子ども家庭福祉学
Online ISSN : 2758-2280
Print ISSN : 1347-183X
10 巻
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巻頭言
論文
  • 門永 朋子
    2011 年10 巻 p. 1-10
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    わが国における子どもをめぐる問題は深刻化,複雑化し,今日の子ども家庭福祉サービスは,これまで以上に専門性,即応性,実効性が問われるようになっている。本稿の目的は,欧米のソーシャルワークの領域を中心に広がりをみせている,「リスクとレジリエンスの視座」の概念枠組みを明らかにすることをとおして,子ども家庭福祉領域におけるこの視座の意義と可能性を論証することにある。

    この視座の特徴は,子どもが良好に適応する力をさすレジリエンスを援助の中核に位置づけていることと,リスクを軽減し防御推進要因を増強することによってレジリエンスを促進するという実践上の戦略を備えている点にある。本稿では,この概念枠組みを精綴に検討するとともに,この視座を日本の子ども家庭福祉領域に適応する際の課題について指摘する。

  • 平田 祐子
    2011 年10 巻 p. 11-21
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,育児ストレッサーに対する母親のコーピングやスタイルが,ソーシャルサポートニーズを示しているのではないか,という仮説のもと,コーピングスタイルとソーシャルサポートニーズの関連性を明らかにした。

    結果,コーピング方略「他者からの援助を求める」を使用する母親は,あまり使用しない母親に比べ,「自己評価的サポート」「情報的サポート」「道具的サポート」を求めており,コーピング方略「逃避」を使用する母親はあまり使用しない母親と比べて,「自己評価的サポート」「道具的サポート」を求めていることがわかった。また,より多くのコーピング方略を使用する母親のほうが,「自己評価的サポート」「情報的サポート」「道具的サポート」を求めていることがわかった。

    つまり,コーピングスタイルによって,母親が必要であると認知するソーシャルサポートニーズを予測することが可能であることが示唆された。

  • 宮地 菜穂子
    2011 年10 巻 p. 23-34
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    日本の児童養護施設においては,ケア職員の多くが短期間で離職しており,専門性の向上や蓄積が困難な状況にあるが,そうした状況の実態は明らかになっていない。

    本調査の目的は,児童養護施設におけるケア職員の離職の意思形成に至る要因を明らかにする事である。そこで,愛知県の18施設220名の在職者及び,37名の離職者から得られた,質問紙調査の回答を基に分析を行った。基本属性,ストレッサー,バーンアウト,ストレス反応,ストレス・コーピングについての項目から尺度を構成した。

    本調査の参加者は経験年数5年未満の者が全体の6割を超えていた。統計的な検討の結果,重回帰分析によって「同族経営」「自己効力感の高さ」「適切な運営体制」「職場ストレス」の4つの有意な変数が見いだされ,ケア職員は古典的なバーンアウトをしているというよりは,施設の遥営体制に問題を感じて離職している傾向が高い事が示された。

  • 伊藤 嘉余子
    2011 年10 巻 p. 35-45
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    本研究では児童養護施設におけるアフターケア実践の現状と課題および必要な改善策について明らかにすることを目的として,児童養護施設職員を対象に質問紙調査を実施した。

    その結果,1)アフターケアにおいては,児童相談所など施設外の機関との連携が重要であるが,実際には18歳を超えた後の支援が困難であり,連携できる機関が地域に少ないこと,2)アフターケアを行う職員個人にかかる負担が大きいこと,3)効果的なアフターケアを実践するには,職員数も施設のスペースも費用も不足していること,といった問題点が明らかとなった。そのため,これらの課題の解決策として以下の3点を提示した。1)アフターケア専門職員の増員と活動費用の保障,2)退所児童の地域生活を支える地域資源の充実,3)アフターケアを有効に実践できる施設体制の整備。

  • 中谷 奈津子, 橋本 真紀, 越智 紀子, 水枝谷 奈央, 山縣 文治
    2011 年10 巻 p. 47-57
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    保育士が担う拠点事業の業務を定量的に把握することを目的とし,先行研究において作成した業務分析指標を用いて,保育所併設型地域子育て支援センター専任保育士を対象とする観察調査を行った。その結果,「フリースペース・ひろば等での利用者対応」や「管理運営(連絡・調整)」で全業務の約半分を占めることが明らかとなった。時間毎に業務内容が直接的援助業務から間接的援助業務へと変化する傾向もあり,全体としては利用者対応などの直接援助業務よりも間接援助業務の方が高い割合を示すことがわかった。

    それらの業務は,乳幼児を主な対象とする「保育」業務とは明らかに異なる部分を有していると考えられる。また相談や地域活動支援などについては,業務として遂行する割合が少なかったり,保育士がこれまで得意としてきた領域に偏ったりする傾向がみられた。

  • 赤尾 清子, 山野 則子, 厨子 健一
    2011 年10 巻 p. 59-68
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,スクールソーシャルワーカーが学校において実践するプロセスを実証的に明らかにすること,特に当事者に問題意識のない領域に関わろうとするスクールソーシャルワーカーの行為に着目したものである。研究方法は,スクールソーシャルワーカーとして採用され業務を行う9名に半構造化インタビューを行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析を行った。分析の結果,当事者に問題意識がない領域に関するスクールソーシャルワークの実践プロセスは,「教師と家庭のつなぎなおし」であった。つなぎなおしを行うために,スクールソーシャルワーカーは「ことおこし準備」を着実に行い,教師への働きかけによって教師と当事者の関係性に変化を起こしていた。つまり,働きかけを意味する「教師と家庭のつなぎなおし」の結果,「新たな主体化によるつながり誕生」が起きていた。

  • 板倉 孝枝
    2011 年10 巻 p. 69-80
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2026/01/16
    ジャーナル フリー

    疎開ホステルが英国戦時疎開事業の中で新たな戦時期の社会資源として導入されたのは,疎開を経験した複数の子どもが問題行動を示し,適応に困難を示したからである。中には,治療を試みるホステルもあった。本稿で取り上げるオックスフォードシャー疎開ホステルもその一つである。このホステルの独自性は,精神科的な治療だけではなく,「精神科チーム」による観察および実家庭についての情報収集にかかるところが大きかった。そうした情報収集の結果,子どもの問題行動は,子どもの生育歴と関連しているという事実が見出された。オックスフォードシャーの疎開ホステルの実践は,戦後チャイルド・ケア・ポリシーに影響を与えたものと考えられる。しかし,英国国内においてもその関連についての検証は十分とはいえない。筆者は,施策面におけるその関連の可能性については言及してきたが,実践の具体的内容にまで踏み込むには至らなかった。本研究では,疎開ホステルにおける治療的実践に焦点を当てて検討した。

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