土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
ISSN-L : 2185-6621
75 巻 , 2 号
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特集号(和文論文)
  • 神谷 大介, 城間 聖, 長曽我部 まどか, 榊原 弘之, 赤星 拓哉, 田中 謙大, 金城 太一, 我部 新, 山中 亮, 塚井 誠人
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     へき地は災害弱者の増加および迅速な外部支援を期待しづらいため,共助の重要性は高く,特に自主防災組織等の取り組みが重要であると考えられる.本研究ではこのような地区として,沖縄県国頭村11地区を対象に,防災ワークショップを実施した.組織が結成されていない地区においては,地区の関心事からの取り組みが重要であると考え,ワークショップでの発話を用い,トピックモデルによる関心事を明らかにした.さらに,この共通点と相違点や関心の高低の観点で分析した結果,地域差が大きい話題,関心度が高く共通する話題,関心度が小さく類似している話題に類型化することが出来た.津波リスクに対する避難路の話題は共通して関心が高いこと,要配慮者支援については地域差が大きいことなどが示された.

  • 加藤 研二
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_9-I_19
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     災害がよく起こる日本では,日頃からの備えとして地区住民が主体となった避難訓練を実施するなど災害への備えを進めている.こうした中で,より効果的に避難意識を向上させようと,モビリティ・マネジメント手法を適用した実験がされており,より適切な個別コミュニケーションの実施ができれば,より効果的な行動変容を促すことも可能と考える.

     そこで,より効果的な行動変容を把握するため,2つのトラベル・フィードバック・プログラムを用いた実証実験を東京都豊島区および徳島県にて実施した.その結果,簡易トラベル・フィードバック・プログラムではレスポンス回数の違いが避難訓練への参加ならびに災害準備行動に影響を与えることが確認できた.また,ワンショットトラベル・フィードバック・プログラムでは実施間隔の長さが災害準備行動に影響を与える可能性を示すことができた.

  • 二神 透, 中嶋 友哉
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_21-I_26
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     過去の自然災害の経験から,大規模災害時の被害を軽減させるために,住民一人一人の防災意識を向上させることの重要性は大きくなってきている.そこで,本研究では防災意識を向上させる要因を検討するため,防災活動団体「防災リーダークラブ」所属学生と一般学生を対象にアンケート調査を行った.その結果,地域防災活動への参加などを通して,防災意識の中の「現状危機感」や「災害に対する関心」が向上することが明らかとなった.また,地域に対する評価・愛着を向上させることで,地域防災活動参加といった直接的アプローチでは向上させることができなかった「他者指向性」や「被災想像力」といった意識を向上させることができることが示唆された.

  • 竹之内 健介, 大西 正光, 佐山 敬洋, 本間 基寛, 矢守 克也
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_27-I_37
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     災害時には,大きな被害を受ける地区が存在する一方,災害発生の可能性が高かったが結果的に被害を免れる地区も存在する.本研究では,このような災害発生のポテンシャルが高かった地区における住民の災害意識について調査を行った.調査は,平成30年7月豪雨の際に水害のポテンシャルが高かった京都市南部の住民を対象とし,下鳥羽地区の住民を対象とした自治会による基礎調査と,WEBによる比較調査を実施した.

     調査では,平成30年7月豪雨当時の周辺河川の氾濫可能性に対する認識や避難状況を確認するとともに,水害ポテンシャルを指摘した際に,当時の対応行動の適否や避難行動に変化が生まれる可能性を確認した.また水害ポテンシャルの指摘が効果的に機能する要因として,水害に対する敏感さ,水害対策の理解状況など複数の要因が影響することも確認された.

  • 後藤 浩, 佐藤 敏和, 岡田 健司, 前野 賀彦, 竹澤 三雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_39-I_46
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     現在,基礎自治体から,与えられた対象降雨に対する内水氾濫や堤防越堤・破堤が原因の外水氾濫に関する洪水ハザードマップが住民へ公開・配布されている.そのハザードマップでの危険性の表示は,主として浸水深のみの場合が多い.しかしながら,実際,浸水するにあたっては,流れを伴っているケースが多く,時間的に急速に浸水し水深が小さくても歩行できない場合がある.また,流れが弱く時間的にゆっくりと氾濫原が浸水する場合,洪水による濁水の湛水により水面下の道路の縁石や側溝などの地物が視認できず,人が徒歩避難する上で危険である.すなわち,現行ハザードマップの表示には,検討の余地があると考えられる.本研究では,現行ハザードマップにおける危険性の表示法について不足していると考えられる点を抽出し整理した.そして,それらの不足点に関する改善策について検討を行った.

  • 鈴江 和好, 中野 晋
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_47-I_56
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     南海トラフ巨大地震の津波被害から住民の安全・安心を確保することは,国や自治体等において喫緊の課題となっている.その解決策として,津波被害が及ぶ区域に居住させない建築基準法の災害危険区域を指定する手法があり,東日本大震災後に多く実施されている防災集団移転促進事業の必要条件ともなっている.このように,被災前後を問わず災害危険区域を指定する意義は大きい.そこで,南海トラフ巨大地震の津波被害が予想される徳島県阿南市をケーススタディとして,災害危険区域の指定について考察する.まず,東日本大震災後の災害危険区域の指定状況を文献調査などから類型化する.次に,これら類型パターンを阿南市に適用し,津波浸水想定レベルI,レベルIIの津波に基づく災害危険区域の変化について分析を行う.これらからの知見を基に,津波被害の状況に応じた「災害危険区域」の指定を円滑に行うための方策を提示する.

  • 木元 崚, 宇野 宏司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_57-I_63
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     神戸市では長い歴史を見続けてきた古木や,雄大さと安らぎを与えてくれる森を市民の協力のもとに「市民の木・市民の森」に指定しており,神戸のまちづくりに貢献している.こうした樹木を保全していくためには樹木が置かれてきた空間の履歴と現状を把握することが大切である.

     本研究ではまず,樹木状態などを把握するための現地調査と,樹木の生態系サービス,被災履歴などを知るためのアンケート調査を実施した.また,国土数値情報等のオープンデータを活用した自然災害被災リスクを把握するための空間情報解析を行った.その結果,過去の被災履歴から樹木の特徴が活かされ,減災につながった事例があることを明らかにした.また,それらの樹木は主にレクリエーションの場,生物の生息・生育環境といった生態系サービスを提供していることがわかった.

  • 岩原 廣彦, 白木 渡, 松尾 裕治
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_65-I_74
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     南海トラフ地震の発生確率が,今後30年間で70~80%といわれるなかで,甚大な被害が想定される四国地方においては,地域特性に応じた的確な防災・減災対策が必要となっている.瀬戸内海には多くの島々が点在し,その多島美が美しく国内外からの観光客も多い.特に,2019年は,香川県内の島々を中心に2010年から3年ごとに開催されている「瀬戸内国際芸術祭」が開催されている.これら離島地域の多くは,人口減少や高齢化が進展し,無居住化が懸念される島も増加している.さらに離島では,地理的・社会的問題の影響で,防災・減災対策が遅れているのが現状である.本研究においては,これら離島における防災・減災対策の課題と対応策について,産業基盤のない男木島と産業基盤のある直島の事例を分析し,離島における今後の防災・減災対策のあり方について検討を行った.

  • 磯打 千雅子, 津田 由起子, 野々村 敦子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_75-I_82
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     平成30年7月豪雨災害被災地である倉敷市では,洪水による想定浸水深が5mを超える地域を有していた.特に,同市真備町では,町全体面積の約3割が浸水し51名が犠牲となった.犠牲者の年齢別では,65才以上が約88%と高齢者に集中し,死亡者51名の内44人が自宅で亡くなっている.

     一方,倉敷市が実施した住民の避難行動に関する調査結果では,避難勧告・指示発令の段階で,全回答数64.8%が避難開始しており,課題は避難コストの高い要配慮者にあるといえる.

     本研究では,倉敷市真備町の小規模多機能型居宅介護事業所による災害警戒時から被災時における施設利用者の救出活動に対して非構造化インタビュー調査を実施した.その結果から水害ハイリスク地域における避難行動要支援者対策について考察した.

     考察結果と倉敷市地域全体の水害リスクの多寡をふまえて,現行の地区防災計画制度の発展的活用を提案した.

  • 秦 啓, 西内 裕晶
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_83-I_92
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     中山間地域の持続を考える上で,地域に必要な道路の把握評価が必要である.本研究は,中山間地域に存在する全道路を把握し,交通量の少ない道路の防災的価値を把握することを目的とする.本研究では,高知県香美市全域を対象に公道と林道を統合した異種道路ネットワークを構築した.また,人口データを元に集落を定義し,災害域予想や避難所のデータを元にしたネットワーク分析より集落と避難所間や地域全体の繋がりを評価した.結果として,災害が発生した場合としない場合の各集落からの避難先の変化や集落の孤立を把握した.また,それらの経路の重要度や通行しやすさを試算した.林道を考慮することで地域内集落の孤立を防ぐような迂回路が増加することがわかった.また,集落から避難所までの移動経路に林道が用いられており,林道は防災的価値を有することが確認できた.

  • 井上 惣介, 中野 晋
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_93-I_98
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     47都道府県と各建設業協会とが締結している災害時における応急業務に係る協定文書(災害協定)を収集し,災害補償規定の記載状況について分析した.労務災害を含む損害補償に関する規定の記述がある協定は32件,第三者や機材等への損害補償に関する規定の記述がある協定は4件,損害補償に関する規定の記述がない協定は11件であった.このように多くの地方自治体と建設業協会が締結している災害協定で,災害時の緊急出動の際に発生した事故等に対する損害補償に係る対応は統一されていないことが分かった.また,災害緊急出動時における労務災害補償について詳しく把握するため,国土交通省四国地方整備局,全国建設業協会,徳島県建設業協会の関係者にヒアリング調査を行った.その結果,東京都では具体的な補償金額に関する課題が認識されていること,国土交通省では緊急出動業務の発注予算額に労災保険料を新しく反映するための準備が進んでいることなどが明らかになった.これらの結果を踏まえ,災害緊急出動時の労務災害補償のあり方について提示する.

  • 清水 尚憲, 米竹 淳一郎, 菖蒲 鷹彦, 今井 諒, 山本 信一, 三原 泰司, 小島 英郷, 梅崎 重夫, 濱島 京子, 北條 理恵子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_99-I_107
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,トンネル施工現場において発生している重機と作業者との接触災害を防止するために,ICT機器を利用した安全管理支援システムである支援的保護システム(SSS)を提案する.SSSとは,残留リスクを対象とし,作業者の注意力のみに頼らない確実性の高い安全作業支援が可能となるシステムである.SSSの構成要素として,隙間のない計測が可能となるTOF(Time of flight)方式を用いた3Dレーザーレーダーを使用し,従来困難であった対象物の形と大きさが識別できるか否かを検討した.結果,作業者と重機の位置情報は捉えることができたが,必要要件のいくつかは録画後の解析での達成にとどまり,リアルタイム計測においては,課題が残る結果となった.

  • 今 日出人, 栗田 悟, 矢部 育夫, 久加 朋子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_109-I_117
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     近年,全国各地で大規模な自然災害が頻発し大きな被害が発生している.このため,災害発生後に地域社会が日常を取り戻すには地域の建設業界の果たす役割は益々重要さを増しており,予めBCPを策定し,災害発生時に自社業務および地域社会の復旧・復興に力を発揮できる体制づくりをしておくことが肝要である.そこで,本研究では一般社団法人北海道建設業協会の会員を対象にBCP策定状況,訓練実施状況,胆振東部地震時の機能状況,行政に期待する事等についてアンケート調査を実施した.その結果,全道でのBCP策定状況は38%と全国平均よりやや低く,かつ地域差や企業規模による差もあることが分かった.

  • 坂本 淳
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_119-I_125
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     2012年施行の津波防災地域づくり法を受けて太平洋沿岸地域の津波浸水想定は大きく見直され,これまで浸水しないと想定されていた地域で新たな津波防災対策が必要なことが認識された.一方,地方では本格的な高齢化・人口減少問題が深刻化しており,コンパクトかつ利便性の高い都市形成が急務とされている.

     本研究では,津波リスクの見直しにより中心市街地の広範囲の浸水が想定される高知市を対象とし,住民意識調査に基づき居住誘導に向けた課題を考察する.まず,見直しに対する意識について,災害リスク,まちづくりの観点から把握する.次に,住民が防災面で安心と考える要因について,場所や建築条件から解明する.さらに今後の居住選択で重要視する点と防災対策事業の認知状況を明らかにする.その結果,高知市の方針である将来のまちなか居住を促進させていくためには,浸水想定区域内の防災対策を早期に行う必要があることがわかった.

  • 櫻井 祥之, 小川 宏樹, 中野 晋
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_127-I_135
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     立地適正化計画における居住誘導区域には,具体的な指定基準が示されているわけではなく,その判断材料や基準は各自治体に委ねられている部分がある.それは防災上の懸念を有するエリアも例外ではなく,災害リスクを有する区域の取り扱いについても自治体により異なる.本研究では居住誘導区域を指定した自治体を対象として,区域指定時における災害の危険性を有する区域の取り扱い方法について整理し,居住誘導区域指定の要点を明らかにすることを目的とした.本研究の結果,国の対応としては浸水想定区域の取り扱いについて,法や指針で定める必要性が示唆された.また自治体の対応としては,浸水面積や浸水深に応じた取り扱いを検討する必要性が明らかとなった.

  • 保田 敬一, 白木 渡
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_137-I_156
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     橋梁長寿命化修繕計画では橋の耐久性に影響を与える劣化因子や環境・使用条件を考慮して策定されているが,自然災害リスクをどの程度反映するかについては当該自治体の判断に任されている.自然災害リスクという観点からみて良く似た環境・使用条件をもつ自治体の修繕計画情報は自治体相互で参考にした方が修繕計画改善時にも有用となる.本研究では,橋梁長寿命化修繕計画において反映できる統一的な自然災害リスク指標を都道府県別に算定する.自然災害リスク指標は暴露量・脆弱性・レジリエンスの組合せで表現する.この統一的指標を参照することで,当該維持管理機関の橋梁長寿命化修繕計画における自然災害リスクの影響度合い,他の自治体との比較,レジリエンスの改善など,新たな観点での修繕計画の見直しなどに効果が期待できる.

  • 前田 典昭, 河村 圭
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_157-I_165
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     現在の社会基盤施設における維持管理は,アセットマネジメントシステムが有効であるため,経年的な劣化・損傷等で幅広く活用されているが,地震等のイベント・リスクを付加した事例は少ないのが現状である.本論文では,トンネル内に設置された照明灯具を対象に,過去に提案したトンネル単位での経年的な劣化・損傷等の健全度予測が可能な簡易動的マクロモデルについて,想定される地震被害率を用いて,被災後のトンネル単位での健全度予測が可能なモデルに拡張した.次に,本モデルから算出される回復健全度と復旧コストをコスト効果の指標であるコスト有効度によって,コストマネジメントを行った.最後に,経年的な劣化・損傷等のアセットマネジメントにイベント・リスクを融合した新たなアセットマネジメントの適用性を検討した.

  • 園部 雅史, 羽柴 秀樹
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_167-I_175
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     2018年12月にインドネシアのアナク・クラカタウ島において大規模な山体崩壊が発生した.土砂の海域への流入に起因して発生した津波は周辺沿岸域に多くの損害を与えた.本研究では,災害前後のSentinel-2衛星およびLandsat-8衛星,Sentinel-1衛星の観測情報を利用し,火山活動や山体崩壊による地形変化の判読調査と周辺沿岸域の津波被害域の抽出を行った.アナク・クラカタウ島の地形変化が光学・SAR衛星画像を併用することで効果的に把握された.被雲域が補正された災害前後のNDVI値から周辺沿岸域の津波被害域が抽出され,目視判読結果を参照することで適切に評価された.加えて,MTC画像の判読特性や津波災害への利用可能性について調査した.これらの調査結果から,即応性が求められる災害対応における概要調査に対して有用性が考察された.

  • 石井 唯嵩, 広兼 道幸, 道財 健斗, 倉本 和正
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_177-I_184
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     近年,異常な気象現象による人的被害を伴う甚大な被害が発生しており,災害に対する安全性の確保が求められている.こうした状況を踏まえ,国土交通省は,対策の一つとして土砂災害警戒区域等の設定を進めているが,その作業には,非常に時間や労力を要するため,継続的な実施に向けては効率化が求められる.

     そこで,画像処理の諸分野で高い成果をあげている深層学習の技術を使い,土砂災害警戒区域設定の自動化・効率化を目標とした研究を行った.その結果,高い精度で土砂災害による危害のおそれのある区域を設定することができ,自動化・効率化への有効性を示すことができた.

  • 中村 栄治, 小池 則満
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_185-I_192
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     地下街での避難においては,避難開始地点が店舗もしくは通路となり,避難先は地上へと通じる連絡階段の地上出入口周辺になる.多様な業種の店舗が集積しているのが地下街の特徴であるが,業種により店舗の店構えや什器類の配置が異なるため,店舗から通路への避難を画一的に捉えるべきではない.地上の出入口周辺においては,駐輪場や各種ポール等が設置されていることが多く,限られた空間への避難となるため,避難者が出入口付近に立止まり後続の人々の避難を阻害する可能性がある.本研究においては,名古屋駅西側に位置する地下街エスカを研究対象として,避難に大きく影響する条件を考慮したシミュレーションを行った.避難先には立止まり禁止エリアや到達目標ラインを設定することにより,円滑な避難を実現できることを明らかにする.

  • 西 優汰, 二神 透
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_193-I_200
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     まちに,みどりを整備する計画は,景観面,ヒートアイランド現象の抑制からも魅力的な計画である.さらに,みどりは,火災に対する延焼阻止・遅延効果があると言われている.本研究では,樹木の遮蔽力に関する文献に基づき,著者らが開発している地震火災延焼シミュレーション・システムに常緑樹・落葉樹・生垣といったみどりのデータ入力部分のインターフェイスを導入した.具体的には,樹木を構成するパラメータの類型化に基づき,樹種や樹形を考慮したデータ入力作成システムを開発した.最後に,開発したシステムを用いて,既存のみどりの効果,生垣の配置,セットバック,空き家の除去と植樹,オープンスペース周辺への植樹の評価を行った.それらの結果,既存のみどりが大きな延焼阻止効果を発揮することが明らかになった.

  • 高橋 亨輔, 井面 仁志, 白木 渡, 磯打 千雅子, 高橋 真里
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_201-I_209
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     災害時に発生しうる様々な状況に適切に対応するには,事前の訓練が必要である.著者らは,地震発生時の初期対応の一連の流れを体感可能な訓練システムを開発し,これを活用した対応能力養成訓練を実践している.

     本研究では,本訓練システムによる訓練の中で記録した訓練映像を基に体験者の行動特性を分析する.具体的には,訓練中の体験者の発言内容や行動を表形式で整理し,複数の体験者にみられる特徴ある行動を抽出する.これにより,個人の特性に合わせた避難訓練手法提案のための基礎的な尺度を検討する.

  • 三好 学, 田村 隆雄, 武藤 裕則, 安藝 浩資
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,保険の給付・徴収に対する不平等性の低減を目的に,内水被害額に応じてグループ分けをし,保険の給付・徴収することを検討する.そこで,徳島県全域を対象とした内水氾濫解析と治水経済調査から算定される内水被害額から,年平均被害額とその世帯数の分布を求めた.その分布をもとに,保険給付料と徴収料の差額の世帯格差を数値化し,内水被害額に応じたグループにより保険の給付・徴収を行うことで,不平等性が少なくなることを考察した.考察において,保険の給付・徴収は保険給付の上限額を設定した場合と,保険徴収料を変化させた場合ともに,不平等性が少なくなることがわかった.

  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 岡野 将希
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_217-I_226
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている.

     本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.

  • 高橋 真里, 中野 晋, 井面 仁志, 千川原 公彦, 小野 修平
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_227-I_236
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     平成30年7月豪雨により,西日本各地で甚大な被害が生じた.本研究では,愛媛県西予市野村町に設置された西予市災害救援ボランティアセンターについて,現地調査や西予市社会福祉協議会をはじめとする関係者にインタビュー調査を実施し,運営方法の特徴や運営上の課題について考察した.さらに,社会福祉協議会および地域包括支援センター職員が,日常業務として実践している地域福祉の視点を失わなかったことと,外部支援団体の協力により約3ヶ月に渡る運営が円滑に行われたポイントが整理された.

  • 白木 渡, 石野 紗衣, 泉田 数佳, 土居 峰, 井面 仁志, 高橋 亨輔
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_237-I_246
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     大規模災害時における避難所運営の目的の一つは,避難住民の物理的及び精神的なダメージをできるだけ小さくし,早い時期に生活再建を可能にすることである.しかし熊本地震では様々な想定外の事態が発生し,行政並びに住民の対応が遅れ,後の復旧・復興に支障をきたした.本研究では,今回の地震で避難所運営の障害となった事項を,これまで実施されているアンケート調査や内閣府の報告から分析し,支障となったボトルネックの洗い出し,レジリエンスエンジニアリングの観点から想定外災害時の避難所運営の課題として 事前に備えるべき”頑健性“や“冗長性”等の4特性,事中や事後に発揮すべき“対処能力”や“予見能力”等のレジリエンス4能力に関して課題と対策を示した.さらに,避難所施設の頑健性,地域内での技能者の把握と避難所運営分担リストの作成等の効果的な避難所運営に関する提案を行った.

  • 小池 則満, 山口 智史, 橋本 操, 森田 匡俊
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_247-I_253
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/12
    ジャーナル フリー

     災害対応施設の配置計画を策定する際には,各施設が受け持つ人口を試算し,施設整備の優先度等に反映させることが求められる.これまで面積按分と道路ネットワーク按分による人口の割り当て手法の検討がなされてきたが,道路密度の疎密による分析結果への影響について検討した事例はみあたらない.本研究では,災害対応施設としてヘリコプターの場外離着陸場を取り上げ,市域に中山間地を含む愛知県豊田市を対象に人口割り当ての分析を行った.その結果,道路密度の疎密に関わらず,地域全体を俯瞰して勢力圏人口の傾向をつかむならば面積按分が有用であること,各施設の範囲および勢力圏人口を求める際は,特に中山間地域では,道路ネットワーク按分の適用が求められること,面積按分および道路ネットワーク按分による勢力圏分析の手法選択の閾値として道路距離と直線距離との比などの地域特性が指標となる可能性があることについて指摘した.

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