土木学会論文集F1(トンネル工学)
Online ISSN : 2185-6575
ISSN-L : 2185-6575
75 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
和文論文
  • 中野 清人, 森田 篤, 西村 和夫
    2019 年 75 巻 1 号 p. 7-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー
     早期断面閉合は,リング状に閉合した支保工に軸圧縮力が導入され,周辺地盤に内圧を作用させて変形を抑え,安定性を高める工法である.本論文では,施工事例として31トンネルの支保工耐力にもとづく支保内圧,支保工計測データにもとづく作用土圧を各々圧力として算出し,土被り,地山強度比との相関,閉合距離,一次インバート支保半径比および岩種との傾向分析から,支保構造の特性を明らかにした.そして,早期閉合の支保効果は,閉合距離の短縮と半径比の縮小を地山特性に合わせて設定することにより高めることができること,また,アーチと一次インバートの作用土圧は,双方の間に一定の相関関係があり,これらを考慮することが支保構造の合理化となる目安を示す.
  • 山上 順民, 山中 義彰, 高橋 亨
    2019 年 75 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー
     山岳トンネルにおいて坑内から実施する新たな切羽前方探査法として,トンネル先進ボーリングの削孔振動を用いる方法(T-SPD:Tunnel Seismic Probe Drilling)を開発した.T-SPDは,準備工としてトンネル側壁を削孔し,センサを設置するのみと手軽な上に,探査中も削孔振動を測定するだけであり,ボーリング作業を妨げない探査法である.これまで中尺程度(削孔長50~150m程度)での先進ボーリングを用いて,3地点のトンネルで検証実験を行い,有効性を確認してきた.今回は1,000mクラスの削孔能力を有する超長尺先進ボーリングマシンを用いた2回の検証実験を行った.切羽前方約500mのP波速度を求めることができ,不良地山の検出に有効であることがわかった.また,削孔検層との相互補完によって地山評価の精度向上が期待できることもわかった.
  • 中野 清人, 安積 淳一, 宮沢 一雄, 渡邊 浩之, 土門 剛, 西村 和夫
    2019 年 75 巻 1 号 p. 40-55
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

     供用後の盤ぶくれ現象の主な形態は,建設時に地山が比較的良好なためにインバートを設けなかった路盤が,掘削時の応力解放とその後の湧水等の影響を受け,強度低下することで路面等が隆起することである.本研究では,供用後にインバートを対策した事例から地山の劣化特性と対策工の現状を整理し,計測データから,対策が施されたトンネルのインバートの軸力を,建設段階で適用されている早期断面閉合の一次インバートの軸力と比較することにより,対策として設置するインバートとして必要な性能について考察する.そして盤ぶくれ現象を再現させた数値解析を用い,そのインバートの形状による支保の効果を比較し,合理的な構造を検討する.

  • 吉川 直孝, 平岡 伸隆, 伊藤 和也
    2019 年 75 巻 1 号 p. 56-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     トンネル建設工事中の切羽における肌落ち災害を防止するため,掘削後の素掘り面に対して吹付けコンクリートを打設する場合がある.その10数分後には鋼製支保工を建て込むため,作業員が切羽に立ち入る場合もある.本研究では,地山から剥離した岩石が吹付けコンクリートを押し抜こうとする際の同コンクリートの抵抗力と破壊機構を明らかにすることを目的とし,若材齢ベースコンクリートを岩石により押し抜く実験装置を試作し,3次元レーザスキャナ等を用いて強度変形特性を評価した.また,押し抜き実験を個別要素法によりシミュレートし,同コンクリートの破壊機構を明らかにした.特に,押し抜き挙動はフラクチャープロセスゾーンに基づく引張軟化曲線により表現でき,押し抜き抵抗はせん断よりもむしろ引張により発揮されることが示唆された.

  • 中出 剛, 鈴木 雅文, 手塚 仁, 古田島 信義, 片山 政弘, 木佐貫 浄治, 西垣 誠
    2019 年 75 巻 1 号 p. 75-87
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

     山岳トンネルの施工による地下水環境対策として,トンネル周囲へのグラウチングにより湧水の抑制を図る場合があるが,グラウチングをトンネル掘削後に実施するポストグラウトの例は少ない.本研究では,ダムのコンソリデーショングラウト手法を用いたポストグラウトによる減水対策工法の設計・施工法を提示し,その効果について施工データをもとに考察する.さらに,対策後の150mを超える地下水位回復時におけるトンネル挙動について分析し,高水頭下における減水対策工法の適用性について論じる.

  • 水野 希典, 前田 佳克, 海瀬 忍, 土屋 智史, 松岡 茂, 石田 哲也, 西村 和夫
    2019 年 75 巻 1 号 p. 88-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル フリー

     高速道路会社(NEXCO)が,管理している道路トンネルの詳細点検で得られた覆工のひび割れ情報から,ひび割れ指数(TCI)を用いてひび割れの特性を分析し,収縮に起因するひび割れ形態を抽出した.さらに,実際のトンネルの坑内環境と坑内に存置した供試体の短期間における収縮ひずみを測定し,数値解析により収縮ひずみの長期間の変動を算定したうえで,覆工に生じるひび割れ形態を解析的に求めた.これにより,実際に収縮により発生したひび割れ形態と解析からのひび割れ形態の相関が確認できた.また,変状原因が内因によって発生する覆工のひび割れについては,収縮以外の要因として材料分離や覆工厚の違いによる覆工の不均一の影響も想定されたことから,これらがひび割れに与える影響についても検討を加え,ひび割れの特性について確認した.

  • 片山 政弘, 中出 剛, 山口 哲司, 大河原 正文
    2019 年 75 巻 1 号 p. 107-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     神奈川県三浦半島に分布する葉山層群は地盤が脆弱であり,地すべりが多い地域として知られている.このような箇所での土木工事において,想定以上の土圧が構造物に作用し大きな変状に見舞われることがある.本地域におけるこのような変状についてはいくつかの事例報告はあるものの未解明な部分が多い.本研究では,葉山層群にて建設された半地下式開削工事で発生した過大な変状について施工データをもとに分析し,その挙動メカニズムについて考察する.さらに,原位置試験,室内試験結果をもとに実施した再現解析などにより,その原因について考察し,このような地盤での設計時の留意点について論述する.

  • 小林 寛明, 上野 光, 磯谷 篤実, 嶋本 敬介, 岸田 潔
    2019 年 75 巻 1 号 p. 116-129
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/20
    ジャーナル フリー

     近年,山岳トンネルにおいて完成後に盤ぶくれが発生し,対策を実施した事例が報告されているが,鉄道などの走行安全性を確保するためには,盤ぶくれを未然に防ぐことは非常に重要である.しかし,掘削時の地山状況から盤ぶくれがわずかでも懸念される地山に対して,曲率が大きいインバートや鉄筋コンクリート構造のインバートを採用することは,現実的ではない.本研究では,これらの課題の解決をすべく新たに整備新幹線の山岳トンネルで採用されているインバート構造1)を対象に模型実験と数値解析を行い,盤ぶくれの挙動を把握するとともに,標準的なインバート構造と比較し盤ぶくれの抑制効果について検証を行った.その結果,新たなインバート構造は施工性,経済性は従来の構造と同程度でありながら,盤ぶくれ抑制効果が向上することを確認した.

  • 土谷 陽太郎, 北岡 貴文, 長谷川 信介, Thirapong PIPATPONGSA , 大津 宏康
    2019 年 75 巻 1 号 p. 130-142
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/20
    ジャーナル フリー

     山岳トンネルの建設プロジェクトでは,事前調査における地山等級と実際の地山等級が乖離することにより,しばしば施工時に建設コストが大幅に増加する事態が生じている.このため,事前調査における地山等級の予測精度の向上が求められている.筆者らは,地山等級の予測精度の向上を目的に,ニューラルネットワークによる地山等級の予測に関する研究を行っている.これまでの研究では数少ないトンネルデータによる検討に留まっていた.そこで,本研究ではトンネルデータ数および入力するデータ数を増やし検討を行った.その結果,ニューラルネットワークに入力するデータの種類を増やすことに加え,多様な地山特性のトンネルデータを学習させることが,予測精度を向上させるために重要であることがわかった.

和文ノート
  • 北村 彩絵, 森本 真吾, 進士 正人
    2019 年 75 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
     笹子トンネルの事故を契機として,道路トンネル定期点検方法の見直しが平成26年に行われ,同時に点検時の健全度評価指標に関する研究も進んできた.著者のひとりは,覆工に発生したひびわれの定量的評価手法として,クラックテンソルの考えを導入した覆工ひびわれ指数TCIを提案し,健全度評価指標として覆工の経年変化について分析している.しかし,これまでの健全度評価法方法はスパンごとにTCIを算出するため,覆工の劣化が進展している箇所の抽出は難しいといった問題点があった.そこで,本ノートでは,TCI算出時の対象覆工面積を複数に分割比較すること,並びにTCIの方向成分ごとの経年分析をすることで,覆工の健全度変化を明らかにし,トンネル覆工補修個所の優先度が判定ができることを示した.
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