土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
73 巻, 1 号
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和文論文
  • 和田 圭仙, 七澤 利明, 遠藤 繁人, 小野 潔, 栗田 章光
    2017 年 73 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
     橋台部ジョイントレス構造は,支承と伸縮装置の省略によりコスト縮減や維持管理の負担軽減等に資する構造であり,平成24年に改定された道路橋示方書において当該構造に係る規定が新たに導入されている.しかしながら,同構造のうち,鋼-コンクリート接合部については,地震時挙動に対する知見や具体的な照査方法が明らかでないことから,規定においては要求性能と設計照査の基本的な考え方が示されることにとどまっている.そこで本研究では,スタッドを用いた鋼-コンクリート接合部供試体の正負交番実験を行い,接合部のずれに伴うスタッドせん断抵抗とフランジ支圧抵抗の発現機構を明らかにするとともに,実験結果に基づき,接合部の設計で用いる限界点を提案した.
  • 森 猛, 金子 想, 林 暢彦, 内田 大介, 小笠原 照夫
    2017 年 73 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
     鋼床版デッキプレート・トラフリブ溶接ルート部を起点とするデッキ進展き裂が問題となっている.ルート部の応力はタイヤの位置に敏感であることが知られているが,それらの関係を明らかにするためには,タイヤの位置を変えて検討するよりも,応力の影響面を用いる方が効率的と考えられる.影響面を用いれば,タイヤの大きさや走行位置が変わった場合にも,車両走行による応力変動の解析が比較的容易に行える.ここでは,代表的な鋼床版構造の有限要素応力解析を行い,溶接ルート部の軸方向応力・せん断応力・主応力・主応力角度の影響面の特徴を明らかにするとともに,影響面に対するスカラップとデッキプレート厚の影響を示す.また,影響面を利用してタイヤの走行位置と面積が応力変動に及ぼす影響を示す.
  • 村越 潤, 澤田 守, 山階 清永, 山口 隆司, 石原 大作
    2017 年 73 巻 1 号 p. 40-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     鋼橋工事では部材製作から塗装後,工程上,架設完了まで時間を要する場合もあり,高力ボルト摩擦接合継手の品質管理の上で,塗装後の部材放置期間が継手性能に与える影響について明らかにしておくことが重要と考えられる.本研究では,無機ジンクリッチペイントの塗膜厚や塗料会社などの塗装条件及び塗装後または組立後の放置期間をパラメータとしたすべり試験を実施し,それらのパラメータがすべり係数およびボルト軸力のリラクセーション特性に与える影響について検討を行った.その結果,塗料会社および放置期間によらず,すべり係数は設計すべり係数0.45を上回り,締付後の放置期間が長くなるとすべり係数が増加する傾向が確認された.
  • 佐々木 達生, 幸左 賢二
    2017 年 73 巻 1 号 p. 54-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波によって構造物の被害が甚大であった陸前高田市を対象として,橋梁に作用する際の津波形状をはじめとする津波特性の解明を目的として,画像解析と数値解析による津波シミュレーションを実施した.気仙川を遡上する津波の形状は波頭に2m程度の高さをもつ段波であるが,橋梁の上部構造には波頭通過後の1/100程度の水面勾配をもつ流れを主体とする作用であったと推察され,流速を用いた津波作用力を評価することで流出被害を説明することが出来る.また,画像解析と数値解析の水位波形を比較した結果,波形の全体的な水面勾配は良好な整合性を得るものの,水位が立ち上がる際の流速波速比が十分に大きくないために,水面の急勾配は再現されない.
  • 小峰 翔一, 村越 潤, 高橋 実, 野上 邦栄, 栗原 雅和, 田代 大樹, 岸 祐介, 依田 照彦, 笠野 英行
    2017 年 73 巻 1 号 p. 69-83
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,格点部等の腐食損傷が進行し,撤去架替に至った鋼トラス橋から切り出された弦材および斜材計7体の箱断面圧縮柱を対象として,腐食性状の調査,載荷試験,及び残存耐荷力の評価法に関する検討の結果について報告する.タワー型表面粗さ計測装置を用いて腐食形状の詳細計測を行い局部腐食の発生傾向を明らかにするとともに,一部の試験体については模擬腐食を導入した上で載荷試験を行い,模擬腐食が座屈挙動および耐荷力に与える影響や,腐食程度の評価指標としての最大断面欠損率RAと残存耐荷力の関係について明らかにした.
  • 貝沼 重信, 小林 淳二, 宇都宮 一浩, 坂本 達朗
    2017 年 73 巻 1 号 p. 84-97
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     塗装された鋼構造物の腐食は,単体の塗膜欠陥から発生・進行する場合に加え,近接する複数の塗膜欠陥から発生し,それらが相互干渉しながら進行する場合がある.しかし,塗膜欠陥の寸法・近接度が鋼材の腐食挙動に及ぼす影響については不明である.本研究では基礎的研究として,単体および近接する2つの円形欠陥を有する塗装鋼板を用いて,複合サイクル腐食促進試験を行った.その結果,単体の円形欠陥から発生する腐食は,初期欠陥の径が大きいほど,その進行が促進されることを示した.また,近接する2つの欠陥から発生する腐食は,単体の場合に比して,進行性が高いことを示した.さらに,近接する2つの塗膜欠陥間の電気化学機構を明らかにするため,それらの欠陥間に流れる腐食電流の経時性を計測した.
  • 藤井 堅, 中村 秀治, 山口 詩織, 海田 辰将, 須藤 仁, 服部 康男, 石川 智巳
    2017 年 73 巻 1 号 p. 98-113
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     我が国においては,1960年代にインフラ整備の最盛期を迎えてから既に50年以上経過し,多くの鋼橋が現時点での保有性能評価,将来予測などの必要な時期にさしかかってきている.特に立地場所が海岸線に近く,海塩粒子による腐食が顕著な環境においては,補修・補強,性能回復が重要課題となっており,経年鋼構造物の対策事例と有効対策に関する知見は有用である.そこで本論文では老朽化橋梁が抱える維持管理上の諸問題に対する知見の取得を目的として,98年間供用された後,2010年に新橋に引継がれたJR旧余部橋梁を対象に,腐食および飛来塩分調査結果を示し,地形および気象条件を反映した海塩輸送解析結果との比較検討を行ない,飛来塩分環境における鋼橋の腐食実態と塩分輸送解析モデルの腐食影響評価への適用性について明らかにしている.
  • 田畑 晶子, 儀賀 大己, 小野 秀一, 山口 隆司
    2017 年 73 巻 1 号 p. 114-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     Uリブ鋼床版のデッキプレートとUリブ溶接部のき裂対策として,交通規制や天候の影響を受けることなく,き裂発生リスクを排除できる方法として,片面から施工可能なねじ付きのスタッドを用い,Uリブとデッキプレートの片面すみ肉溶接を剛性の高いあて板ボルト接合へ改造する方法を提案した.スタッドは鋼板に溶接され,高軸力が導入されることから,スタッドを用いたあて板補強鋼板に対する引張疲労試験及びFEM解析を実施した.その結果,スタッドに軸力が導入されることで,スタッド溶接部周辺の作用力があて板にも伝達され,スタッドが溶殖された母材の疲労強度の低下は認められなかった.また,その疲労強度は,頭付スタッド(E等級相当)のそれと同等以上であることを明らかにした.
  • 横山 薫, 小西 拓洋, 三木 千壽
    2017 年 73 巻 1 号 p. 126-145
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     国内外の公表されている資料から鋼橋の疲労損傷と補修事例を約200事例集め,インターネット上のデータベースとして構築し,公開した.プラットフォームとしてWiki型コンテンツ管理システムを採用することで,Wikipediaのように利用者がWebブラウザを使って閲覧や投稿が可能なデータベースとした.また収録した事例について,損傷原因による分類,損傷原因と補修方法の組合せの分布,損傷原因別の損傷発見までの供用年数と損傷事例数との関係,損傷レベルによる分類,溶接の不具合の種類と事例数について分析を行った.本稿では,まず,データベースの内容を紹介し,次に分析を行った結果を示す.
  • 木作 友亮, 保阪 拓実, 藤山 知加子
    2017 年 73 巻 1 号 p. 146-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,孔あき鋼板ジベルの孔内に生じるひび割れの進展状況や,粗骨材がせん断抵抗メカニズムに及ぼす影響を把握するため,途中止め試験,X線CT,3Dスキャナを活用した実験的検討を行った.途中止め試験では,ひび割れの進展がせん断破壊面を跨る粗骨材の影響を受けること,最大せん断力を示す際にひび割れ面凸部が破壊されることが明らかとなった.X線CT撮影の結果からは,他の試験体に比べて大きい粗骨材が2つのせん断破壊面を跨っている場合に,高い最大せん断力を示すことを明らかにした.また,せん断破壊面を3Dスキャナで計測し,凹凸の標準偏差や高低差が最大せん断力に影響することを示した.以上の実験結果より,拘束力が作用するPBLの破壊過程とせん断抵抗メカニズムを推定した.
  • 奥井 義昭, 尾上 修浩, 佐藤 京, 今井 隆
    2017 年 73 巻 1 号 p. 165-173
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     高減衰ゴム支承の低温下での繰り返し載荷試験を行い,高減衰ゴム支承の力学的特性の温度依存性を検討した.供試体のゴム支承内部に設置された熱電対によって内部温度を計測し,高減衰ゴムの自己発熱によって内部温度と供試体が設置してある雰囲気温度は大きく異なることが分かった.つぎに,内部温度を簡便に推定する方法を開発し,その方法を用いて過去の内部温度を計測していない雰囲気温度のみで整理されていた試験結果を内部温度で再整理した.その結果,等価剛性や減衰などの力学的特性は雰囲気温度ではなく,内部温度に依存する事が判明した.最後に今回の結果を耐震設計において直接利用できるように,高減衰ゴム支承の耐震設計で用いられるバイリニアモデルのパラメータの温度依存性を内部温度に基づき示した.
  • 坂井 公俊, 荒木 豪, 室野 剛隆
    2017 年 73 巻 1 号 p. 174-186
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     盛土の静的非線形解析に基づく等価1自由度モデルの構築手法とこれを用いた非線形動的解析法を提案した.提案手法による盛土の地震応答は,2次元有限要素法による挙動と良好に一致しており,簡易なモデルによる地震時挙動評価の妥当性を確認した.
     さらに多様な特性を有する盛土に対して静的非線形解析を実施しこれを一般化することで,盛土高さ等の容易に入手可能な情報のみから等価1自由度モデルを構築する手法を提案した.提案法は盛土の動的応答を従来より簡便に評価することができるため,延長の長い鉄道路線などを対象とした場合の応答評価法として有効である.
  • 野津 厚
    2017 年 73 巻 1 号 p. 187-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
     地震動位相の微分可能性に関する理論的考察と,群遅延時間の数値計算法に関する検討を行った.地震動のフーリエ変換F(ω)から計算される位相θ(ω)は,アンラップ操作による不連続以外にも,ωの増加と共にF(ω)が複素平面上の原点を通過するとき微分不可能となる.数値計算上は,F(ω)がちょうどゼロとならない場合でも,複素平面上でF(ω)が原点に接近するとき,位相差分および群遅延時間の数値計算結果は不安定となる.数値的不安定への対処方法として,従来の群遅延時間に対し,フーリエ振幅スペクトルの自乗を乗じて補正した補正群遅延時間を用いることを提案した.補正群遅延時間はF(ω)がゼロとなる周波数でも定義可能であり,その差分近似はF(ω)が小さな値をとる場合も数値的に安定している.
  • 秦 聡一朗, 白土 博通, 野口 恭平, 八木 知己
    2017 年 73 巻 1 号 p. 195-205
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
     構造物を効率的に維持管理するためには,劣化因子の挙動を実測ではなく数値解析による推定が有効である.本稿では,凍結防止剤の車両走行による巻き上げに起因する塩分の分布特性を推定した.直方体でモデル化した車両が無風時に50 km/h及び80 km/hで走行する際は,車両左右端から車両横方向に車幅の1.5倍程度まで,また鉛直方向には地面から車高の1倍程度まで飛散することが確認できた.さらに,地上10mで風速10 m/sの横風が50 km/hで走行する車両に作用すると,横風風下側に車幅の5.5倍以上の範囲まで,また鉛直方向には車高の2倍以上まで飛散することが明らかとなった.以上から,凍結防止剤の飛散による塩分供給の可能性を考慮した設計や維持管理を行う必要があるといえる.
  • 横関 耕一, 横山 薫, 冨永 知徳, 三木 千壽
    2017 年 73 巻 1 号 p. 206-217
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
     高疲労強度の鋼床版縦横リブ交差部を見いだすため,縦リブ形状および横リブスリット有無を変更したいくつかの交差部を対象に,有限要素解析(FEA)を用いて,疲労に対して支配的となる載荷位置を確かめたうえで疲労強度を評価・比較した.その結果,何れの交差部形式でも支配的となる載荷ケースは,着目する交差部直上を中心とした荷重配置ではないこと,縦リブにUリブおよび平リブを用いた鋼床版では,横リブウェブのスリット省略によって局部応力範囲が75%,58%低減されることがわかった.さらにUリブを同断面積のVリブに変更することで,スリットを省略した交差部の局部応力範囲が39%低減された.
  • 伊藤 靖晃, J. Michael R. GRAHAM
    2017 年 73 巻 1 号 p. 218-231
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     近年,様々な分野においてCFDが活用されるようになってきた.しかしながら,橋梁に作用する空気力やフラッターなどの振動問題に対しては,その解析精度は十分に検証されたとは言えず,また解析速度にも依然課題を有している.本研究では,長大橋梁の耐風設計におけるCFD活用のため,LESによる箱桁橋梁断面の平均および非定常空気力係数の解析精度の検討を行った.また,スパン方向の解析領域の縮小により計算の高速化を図るため,スパン方向の解析領域が各種空気力係数に与える影響を検討した.LESでは風洞実験と同等の精度で平均および非定常空気力係数が算出可能であることを示した.また,スパン方向の解析領域は変動空気力係数に影響を与えるものの,平均空気力係数や非定常空気力係数に与える影響は小さいことを明らかとした.
  • 有村 健太郎, 有山 大地, 船越 博行, 山口 隆司
    2017 年 73 巻 1 号 p. 232-247
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     鋼I桁橋の腐食は桁端部で多く発生しており,腐食した桁端部の残存耐荷力を評価した研究はこれまで数多く行われている.しかし,桁端部の腐食が橋梁全体の耐荷性能や地震時の挙動に及ぼす影響は明確ではない.本研究では,桁端部が腐食した場合を想定し,全橋FEMモデルを用いて鉛直方向および水平方向の橋梁システムとしての耐荷性能について検討した.その結果,複数ある主桁のうち一部の主桁の桁端部が腐食したケースでは,健全な主桁の桁端部が腐食した主桁の桁端部を補うように荷重分担が変化する傾向が見られ,橋梁システムとしての最大耐力が腐食した主桁の桁端部の最大耐力を大きく上回ることを確認した.
  • 久保 全弘, 渡辺 孝一
    2017 年 73 巻 1 号 p. 248-258
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,波形鋼板ウェブ断面の残留応力を実測し,平鋼板と比較して考察したものである.フランジ無しのウェブ部材と上下フランジを溶接した部材を6体ずつ製作し,応力開放法により残留応力を実測した.波形の形状は台形とし,断面の波高とパネル幅の組合せを変化させた.測定結果から,フランジを溶接しない波形鋼板ウェブ断面の残留応力はプレス加工の影響を受けるため一様な分布形ではないが,降伏点応力の10%以内で変化する.一方,フランジを溶接した断面の残留応力分布は,ウェブ上下縁からウェブ高の20%程度の範囲で急激に変化するが,ウェブ内部では降伏点応力の2%程度の一様な引張応力である.波形鋼板ウェブの残留応力分布は,フランジとの溶接時にウェブが主桁軸方向に伸縮するため,平鋼板の場合と比較して相異することを明かにした.
  • 河村 精一, 中村 光, 白鳥 洋平
    2017 年 73 巻 1 号 p. 259-277
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     実物大 PHC杭に対して,これまで行われてこなかった地震時の地盤変位を考慮した逆対称曲げモーメント分布となる載荷方式で,直接引張および低圧縮軸力を作用させた実験を,正負交番載荷を含め行った.また,ひび割れのような不連続現象を直接的に評価可能な剛体バネモデル(RBSM)を用いてPHC杭をモデル化し,その適用性を実験との比較で確認した.そして,その解析手法による数値実験を行うことで,軸力,せん断スパン比,杭径(径厚比),らせん鉄筋,繰返し変位振幅が終局せん断耐力に及ぼす影響を考察した.実験および解析結果から,対象としたPHC杭は,最大耐力まで十分な軸力保持性能を有し,軸力によるせん断耐力の変化が既往設計式より大きくなること,引張や低圧縮軸力下では安全裕度が小さくなる可能性があることが示された.
  • 森 猛, 木村 直登
    2017 年 73 巻 1 号 p. 278-287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     軸方向圧縮繰返し応力を受ける面外ガセット溶接継手の疲労き裂の発生・進展性状と疲労強度を明らかにする目的で,完全片振り圧縮,完全両振り,そして完全片振り引張繰返し応力試験を行っている.疲労試験は,一定振幅繰返し応力に加えて,破面にビーチマークを印す目的で2段多重繰返し応力条件下でも行っている.そして,完全片振り圧縮繰返し応力下では,溶接止端から発生した疲労き裂が主板を貫通し,ある程度進展した後に停留する,圧縮繰返し応力下で主板を貫通するまでの疲労き裂の進展性状(進展形状,進展速度)と疲労強度は引張繰返し応力下と同じである,などの結果を示している.
  • 森 猛, 松井 喜昭, 佐藤 歩, 原田 英明, 村越 潤
    2017 年 73 巻 1 号 p. 294-312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     荷重の移動に伴い主応力方向が変化する主桁・横桁交差部の主桁ウェブ側溶接止端からの疲労き裂の発生・進展性状と疲労強度を明らかにする目的で,ウェブに面外ガセットを有するI断面桁試験体の定点荷重(4点曲げ)疲労試験と移動荷重疲労試験(輪荷重走行試験)を行っている.そして,移動荷重下の疲労強度は,定点荷重下よりも25%程度低い,移動荷重下での疲労き裂は溶接止端に沿って進展する領域が長い,主応力直角方向ではなくさらに傾いた方向に進展する,などの結果を示している.
和文報告
  • 南 邦明
    2017 年 73 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/20
    ジャーナル フリー
     厚膜型無機ジンクリッチペイントを施した高力ボルト摩擦接合継手は,黒皮を除去した粗面状態と比べ,リラクセーションによるボルト軸力低下が大きく,より高い導入軸力で施工することによりボルト継手の安全性・信頼性が向上するものと考えられる.本報告は,無機ジンクリッチペイントを施した高力ボルト摩擦接合継手の安全性・信頼性を向上させることを目的に,15%増し締めで施工した高力ボルト摩擦接合継手の実験報告である.本実験では,作製した高力ボルト継手でリラクセーション試験およびすべり耐力試験を実施した.また,これまで実施された既存のリラクセーション試験の調査も実施し,無機ジンクリッチペイントの軸力低下の現状を明確にした上で,15%増し締めの妥当性を検証した.
和文ノート
  • 阿部 雅人, 中村 一樹, 島村 誠
    2017 年 73 巻 1 号 p. 288-293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     積雪重量は,構造設計上の雪荷重や除雪・雪下ろし等のリスクマネジメントの基礎となる情報である.また,融雪水推定や,高精度の重力測定など幅広い分野で課題となっている.反面,その直接計測は一般に困難で高費用であることから,リスクマネジメント上は容易かつ多様な方法で計測可能な積雪深が用いられることが多い.しかし,雪質によって単位重量が変化するため,積雪深のみに依存したリスクマネジメントには限界があり,積雪による構造物の崩壊事例が後を絶たない.本研究では,積雪深と積雪重量間の履歴関係を明らかにしてモデル化し,積雪深の履歴情報からリアルタイムに積雪重量を推定する方法を構築した.さらに,防災科学技術研究所において実施している積雪重量の長期モニタリングデータを利用して検証を行い,運用についての検討を行った.
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