日本臨床免疫学会会誌
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20 巻, 2 号
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  • 西本 憲弘, 嶋 良仁, 笹井 光子, 團野 典行, 吉崎 和幸
    1997 年 20 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    多彩な生理活性を有するインターロイキン6(IL-6)は種々の疾患の病態形成に関与していることが明らかとなった.その中で多発性骨髄腫, Castleman病,慢性関節リウマチは詳細な検討が加えられている代表的な病気でありIL-6のシグナル伝達を阻害することによるこれらの疾患の治療が考えられる.この目的で我々はヒト型化した抗IL-6受容体抗体を用意し,治療を試みた.ヒト型化抗IL-6受容体抗体の投与により,多発性骨髄腫の患者の血中M蛋白の増加は抑えられ,発熱や全身の浮腫も認めなくなり, CRPも陰性化した.またCastleman病や慢性関節リウマチの患者においても治療前に認められた炎症症状のみならず,貧血, CRP, 血沈など検査値も改善を認めた.以上のことからIL-6のシグナル伝達阻害が,病態をふまえた新しい治療的アプローチとなり得るものと思われる.
  • 西村 彰一, 藤田 益嗣, 寺田 信國, 谷 徹, 小玉 正智, 伊東 恭悟
    1997 年 20 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    MAGE geneは1991年Boonらによりメラノーマに発現する腫瘍退縮抗原遺伝子として同定された. 12の遺伝子ファミリーを形成し, MAGE-1およびMAGE-3の遺伝子産物がHLA拘束性に細胞障害性T細胞を誘導し得る.メラノーマ以外の悪性腫瘍にも発現の報告があり,精巣および胎盤以外の正常細胞には発現がないことより,その遺伝子産物は癌特異免疫療法の対象分子として注目されている.
    これまで大腸癌におけるMAGE geneの発現に関し詳細に検討した報告はなく,今回我々は, MAGE-1, MAGE-2, MAGE-3, MAGE-4 a/4 b,それぞれに特異的なプライマーを用いその発現をRT-PCRを用い検討した.大腸癌40例においてMAGE-1, 2, 3, 4 a/4 bはそれぞれ3例(7.5%), 6例(15.0%), 13例(32.5%), 5例(12.5%)に発現を認めた.各種臨床病理学的因子とMAGE geneの発現との相関を検討した結果,リンパ節転移陽性症例において有意にMAGE-3の発現率は高かった(p<0.05).またDukes D症例は全例MAGE-3の発現を認め,その発現率は他のDukes症例より有意に高かった(p<0.05).
    大腸癌は他の消化器癌と比べ手術後の予後は良好であるが,進行癌症例における成績は未だ十分とはいえない.進行癌症例の予後の改善には補助療法を加える必要性があると考えられる.しかしながら化学療法,放射線療法の効果は未だ十分とはいえず,その予後の改善には新たな治療法が必要とされている.今回我々の検討した結果においてMAGE-3は大腸癌において比較的高頻度に発現しており,進行癌症例においてその発現率が高くなることより, MAGE-3特異免疫療法が新たな大腸癌治療になり得る可能性が示唆された.
  • 松浦 宏美, 神保 聖一, 宮村 光彦, 片野 萬吉, 富樫 和美, 松田 重三
    1997 年 20 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    健常者およびHuman immunodeficiency virus (HIV)感染者における,細胞表面Human leucocyte antigens (HLA)クラスIのタイプ(表現型)と血清soluble HLA (sHLA)クラスI濃度との関連について検討した.
    HLA-A 24を保有する健常者群の血清sHLA濃度は,非保有群のそれに比較して有意に高値を示した.さらに, HLA-A 24のみを保有する群の血清sHLA濃度は, HLA-A 24ヘテロ接合体群のそれに比較し有意に高値を示した.また, BおよびCローカスのHLA表現型に関しては,各群の血清sHLA濃度に有意な変動は認められなかった. HIV感染者群では,健常者群に比較して血清sHLA濃度の有意な上昇が確認された.しかし,血清sHLA濃度とHLA表現型との間には,健常者群と同様の関係が認められた.これらの成績から,血清sHLA発現量と細胞表面HLAクラスI抗原表現型との間には有意な相関があり, HLAクラスI遺伝子そのものが,その表現型による発現調節を受けている可能性が示唆された.
  • 西成田 進, 滝沢 隆, 北村 登, 東 孝典, 高橋 秀夫, 堀江 孝至
    1997 年 20 巻 2 号 p. 108-116
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    ヒト末梢血単球をフィブロネクチン(FN)とともに培養すると,単球のIL-1α, IL-1β, TNF-αおよびIL-6などのモノカインの産生が,蛋白レベル, mRNAレベルの両者においてその発現が増加していた.また単球のIL-1α産生において, FNとGM-CSF, IFN-γまたはLPSは相加的あるいは相乗効果を認めた. FNにより誘導されるTNF-αの産生はprotein tyrosine kinase(PTK)インヒビターであるherbimycinまたはgenisteinによって著明に抑制されたが, proteinkinaseCインヒビターであるstaurosporinでは抑制されなかった.このことからFNによるTNF-αの産生にPTKが関与している可能性が考えられた.一方, LPS刺激の場合のTNF-α産生はherbimycin, genisteinおよびstaurosporinいずれによっても抑制されることから, PTK, PKC両者の関与が想定された.また単球をFNで刺激すると, 70kDおよび240kD付近の細胞内蛋白のリン酸化を認めた. FNは単球を活性化し,モノカイン産生を誘導することにより,炎症の進展に寄与している可能性が考えられた.
  • 石山 香恵, 諏訪 昭, 稲田 進一, 田辺 学, 山田 隆, 後藤 眞, 今枝 博之, 中西 久, 原 まさ子, 柏崎 禎夫
    1997 年 20 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は, 69歳,女性.食道静脈瘤合併肝硬変,間質性肺炎と診断され,当院入院となった.多彩な自己免疫異常を伴い,自己免疫性肝炎(AIH)から進展した肝硬変と考えられた.入院後,大腸潰瘍による下血を合併し,肝不全に至り死亡した.剖検では多発性肝細胞癌を合併した肝硬変,壊死性半月体形成性腎炎,大腸血管炎が証明された.
    本例は, P-ANCAの対応抗原とされるmyeloperoxidase (MPO)とcathepsin Gに対する抗好中球細胞質抗体(ANCA)が共に陽性で,各ANCAを特徴とするANCA関連血管炎とAIHに加え肝細胞癌を合併したきわめて稀な症例と考えられた.
  • 澤田 康史, 大西 国夫, 小坂 正, 江頭 明盛, 木下 隆弘, 天野 國幹, 山村 誠, 里見 匡迪, 下山 孝
    1997 年 20 巻 2 号 p. 126-133
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    我々は, Pseudopolyposis type左側大腸炎型の難治性潰瘍性大腸炎に対し,白血球除去療法(以下LCAPと略す)が有効であった症例を経験したので報告する.患者は40歳男性.昭和63年初発後,サラゾピリン(以下SASPと略す),ステロイド(以下SHと略す)の内服で症状は安定していた.平成5年12月再燃し,絶食のもと,中心静脈栄養, SASP, SH強力静注療法, SH注腸, SHパルス療法, SH動注,蛋白分解酵素阻害剤,免疫抑制剤等の治療により約9カ月間症状が改善せず,平成6年8月30日当院転院. LCAPを併用後より症状の改善を認め,治療10回目で緩解となる.投薬を徐々に減量中止するも, 1回/月のLCAP維持療法で,約13カ月間緩解を維持できた.しかし,平成8年2月,治療の中断と約1カ月間の大量飲酒後,多量出血を起こし緊急手術となった. LCAPは,白血球を体外に除去する事で患者の過剰な免疫の悪循環を遮断し,効果を発揮する事が示唆された.
  • 健常成人におけるCMV感染と血小板数との関連
    澤登 雅一, 中川 靖章, 井上 靖之, 鈴木 憲史
    1997 年 20 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    24歳,女性. 95年2月18日,頭痛,発熱を主訴に来院. Plts2.6万/μlと著減しており, 2月22日当科初診.脾臓を1横指触知し,両下肢に出血斑が散在していた.リンパ節腫大,皮疹は認めなかった. WBC6000/μl,異型リンパ球5%, Hb11.8g/dl, Plts5.0万/μl. GOT, GPT, LDHの上昇が見られ, CMVIgM抗体価の上昇(×320:FA法)を認めた.骨髄穿刺所見では,有核細胞数10万/μl,巨核球90/μl, 3系統に異常は認めなかった. PCR法, in situ hybridization法による骨髄中CMVの検索はいずれも陰性であった.以上より, CMV単核球症とそれに合併した血小板減少症と診断した.血小板数は,経過中自然に正常値(17.6万/μl)まで回復した.先天性CMV, rubella virus感染や, EBV単核球症に血小板減少が合併することはよく知られているが,本症例のように,健常成人のCMV感染に出血傾向が見られるほど重症の血小板減少が合併するのは比較的まれである. 1991~1995年の間に, EBVあるいはCMV単核球症で当院に入院した13例の検討では, EBVと同様にCMV単核球症においても,診断時血小板数がその後の経過に比し減少していることが多く,健常成人におけるCMV感染による重度の血小板減少はまれだが,軽度の血小板減少は我々が考えているより多いことが示唆された.
  • 細川 寿和, 日野田 裕治, 今井 浩三
    1997 年 20 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は, 69歳女性. 1995年4月4日,腰痛にて当院整形外科入院.入院時検査で血小板2.1万と低値を示したため,同月11日内科転科となる.味覚異常が強く,眼,口の乾燥症状著明. Schirmer test, gumtest, 電気味覚検査で涙腺,唾液腺の分泌低下があり,唾液腺造影および下口唇生検にてシェーグレン症候群と診断した.軽度の炎症反応を認め,抗SS-A/SS-B抗体陰性だったが,抗核抗体,抗セントロメア抗体は1280倍と陽性,免疫グロブリンでIgMの上昇がみられた.血小板減少はEDTA依存性偽性血小板減少症であり, EDTAにて活性化される抗血小板抗体は温度依存性を示し,また酵素抗体免疫染色法でIgMクラスと考えられた.本症例はシェーグレン症候群に合併したEDTA依存性偽性血小板減少症と考えられ,自己免疫病態における意義について文献的考察を加え,報告する.
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