土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
72 巻, 5 号
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複合構造論文集第3巻(招待論文)
複合構造論文集第3巻(論文)
  • 石井 佑弥, 小泉 公佑, 中村 一史, 古谷 嘉康, 中井 裕司, 西田 雅之
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_33-II_45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,既往の研究で開発されたトラス桁形式検査路の合理化および改良を図るために,ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)アングル材を用いてトラス格点部を補強するとともに,格点間距離を延長し,床版厚を小さくした実大模型(支間長5.8m)を製作して,その使用性と耐荷力を載荷実験により検証した.実験の結果,両モデルともに設計荷重に対するたわみ制限,振動使用性を満足すること,4点曲げ載荷実験からは,上弦材に破壊が生じたものの,最大荷重は設計荷重に対して4倍程度の余裕があり,十分に安全であるといえた.さらに,設計荷重における面外水平変位は小さいこと,弦材,斜材には,ほぼ理論値通りの軸力が発生していることから,トラス桁形式検査路は,トラス構造として効果的に機能していることが確かめられた.
  • 冨山 禎仁, 西崎 到
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_46-II_55
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     本報では,コンクリート内部の高アルカリ環境下における接着系あと施工アンカーの劣化挙動と,その試験評価方法について検討した結果を報告する.ACI 355.4-11を参考に,水酸化カリウム水溶液への浸せきによる接着剤の力学特性の変化を,アンカーのスライス試験片の押抜試験により評価した.また,浸せき前後のアンカー接着剤について赤外線分光分析を行い,その化学構造の変化を調べた.その結果,40℃で4000時間浸せきした場合においても,接着強さの明確な低下は認められなかった.一方,接着剤の樹脂成分である不飽和ポリエステルは,アルカリによる加水分解が進行しつつあることが明らかとなった.加水分解の程度は環境液の温度が高い方が大きく,また,浸せき時間が長くなるにつれ,接着剤表面から内部へ徐々に進行する挙動を示した.
  • 木作 友亮, 藤山 知加子
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_56-II_68
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,種々の載荷条件を与えた孔あき鋼板ジベルのせん断ずれ挙動および破壊性状について検討した.まず,拘束条件を変化させた静的押抜き試験を実施し,拘束条件がせん断力-相対ずれ変位関係に与える影響を検討した.正負交番載荷試験では,正負交番作用がせん断破壊面を急速に平滑化させることを確認した.次に,疲労載荷試験では,荷重振幅が同じであっても疲労寿命が4オーダー異なるケースがみとめられた.本研究の疲労載荷試験と既往の実験結果から,様々な条件を包含した孔あき鋼板ジベルの疲労限度線図を提示した.また,ジベル孔のせん断破壊面の観察結果からは,板厚6.5mmの孔あき鋼板ジベルであっても,孔内コンクリートが二面破壊を呈する可能性が示された.
複合構造論文集第3巻(報告)
  • 溝江 慶久, 中島 章典, NGUYEN Van Duong , 永尾 和大
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_69-II_79
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     土木学会複合構造標準示方書では,合成はりの曲げ破壊照査に際し,鋼はりの座屈挙動に応じて3つの断面クラスに分類し,それぞれ異なる限界状態(材料損傷)を想定することとしているが,このような断面分類を行うことなく,発生する材料損傷の種類やそれらの発生順序を任意に設定することができれば,鋼とコンクリートの材料特性を最大限に活かした合理的な設計が行える可能性がある.そこで本研究では,上記のような設計法の構築に資するため,コンパクト断面(全塑性モーメントまで座屈しない断面)に分類され,頭付きスタッドの配置間隔が異なる2種類の合成はり模型試験体の静的載荷試験結果を整理し,両者の構成部材の損傷順序を比較して,耐荷挙動の違いについて検討した.
  • 金子 雅廣, 白井 洋史, 匂阪 興平, 山口 浩平, 日野 伸一
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_80-II_88
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     成田空港の誘導路には,既存施設等の制約から,その一部に合成床版形式の橋梁構造が採用されている.橋梁形式の誘導路は世界的にも事例が少なく,現状では設計手法が確立されているとは言い難い.このため,設計においては道路橋の設計手法が用いられたが,FEMによる検証とともに,コンクリート床版については実規模大供試体を用いた押抜きせん断試験により床版の安全性を確認した.さらに,実機を用いた載荷試験により,応力状態を検証し,本橋の安全性を確認した.またコンクリート床版内及び主桁には建設時から計測器が設置され,継続的計測により,航空機走行時のひずみ挙動等が確認されている.本報告では,誘導路橋梁への複合構造形式の適用事例,一連の実験等から得られた知見等を紹介する.
  • 進藤 良則, 玉井 真一, 米澤 豊司, 藤原 良憲, 阿部 雅史, 白仁田 和久
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_89-II_101
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     三陸鉄道ハイペ沢橋梁は,東日本大震災の津波により,甚大な被害を受けた旧橋に代わり新設された.本橋は,橋桁と補強土橋台(GRS橋台)が結合した補強盛土一体橋梁(以下,「GRS一体橋梁」)とよばれる新構造の橋梁である.本橋は交差条件の制約により,GRS一体橋梁では初めて上部工に下路SRC構造を採用し,橋桁と橋台竪壁の接合は,鋼桁に取付けたアンカービームを竪壁に定着する方法をFEMで検討し,採用した.橋長60mはGRS一体橋梁では最長であり,橋梁の設計では橋梁本体と補強盛土を一体とした解析モデルで実施した.上部工の施工は,鋼桁の架設,コンクリート工など,構造系の変化に伴う橋梁の実挙動を把握して行われた.
     本稿ではハイペ沢橋梁の設計施工で得たSRC下路構造の長スパンGRS一体橋梁に対する知見を報告する.
  • 新井 崇裕, 古市 耕輔, 吉澤 弘之, 林田 道弥, 糸久 智
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_102-II_113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     FRPは,持続荷重によってクリープ変形をすることが知られているため,構造部材に用いるにはFRP連結部やFRP部材そのもののクリープ変形を設計で考慮することが重要であると考えられる.FRPの連結としては,高力ボルト継手による摩擦接合,及び支圧接合を想定し,ガラス繊維積層材,及び炭素繊維とガラス繊維の複合積層材を対象として,ボルトの軸力の低下に関するデータ,クリープ破壊しない応力レベルでのボルトの支圧力による円孔周りのクリープ実験,並びにクリープ実験後の残存支圧強度に関するデータをそれぞれ採取した.さらに,ガラス繊維積層材を対象として,ボルトの支圧力による円孔周りのクリープ限度に関するデータを採取した.また,FRP部材としては,ガラス繊維積層材を対象として,梁部材の曲げクリープに関するデータを採取した.
  • 大野 将季, 中島 章典, NGUYEN Minh Hai
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_114-II_123
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     著者らはこれまでジベル鋼板がコンクリートブロックに囲まれた単純な押抜き試験体を用いて,種々の検討を行ってきた.しかし,ここで用いた押抜き試験体と実構造物中の孔あき鋼板ジベルの挙動の対応性が不明確である.本研究では,前述の押抜き試験体においてジベル鋼板の位置を変化させた試験体に加えて,ジベル鋼板が母材鋼板に溶接された構造を模擬したT字型鋼板と十字型鋼板を有する試験体の押抜き試験を行った.また,母材鋼板とジベル鋼板に貼付したひずみゲージから,母材鋼板上部に加えた荷重による母材鋼板とジベル鋼板間の力の向きと大きさも推定した.その結果,試験体のタイプによって孔あき鋼板ジベルのせん断力‐ずれ変位関係などが異なり,また,荷重の増加に伴ってジベル鋼板内には水平方向の力も作用することを確認した.
  • 米津 薫, 藤山 知加子, 土屋 智史, 牧 剛史, 斉藤 成彦, 渡辺 忠朋
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_124-II_134
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     本研究では,複合構造部材を対象とした非線形有限要素解析6種類の結果を用いて,コンクリートの損傷に基づき,複合構造部材の損傷や破壊を評価する手法の適用性を検討した.損傷指標には,空間平均化した偏差ひずみの第2不変量と正規化した累加ひずみエネルギーを選定した.複合構造は複雑な形状となり,局所的に要素寸法分割およびモデル化を行うことが必要となる場合が多く,応答値だけでなく,限界値の算定時にも要素分割の影響を極力低減させる処置が重要となる.適用した損傷指標により,コンクリートの材料損傷が支配的となる各種複合構造部材の損傷と破壊過程を評価でき,非線形有限要素解析により安全性の判定に活用できることを示した.
  • 猪股 貴憲, 斉藤 雅充, 池田 学, 小島 謙一, 進藤 良則, 玉井 真一, 小田 文夫
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_135-II_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     ジオテキスタイルを用いた補強盛土による一体橋梁(GRS一体橋梁)は,桁と橋台,補強盛土を一体化させる工法であり,補強盛土を含めた不静定構造物であるため,橋長の長い橋梁への適用時には,桁のコンクリートの収縮や温度伸縮等の経時的な挙動の影響が増大することが懸念される.そこで,大規模なGRS一体橋梁の経時挙動の把握を目的に,橋長60mの橋梁を対象に施工時から変位やひずみ等の計測を実施した.
     構造物構築後1年半にわたる測定結果より,本橋はコンクリートの収縮による桁収縮は小さく,温度変化による桁の伸縮挙動は橋台竪壁背面の拘束度に応じて,夏季と冬季で異なる傾向があること等を明らかにするとともに,これらの経時挙動における構造物の応答特性に関する考察を行った.
  • 斉藤 雅充, 山下 健二, 猪股 貴憲, 池田 学
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_145-II_155
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル フリー
     鉄道駅の既設高架橋では,高架下空間の有効活用といった機能向上のニーズが高まっている.筆者らは,コンクリート充填鋼管(CFT)柱を活用し,既設の高架橋を利用しながら柱を取替え・移設して柱間隔を拡大する工法を提案し,新設CFT柱と既設RC梁の接合法などの要素技術を開発してきた.柱を移設した高架橋では,新設柱と既設柱といった,剛性や耐力が大きく異なる柱が混在した構造系となるが,このような構造系の地震時挙動や耐震性能は不明であった.ここでは,柱-梁接合部の構造改良を行い,さらに地震時を想定した3次元骨組解析を行い,剛性が大きく異なる柱を有する高架橋の地震時挙動を把握した.さらに,2次元骨組解析などを用いて柱移設を簡易に設計する手法について検討した.
複合構造論文集第3巻(小委員会報告)
  • 複合構造委員会・複合構造標準示方書小委員会
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_156-II_163
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル 認証あり
     土木学会複合構造委員会では,原則編,設計編,施工編,維持管理編の4編からなる複合構造標準示方書(2014年版)を制定した.この示方書は,鋼とコンクリートからなる複合構造造,およびFRP構造を対象としている.原則編は,設計・施工・維持管理の連携を確実に実施するための基本的事項を規定している.設計編,施工編,維持管理編では,標準編と仕様編の2編構成としている.標準編は,新たな複合構造に対しても対応できるように複合構造の原理原則を,仕様編は,これまで実績のある複合構造に対して実務的な取り扱いを,それぞれ規定したものである.
  • 複合構造委員会・鋼コンクリート合成床版設計・施工指針作成小委員会
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_164-II_176
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル 認証あり
     近年,合理化形式の鋼橋が盛んに開発,建設され施工実績を着実に増やしてきており,底鋼板とコンクリートが一体となって挙動する鋼コンクリート合成床版は鋼橋の立体的機能を担う重要な部材としてその技術の向上に貢献してきた.しかしながら,鋼コンクリート合成床版の各種技術資料は実験や解析等を基に整備されているものの,統一的な技術規準がなく,その作成および発刊が強く望まれる状況となっていた.
     そこで,鋼コンクリート合成床版設計・施工指針作成小委員会(H181)において,鋼コンクリート合成床版の設計,施工および維持管理を全般的に包括する指針(案)を策定した.本指針(案)は,「複合構造標準示方書(2014年制定)」に基づいた性能照査体系により,安全性,使用性および復旧性等の要求性能を満足するように作成されたものである.
  • 複合構造委員会・複合構造ずれ止めの性能評価法に関する調査研究小委員会
    2016 年 72 巻 5 号 p. II_177-II_190
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/05
    ジャーナル 認証あり
     鋼コンクリート複合構造の優れた性能を引き出すために,鋼材料とコンクリート材料あるいは鋼部材とコンクリート部材の間で応力を適切に伝達させる必要がある.この応力伝達を達成するためにずれ止めと呼ばれる部材(部品)を取付ける場合が多く,このずれ止めは鋼とコンクリートの間の変位(ずれ)を機械的に拘束することによって応力を伝達することになる.したがって,ずれ止めは鋼コンクリート複合構造において鍵となる部材であると言える.
     土木学会複合構造委員会内に設けられた「複合構造ずれ止めの性能評価法に関する調査研究小委員会」では,特に,ずれ止めとして一般的な頭付きスタッド,孔あき鋼板ジベル,形鋼シアコネクタを対象として,広範な調査研究を行った.本稿では,その活動を通して取りまとめた報告書の概要を示している.
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