土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
74 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
複合構造論文集第5巻(招待論文)
  • 長井 正嗣
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_1-II_12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     わが国では古くから限界状態設計法,信頼性理論ベースの設計法導入に関する調査研究が行われてきた.しかし,その有用性はあまり認識されず,信頼性理論ベースの限界状態設計法への移行,それをベースとした設計,建設は依然として行われていない.これは限界状態設計法を採用している,AASHTO LRFD, ECまたISOとは大きく異なる.本文では合成桁を取り上げ,限界状態設計法と組み合わせることで,これまでと異なる展開が可能になることを説明する.さらに,ハイブリッド桁などの複合橋梁の適用性が設計法と大きく関わっていることを説明する.あわせて,将来とも重要な開発課題となる維持管理設計法に関して,限界状態設計法をベースとするAASHTO LRFRを紹介するとともに,わが国での今後の取り組み方について説明する.
  • 横田 弘
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_13-II_19
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     鋼材とコンクリートを断面内で合成した合成構造から,鋼とコンクリートからなる部材を接合した混合構造まで,複合構造は多様な発展を示し,多くの構造物に採用されてきた.その間,鋼に代わってFRPに代表されるような様々な材料の適用も進められ,既設構造物の補強も含めて今や複合構造は鋼構造,コンクリート構造に肩を並べるに至っている.このようになった背景として,複合構造物標準示方書に代表される設計基準・指針類の整備があり,より合理的な設計照査のための研究が進められてきた.これらは今後も継続されるものと思われるが,今後の新たな研究の展開としてサステイナビリティの観点からの複合構造の展望について述べた.
複合構造論文集第5巻(論文)
  • 中田 裕喜, 網谷 岳夫, 池田 学, 岡本 大
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_20-II_31
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,鉄道構造物に用いられる柱脚を想定した長方形断面を有するコンクリート充填鋼管(CFT)柱の損傷性状や部材性能について,実験的に検討したものである.コンクリートが完全に充填された,辺長比(長辺と短辺の比)が2である供試体を対象とし,補剛材の効果についても検証した.実験結果から,損傷過程は正方形または円形断面のCFT柱と同様であったが,長方形CFT柱は載荷方向に応じて鋼管埋め込み部の挙動や局部座屈長等が異なることを確認した.履歴法則については円形CFT柱を対象に提案されているモデルにより精度よく評価できることがわかった.また,補剛材を設置することにより,最大水平荷重や変形性能が増加することを確認するとともに,局部座屈の状況を踏まえ,補剛材の効果を変形性能評価法に考慮する方法について検討した.
  • Nguyen Minh Hai , 大野 将季, 中島 章典, 藤倉 修一
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_32-II_43
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     鋼コンクリート複合構造物の設計において,鋼部分とコンクリート部分の間のずれ変位を無視する場合が多いが,非線形解析技術の進歩によって鋼部分とコンクリート部分の間のずれ止めに非線形のせん断力-ずれ変位関係を導入し,複合構造物の終局に至るまでの挙動の再現も可能になってきている.したがって,複合構造物の設計において,ずれ止めの適切なせん断力-ずれ変位関係の定式化は重要である.本研究では,ずれ止めの1つである貫通鉄筋の無い孔あき鋼板ジベルに着目し,押抜き試験で得られたせん断力-ずれ変位関係を複合構造標準示方書の規定と比較し,両者の相関性を詳細に調べた.また,孔あき鋼板ジベルのせん断力-ずれ変位関係への影響要因を分析し,試験結果との相関性が良いせん断力-ずれ変位関係式を再検討した.
  • 小林 洸貴, 近藤 諒翼, タイ ウィサル , 中村 一史, 松本 幸大, 松井 孝洋, 越智 寛
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_44-II_55
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,断面欠損した鋼構造物に,CFRP部材を短工期で一体化させて補修・補強する真空含浸(VaRTM)工法の開発を目的としたものである.鋼桁端部の断面欠損部を対象に,CFRP部材による耐荷力の向上を検討した.検討モデルは,腹板高さ800mm,支間長1,700mmのI形断面桁であり,3点曲げ載荷とした.まず,断面欠損のない解析モデルを用いて,せん断座屈耐力の向上のために,ウェブパネルへのCFRPの適切な配置を解析的に検討した.次に,ウェブ,垂直補剛材の下側にテーパ状の断面欠損を与え,CFRPの設置による耐荷力の向上を実験的,解析的に検討した.その結果,CFシートの積層配置の場合,ウェブの引張側で有効であること,また,剛性の高いCFRP部材の場合,ウェブの圧縮側への配置でより合理的な補強となることが確かめられた.
  • タイ ウィサル , 中村 一史, 林 帆, 堀井 久一
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_56-II_66
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,当て板接着による鋼構造物の補修・補強において,接着接合部の疲労強度の評価方法とその設計法を提案することを目的としたものである.エポキシ樹脂接着剤を用いて,鋼板に当て板を接着した接着接合部の静的試験・疲労試験を行って,疲労強度特性を実験的に検討した.実験では,2種類の接着剤を用いて,鋼板の両面に,軸剛性の異なる,鋼製あるいはCFRP製の当て板を接着接合した試験片に対して,静的試験・疲労試験を行った.実験の結果,はく離時の主応力に対する主応力範囲の比と繰返し回数の関係で整理すれば,今回の実験で使用した2種類の接着剤であれば,接着接合部の疲労強度を精度よく評価できること,また,はく離時の主応力に対して,主応力範囲を30%以下とすれば,十分な疲労耐久性(107回)を確保できることが確かめられた.
複合構造論文集第5巻(報告)
  • 松山 晃大, 佐藤 潤, タイ ウィサル , 中村 一史, 松本 幸大, 松井 孝洋, 越智 寛
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_67-II_80
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,断面欠損した鋼構造物に,真空含浸(VaRTM)によりCFRP部材を短工期で一体化させて補修する工法の開発を目的としたものである.はじめに,多積層の炭素繊維(CF)シートのVaRTM成形による含浸・接着の方法について,CFシートの積層数,含浸方向をパラメータとして検討した.次に,多層のCFシートが接着された鋼板の座屈実験を,積層数をパラメータとして行って,補強効果を検証した.さらに,断面欠損を模擬した桁端柱部材にCFRP部材をVaRTM成形により接着して補修し,耐荷力の性能回復を実験的に検討した.断面欠損部の不陸修正の有無,ソールプレートのアンカーボルトの干渉の影響,CFシートを束ねて積層したプリフォーム(PF)材の適用性の検討を行った.
  • 溝江 慶久, 中島 章典
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_81-II_99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     合成はりの曲げ破壊照査に際し,発生する材料損傷の種類やそれらの発生順序を任意に設定することができれば,鋼とコンクリートの材料特性を最大限に活かした合理的な設計が行える可能性がある.そこで,本研究では,このような設計法の構築に資するため,剛体ばねモデルを用いた非線形解析を実施し,ずれ止めの配置間隔,鋼はりやコンクリート床版の断面諸量が合成はりの耐荷挙動に及ぼす影響について検討した.その結果,コンパクト断面を有する合成はりの耐荷挙動は,構成材料の損傷と関連した4つの荷重段階で特徴付けられることを示した.また,それらの荷重値はずれ止めの配置間隔や鋼材の降伏強度によって大きく増減するが,コンクリートの圧縮強度が及ぼす影響は小さいことを明らかにした.
複合構造論文集第5巻(小委員会報告)
  • 複合構造委員会・複合構造物の耐荷メカニズム研究小委員会
    2018 年 74 巻 5 号 p. II_100-II_113
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー
     鋼とコンクリートから構成される合成構造は,構成材料の特徴を相互に補完する合理的な構造形式として期待されている.土木学会・複合構造委員会に設置された「複合構造物の耐荷メカニズム研究小委員会(H212委員会)」では,各種合成部材や異種部材接合部の耐荷メカニズムを構成材料の損傷イベントに立脚して説明することにより,複合構造物の合理的かつ普遍的な性能評価法を提案することを目標として研究活動を行った.本稿では,これら合成部材および接合部の設計の合理化,および統一的な照査法の確立を目指し,合成部材の耐荷機構(メカニズム)を構成材料の損傷イベントの種類と発生順序に立脚して説明することを試みた結果について報告する.
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