子ども家庭福祉学
Online ISSN : 2758-2280
Print ISSN : 1347-183X
22 巻
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巻頭言
論文
  • 榎本 祐子, 新川 泰弘
    2022 年 22 巻 p. 1-16
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,利用者支援事業のためのニーズアセスメントシートの効果的な活用の推進について探索的に検討するものである.それに際しては,シートを採用している基礎自治体の利用者支援専門員を対象にグループインタビュー調査を行い,質的データ分析法によって分析を行った.その結果,シートの活用を難しくしている要因として,①ニーズアセスメントシートに関する要因,②現場のニーズアセスメントに関する5つの「わからない」に応える「実践モデルの記述に含まれる5つの基本的要素」に対応する要因,③ニーズアセスメントのための環境に関する要因が抽出された.とりわけ②現場の5つの「わからない」は,実践モデルの記述に含まれる5つの基本的要素である①実践対象の記述,②実践意義の記述,③援助手続きの記述,④依拠理論の記述,⑤援助効果の記述の情報の欠如と対応しており,その改善のためには,実践モデルと実践マニュアルが欠かせないことが示唆された.

  • 比嘉 昌哉
    2022 年 22 巻 p. 17-29
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    学校現場において,スクールソーシャルワーカーが有効に機能するためにはスーパービジョン・研修体制が求められる.しかしながら,現状ではその体制は十分とはいえない.そのようななか,全国の先進自治体ではスーパーバイザーに代わる,または補完する役割としてリード(チーフ・主任)スクールソーシャルワーカーが配置されている.

    本論では全国で配置されている自治体(6自治体7か所)に対してアンケート調査(追加ヒアリング)を実施することにより,その現状と課題を抽出した.その結果,リードスクールソーシャルワーカーの役割としては,個別・グループにおけるスクールソーシャルワーカーへの助言・指導,教育と福祉のつなぎ役,変革者としての役割,研修等の企画,スーパーバイザーとの連携などが明らかになった.そして,その配置に向けては,待遇面の充実や常勤・正規職員化の促進,さらに教育委員会の責任で研修を計画・実施することなどが示唆された.

  • 元山 彩織
    2022 年 22 巻 p. 30-42
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    親子ともにアスペルガー症候群であるパターンの母親に,母子関係作り支援のコンセプトの検討と仮説生成を目的とし,幼少期から今までの人間関係において「嬉しい」と感じたエピソードについて半構造的インタビューを行った.分析枠組みは,構造構成的質的研究法(SCQRM)をメタ研究法とした.

    生成された32カテゴリーは14サブカテゴリーへ,さらに4カテゴリーに分類された.そのうちの【されて嬉しいと感じる関わり】カテゴリーには,〈怒らないで優しく話してくれる〉〈よく頭を撫でてくれた〉などが抽出された.【親にしたい関わり】カテゴリーでは〈甘えたい〉であった.良好な母子関係を作っていくためには,アスペルガー症候群の特質理解だけでなく,子どもの関係欲求に応えられるような母親役割ができるよう,子どもの気持ちを汲んだ関わり方を伝えていくなどの支援をすることが重要であると思われる.

  • 木曽 陽子, 岩本 華子
    2022 年 22 巻 p. 43-55
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,保育者の早期離職を防止する園内体制を検討することである.そこで離職率の低い3園の管理職,中堅保育者,新人保育者にグループインタビューを実施した.事例―コード・マトリックスによる質的分析の結果,園全体の職場風土と新人に対する教育体制が離職意識に影響を与えていた.職場風土では,『無理なく働ける』労働条件,立場が上の職員の『誰に対してもフラット』に接する態度,職員同士が『誰でも話せる』状態が働き続ける意識の維持に影響していた.教育体制では,すべての保育者の『一人一人に合った配置』,立場が上の職員の『共感・尊重・具体性』に富むコミュニケーションの姿勢,『縦・横・ななめの関係で支援』が働き続ける意識の維持に貢献していた.とりわけ,管理職が率先して『誰に対してもフラット』で気さくな態度を示すこと,中堅のみに負担が集中しないよう,重層的な支援体制を整えることが重要であることが示唆された.

  • 千賀 則史, 姜 民護, 山田 麻紗子, 渡邊 忍
    2022 年 22 巻 p. 56-68
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,ネグレクト・心理的虐待事例においてどのように児童相談所が一時保護の判断をしているのかを明らかにすることを目的とした.16名の児童相談所職員にインタビューを実施し,得られたデータは構造構成主義的質的研究法(SCQRM)をメタ研究法とした修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)により分析を行った.その結果,【緊急一時保護の必要性】【子どもに生じている悪影響】【家族の改善可能性】からなるモデルが構築された.本研究より,児童相談所におけるネグレクト・心理的虐待事例への対応は,【緊急一時保護の必要性】の判断から始まるという点では,他の虐待種別と変わらないことがわかった.しかし,子どもの危害がそれほど顕在化していないネグレクト・心理的虐待事例では,児童相談所は,【子どもに生じている悪影響】と【家族の改善可能性】の両方のバランスを丁寧にアセスメントすることで,一時保護を行うかどうかの判断をしていることが示唆された.

  • 橋本 真紀, 伊藤 篤, 倉石 哲也
    2022 年 22 巻 p. 69-82
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,全ての子育て家庭を対象とした「地域支援」の展開を支えるため,地域子育て支援拠点事業(以下,拠点事業)と利用者支援事業基本型の「地域支援」の現況を把握し,その機能を推進する方策を仮説探索的に検討することにある.両事業における先駆的事例から,「地域支援」の取り組みの25項目を生成し4カテゴリに集約した.この4カテゴリと地域を基盤としたソーシャルワーク(CBSW)の27項目から析出された4因子について相関分析を行った.結果,「地域支援」の取り組みの4カテゴリとCBSW4因子におけるすべての変数間に正の相関が認められた.特に,「親子を支える地域の人々の働きを促す」のカテゴリと,CBSWの「地域住民との資源の共創」因子の間には,強い正の相関が確認された.ここから,地域子育て支援拠点事業等の研修にCBSW理論を導入することが,「地域支援」の取り組みの充実をもたらす可能性が示唆された.

  • 中安 恆太
    2022 年 22 巻 p. 83-94
    発行日: 2022/11/25
    公開日: 2023/01/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,家庭養護ではあるが,第2種社会福祉事業として施設的な側面も持つファミリーホーム(以下,FH)において,FHの養育者が持つ養育・制度の意義と課題について明らかにすることを目的とした.調査はスノーボールサンプリング方式を用い,13ホーム計15名の養育者に対して半構造化インタビューを実施し,質的データ分析法をもとに分析した.その結果,以下の4点が明らかになった.①施設職員経験者と里親養育経験者でFHの意義を感じる点が異なる,②親族補助者と外部補助者それぞれの強みや課題がある,③FHに対する支援については,児童相談所等の支援を行う側の認識により,FHの養育者が求める支援内容と乖離が生じる,④多人数養育や生活基盤の共有は,意義にも課題にもなる.そのため,ホームの実情に応じたマッチングや支援を行う必要がある.本研究で明らかにしたことは,今後FHを開設する場合の情報提供や,各FHの実情に合わせた支援内容を検討する際の知見となる.

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