型に関し,室内振動台実験による定量的分析を行い,さらにマンホールの機能を考察することにより適切な許容浮上量と回転量を設定し,これに対応する許容最大加速度を考察した.その結果,上部型と均等型共に浮上抑制は期待できるが,上部型は回転が大きく,均等型は回転も抑制できることが解った.また,均等型であっても,緩い場合以上の密度では地震動が最大加速度800gal程度以上でも重量化工法の適用性は高いが,地震動が最大加速度200gal以上で大変緩い場合には液状化後の沈下が発生する可能性がある.
  • 鍬田 泰子
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_926-I_933
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     地震時のライフライン相互連関に関する先行研究は多々あるが,実際の震災時のライフライン間の関係を定量的に事後評価した事例は少ない.本研究では,震災報告書における他のライフラインの関連用語の使用は,そのライフラインによって何らかの影響を受けた事象であると仮定し,報告書内の用語検出によるライフライン相互連関の評価方法を提案し,ライフライン間の影響度合いを可視化させた.本研究の結果,ライフラインの多くは,原発事故の影響を考慮せずとも電力に強く依存していたことが明らかになった.また,電力の次に,交通系ライフラインが施設被害や復旧活動に影響していた.さらに,ライフラインの影響度合いは同一震災であれば報告書によらず類似した結果が得られることも確認した.
  • 清田 隆, 池田 隆明, 合田 且一朗, Rama Mohan POKHREL, Gabriele CHIARO, 片桐 俊彦
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_934-I_939
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2015年4月25日に発生したゴルカ地震(Mw7.8)は,ネパール中部地域に大きな被害を与えた.地震動の大きかった地域では組積造の建物が倒壊し,多くの犠牲者が生じた.また,地盤に関しても多くの被害が生じ,道路の被害や寸断などが生じた.本報告では,地震発生から約1週間後に実施された現場被害調査を基に,同地震における道路の地盤災害の様子をまとめた.カトマンズでは幹線道路の盛土の沈下,カトマンズ北部の山地や震源地周辺では,道路沿いに落石・斜面崩壊が多く発生し,震災後の交通に影響を与えていた.カトマンズの幹線道路では2015年11月にも調査を実施し,道路被害の分布は微動観測による地盤振動特性と良く整合することが判った.また,震源に近づくほど斜面崩壊の数と規模が大きくなる傾向が確認された.
  • 杉岡 弘一, 光川 直宏
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_940-I_953
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     鋼3径間連続ゲルバー箱桁橋のレベル2地震動に対する耐震性能向上対策として,ゲルバーヒンジ部での主桁連続化と端橋脚およびゲルバーヒンジ部での制震デバイスの適用について,その有効性を非線形時刻歴応答解析の実施を通して検証した.その結果,ゲルバーヒンジ部の主桁連続化は,耐震性能の向上に寄与するが,端橋脚部では支承の移動可能量を超過することを確認したため,端橋脚部に制震デバイスを併用することとした.制震デバイスの配置および種類によって地震応答の低減効果が変化することが明らかになり,主に耐震性能向上対策におけるせん断パネルダンパーの併用効果を示した.さらに,鋼箱桁橋とコンクリート箱桁橋との比較から,橋梁構造の違いに着目したせん断パネルダンパーによる耐震性能向上効果を示した.
  • 五十嵐 徹, 窪田 忠仁, 澤田 純男
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_954-I_965
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     上水道施設としての配水池は飲料水の貯留池であり,地下式の配水池は側壁と頂版,底版,中間壁により囲まれた低層構造物であることが多く,変形抑制効果が期待できる.一方,計算の簡略化から,実務レベルの設計では二次元解析モデルが標準的に用いられてきた.同一の構造特性を持つ断面が連続する構造物の場合は二次元解析を用いても立体的な剛性をある程度モデル化することができるが,形状が複雑な場合はモデル化は困難である.ここでは,複雑な耐震壁配置とブロック分割された大規模地下式RC配水池をケーススタディーとして,二次元静的解析と三次元静的解析結果を比較し,耐震設計にかかる三次元静的解析の適用性を述べる.結果,二次元静的解析では不経済な設計となり,三次元静的解析により合理的な設計が可能となることが示された.
  • 長屋 和宏, 片岡 正次郎, 日下部 毅明, 松本 幸司
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_966-I_974
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     地震発生時における国土交通省の所管施設の管理では,大きな震度が観測されたエリアで点検を実施している.しかしながら,被害が甚大でその分布が広範にわたる場合や地震が夜間に発生した場合など,被害状況の把握に数時間以上を要することがあり,迅速な災害対策のための意思決定が困難になることが懸念される.そこで,地震発生直後に得られる強震記録から地震動分布を推計する手法および地震動分布とインフラ施設の基礎情報をもとに被害状況を推測する手法の開発を行った.また,開発成果を踏まえ,施設管理者などの意思決定の支援を目的に地震発生直後の情報の少ない段階においてインフラ施設の被害推測情報などを提供する,「即時震害推測システム」の開発を行った.開発にあたっては,災害対応現場の担当者との意見交換などを踏まえ,基本的な機能に加え,災害時の意思決定支援に資する機能を備えた.
  • 池田 隆明, 小長井 一男, 釜江 克宏, 佐藤 京, 髙瀬 裕也
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_975-I_983
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     2014年長野県北部の地震は震源深さが浅い内陸地殻内地震であり震源近傍域に強震動を引き起こすとともに,起震断層と考えられる糸魚川-静岡構造線を構成する神城断層に沿って地表地震断層が確認された.地震発生直後に地震被害調査を行い震源近傍域で強震動と断層変位に伴う地盤変形に起因すると考えられる構造物の被害を確認した.また経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリングにより震源モデルを推定した.その結果,断層面上にやや大きめの一つの強震動生成域を設置することにより震源近傍の観測記録を再現できることがわかった.また,本地震の震源モデルの地震モーメントと短周期レベルの関係は既往のスケーリング則で表現できることなどが明らかにされた.
地震工学論文集第35巻(ノート)
  • 藤木 昂, 秦 吉弥, 村田 晶, 古川 愛子, 一井 康二, 常田 賢一, 湊 文博, 吉川 登代子
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_984-I_992
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     本稿では,2014年長野県神城断層地震による強震動の作用によって深刻な住家被害等が発生した白馬村神城地区を対象に,高密度常時微動計測を実施した結果について報告する.具体的には,同地区内において232地点に及ぶ常時微動計測を行い,H/Vスペクトルのピーク周波数などに着目することで,神城地区における地盤震動特性を明らかにした.さらに,常時微動H/Vスペクトルとサイト増幅特性の経験的関係に基づき,微動計測地点(232地点)でのサイト増幅特性をそれぞれ評価し,サイト増幅特性の値に対する住家被害の関係について基礎的検討を行った.
  • 松田 泰治, 大鳥 靖樹, 鵜野 禎史, 兼子 一弘, 徳丸 昂, 内藤 伸幸
    2016 年 72 巻 4 号 p. I_993-I_1004
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     高減衰積層ゴムは,一般の天然ゴム系積層ゴム支承に比べMullins効果による最大経験ひずみ依存性が顕著である.従って,この最大経験ひずみ依存性が地震応答に及ぼす影響を検討しておくことは重要である.最大経験ひずみ依存性を考慮した履歴モデルの一つにバイリニア型Double Targetモデルがあり,既往の研究ではそのモデルの構築,免震構造物の地震応答解析を実施した.本研究では,ラップシェア型試験片を用いた実験結果からモデルの妥当性を定量的に検証し,免震構造物の地震応答解析を様々な入力地震動で実施し,復元力特性モデルの相違が免震橋の応答評価に与える影響を明らかにした.
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