日本臨床免疫学会会誌
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10 巻, 3 号
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  • 今村 幸雄, 黒川 眞樹, 佐藤 宏, 砂田 芳秀
    1987 年 10 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨髄腫についてNK, ADCC活性および細胞表面抗原に対するInterferon-β (HuIFN-β)連日投与による影響を経時的に検討した. NK, ADCC活性は51Crで標識した標的細胞(K-562細胞株, Raji細胞株,自己骨髄腫細胞)を用い, 4h-51Cr遊離法にて測定した.またリンパ球,単球領域における細胞表面抗原は,全血,骨髄腫細胞を用いたFlow cytometryによリモノクロナール抗体を用いて解析した.
    結果は次の通りである.
    1) HuIFN-β投与により,自己の系を用いたautologous NK活性が一過性に低下するのに対し, autologous ADCC活性では増強傾向がみられた.
    2) 標的細胞としてK-562細胞株を用いたallogeneic NK活性は一過性に低下し, 4日目以降高値を維持したのに対し, Raji細胞株を用いたallogeneic ADCC活性では4日目まで同様の変動を示していたが, 1週目からは投与前値に戻った状態を保った.
    3) 一方,細胞表面抗原に対する影響では,単球域におけるLeu M1, Leu M2陽性細胞率に顕著な増加傾向がみられた.リンパ球域ではOKT4がIFN投与後6時間目に一過性の上昇を示した.
    4) HuIFN-β投与により上昇を示すautologous ADCC活性はLeu7, OKM1 (リンパ球域)陽性細胞が関与している可能性が,また一過性の低下を示すautologous NK活性やallogeneic ADCC活性はLeull, OKM1 (単球域)陽性細胞が関与している可能性が示唆された.
    5) またHuIFN-β長期投与において投与初日と5週目における経時的な免疫学的変動は類似しており, HuIFN-β連日投与による応答の変化は生じないことが示された.
    以上の結果からIFNの骨髄腫に対する作用機序として末梢血リンパ球および単球の活性化による間接効果が推定される.
  • 前田 裕弘
    1987 年 10 巻 3 号 p. 233-239
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    SLEの多クローン性B細胞活性化の原因が, B細胞自体の異常によるものか, BSF (B cell stimulatory factors)によるものかについて検討した. B細胞機能としてのSACおよびBCGFに対する反応性はSLE群と健常人群とでは有意差はなかった.しかし, PHA刺激T細胞培養上清中のBCGFおよびBCDF活性は活動性SLE群において亢進していた.また, SAC刺激B細胞上清中のBCGF様活性はSLE群と健常人群では有意差はなかったが, BCDF様活性は活動性SLE群において高値を示した.また,血清中のBSF活性を検討した結果,活動性SLE群において亢進していた.
  • 内藤 説也, 草場 公宏
    1987 年 10 巻 3 号 p. 240-245
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1.日本人でもHLA領域Class IIIのC4アロタイプであるC4A0がSLEとの相関を示唆する成績が得られ,初めて白人と共通するものが明らかにされた.
    2.日本人のSLEでは連鎖不平衡を有するハプロタイプがBw62-C4A0-DR4.1で正常人での連鎖不平衡Bw56-C4A0-DRw12または-DRw6とは全く異なっていた.
    3.臨床的に診断されるSLEは,病因的には異質性の存在することが示唆された.
  • 斎藤 滋, 斎藤 真実, 橋本 平嗣, 中西 彰, 一條 元彦
    1987 年 10 巻 3 号 p. 246-253
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    妊娠は一種の同種移植とも考えられ,特異な免疫環境下にあるといえる,今回,妊娠時におけるNK活性を検討し以下の結果を得た.
    1) 妊娠時におけるNK活性は妊娠初期より低値となり分娩後,非妊値に復した.
    2) 妊娠時にはadherent cell除去後及びインドメサシン投与によりNK活性が上昇するため,単球の産生するプロスタグランディンがNK活性を低下させていると思われた.
    3) γIFN投与によりNK活性は上昇するが,妊娠時ではその上昇は十分ではなかったが,分娩後3週経過すれば,非妊婦人と同等の反応を示した.またadherent cellを除いてもγIFNによるNK活性には変化がなく,妊娠時におけるγIFNに対するNK細胞の反応性低下はadherent cellによるものではなかった.
    4) 一方, rlL-2に対する反応は妊娠時においても良好で非妊婦人と同様のNK活性を示しγIFN, rlL-2による反応性に差を認めた.
  • SjSにおけるEBV関連血清抗体価,口腔内EBV排出及び末梢血由来自律増殖B細胞株のEBV産生に関する検討
    山岡 國士, 宮坂 信之, 佐藤 和人, 西岡 久寿樹, 奥田 正治, 山本 興太郎
    1987 年 10 巻 3 号 p. 254-260
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Sjögren's syndrome (SS), an autoimmune exocrinopathy, is characterized by polyclonal B cell activation and association of monoclonal B cell lymphoma. We therefore studied possible involvement of EBV in the pathogenesis of SS. EBV is known to be a polyclonal B cell activator and an oncogenic virus. The titer of serum antibody of IgG class against viral capsid antigen (VCA) was significantly elevated in SS sera. Serum anti-VCA antibody of IgM class was also significantly increased in titer in SS. Ten out of 37 SS sera had titers of both IgG and IgM anti-VCA antibodies suggesting reactivation of EBV in vivo. These cases had significantly enhanced level of serum IgG compared to SS patients without reactivation. Excretion of EBV from the oropharynx was frequently observed in SS (86%) compared to normal controls (33%). SS patients with increased anti-VCA antibody in the sera tended to be EBV excretors. Furthermore, we have successfully established B cell lines from the peripheral blood of SS patients but not from normal controls, when peripheral blood mononuclear cells were cultured without stimulation. These cell lines not only expressed EBV nuclear antigen (EBNA) but also excreted large amount of EBV in the culture.
    These data might suggest possible involvement of EBV in the pathogenesis of SS.
  • I.老化と好中球機能
    坂根 剛
    1987 年 10 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    70~80歳の老人で臨床的に異常のない25例の老人について,その好中球走化性,貪食能,およびO-2, H2O2, OH・, chemiluminescenceの4種の活性酸素産生能を測定した.結果は,走化性のみ有意の低下を認め,貪食能や活性酸素産生能は18~50歳の若年者対照群との間に差異を認めなかった.生体防御機構の中で,好中球は第一の防衛線を構成するが,第一の防衛線の中でも最も基本的な侵入異物への走化性という機能のみが低下を示したということは,老人の免疫能の低下や加齢による易感染性を考える上で興味深い.
  • II.老化とNK活性
    坂根 剛, 丹羽 靱負
    1987 年 10 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    65~95歳の臨床的に異常を認めない54例の老人について,そのNK活性とNK細胞数を測定した.全リンパ球中にNK細胞が占める比率は老人群と18~50歳の若年者対照群との間に差異がみられなかった.しかしNK活性については, 71~85歳の老人では若年者対照群に比し,有意の増強を示し,特に76~80歳でNK活性はピークに到達した.この現象は非分画単核細胞を用いても,単球およびIarge granular lymphocyte (LGL)を可及的に枯渇させたリンパ球分画を用いても,また単球を可及的に枯渇させ, LGLを豊富に含むリンパ球分画を用いても認められたが,後者のリンパ球分画のNK活性が最も高値を示した.加齢に伴ってリンパ球機能は低下することが多い中で, NK活性はむしろ増強し,他の免疫能の低下をNK活性でカバーして生体防衛機構の恒常性に一定の役割を果していることが示唆された.
  • III.老化とBリンパ球機能
    坂根 剛, 鈴木 登, 土田 登美子, 村川 洋子, 藤原 茂芳
    1987 年 10 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    静止期Bリンパ球,部分的に活性化されたBリンパ球およびin vivoで十分に活性化され,免疫グロブリン(Ig)産生細胞にまで分化したBリンパ球をそれぞれ, Staphylococcus aureus Cowan I (SAC)に対する増殖反応, T細胞の存在下でのSAC,あるいはpokeweed mitogen刺激によるIg産生,および自発的なIg産生を指標にして,老人におけるBリンパ球の活性化機序の異常を検討した.その結果,老人では静止期Bリンパ球の減少とin vivoで十分に活性化されたBリンパ球の増加が認められ, Bリンパ球がポリクローナルに活性化されていることが示された.このようなBリンパ球の活性化機序の異常は,老化の自己免疫説を示唆し,さらに老化に伴う免疫機能の特徴である易感染性,免疫不全,および自己免疫機序をよく説明する.
  • 中田 安成, 片岡 幹男, 小林 洋三, 岸 俊行, 江尻 東伍, 森 由弘, 飛岡 徹, 前田 剛, 大熨 泰亮, 木村 郁郎
    1987 年 10 巻 3 号 p. 278-285
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    28例のサルコイドーシス(サ症)と31例の健常者に気管支肺胞洗浄(BAL)を行い,採取したリンパ球の異常を検討した.健常者において喫煙の影響を検討したところ,喫煙者ではBAL液中の有核細胞の増加が認められ,その増加した細胞の多くはマクロファージであり,リンパ球実数に変化はなかった.サ症においては健常者に比して喫煙の有無に関わらずリンパ球数の増多がみられた.増加しているリンパ球はT-リンパ球であり,そのsubsetはOKT-4 (+) T-cell (helper T-cell)であった. BAL液中のリンパ球の増加は血清angiotensin-converting enzyme活性の亢進と正の相関関係が認められ,かつOKT-4/OKT-8比とP. acnes添加幼若化反応との間にも正の相関が認められた.即ち,サ症BAL液中リンパ球増多は本症の活動性を反映し,このリンパ球増多にP. acnesの関与が窺われた.
  • 斎藤 滋, 斎藤 真実, 茨木 保, 一條 元彦
    1987 年 10 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    妊娠時におけるlymphokine activated killer (LAK)活性を検討し以下の知見を得た.
    1) LAK活性は妊娠初期より後期まで有意に低値(<0.01)となったが,分娩時にはすみやかにその活性は上昇し,非妊群と有意差を認めなかった.
    2) 妊娠時におけるLAK活性低下機序を知るため,付着細胞及び妊婦血清のLAK活性に与える影響につき検討したが,両者ともLAK活性には何らの影響も与えなかった.
    3) interleukin 2 (IL-2)の添加培養下におけるリンパ球サブセット(OKT3, OKT4, OKT8, Leu7, Leu11, OKIa1, OKM1)をflow cytometryにて検討したところ,妊婦と非妊婦人との間に差は認めなかった.つまり,妊婦におけるLAK活性低下はLAK細胞数の減少というよりはLAK細胞の機能低下に起因すると思われた.
    4) 妊婦血清中にはPHA刺激下末梢単核球のIL-2産生能を抑制する因子が存在した.また本作用は産褥婦人血清には認められなかった.この事より, IL-2産生の低下及びLAK細胞の機能低下という2つの機序により,妊娠時のLAK活性誘導は抑制されており,妊娠維持に好都合な免疫環境が形成されていると思われた.
  • 木佐森 茂樹
    1987 年 10 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)における抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)活性の異常の有無および疾患活動性,治療との関係につき検索し, SLEにおけるADCC活性の臨床的意義につき検討した.
    SLE患者リンパ球のADCC活性は疾患活動期に異常低値を示した. ADCC活性と流血中免疫複合体(CIC)の値との間には一定の関係を認めなかった. SLE患者血清は正常人リンパ球のADCC活性を抑制し,患者血清によるADCCの抑制の程度とCIC値との間に有意の相関(p<0.001)が認められた.また, SLE患者血清は,すでに低下しているSLE自己リンパ球のADCC活性をさらに有意(p<0.05)に低下させた.
    以上のことより, SLE患者のADCC活性は,疾患活動性と密接に関係しており, ADCC活性の減弱は, Killer細胞自体の異常に加え, CICのごとき血清内因子によりin vivoではさらに減弱しているものと考えられた.
  • 坂田 茂樹, 小牧 卓司, 松田 雅文, 伊藤 康文, 堀谷 登美子, 足立 佳代子, 三浦 清
    1987 年 10 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    We have experienced 2 cases of Graves' disease associated with anti-thyroid hormone auto-antibodies. Case 1: a 24-year-old pregnant woman was found to have exacerbation of Graves' disease of which she had been diagnosed when she was 10 years old. She was treated with propylthiouracil (PTU, 450mg/day) since March 26, 1985 when intra-uterine fetal death was found. Since serum total T3 (TT3) levels had been high even long after abortion in the face of normalization of total T4 (TT4), free T4, and thyrotropin (TSH), presence of anti-thyroid hormone antibodies was suspected. Addition of labelled thyroid hormone to her serum followed by precipitation of γ-globulin fraction with 12.5% of polyethylene glycol showed an increased binding of 125I-T3 or 125I-T4r being 19.3% or 11.0%, respectively, to her serum γ-globulin fraction. Scatchard plot of anti-T3 antibodies in her serum was analyzed in two components; one with a higher affinity constant (5.4×107 M-1), and the other with a lower affinity constant (1.0×106 M-1). Case 2: a 16-year-old female had been diagnosed as Graves' disease when she was 15 years old and had been treated with MMI for a year. By the treatment, she became physically euthyroid, and serum total thyroid hormone (TT3, TT4) levels declined to the normal level. However, since free thyroid hormone (FT3, FT4) levels showed unusually high levels, presence of anti-thyroid hormone antibodies in her serum was suspected. Her serum γ-globulin bound 34.5% and 12.2%, respectively, of 1251-T3 and 125I-T4. Scatchard plot of anti-T3 antibodies in her serum was analyzed into two components; one with a higher affinity constant (2.4×1010 M-1), the other with a lower affinity constant (3.1×109 M-1). Although further characterization of anti-T4 antibodies in both cases has not been done, from the binding data of 125I-T4 to both sera, in addition to anti-T3 antibodies, both cases were considered to have anti-T4 antibodies. Our present cases indicate that it is clinically important to bear the presence of anti-thyroid hormone antibodies in mind to account for the possible error in measuring T3 or T4 by RIA. In the case that RIA results give unexpectedly high or low T3 and/or T4 value, the presence of autoantibodies should be considered first and a test for them is recommended.
  • 市川 幸延, 内山 光昭, 有森 茂, 小川 純一, 井上 宏司, 小林 信昌, 渡辺 克仁
    1987 年 10 巻 3 号 p. 309-317
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    私達は3種の臓器特異性自己免疫疾患(重症筋無力症,自己免疫性溶血性貧血,自己免疫性甲状腺炎)を合併したIgA単独欠損症の成人例を経験し報告した. IgA単独欠損症はしばしば自己免疫疾患を合併することが知られているが,私達の検索し得た限りでは本例のように多数の自己免疫疾患を合併した報告は見当らない.
    本例は血中IgAが著しい低値(5mg/dl以下)を示し,血中抗IgA抗体が高値を示した.直接クームス試験では赤血球表面にIgG, IgA, IgMおよび補体成分が検出でき,赤血球表面に結合したIgAの存在は赤血球からの解離液を用いたenzyme-linked immunosorbent assayでも確認できた.しかし,このIgAが真の抗赤血球抗体であるのか,免疫複合体として赤血球のC3bレセプターに結合しているのかは不明である.
    重症筋無力症に対して施行した胸腺摘出術後に敗血症と溶血発作を併発したが抗生剤と副腎皮質ホルモン治療により改善した.副腎皮質ホルモン投与により重症筋無力症や自己免疫性溶血性貧血は改善したが血中IgA値は不変であった.なお,摘出胸腺は中等度に退縮しリンパ濾胞形成が認められた.本例の重症筋無力症に対して胸腺摘出術は術後30ヵ月の観察では有効と考えられた.
    本例の唾液中IgAは低値で,末梢血IgA陽性Bリンパ球は存在したが, PWM刺激によりIgA産生細胞は出現しなかった.
    本例はIgA単独欠損症,あるいはその合併症についていくつかの臨床的,免疫学的な示唆を提供するものと老えられる.
  • 高林 克日己, 小池 隆夫, 松村 竜太郎, 冨岡 玖夫, 吉田 尚
    1987 年 10 巻 3 号 p. 318-329
    発行日: 1987/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)の肺胞出血は稀ながら重篤な合併症である.病勢が急速に進行するにもかかわらず,血痰などの自覚症状に乏しいため診断が容易でなく,かつ治療に抵抗性であるために,予後は著しく不良である.本邦で今までに報告された2例はいずれも剖検例である.我々は最近3例のSLEの肺胞出血を経験したが,うち2例に気管支鏡を施行し,気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検から肺胞出血と診断した.さらにこの2例は集中呼吸管理とパルス療法などを行ない,肺胞出血に関しては改善することができた.本症の予後は不良であるが,気管支鏡による早期診断と呼気終末陽圧法(PEEP)を含めた集中呼吸管理が,ステロイド療法とともに重要であると考えられた.
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