土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
ISSN-L : 2185-6621
72 巻 , 2 号
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特集号(招待論文)
  • 久田 嘉章
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_1-I_14
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     本論文は,災害から速やかな回復を可能とするレジリエンスな社会構築のための被害の低減策と対応力向上策に関する現状と課題,および建築分野における事例を報告する.まず南海トラフ巨大地震を例に,地震の長期評価や被害の正確な想定が困難なことが明らかになっている現状を紹介し,中小から最大級まで多様な被害レベルを想定し,柔軟な対応の必要性を確認する.次に被害の低減策の事例として,南海トラフ巨大地震やを対象とした建築分野での設計用地震動(L1・L2地震動)と検証用地震動(L3地震動)の策定例や米国での動向を紹介する.さらに被害時の対応力向上策の事例として,災害の規模に応じた危機対応レベルの設定と超高層建築の設定例を説明し,最後に新宿駅周辺地域における被害が出ることを前提とした地域連携による災害対応力向上のための取組みを紹介する.
特集号(和文論文)
  • 二神 透, 羽鳥 剛史
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_15-I_20
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     社会の様々な分野で防災士が増え,地域の防災リーダーとしての活躍が期待されている.そこで,本研究では,防災士受講生と一般学生との間で地域防災に関わる利他的動機の程度を比較し,そうした可能性が妥当なものか否かを検討した.その結果,防災士受講生は,一般学生と比べて,地域の防災活動に関わる利他的動機が高いことが明らかになった.次に,防災士受講生と一般学生との間で利他的動機に関わる防災意識を比較したところ,規範活性化要因,リスク認知要因,他者との関係要因,興味・関心の諸項目について有意な差異が確認された.
  • 岩原 廣彦, 白木 渡, 井面 仁志, 高橋 亨輔, 磯打 千雅子
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_21-I_28
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     2016年4月16日に発生した熊本地震では,これまでの震災経験を活かすことができず,基礎自治体の災害対応も十分機能しなかった.これらの基礎自治体の多くは,事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の策定がされておらず,災害対応能力を有する職員の不足とも相まって初動対応に混乱をもたらした.一方,南海トラフ地震発生時に,四国の災害対応拠点となる香川県の地域継続計画に必要な要素として筆者らは,(1)物流機能,(2)重要拠点機能,(3)応援・受援機能,(4)復旧・復興に関するヘッドクォーター,(5)ライフライン機能を提案している.南海トラフ地震に備えるにあたっては,この5要素が機能するため,産学官の枠を超えた組織間連携を念頭においた基礎自治体のBCP策定と,事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)の実施,さらに,発災時の臨機応変な対応能力を有する人材育成が重要となる.香川県と香川大学では,2015年度から共同で基礎自治体のBCP策定に地域継続計画(District Continuity Plan:DCP)の概念を織り込むとともに,BCMが実施できる人材の養成事業を実施している.本稿では,熊本地震における基礎自治体の初動対応を参考に,南海トラフ地震発生時において,香川県が四国の災害対応拠点として,適切な初動対応と行政機能を維持するためのBCP策定とBCMの実施推進の施策,さらに,発災時に適切な対応ができる人材の育成における課題と対策および実例について述べる.
  • 井面 仁志, 高橋 亨輔, 森 友佑, 磯打 千雅子, 白木 渡
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_29-I_34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,本来,安全であると考えられていた学校において被災するという想定外の事態が発生した.このような想定外の事態に対応していくには,学校教職員が,突発的な事故や災害に対して適切な判断,意思決定,行動できる能力(防災コンピテンシー能力)を備えるための人材育成が必要である.しかし,防災コンピテンシー能力の具体的特徴は明らかにされておらず,効果的な人材育成を実施するためには,何が防災コンピテンシーの向上に有効なのかを検討しなければならない.
     本研究では,災害状況再現・対応能力訓練システムとEMRを用い訓練体験者の眼球運動の測定・分析を行い,防災知識の差において被験者の眼球運動の違いや特徴を明らかにし,眼球運動の分析が防災コンピテンシーの特徴分析に結びつくかの検討を行う.
  • 広兼 道幸, 遠藤 隆裕, 西脇 一昭
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_35-I_40
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     車や航空機などに代表される交通安全の分野では,事故を回避するための教育として,事故に結び付くシナリオを想定したCGやシミュレータを用いた危険予知訓練が積極的に実施されている.このように危険への感受性を向上させるための教育は,疑似体験が効果的とされている.そこで本研究では,拡張現実感を用いた集中豪雨疑似体験アプリケーションを開発した.さらに,平成27年11月29日に真上小学校で行われた防災訓練において,市民を対象に提案した防災教育の仕組みを実践し,危険への感受性と避難行動の関係を,人間認知信頼性モデル(HCR;Human Cognitive Reliability)を用いて検証した.
  • 上久保 祐志, 小林 幸人, 橋本 淳也, 勝野 幸司, 松家 武樹
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_41-I_46
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     熊本県球磨川流域の自治体ではタイムライン防災への取り組みがなされ始めたが,このシステムを本校の学生寮といった局所的な施設および組織で対応できないかを考え,2015年から学生および関係教職員でタイムライン防災に基づいての防災計画の策定に動き始めた.そのような中,2016年4月に熊本地震に見舞われ,被災時の避難活動および被災後の避難生活を強いられることになったが,事前に検討していたこのタイムライン防災,特に学生らへの防災教育が行き届いていたおかげで,教職員が予想するよりも格段にスムーズに被災後対応をとることができた.一方で,課題も多く見つかっており,今後,同様の局所的な防災計画を策定するうえで,被災前に設定しておくべき事象についても把握することができた.
  • 鳥庭 康代, 中野 晋, 金井 純子, 泉谷 依那
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_47-I_52
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     2015年関東・東北豪雨では常総市域の約半分が水没し,市役所などの主要な防災拠点や指定避難所となっている小中学校も浸水した.学校・保育所の管轄課や浸水被害を受けた学校園で避難行動と教育や保育の再開までの取り組みについて,インタビュー調査を通して浸水前の対処行動,浸水開始後の避難行動,避難所の運営支援,安否確認,学校再開までのプロセスなどについて検討した.避難指示が発令されている中,教職員は危険を冒して学校に参集して対応に当たったが,直後に浸水が始まり,避難を余儀なくされたことや専門的能力を有するボランティアの協力が早期の学校再開に有効であったこと等が明らかとなった.
  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 西原 正彦, 西本 日出世, 新居 勇, 丸山 泰秀
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_53-I_58
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     災害時において,地域の建設会社は緊急輸送道路の早期確保や被災地域の応急復旧活動など,発災当初から最前線で活動することが期待されている.平成21年度からは関東地方整備局で建設会社が備える基礎的な事業継続力を評価するため,「建設会社における事業継続力認定制度」が開始され,この取り組み(建設業BCP認定制度)は地方整備局及び自治体で広がりをみせており,今後発生が予想される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えた建設会社における対応体制の構築や対応力の強化が社会的にも求められている.
     しかし,地域の建設会社が多様化する自然災害リスクに対応するためには,この建設業BCPの取り組みに加えて,地域特有のリスクへの対応をする必要がある.
     本研究では,台風被害が多く発生している徳島県那賀郡那賀町の建設会社を対象に,建設業BCPをベースにして,タイムラインの考え方を活用する災害対応体制構築の実践を行い,検証を行ったものである.
  • 磯打 千雅子, 白木 渡, 藤澤 一仁, 岩原 廣彦, 金田 義行, 高橋 亨輔, 井面 仁志
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_59-I_64
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)は,組織の機能停止を想定し,重要業務に優先度を付加して事業サービス継続のための対策を立案するものである.この計画づくりを含めたPDCA活動を事業継続マネジメント(Business Continuity Management : BCM)といい,組織づくりの手法として用いられている.
     特に東日本大震災を契機に地方自治体の機能継続及びBCMS(S:System)の重要性が言及されている一方で,より効果的手法は明らかにされていない.
     本研究では,総務省消防庁が実施した全国の地方公共団体における計画策定状況と東日本大震災における地方自治体の対応状況,香川県が実施する市町BCP作成支援事業を事例に地方自治体におけるBCMSについて提案する.
  • 有友 春樹, 井面 仁志, 白木 渡
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_65-I_70
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     平成23年東日本大震災,平成28年熊本地震をはじめ,想定を超える被害の災害が多発している.近年,想定を超える被害の災害への対応可能な安全確保の新しい手法として「レジリエンスエンジニアリング」が注目されている.レジリエンスエンジニアリングでは,レジリエントな対応には4能力「対処能力」,「注意能力」,「学習能力」,「予見能力」が必要であると定義しており,その効果を測るために定量的な評価が重要となる.しかし,レジリエントな対応(行動)の定義が難しく,定量的な評価方法の確立は困難である.そこで本研究では,避難行動を可視化できる参加型避難シミュレーションを活用して,レジリエントな対応(行動)を再現し,定量的な評価を試みる.具体的には,オフィスフロアを対象に,レジリエントな対応の4能力(対処・注意・学習・予見)を備えた災害時の人間の避難行動を想定し,避難完了時間等を指標として,レジリエントな対応の定量的な評価方法を検討する.本研究では,限定的な環境での評価を実施することができたが,今後レジリエントな対応の定義の確立が課題である.
  • 坂田 朗夫, 川本 篤志, 伊藤 則夫, 白木 渡
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_71-I_76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,主要施設の機能不全,社会基盤施設の壊滅的被害等想定を超える事態が発生した.その結果,住民の生命,財産,生活を守るべき基礎自治体(市町村)がその機能を発揮できず,住民が長期間にわたって過酷な避難生活を強いられることになった.これを受けて,内閣府からは,行政機関,特に基礎自治体である市町村に対して想定を超える事態においても重要機能が継続できるようにBCPの策定・見直しの指示が出されている.しかし,被災地域が広範囲にわたる大規模災害では,被災地外からの支援・救援が遅れ,行政機能が発揮できない空白期間の長期化が避けられない状況であり,基礎自治体の危機対応能力向上が求められる.
     本研究では,大阪府の基礎自治体職員の防災意識についてアンケート調査を行い,レジリエンスエンジニアリングの手法を用いて災害対応に必要な危機対応能力をレジリエンス4能力(対処能力,監視能力,予見能力,学習能力)により評価する.そして現時点での職員の災害時対応能力で欠けている能力を分析するとともに,職員の災害時対応能力向上に向けての対策を提案する.
  • 坂田 朗夫, 川本 篤志, 伊藤 則夫, 白木 渡
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_77-I_84
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以後,地方公共団体に対して,組織自体が被災し機能不全となるような状態をも含むあらゆる事態を想定したBCPの策定が求められている.しかし,小規模な市町村では,予算不足や人材不足等の理由でBCPが策定されていない,あるいは策定されていてもBCMによる実効性の担保ができていない現状がある.このような市町村では,適切かつ素早い初動対応を実現し,被害の最小化を図り,重要機能の早期回復等を確実にする必要がある.行政組織の初期対応としては,インフラ・ライフライン等の重要施設の早期復旧対応が挙げられるが,そのためには行政と建設関連企業との連携が不可欠である.
     本研究では,発災直後の初動対応や応急復旧時に欠かせない地元建設会社や上下水道指定工事店等の建設関連企業との連携による対応に着目し,建設関連企業のレジリエンス評価手法を提案する.具体的には,大阪府北部の中山間地域に位置する町役場を対象として,建設関連企業に対して災害応援協定に関するアンケート調査を実施し,各会社の初動対応や応急復旧に関する対応能力をレジリエンスエンジニアリングの4能力(対処,予見,監視,学習)により評価する. そして,その評価結果より,BCPの実効性担保に関する課題を抽出し,その対応方針を提案する.
  • 池田 一, 吉田 真也, 風間 宏, 小渕 光昭, 神野 忠広
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_85-I_92
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     火山災害は,洪水災害等とは異なり発生頻度が低いため,災害経験がある行政職員や地域住民等はごく限られる.また,噴火に伴い発生する現象は多様でかつそれらの規模は大きいという特徴があるため,火山噴火時の災害状況をイメージすることは難しい.このため,火山災害のレジリエンス強化に向けては,災害状況の疑似体験ができるロールプレイング方式による,実践的な防災訓練が有効と考えられる.
     群馬県と長野県の県境に位置する浅間山では,周辺の関係機関により組織される火山防災協議会により,浅間山の火山噴火を想定したロールプレイング防災訓練を平成20年よりこれまでに9回開催してきた.本研究では,過去9回の浅間山ロールプレイング方式防災訓練の結果を分析し,火山災害に対してレジリエントな地域社会をつくるための課題を抽出するとともに,解決策を提案した.
  • 野々村 敦子, 金井 純子, 中野 晋, 白木 渡
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_93-I_98
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     南海トラフ巨大地震での被害を最小限に抑えるために,様々なアプローチから防災対策を講じる必要がある.教育現場においては,各学校で,文部科学省の手引書に沿って防災対策に取り組んでいるところである.東日本大震災で障害者の死亡率が高かったことを考慮すると,学校防災の中でも,特に,特別支援学校に着目した取り組みが必要であり,防災対策の現状を知り,今後必要な備えについて検討することは喫緊の課題である.
     そこで本研究では,まず,東日本大震災で指定避難所の役割を果たした宮城県立石巻支援学校での取り組みを分析し,必要な備えを項目として挙げる.次に,香川県内の特別支援学校全9校を対象として,これらの項目について取り組み状況を調査し,現状を把握すると共に,今後,取り組むべき対策とその方法について検討し提案する.
  • 高橋 亨輔, 磯打 千雅子, 白木 渡, 岩原 廣彦, 井面 仁志, 佐藤 英治
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_99-I_106
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     南海トラフ巨大地震などの大規模広域災害において,被災地域の早期復旧のためには,道路ネットワークの戦略的事前復旧計画の策定が必要である.このためには,国,県,市区町村,ライフライン企業や建設業が,事前合意形成に基づいた復旧計画を策定する必要がある.
     本研究では,地域インパクト分析(DIA)支援システムを活用して,南海トラフ巨大地震発生時の高松市道路ネットワークの復旧計画を検討する.具体的には,高松市を対象に「南海トラフ地震対策地域啓開計画策定ガイドライン(案)」を基礎とする4ケースの道路復旧計画を策定し,策定した計画を比較・考察する.さらに,これらの分析事例を通じてDIA支援システムの有用性を検証する.
  • 備後 友貴, 大澤 脩司, 藤生 慎, 髙山 純一, 中山 晶一朗, 辰野 肇
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_107-I_114
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の際には,全国各地のドクターカー・ドクターヘリの出動,医師の派遣により,被災地での迅速な救急対応が可能となった.しかし,大規模地震時には建物倒壊などによって道路が閉塞し,陸路での救急活動に支障をきたすことが多い.道路状況に左右されないドクターヘリは石川県では配備されておらず,早急に地震発生時の救急・救助対応を検討する必要がある.
     本研究では,地震による緊急輸送道路沿道の建物倒壊を想定した上で,救命救急センターから災害時避難場所となり得る小中学校までの到達時間についてドクターカーとドクターヘリで比較し,分担圏域の設定方法を提案した.その結果,平常時と地震時(10km/時)では,県立中央病院から半径約5.4kmと0.4km,能登総合病院からは北に約31.1kmと2.8km,南に約16.8kmと2.6kmの分担圏域を設定することができた.
  • 塚本 昭博, 矢代 晴実
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_115-I_122
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     首都機能が集中する都市圏は,鉄道を代表とする大規模交通システムに支えられて毎日大量の人々が移動を繰り返している.鉄道輸送に大きく依存した人々が地震災害等により移動手段が途絶された途端,徒歩によって帰宅せざるを得ない状況になる.
     本研究は,昼間人口の集中する東京都心5区から神奈川県方面へ徒歩による帰宅者と帰宅困難者の経過時間毎の移動分布状況をシミュレーションにより明らかにし,帰宅支援対象道路沿いにおいて,建物倒壊・延焼による影響や大量の徒歩帰宅者が起因して発生する課題について分析及びリスクを定量化した.
     特に,首都直下地震発生時に深刻な問題が発生すると予想されているトイレ・食料問題をとりあげた.それぞれの問題に対して,シミュレーションから得られた結果から充足率や必要備蓄数等について考察を行った.
  • 高田 知紀, 高見 俊英, 宇野 宏司, 辻本 剛三, 桑子 敏雄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_123-I_130
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は「延喜式神名帳に記載された式内社は,大規模自然災害リスクを回避しうる空間特性を有している」という仮説にもとづいて,特に四国太平洋沿岸部における南海トラフ巨大地震の想定津波浸水域と延喜式内社の配置の関係性を明らかにすることである.
     高知県沿岸部777社,徳島県沿岸部438社について,それらの津波災害リスクについてGISを用いて分析を行ったところ,高知県では555社,徳島県では308社が津波災害を回避しうる結果となった.さらに,式内社について分析したところ,沿岸部に位置する式内社はそれぞれ,高知県内18社,徳島県内30社であり,そのうち津波災害のリスクがあるのは,高知県2社,徳島県2社の合計4社のみであった.この結果から,古来,信仰の中枢であり,また国家から幣帛を受ける官社であった式内社は,数百年に一度で襲来する大規模津波についても,その災害リスクを回避しうる立地特性を有していると言える.
  • 徳永 雅彦, 中野 晋, 天羽 誠二
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_131-I_138
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     全国でこれまでに経験したことがないような大雨による洪水で甚大な被害が発生している.従来の河川整備の規模を超える洪水から命を守り,壊滅的な被害を防ぐには住民自らが水害リスクを理解し,迅速で安全な避難行動を促進する対策の充実が不可欠である.本研究では発生頻度の異なる洪水を想定して氾濫解析を行い,浸水範囲や浸水深,浸水の広がり,家屋倒壊危険区域等を検討し,住民の避難行動を促進するため,地域を細分化した避難区域の設定や判断基準などを提案する.また,住民の水害リスクに対する意識を高め迅速で安全な避難行動を促進するため,防災意識の啓発や情報を周知方法について検討を行う.行政が住民との学習会や避難訓練等を通してリスクコミュニケーションを重ねることが地域の防災力向上に寄与することを示す.
  • 山本 遼哉, 豊田 政史
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     土石流解析における設定条件を汎用的に決めるための基礎的な研究として,2014年7月に長野県南木曽町で発生した梨子沢土石流の数値解析を行った.その結果,土石流が渓流の堆積厚・侵食深に及ぼす影響を検討することにより,土石流の発生プロセスを表現できる土石流ハイドログラフと,砂防堰堤の土砂堆積状況を土石流解析に考慮することが,重要であることがわかった.また,土石流の氾濫・堆積範囲に関しては,構造物を考慮することによって,再現精度が上がったが,土地利用を考慮することによる影響はほとんどみられなかった.今後は,このような土石流解析を汎用的に行い,さまざまな土石流災害のシナリオに基づいた危険度指標を提示していくことが望まれる.
  • 金井 純子, 中野 晋, 野々村 敦子, 宇野 宏司
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     四国地方は,南海トラフ巨大地震で大きな被害を受けることが予想されており,避難所の機能強化が求められている.本研究では,要援護者が安心して利用できる福祉避難所の整備を推進していくために,四国4県の福祉避難所に該当する263施設を対象に,取り組み状況に関するアンケート調査を行った.その結果,マニュアル整備や訓練を実施している施設は少なく,大規模災害が発生した場合,多くの福祉避難所が開設できない恐れがあることが判明した.
  • 藤田 謙一, 矢代 晴実
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     東日本大震災での津波による甚大な被害を受けて,今後発生が想定される南海トラフ巨大地震に対する被害想定,防災・避難計画の見直しが行われている.人的被害の低減策には,避難施設の新規指定などのハード対策,避難意識の向上などのソフト対策がある.被害想定においては地域メッシュを用いた評価が行われており,メッシュごとに被害数を表すと,被害分布の把握が容易になり,防災・避難誘導計画に有用になると予想される.歩行速度をばらつきで表すと,人口構成を反映した評価が行えると考えられる.本研究では,地域メッシュを用い,歩行速度と津波遡上流速のばらつきを考慮して人的被害を評価する方法を提案する.実在の地域をモデルに,避難意識の違いによる被害数をメッシュごとに示し,避難施設の設置数と設置場所による人的被害を検討する.
  • 玉森 祐矢, 藤生 慎, 中山 晶一朗, 髙山 純一, 西野 辰哉, 寒河江 雅彦, 柳原 清子, 平子 紘平
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_157-I_164
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     日本の高齢化は,世界に例をみない速度で進行しており,2007年に超高齢社会を迎えた.それに伴い,介護を必要とする「要介護高齢者」の数も増加している.このような中で,高齢者を始めとする災害時要援護者が自然災害により被災する事例が多発しており,自然災害からこれらの人々の安全・安心を確保することが求められる.今後,災害時要援護者の分布や通院状況などは,我が国の防災対策を考える上で無視することができない.被害を最小にする対応には,災害時要援護者の実数・生活場所を確認し,通常の救護・介護体制を把握し,災害発生時の地域社会の救援体制整備が不可欠である.
     そこで本研究では,国民健康保険データベース(KDB)を用いて,疾患別の患者の分布について分析を行い,被災可能性と被災者属性を明らかにした.また,災害時要援護者を考慮した避難シミュレーションを実施した.
  • 花田 光司, 鈴木 誠, 吉浪 康行, 内海 秀幸
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_165-I_170
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     豪雨などの影響で河川水位が上昇し、その結果河川堤防が越流や提体内の地下水の影響を受けて破壊する.本研究は、ある河川堤防の複数断面を対象に、最大河川水位と地盤物性値の不確定性を考慮し、河川堤防の縦断方向の安全性評価を評価した.具体的には,地盤強度の不確定性を考慮した確率有限要素法に基づく破壊確率からフラジリティ曲線を求め,河川水位の観測データから得られる年超過確率のハザード曲線を求めた.これらの結果から,河川堤防の河川水位に関する年破壊確率密度や,重ね合わせて年破壊確率を評価し,安全性を定量的に評価した.河川堤防の破壊に対する安全率と年超過確率という2つの安全性評価分布図を比較しながら,補修工事などの優先順位の決定に利用できることを示した.
  • 佐々木 信和, 篠原 潤, 山本 真史, 喜多村 敦史, 中野 晋
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_171-I_176
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     大規模な地震等に見舞われた港湾において速やかに施設の状態を把握することは,迅速な緊急物資輸送及び港湾機能の回復を図るうえで重要である.本研究では,桟橋上部工コンクリートに着目し,従来より行われてきた下面から船舶または潜水士等による直接目視に代替する手法として,電磁波レーダを用いた調査・解析による手法の適用可能性について検討を行った.
     3D電磁波レーダを用いて既存の桟橋上部工の試験調査を行い,レーダデータの反応と実際の構造物の状態を比較した.試験調査及び解析の結果,床版(スラブ)の下部鉄筋付近の状態についてもおおよその状態を推定することが可能であると考えられる結果が得られた.また,本手法を施設管理の現場において活用することの利点を考察した.
  • 辻 欣輝, 広兼 道幸, 麻野 貴義, 小西 日出幸
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_177-I_182
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     高度経済成長期に建造された橋梁は全橋梁の約40%を占めており,建造時に用いられた高力ボルトの劣化による軸力低下を事前に特定することが必要となっている.軸力測定方法として打音法が挙げられる.打音法は低コストで危険を伴わず,簡便に作業が行えるという利点を持つが,熟練技術者不足などの問題があるため,非熟練技術者でも精度良く効率的に診断を行える方法の確立が求められている.
     そこで本研究では,高力ボルトを締結した試験体をハンマーで叩き,打撃時の振動波形データを高速フーリエ変換し,そこから周波数特徴量を取得する.さらに,元の振動波形データから波形の減衰率を算出したものを減衰率特徴量として取得する.そして,このようにして得られた特徴量を用いて,各種パターン認識手法で高力ボルトの軸力低下率を認識し,その認識精度を比較した.
  • 野村 泰稔, 井田 一晟, 宮地 翼, 宮本 学, 菅 真人
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_183-I_190
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     配管系を構成するバルブは流体の存在する建設設備やプラント等において欠かせないものである.しかしながら,バルブの制御不良による事故は多く報告されており,事故の原因として,バルブに錆びつき固着が発生し開閉不能になることが挙げられる.錆びつき固着による動作不良は,製品品質だけでなく,人命に関わる重大な事故に直結することから,安全性確保の観点からバルブの健全性の把握は重要である.本研究では,バルブの健全性モニタリング技術の開発を目的として,バルブを開閉することなく,流体が常時流れている際の振動から,周波数特性のフーリエ振幅値を画像化し,深層学習の一種である畳込みニューラルネットワークを用いてバルブの状態を識別することを試みた.
  • 西山 浩司, 清野 聡子, 石原 大樹, 森山 聡之
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_191-I_198
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     2015年9月1日午前3時台,対馬海域で発生した突風の影響で漁船が転覆する死亡事故が起こった.しかし,夜間は目視ができず,突風の予測も難しい現状にある.そこで本研究では,対馬事例を含めて,2007~13年に前線活動に伴って陸上で確認された,西日本・東日本の突風事例(54事例)を対象に,気象レーダーの分析に基づいて,突風を取り巻く降水域の特徴を調べた.その結果,突風発生時間の緯度経度0.2度幅の狭い範囲で,80%以上の事例で強い降水強度の領域(80mm/h以上)を捉えた.また,緯度経度1度幅の範囲に拡大すると,発生1時間前に70%程度の事例で強い降水強度を捉えた.従って,前線活動に起因する突風の場合,発生1時間前までであれば,気象レーダーで強い降水強度の領域の接近を監視することで,夜間の突風被害から身を守ることが可能と考えられる.
  • 佐藤 芙美, 吉川 直孝, 平岡 伸隆, 伊藤 和也
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_199-I_206
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     山岳トンネル建設工事中の労働災害は,建設機械等に起因した災害に次いで,肌落ちによる災害が多い.肌落ちによる災害は,年間1~2件程度の死亡災害と年間10件程度の死傷災害が発生している現状にある.その災害事例を分析した既往の研究からは,山岳トンネルにおける発破掘削を用いた現場で支保工建込および装薬作業中に発生していることが報告されている.これらの現状を鑑み,肌落ちの発生機構を明らかにすることを目的として,固結粒状材料を用いた供試体の発破実験およびトンネル模型発破掘削実験を実施した.また,それらの実験をシミュレートするため,3次元の個別要素法(DEM)解析を実施した.結果として,発破掘削後に切羽周辺において球要素間のボンドに引張応力が残存することを確認した.したがって,実際の現場において,発破後には岩盤同士の亀裂に存在する固結物には引張応力が残存している可能性が示唆され,その引張応力が徐々に岩盤同士の亀裂を押し拡げ,ついには重力により肌落ちが発生するものと推察された.
  • 山田 貴久, 福重 進也, 降駒 導爵, 鈴木 紀彦
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_207-I_213
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー
     労働安全衛生規則は,物体の落下による危険防止に関する規定及び飛来防止設備を規定している.特に,建築基準法施行令第136条の5では具体的に規定している.国土交通省の建設工事公衆災害防止対策要綱土木工事編は,作業する場所からふ角75度以上の範囲は立入禁止措置等を要請している.すなわち,その範囲外が安全離隔距離と考える.しかし,この距離は国土交通省関東地方整備局企画部技術調査課に確認の結果根拠が不明であり先行研究が無いことがわかった.本稿は,建設時の実態に即した規定根拠を明確にするために実証実験を行い建設工事公衆災害防止対策要綱第101条規定の妥当性及び飛距離のメカニズムを解明することを目的とした.その結果,落下物が自由落下をする場合に足場用幅木に一度衝突し更に落下を続ける間に足場用幅木が撓み戻ろうとする力及び中桟に衝突し金属性単管の撓みにより押出そうとする力によるダブルトリガー効果が生じることで大きな水平方向速度が生じ一般的には生じないような飛距離が生じるメカニズムを解明した.
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