土木学会論文集F1(トンネル工学)
Online ISSN : 2185-6575
ISSN-L : 2185-6575
72 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集号
  • 岡崎 泰幸, 青柳 和平, 熊坂 博夫, 進士 正人
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_1-I_15
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     トンネル支保設計では,特殊な地山条件や類似例が少ないなどの理由から,解析的手法が用いられることがある.支保部材を構造計算し定量的に評価する場合,初期応力状態や地山物性を事前に精度良く把握する必要があるが地山は不均質で均質ではない.本研究では地山の不均質性に着目し,不均質性を考慮した2次元トンネル掘削解析の解析結果を初期応力分布が明らかな幌延深地層研究計画における350m調査坑道の支保工応力計測結果と比較した.その結果,坑道で発生した支保部材の限界状態を部材の一部が超過する応力計測結果は,地山の不均質性を確率的に考慮することで説明できることがわかった.また,解析結果の支保工応力のばらつきを統計処理することで,地山の不均質性がトンネル支保工応力に与える影響を定量的に評価した.
  • 若月 和人, 齋藤 優, 阿部 和久, 紅露 一寛
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_16-I_27
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     切羽外周部あるいは中央部に自由面を形成する制御発破(以下,自由面発破と呼ぶ)では,発破振動を大幅に低減できることが知られている.一方で,その効果メカニズムについての議論は,これまでほとんどなされていなかった.このため,自由面発破における合理的な発破パターンの設計は実現困難であり,もっぱら経験的に行われてきた.
     本論文では,個別要素解析手法を適用するとともに,発破孔近傍における破壊挙動やエネルギー収支および発破孔遠方における波動場に着目することで,自由面発破の振動低減効果について検証した.この結果,自由面発破における振動低減メカニズムを推測するとともに,特徴的な波動の伝搬特性を確認することができた.
  • 高村 浩彰, 稲留 康一, 平野 享, 塚本 耕治
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_28-I_35
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     本報告では,発破掘削時のトンネル坑内における音圧特性を正確に把握する測定方法を示し,発破騒音・低周波音伝搬予測式の精度を向上させることを目的としている.このため,坑内音圧の測定データを入射波(切羽からの発破音圧)と反射波(扉または開口部からの反射)に分離する測定方法ならびに評価方法を提案する.提案した方法を模型実験および発破掘削を実施している現場に適用し,その妥当性や新たに得られた知見をまとめた.
  • 白岩 誠史, 川中 政美, 庄野 昭, 佐藤 正, 牧 剛史
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_36-I_46
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     インバートコンクリートを施工する区間の覆工コンクリートは,セメントの水和熱および外気温の変動による温度収縮がインバートに拘束され,貫通ひび割れの発生が懸念される.そのため著者らは,このような貫通ひび割れ対策として,引張応力の集中する側壁下部中央の範囲を限定的に短期間冷却することで引張応力の発生速度を緩和させる“部分パイプクーリング(Localized Pipe Cooling)”を提案した.さらに3次元FEM温度応力解析によりそのメカニズムを確認し,実施工への適用指標をまとめた.
     また,部分パイプクーリングを実施工に適用し,測定した内部温度および拘束ひずみを取り込んだ事後解析にて,ひび割れ発生確率が20%以上低減したことを確認した.これらの結果,有害なひび割れの発生を防止できた.
  • 野村 貢, 戸本 悟史, 西條 敦志, 木村 定雄, 芥川 真一
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_47-I_62
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     トンネル内附属物落下事故の教訓として,点検を定期的に行っていても,落下など第三者被害に結びつく構造物,附属物があることが判った.さらに,従来実施されている点検手法では,附属物を壁面に固定する後打ちボルトの健全性を十分に把握しきれないことも明らかにされた.
     一方,経済的で高性能なセンサー類の技術向上が,社会インフラにおけるモニタリングの実用化を促進している.
     本研究は,道路トンネル附属物のうち照明器具に着目し,MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術によるセンサーを活用したセンシング方法を提案し,実用性の検証を行った既往研究を踏まえ,既往研究時の課題を検証する実験を行うとともに,実用化を視野に入れたトンネル保全モニタリングシステムとしての提案を行った.
  • 保田 尚俊, 塚田 和彦, 朝倉 俊弘
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_63-I_73
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     背面空洞の存在が覆工の応力状態に与える影響を知るための基礎として,無限に広がる地盤内に背面空洞を有する中空円筒形トンネルに対して,無限遠方から荷重が作用する問題を3次元弾性論に基づいて解析した.その結果,次のことが明らかとなった.背面空洞があると,覆工に変状が生じやすくなるが,これは本来軸力が主体となるべきところに,背面空洞が存在するために曲げモーメントが生じる場合に顕著となる.トンネル軸方向の背面空洞の長さがトンネル半径程度より長くなると,背面空洞が主要因となって覆工内壁面に引張応力が生じる可能性がある.背面空洞の影響は空洞のトンネル軸方向の長さに比例するが,その上限値はトンネル周方向の空洞の長さに依存する.
  • 菅原 健太郎, 大窪 克己, 土門 剛, 三ツ谷 洋司, 蒋 宇静
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_74-I_86
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     ひびわれが観察されたトンネル覆工の補修を合理的に行う上では,覆工のひびわれの原因を特定することが重要である.筆者らは,このための手掛かりとして,レーザスキャニングによる覆工の形状計測結果を用いることを試みた.矢板工法で建設され,外力の影響を受けていないと考えられるトンネルを対象とし,精度の向上を図った移動体型の計測システムを用いてレーザスキャニングを実施した.得られた3次元点群データより,独自の方法により覆工上半部の曲率半径を測定した.この結果,組立式型枠が設置された各スパンに共通する特徴的な曲率半径の分布を認めた.このような覆工形状の分布が見られる場合は,これが外力による覆工の変形によってもたらされるとは考えにくいことから,覆工に生じているひびわれが,覆工コンクリートの硬化過程の変形など外力以外に起因するものであると判断できる.
  • 廣田 彰久, 西山 哲, 水口 尚司, 石村 勝伸
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_87-I_95
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     本研究は,トンネルの覆工コンクリート表面に生じたひびわれ幅の変化を写真撮影という簡便な方法によって計測しようというものである.計測においては,反射ターゲットをトンネル壁面に発生したひびわれ両側に基準尺として2枚設置した.そしてひびわれとともに1枚の画像として撮影し,ターゲットの2次元座標を計算することにより,ひびわれ幅の変化を計測することを可能とした.本研究では反射ターゲットを用いたひびわれ幅計測手法の研究成果を報告する.さらに,実際の道路トンネルに対して本計測手法を適用し,その計測結果についても示す.
  • 小林 寛明, 下津 達也, 上野 光, 渡辺 和之, 嶋本 敬介, 朝倉 俊弘
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_96-I_107
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     山岳トンネルにおいてインバートを設置したにも関わらず,完成後に盤ぶくれが生じた事例がある.このようなトンネルにおいては,施工時に将来の盤ぶくれを想定したインバート構造の選択が,適切に行われていなかった可能性がある.鉄道・運輸機構では2014年より,地質の性状や掘削時の内空変位量等に応じて,完成後の盤ぶくれを防ぐためのインバート構造を設計,施工するフローを適用している.しかし現時点では,このフローを適用した具体的な施工事例が少なく,これらの効果を確認するための計測データなども不十分である.そこで本研究では,実際に完成後に盤ぶくれが生じたトンネルの変状を再現できる解析モデルを構築し,インバートの形状や支保工,早期閉合などをパラメータとした数値解析を実施し,完成後の長期的な盤ぶくれに対する抑制効果について検証した.
  • 岡 滋晃, 阿南 健一, 実広 拓史, 吉本 正浩
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_108-I_122
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     軟弱地盤中に建設したシールドトンネルで,圧密沈下による見かけ上の荷重増加やセグメントフラットバーの塩害によるセグメントの剛性低下から,トンネルの内空が減少している事例がある.この対策の一つに,トンネルの内空に補強用の柱体を構築し,トンネルの覆工体としての剛性を高めるものがある.しかしながら,柱体の設計を行う上で,塩害に伴うセグメントフラットバーの残存量の評価,およびセグメントと柱体の複合構造物としての構造モデルの構築が課題であった.そこで本論文では,塩害が発生したシールドトンネルのセグメントのフラットバーの残存量評価手法について論ずる.フラットバーの将来残存量の設定をもとにした荷重モデルと,これにともなう構造モデルの構築方法についても論述する.
  • 寺田 雄一郎, 大恵 勝, 水上 博之, 吉田 公宏
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_123-I_135
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     シールドトンネルの相互間隔が,0.5Dを切るような近接したシールドの設計にあたっては,FEM解析を実施して,その挙動を把握している.しかし,一般にFEM解析への入力条件は,トンネルの完成形を対象としたものであり,その施工途中段階における挙動を十分に考慮したものではない.そこで,本研究では,実施工における先行トンネルの計測から逆解析を行い,後行トンネルが接近する際の切羽圧,裏込め注入圧の影響,また後行トンネル通過後の安定状態に関してその挙動を把握することを試みた.その次に,FEM解析を実施しなくてもセグメントの設計が可能となるような近接度をパラメーターとした新たな係数を設計に導入した.本論文は,この新たな係数を導くための現場実証や解析過程を述べるものである.
  • 石垣 博将, 澤上 晋, 森 誠, 服部 佳文
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_136-I_149
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     近年,立坑のコスト低減を目的とした土被りが1D(D:覆工外径)以下のシールドトンネルが多く計画されているが,軟弱地盤を通過する小土被りトンネルは,地震時の影響を受けやすいなどの課題がある.本論文では,地震時の影響を大きく受ける大断面小土被りシールドトンネルについて,設計上考慮すべき課題を整理し,実例として東京外かく環状道路の京葉ジャンクション(仮称)工事で用いる合成セグメントを対象に,セグメント継手部の実証実験に基づいて検証した内容を論述する.本実験および解析により,高引張力の作用するセグメント継手部の耐荷機構と破壊挙動を示し,その補強方法を検討し,補強効果を確認した.また,セグメント継手の回転挙動に着目し,目開き始点が変化することによる設計への影響について考察した.
  • 津野 究, 鎌田 和孝, 佐名川 太亮, 小西 真治, 大塚 努, 今村 俊毅, 前川 宏一
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_150-I_158
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     地下鉄の異高型複断面区間の耐震性については,横断方向の耐震性の検討方法が示されていないことから,模型実験により地震時の地盤変位に伴う挙動について検討した.まず,単線断面と異高型複断面の模型トンネルをせん断土槽に設置し,所定の位置まで模型地盤を作製した.ここで初期状態の断面力を把握し,一般的な開削トンネルの設計で得られる断面力分布の傾向と概ね一致していることを把握した.つぎに,せん断土槽を変形させることにより,模型を含む地盤に強制変位を作用させた.その結果,異高型複断面では中壁に大きな曲げモーメントとせん断力が発生するとともに,載荷方向によって変形モードが異なることを,ひずみ分布とも参照の上で把握した.
  • 齋藤 隆弘, 栗本 雅裕, 木下 茂樹, 森田 修二, 今泉 和俊
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_159-I_168
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     外環地中拡幅部における支保構造として,連結パイプルーフ構造を提案しその実現性について検討した.この構造においては,鋼管に挟まれる土(以下,挟在土と称する)に軸力を負担させることが必要となる.連結パイプルーフ構造の軸力に対する強度は,鋼管に挟まれた土の形状,ボルトによる軸力に対するトンネル内空側からの拘束の影響,地盤改良の影響を受ける.本研究では,実物大の圧縮載荷実験を実施し,連結パイプルーフ構造の軸力に対する強度にボルトによる拘束や地盤改良が及ぼす影響を明らかにした.
  • 山田 宣彦, 清水 満, 齋藤 貴, 池本 宏文, 内藤 圭祐, 西村 知晃
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_169-I_178
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     線路下横断構造物として非開削工法で構築された,噛み合わせ継手で接合した鋼製エレメントから成るボックスカルバートにおいて,土被り荷重や温度応力等により発生している応力を分離して,貨物列車通過時に上床版に発生するひずみを計測した.同時に計測した地表の列車荷重は,機関車の軸重,軸距と概ね等しくなるものの,計測したひずみは設計値を大きく下回った.計測結果を検証するため3次元FEMにより,設計で示される列車荷重のレールや地中の分散効果を考慮した換算等値等分布荷重と,計測した地表の列車荷重を用いた構造解析を行い,列車荷重算出条件の違いによる発生断面力の差異を検証し,現行の基準で設計されている線路下横断構造物は十分安全側に評価されていることを確認した.
  • 中村 智哉, 山下 康彦, 丸田 新市, 遠藤 宗仁, 小山 幸則, 小宮 一仁
    2016 年 72 巻 3 号 p. I_179-I_190
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー
     線路下横断構造物を小土被りの地山に非開削で施工する場合,推進・けん引した角形鋼管を本設利用する方法や,角形鋼管とコンクリート函体を置換する方法がとられている.後者を用いる場合,ボックスカルバートをジャッキで背後から押しつけ地山内の鋼管を到達立坑に押し出すが,このような鋼管と地山の相互作用を検討した既往事例はほとんど見当たらない.そこで本研究では,線路下横断構造物の効果的な施工のため,鋼管の地山内の初期配置に着目した地表面変位予測法および施工ステップに合わせて地表面隆起を抑制できる逐次対策法を開発した.予測法による複数のシミュレーションと施工を模した模型実験の比較から提案する対策法の地表面変位の抑制効果を確認した上で,実施工現場への適用例を示す.
エラータ
feedback
Top