日本小児看護学会誌
Online ISSN : 2423-8457
Print ISSN : 1344-9923
ISSN-L : 1344-9923
33 巻
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研究
  • 劉 文文, 鎌田 佳奈美, 池田 友美
    2024 年 33 巻 p. 1-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、眼球運動データを教育(リフレクション)に取り入れることで、小児の危険場面の観察における教育の効果を明らかにすることである。小児病棟で5年以上の勤務経験をもつ熟練看護師3名および看護学生2年生および3年生12名を対象に小児の危険場面の静止画を提示し、眼球運動を測定と質問紙調査を実施した。看護学生には静止画提示の間に熟練看護師らの眼球運動データを用いてリフレクションを行った。結果、看護師との比較ではリフレクション前の観察で「その他領域」への総注視時間は、熟練看護師よりも看護学生のほうが有意に長かった(p=0.04)。しかし、リフレクション後は差がなかった。学年別のリフレクション前後の比較では有意差はなかったものの、2年生の効果量の結果から、2年生の各領域への注視時間はリフレクションの影響が高いことが示された。

  • 辻野 睦子
    2024 年 33 巻 p. 8-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、被虐待による重症心身障害をかかえた子どものケアにかかわった看護師の経験を明らかにすることを目的とした。子どものケアにかかわった経験のある看護師7名に対し、インタビューガイドに基づく半構成的面接法での質的記述的研究を行った。その結果、【子どもの感情を推し量りながらかかわる】、【人とどのように触れ合ってもらうかを考える】、【子どもの心身の安寧の保持に苦慮する】、【子どもと面会のある親との間をつなぐ】の4カテゴリが抽出された。看護師の経験の特徴は、子どもに安寧を感じてもらうことについて考え、子どもが孤立しないように気配りすることであった。看護実践では、生活の質を保証する環境やかかわりとして、子どもの身体的苦痛を最小限に留め、段階的に人と触れ合う支援の必要性が示唆された。

  • 宗村 弥生, 小川 純子, 水野 芳子, 栗田 直央子, 長谷川 弘子, 横山 奈緒実, 笹川 みちる, 村山 有利子
    2024 年 33 巻 p. 17-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     小児循環器看護に重要とされる実践における経験の実態を明らかにすることを目的に、1年以上経験をもつ看護師を対象に調査した。調査項目は、勤務年数や所属部署などの属性と、先行研究で精選された循環器疾患をもつ入院中の子どもと家族への実践項目66項目の経験である。22施設410通配布し、209通を分析対象とした。66項目のうち子どものアセスメントと安定させるかかわりについての看護実践項目はほぼ経験していた。看護実践の経験度は勤務年数群別では12項目に有意差があった。所属部署群別では30項目に有意差があり、子どもへの説明などの項目は病棟・外来群が高く、モニタリングデータや術中の情報を判断する項目は集中治療室群が高かった。小児循環器看護の学習プログラムでは、受講する看護師の勤務年数別ではなく、周術期、回復期、遠隔期などの時期や、子どもの発達段階別に特性を組み込んだ内容で構成することが妥当だと考える。

  • 吉川 亜矢子
    2024 年 33 巻 p. 27-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、家庭で生活する胆道閉鎖症をもつ幼少期の子どもの主体的な体調管理を促すセルフケア支援と親子のセルフケアの変化の様相を明らかにすることである。研究方法は事例介入研究で、5歳から7歳までの子ども3名とその親に子どもの主体的な体調管理のための療養行動を促すことを目的とした介入を行った。介入の結果、子どもは自分のからだについて意思決定できることが増え、必要な情報を周囲に伝えて主体的に行動できるようになり、親は子どもを見守るという支援を行えるようになった。介入で研究者が実際に行った支援を分析すると、5つの支援の方向性と14の具体的な支援が抽出された。胆道閉鎖症をもつ幼少期の子どもと親のセルフケアの変化には、看護師による客観的なアセスメントと、親子に寄り添い子どもの気付きや関心に働きかけながら自己効力感を高めていくという方向性をもった支援が重要であると考えられた。

  • 鈴木 翼
    2024 年 33 巻 p. 36-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     目的 : 緊急入院をした急性期にある幼児と付き添う家族から看護師はどのような手段で情報を得て、その情報をとらえ、かかわっているかを明らかにする。方法 : Leiningerの民族看護学を用い、主要情報提供者は看護師6名、一般情報提供者は緊急入院をした急性期の幼児と付き添う家族7組15名、医師1名であった。結果 : 大テーマ「看護師は緊急入院をした急性期にある幼児の状態を増悪させないように、幼児と付き添う家族の空間を作って疾患本来の状態をとらえながら、病室を自宅に近い環境へ整えてかかわっていた」の根拠となる4つのテーマが導き出された。考察 : 看護師は病室における親子の空間を作り出し、子どもが家族に向ける自然な表情や動きを観察して異常の早期発見に努めていた。また、看護師は幼児の症状悪化を防ぐために、緊急入院をした急性期から子どもと家族が主体となって自宅に近い空間に近づけるかかわりをしていた。

  • 藤井 加那子
    2024 年 33 巻 p. 46-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     研究目的は、採血を受ける幼児後期の子どもの取り組みの様相を記述することである。30名に対する採血場面の観察と看護師・保護者への面接を行い、グラウンデッド・セオリー法で分析した。子どもの採血の取り組みは【その時が来るのを待つ】、【やらないといけない状況を受け止める】、【自分が頑張れそうな形を交渉する】、【処置を始めることに向かう】、【自分なりに進行についていく】、【治まらない恐怖と闘う】、【やり遂げようと集中する】の7つの現象で構成された。この様相は【その時が来るのを待つ】を起点に分岐し、【処置を始めることに向かう】を経て【やり遂げようと集中する】に至っていた。この様相は、子どもは「やり遂げよう」とする気持ちを根底に、揺らぐ気持ちを自己調整しながら穿刺に向かっていくことであり、それは子どもの覚悟の姿としてみることができた。

  • 高橋 沙織, 富岡 晶子
    2024 年 33 巻 p. 54-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、骨形成不全症をもつ思春期患者の身体活動における体験を明らかにすることを目的とした。複数回の骨折および骨変形を呈し、日常的に補助具を使用しており、自分の思いや考えを伝えられる12歳~17歳の5名を対象に半構造化面接を行い質的記述的に分析した。118のコードおよび28のサブカテゴリーから【体の動きの制限や環境によって日々の身体活動が左右される】、【骨折の恐れから解放されることなく自ら身体活動を制限する】、【周りと同じ行動がとれないことや周りの理解が得られないことで周囲との隔たりを感じる】、【自分なりの方法を習得し、できることを見極めながら身体活動に取り組むことで心身の成長を感じる】の4つのカテゴリーが生成された。本人が納得した方法で身体動作を繰り返し練習できる機会をつくること、周囲の支援者が活動内容を配慮すること、思春期患者が自ら支援を求められるよう促していくことが必要な支援として示唆された。

  • 小泉 織絵, 杉村 篤士, 籠谷 恵, 井上 玲子
    2024 年 33 巻 p. 141-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児看護専門看護師(CNSC)の家族への看護実践の特徴を明らかにすることを目的とし、全国の病院などに勤務する168名に対し質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果、【家族の情態・資源の確認と判断】、【家族の状況対応力の判断と後方支援の必要性の見極め】、【家族への気遣い・情緒面の支援】、【子どもの最善のケアのための家族の意思表出・決定支援】、【家族メンバーの相互交流の促進】、【子どもとのかかわりを促すための家族教育】、【家族への資源提供】、【看護師の抱く憂いごとの見極めと支援】、【看護師のかかえる問題の解決】、【家族にかかわる職種と家族を協調に導く】、【家族のかかえる課題を解決に導くケアシステムの構築】の11因子が抽出された。CNSCによる家族への看護実践は、子どもの最善のため家族の対応力促進を目指した支援であり看護師や組織への憂いごとへの対応と解決、協働を基盤とした組織変革を特徴としていた。

  • 外山 さゆり, 岡田 摩理, 大西 文子
    2024 年 33 巻 p. 150-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、病院における医療的ケア児に対するレスパイトケアの看護の実態についての看護師の認識を明らかにする。医療的ケア児のレスパイトケアの経験がある常勤看護師に自記式質問紙を依頼し、173人(有効回答率29.6%)の回答を得た。受け入れ前後の養育者との情報交換や養育者の要望に応じた連絡や相談、子どもの安心に関わる項目は、実施していると「思う」の回答が80%以上であったが、成長発達への支援やきょうだいの様子の確認、在宅生活を見越したケアなどは低い傾向にあった。最も実施していると考えられる「5:そう思う」の選択肢に回答した項目数の比較では、小児病棟やレスパイトケアの看護の経験年数でいずれも5年以上の中央値が高かった。成長発達や在宅生活が充実するための視点をケアに取り入れるとともに、経験豊富な看護師と一緒に看護を行う、研修への参加など、知識と経験を深める工夫が必要であると考えられた。

  • 入江 亘, 菅原 明子, 塩飽 仁
    2024 年 33 巻 p. 159-167
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は長期内服を要する入院中の子どもへの援助に対する看護師の意識と行動を明らかにすることである。小児病棟勤務7年から19年の看護師5名に半構造化面接を実施し、質的帰納的に分析した。その結果、長期内服を必要とする子どもへの内服援助に対する看護師の意識として【子どもとの信頼関係が内服援助の土台となる】、【内服は子どもにとって苦痛を伴う】、【内服の主体となるのは子どもである】、【子どもには内服できる力がある】、【毎日の内服の継続が大切だ】などの11カテゴリー、行動として【内服の状況を確認する】、【内服の必要性や見とおしを説明する】、【子どもの内服する力をエンパワーメントする】、【子どもに合った内服方法の実現に向けて親と協働する】、【多職種で内服援助のあり方を検討する】の5カテゴリーが抽出された。子どもが主体となる内服への働きかけを目指し、内服場面のほか、治療や入院生活を含めた多角的な援助が重要と考えられた。

  • 清水 香織, 入江 亘, 菅原 明子, 塩飽 仁
    2024 年 33 巻 p. 168-176
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     1型糖尿病をもつ子どもの支援を考える上で、病気や療養行動に対する子ども本人の認識を知ることは重要である。そこで本研究は、1型糖尿病をもつ学童前期の子ども自身が自分の病気についてどのように理解しているか、療養行動をどのように実施しているか明らかにすることを目的とした。21名の子どもにインタビューを実施した。質的に分析した結果、自身の病気の理解については7名(33.3%)が診断名を回答し、5名(23.8%)は自覚症状や注射を要すると述べた。一方で、9名(42.9%)は自分の病気について聞いていないと答えた。療養行動は80%以上がひとりで実施していた。病気と療養行動を関連付けた理解に関しては、6名(28.6%)が一貫性のある理解を説明したが、13名(61.9%)で病気と療養行動の理解は部分的であった。療養行動の実施能力の向上や安定化と合わせて、子どもへの療養行動を行う意味を深める支援が必要である。

  • 工藤 広大朗, 飯野 英親, 中島 富有子, 三好 麻紀, 青野 広子, 上野 ふじ美, 晴佐久 悟
    2024 年 33 巻 p. 202-210
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は大学病院の小児病棟、NICU・GCUの看護師を対象とし、患児の口腔ケア、患児・家族への口腔ケア教育の実施状況と関連要因を明らかにすることを目的とした。対象者380名に、口腔ケア、口腔ケア教育実施に関する内容の質問紙調査を行い、280名から回答を得た。看護師による50%以上の口腔ケア実施割合は、小児病棟で11.4%~24.8%、NICU・GCUは27.3%であった。口腔ケア教育実施割合は、小児病棟で1.4%~29.3%、NICU・GCUは0.7%~41.0%であった。口腔ケア実施は小児病棟では、口腔ケア教育の実施と正の相関が見られ、NICU・GCUは、口腔ケアの重要性認識と相関が認められた。口腔ケア教育では、小児病棟で多職種連携の実施と正の相関が認められた。看護師の口腔ケア、口腔ケア教育をより普及していくためには、これらの関連要因を高めることが重要であると考えられた。

  • 井倉 千佳, 宮﨑 つた子
    2024 年 33 巻 p. 211-220
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     子どもをもつ小児がん経験者(以下、CCS)が妊孕性低下リスクへ抱いた思いを明らかにすることを目的に、CCS 10名に半構成的面接を行い質的帰納的に分析し9カテゴリーが生成された。妊孕性低下リスクに【強い衝撃と波及する事柄への苦悩】を抱える者もいれば【認識した時はそこまで気にならない】者もいた。生活状況や発達段階に影響を受け妊孕性低下リスクが切実なことになると【自分事になることで生じる不安】、【直面する妊孕性低下の重みや葛藤】、【告知時期・方法による疑心と反抗心】が生じていた。その際【専門性の高い情報や支援の希求】が生じるが【環境や相手への隔たりから相談を諦める】ことがあった。これらの思いを支えたのは【闘病経験や支えてくれる存在による安心と自信】、【小児がん経験・妊孕性低下リスクがある自分と向き合い人生や命を考える】思いであった。闘病経験の意味付けや支えてくれる存在を意識した支援が必要である。

  • 矢野 薫
    2024 年 33 巻 p. 221-228
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、医療的ケア児の家族が経験する現状を通し、上手くいく生活を成り立たせてきたエンパワメントの構造を明らかにすることである。医療的ケア児の母親8名に半構成的面接を行い、質的帰納的研究により分析した結果、6つのシンボルマークを抽出した。その結果、母親は、命の危機に直面しながら生きる子どもの頑張りに【気付き:命の重みを痛感】するという体験を基盤に、【経験:育児の成功体験の積み重ね】、NICU退院後に医療的ケア児と家族生活を送る中で【共感:家族員への平等な視点】や、【広がり:育児の役割交代】、【学習:仲間との学び合い】へと拡大されて善循環していた。さらに、子どもの状態変化に対応しながら上手くいく生活を成り立たせるためには、長期的に挑戦し続けるという【継続:望む生活実現への持久力】が必要である構造であった。

  • 澤本 さおり, 鈴木 美佐, 竹村 淳子
    2024 年 33 巻 p. 229-238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     関節型若年性特発性関節炎の学童に在宅注射を行う親が導入初期にかかえる困難と対処を明らかにすることを目的に対象となる親7名にインタビューを行った。質的記述的に分析した結果、困難では【内服で制御しきれない大変な病気であるということに直面する】、【経験のない注射に怯む】、【子どもの決心を促す難しさ】、【治療への不安と期待の狭間で揺れる】、【自分が子どもに痛みを与えてしまう辛さ】、【間遠な注射を生活に組み込むことが難しい】、対処では【子どものために注射の責任を負う覚悟を決める】、【注射をスムーズに行うための条件をととのえる】、【注射の決心に向かう子どもを待つ】、【子どもに合わせて決心を引き出す】、【子どもの注射に取り組む姿や病状の改善に救われる】、【子どもと注射の痛みが緩和する策を探し求める】、【注射を生活に組み込む】が抽出された。親に子どもの病状の手がかりを伝え、子どもの注射への苦痛を緩和する策を検討する必要性が示唆された。

  • ―サブシステムを中心とした分析から家族の全体性に注目して―
    岩﨑 由美子, 奈良間 美保
    2024 年 33 巻 p. 239-247
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児がんを発症した子どもの親がとらえる家族の体験について、夫婦や親子、きょうだいのサブシステムとそれらの関係性や家族の全体性に注目して明らかにし、家族全体を支える看護について考察することである。小児がんを発症した子どもの母親5名、父親1名を対象に半構成面接を行い、質的帰納的分析を行った。結果、11カテゴリーを抽出した。親は小児がんを発症したことで不安を感じながらも、子どもを守りたいという体験の中で、夫婦は子どもを中心に互いの反応を受けとめ病気と向き合い、子どもを通して「間主観的に親と子ども、夫と妻、小児がんの子どもときょうだいがわかる」ことが推察された。きょうだいは互いに結束していく感覚があった。絆が深まり家族がより一体と感じることに加えて、家族の関係性が維持できていた。親子、夫婦、きょうだいのサブシステムの視点から、家族が家族のままでいられる感覚を支える重要性が示唆された。

実践報告
  • ―きょうだいの視点から―
    古屋 悦世, 岡 澄子, 辻 佐恵子
    2024 年 33 巻 p. 248-255
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究目的は、在宅重症児の学童期きょうだい支援構築に向け、楽しみながらきょうだいの仲間がいることを知り、きょうだいのよくもつ悩みや喜びを共有することを目指すきょうだい支援プログラムを実践し、その方法や効果について、きょうだいの視点から検討することである。方法は、重症児がいる8歳~12歳のきょうだいを対象とし、月1回、計3回の参加を基本とし、オンラインで実施した。プログラムの参加前後でQOL尺度、各回終了時に自作の評価アンケート、プログラム終了後に個別のインタビューを行った。6名(5組の家族)の学童期きょうだいが参加した。参加したきょうだいは、QOL得点が高い特性があった。アンケート、インタビューの結果から、オンライン開催であっても、学童期のきょうだいが楽しく交流でき、自分と同じようなきょうだいがいることを知り、思いを共有することができる機会となることが示唆された。

資料
  • ―看護師経験年数による特徴―
    江泉 麗乃, 磯部 春香, 入江 亘, 及川 恵美, 菅原 明子
    2024 年 33 巻 p. 62-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     終末期にある小児がんの子どもとその家族へのケアにおいて、看護師がかかえる困難感と看護師の経験年数による困難感の特徴を明らかにするため、看護師16名に半構成インタビューを行った。質的に分析した結果、【子どもや家族と対話すること】、【子どもの意思を尊重すること】、【子どもと家族の関係を調整すること】、【チームとして協働すること】、【経過や現在の状況、先の見とおしを知ること】、【自分の気持ちに対処すること】、【苦痛緩和に向けたアプローチをすること】、【亡くなった後も継続して家族を支えること】、【亡くなった後に病棟のほかの子どもと家族に応対すること】の9カテゴリ18サブカテゴリが抽出された。若手看護師の知識や経験不足により生じる困難感を軽減できる教育を実施すること、子どもの意思を尊重するための調整やその中で生じる葛藤をチームで話し合うこと、友人の死を察知した患児を注意深く観察し他職種で介入することの必要性が示唆された。

  • 藤巻 知美, 荒木 暁子, 大田 えりか, 櫻井 敬子
    2024 年 33 巻 p. 70-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、国内外で行われている発達障害とアレルギー疾患を併せもつ子どもの問題と親の疾患管理、負担や対処に関するスコーピングレビューを行い、国内外の研究の動向を得ることである。文献データベースは、PubMed、CINAHL、医学中央雑誌WEB版を用い検索を行った。21件の研究が採択された。発達障害とアレルギー疾患を併せもつ子どもの問題では、アレルギー症状が増悪することで、発達障害の特性が増加し、睡眠障害もともに出現するケースや、アレルギー症状が軽減した後に、発達障害の特性の増加がみられているケースもあった。発達障害とアレルギー疾患を併せもつ子どもの親は、定型発達の子どもに比べて子どもの行動上の問題が多いととらえていた。今回の研究の多くは、学童期以降の子どもを対象に調査しており、発達障害とアレルギー疾患を併せもつ子どもの親は多くの負担を報告していた。対処に関する記述や研究は見当たらなかった。

  • 下野 純平, 遠藤 麻子, 濱中 喜代
    2024 年 33 巻 p. 79-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     新生児集中治療室(NICU)退院児フォローアップ外来における看護実践の実態を明らかにし、NICU退院児フォローアップ外来における看護実践の課題とあり方を検討することを目的に、NICU退院児フォローアップ外来において看護を実践している看護職544名に自記式無記名質問紙調査を行った。有効回答数220名(40.4%)を分析した結果、169名(76.8%)の看護職が、現在よりも子どもや家族とかかわったほうがよいとしていた。看護実践として【地域における生活を見据えた継続的な支援】など8カテゴリー、看護実践に対する看護職の思いとして【NICU勤務経験にかかわらず、質の高い看護実践ができる方略を知りたい】など9カテゴリーを抽出した。NICU退院児フォローアップ外来における看護実践は施設によって実態が異なることが明らかとなり、質の高い看護実践ができる方略の開発の必要性が示唆された。

  • 長友 恵莉, 植木 慎悟, 宮田 潤子
    2024 年 33 巻 p. 89-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     小児病棟看護師が行う小児がん患者の復学に向けた支援の実施状況と課題を明らかにすることを目的とし、15歳以下の小児がん患者への看護経験がある小児病棟看護師136名から得られた無記名式質問紙の回答を分析した。実施状況は設問項目ごとに記述統計量を求め、自由回答で求めた支援の課題は意味の類似性によって分類した。結果、晩期合併症の説明を子どもへ毎回実施している看護師は32.4%で全項目中最も少なかった。課題では、【小児がん患者や家族に復学を前向きにとらえてもらうことが難しい】、【学校側のスムーズな復学のための情報・体制・対応が不足している】、【医療従事者としての入院から退院後の継続した復学支援が難しい】の3カテゴリーが抽出された。看護師は必要な復学支援をしていたが、課題を感じていることも明らかとなった。今後は、復学支援にかかわるすべての人がそれぞれの役割を認識し、スムーズな支援につながるツールの作成が必要である。

  • ―想定事例を用いて―
    北本 千春, 宮城島 恭子, 坪見 利香
    2024 年 33 巻 p. 97-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、子どもと成人混合で外来診療をしている医療職が診療を受ける子どもの気持ちとその支援をどのように考えているのかを明らかにする目的で、医師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師計431名に想定事例を用いた質問紙調査を行った。その結果、大部分の医療職は子どもの気持ちとして診療に対する痛みや未知への恐怖を理解し、苦痛や不安を軽減する支援を考えていた。一方、何をするか知りたいという子どもの希望をとらえることと、説明をする支援を考える割合は低かった。検査順選択において8割の医療職は、子どもにとって強いストレスとなる痛みを伴う検査は、最後が望ましいと考えていた。また、時間短縮や診断上の優先順位など効率を意識していた。看護師は、子どもとかかわる場面において、他職種が重視していることを考慮した上で、子どもの希望に沿った対応をとともに実践しながら、意味づけを共有する必要がある。

  • 川﨑 ゆかり
    2024 年 33 巻 p. 106-113
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     子育て世代包括支援センター(以下、センター)に関する知識と養育者へのセンターに関する情報提供の現状を明らかにするため、産科と小児科に勤務する看護職282名を対象に無記名の自記式質問紙調査を実施し、125名から有効回答を得た。対象者の84.0%が保健センターを「どこにあるか知っている」と回答し、67.2%が保健センターについて養育者の「全員」もしくは「必要な人」に情報提供していると回答した。一方、72.0%が保育コーディネーターを「知らない」、87.2%が養育者に「全く伝えていない」と回答した。産科の看護職は小児科の看護職よりも保育・子育て支援センター、保健センター、母子保健相談員の情報提供をしていた。養育者にセンターの情報提供をしていない理由として、「よくわからないため伝える自信がない」という回答が多かったことから、看護職がセンターに関する知識を得る機会をもつ必要性が示唆された。

  • ―思春期から青年期に焦点を当てた文献レビュー―
    遠藤 晋作
    2024 年 33 巻 p. 114-122
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
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     先天性心疾患をもつ子どもの自己概念形成に関する国内文献検討を思春期から青年期に焦点を当てて行い、課題と今後の検討内容の針路を示唆すること目的とした。医学中央雑誌WEB版およびCiNii Researchを用いて文献検索を行い、15件の論文を分析対象とした。内容の整理により【病気をもった自己】、【社会の中の自己】、【家族の中の自己】の3つの概念テーマが明らかになった。第一に【病気をもった自己】が不明確で【社会の中の自己】の中に否定的な要素をもつことが課題となり、発達に寄り添った具体的な支援策検討のために子どもの自己概念の全体像を明らかにする必要がある。第二に【社会の中の自己】にある青年期における社会適応の困難が課題となり、思春期の段階からの将来を見据えた自己概念形成、【家族の中の自己】の中で主体性を少しずつ親から子どもへ移行していけるような支持的親子関係の構築への支援検討が必要となる。

  • 腰山 健人, 遠藤 晋作, 堀田 法子
    2024 年 33 巻 p. 123-131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、医療的ケアを必要とする18トリソミーの児を在宅養育する母親の思いを明らかにすることである。母親6名に半構成的面接調査を実施し、質的記述的に研究を行った。結果、母親の思いとして【見とおしが立たない中でも家族で過ごす当たり前な日常への充実感】、【仲間や社会とのつながりから得られる安心感】、【合併症に対する高度な医療的ケアへの困難感】、【生命にかかわる急変や状態悪化への心理的負担】、【18トリソミー児に向けた社会資源・医療の不十分による苦悩】の5カテゴリーが見出された。母親への支援として、父親とともに児の成長の喜びを感じられるようにすること、社会とのつながりが保てるよう支援すること、医療的ケアの技術支援とともに休息支援を充実させること、緊急時に実用的な技術の提供だけでなく、在宅養育を継続できるよう精神的支援を行うこと、家族が納得のいく治療が行われるよう話し合いの機会を充実させることが求められる。

  • 遠藤 麻子, 下野 純平, 濱中 喜代
    2024 年 33 巻 p. 132-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル フリー

     学童期の医療的ケア児と家族に対する訪問看護師の支援の現状とその課題を明らかにし、医療的ケア児とその家族が地域で過ごす上での訪問看護師のあり方を検討することを目的に、訪問看護師9名に半構造化面接を行い、質的記述的に分析した。支援の現状として、【今までの経験だけではひとりで看護実践することに不安や難しさがある】、【成長とともにリハビリテーションや見守りがケアの中心になる】などの8カテゴリー、支援の課題として【特別支援学校や病院との連携において訪問看護師が担う役割を増やしていく】、【家族があきらめなくてもよいように人材を確保していく】などの7カテゴリーに分類した。訪問看護師が、医療的ケア児や家族のライフサイクルに合わせて家族の準備を支援していくこと、社会とのつながりも多くなる学童期に特化した視点をもってコーディネーターとしての役割を発揮していくことが求められる。

  • 岡本 奈々子, 小原 成美, 金泉 志保美
    2024 年 33 巻 p. 177-184
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、医療的ケア児(以下、児)の家族が就学に向けて経験した困難とニーズを明らかにし就学に関する課題を検討することである。小学校課程へ通学している児の家族を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。174部を配布し62部を回収した(回収率35.6%)。回答者はすべて母親であった。記述内容は内容分析の手法を参考に分析した。経験した困難として【周囲の理解が不足していること】, 【ケアによっては学校が対応してくれないこと】など10カテゴリーが形成され、家族の求める支援として【多機関・多職種が有効的に連携してほしい】, 【家族自身を多様にサポートしてほしい】など8カテゴリーが形成された。児に応じた学校での医療的ケア実施体制の構築、通学や放課後を支える資源の充実化、就学するための仕組みの明瞭化、家族が行う手続きをサポートする体制、看護職が家族とともに児の体調管理やケアの調整を行うことの重要性が示唆された。

  • 村井 博子, 流郷 千幸
    2024 年 33 巻 p. 185-192
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、幼児期後期におけるSGA性低身長児と健常児の母親の育児困難感の比較を目的とした。GH療法中のSGA性低身長症児の母親と健常児の母親を対象に子ども総研式育児支援質問紙3歳~6歳児用を用いた無記名自記式質問紙調査を行った。回答が得られたSGA性低身長症児と健常児の母親の育児困難感尺度合計点には有意差はなかったが、育児困難感の下位項目「育児についていろいろ心配なことがある」はSGA性低身長症児の母親に高くみられた(p=.01)。また、SGA性低身長症児の母親の下位項目「育児についていろいろ心配なことがある」と出生時週数(r=-.40、p=.04)、「母親として不適格である」と出生時身長に負の相関を示す傾向がみられた(r=-.45、p=.01)。SGA性低身長症児の母親には、疾患や治療に対する心因性の困難があると考えられ、その要因の分析と育児困難感を低減させる支援を検討する必要がある。

  • 佐野 千尋, 阿久澤 智恵子
    2024 年 33 巻 p. 193-201
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は小児がん経験者と家族の退院後の生活における心理社会的側面への影響に関する研究動向を文献検討により明らかにし、今後の研究課題を検討することである。医学中央雑誌で検索された734件のうち64件を分析対象とした。研究の種類では質的研究が最も多く、研究対象者では単独で父親やきょうだいを対象としたものはなかった。研究内容は1論文1コードとして質的帰納的に分析し、【社会生活上で受ける影響に関する研究】、【疾患との向き合い方に関する研究】、【移行期支援の課題に関する研究】、【退院後の精神的健康への影響に関する研究】、【在宅生活での養育への影響に関する研究】の5コアカテゴリーに分類された。今後の研究課題として父親やきょうだいを対象とした研究、移行期支援に焦点を当てた研究、精神的健康問題の予防法開発に向けた縦断研究の推進、PTG研究の推進、親の視点による退院支援の評価の必要性が示唆された。

  • 大日方 るり子, 野中 淳子
    2024 年 33 巻 p. 256-264
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、子どもの検査・処置への付き添いに関する親の体験を抽出することで、看護師の子どもと親への支援について検討することを目的とした。データベース(CiNii、医学中央雑誌Web、メディカルオンライン、最新看護索引Web)を用いて文献検索を行い20件の文献を分析対象とした。結果、親の体験は【母子分離への混沌とした思い】、【付き添うことで得られる親と子どもの安心】、【親としての自信の揺らぎ】、【医療者への巻き込まれから生じる親への負荷】、【付き添い効果から認識する親役割の獲得】、【子どもの体験を通して親が実感する子どもの成長】の6つに分類された。子どもの検査や処置に付き添いたい親が付き添えない現状、付き添った親への自信を支え精神的な負荷を軽減できるような看護師の支援の必要性が示唆された。今後は、子どもの検査や処置の際に子どもと親の意向が反映されるような支援の検討が求められる。

  • 西村 美紗希, 上山 和子, 栗本 一美
    2024 年 33 巻 p. 265-272
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケア児をもつ家族へ看護師が行う退院支援の実際について明らかにすることを目的とした。研究方法は、医療的ケア児の在宅への退院支援にかかわる看護師7名に半構造化面接を行い、質的統合法(KJ法)にて分析した。その結果看護師は、医療的ケア児の家族に対する退院支援として、【母親へ寄り添う:思いを聴くことによる精神的な支援】、【チームでのかかわり:情報共有し、家族が自信をもてるような支援】、【つながりの場:カンファレンスでの情報共有と連携】、【支援の調整:家族状況を把握した上で行う社会資源の調整】、【地域での支え:暮らしの中での看護職介入】が重要ととらえていることが明らかになった。在宅に向けた退院支援を充実させるためには、さまざまな看護職間の連携強化、教育や福祉など他機関との連携・協働の重要性が示唆された。

  • 田尻 涼太, 服部 淳子
    2024 年 33 巻 p. 273-278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児の手術を実施している施設における手術を受ける子どもの不安を軽減するための取り組みの実態を明らかにすることである。全国の大学病院または医学部附属病院および日本小児総合医療施設協議会に登録のある172施設を対象に、施設の基本属性、周術期の子どもの不安軽減の内容や実施者について調査し、24施設(14.0%)から回答を得た。すべての発達段階において「音楽を流す」、乳児期から学童期にかけては「家族(母子)同室入室」、幼児期から思春期にかけては「術前プレパレーション」の実施割合が多く、手術を受ける子どもの発達段階に合わせ、適切な不安軽減の内容を選択し実施していた。また、実施者については「手術室看護師」が多かったが、「病棟看護師」や「保育士」、「家族」などの回答があり、各職種の専門性や立場を生かしつつ、周術期の子どもの不安を軽減するための取り組みを実施していた。

  • 阿部 頼子, 青木 雅子
    2024 年 33 巻 p. 279-287
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケア児(以下、ケア児)をもつ家族のレジリエンスに関する研究において、どのような内容を家族のレジリエンスととらえているのかを明らかにし、ケア児を養育する家族のレジリエンス研究への示唆を得ることを目的とした。CINAHL、PubMed、医中誌Webを用い文献検索し、対象文献12件を分析した。ケア児をもつ家族のレジリエンスとしとらえられた内容は、【継続的に家族の支えとなる存在の認知】、【危機に対する想いの共有】、【家族であり続けるための努力】、【子どもとかかわる中での想いの変化】、【家族で過ごしていくために守るべきものと変化できるものの見極め】、【危機から得た家族の新たな力】の6カテゴリーとして抽出された。今後も増加すると予想されるケア児とその家族のレジリエンスを高める支援を検討するためには、このカテゴリー間の関連性や順序性、影響要因などを明らかにする継続的な研究が必要である。

  • 岡永 真由美, 石浦 光世, 杉村 恵子, 中村 彩乃, 森下 阿津美
    2024 年 33 巻 p. 288-295
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

     目的:児童発達支援センター施設管理者と看護師代表が求める看護師と他職種の役割と課題を明らかにする。方法:看護師配置を明記した156施設の施設管理者と看護師代表を対象に質問紙調査を行い、単純集計およびカイ二乗検定を行った。結果:施設管理者より38通(回収率24.4%)、看護師代表者より36通(回収率23.1%)を分析した。施設利用児は3歳~4歳が最も多く、医療的ケアが必要な子どものいる施設は30施設(76.9%)であった。看護師代表者と施設管理者が求める看護師の役割のうち<子どもの病気や健康管理への指導>の回答割合が高い。さらに<子どもが安全に過ごせるように環境を整える>、<日常生活への支援>、<子どもと一緒に遊ぶ>は有意差を認めた(p<0.05)。他職種連携の困難さには【専門性の共通理解の不足】があった。考察:看護師は他職種との協働により子どもの特性を総合的にとらえ、支援をつなぐ役割が必要である。

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