日本臨床免疫学会会誌
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20 巻, 5 号
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  • ELISAによる疾患標識抗核抗体のスクリーニング法の検討
    浅沼 浩子, 三宅 淳子, 宮脇 昌二
    1997 年 20 巻 5 号 p. 417-427
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    疾患標識抗核抗体である抗dsDNA, RNP, Sm, SS-A/Ro, SS-B/La,トポイソメラーゼI (TopoI), Jo-1,セントロメア抗体の対応抗原を固相化したELISA ANAの有用性を膠原病359例と健常人113例で検討.間接蛍光抗体法による抗核抗体(FANA,カットオフ160倍)の陽性率は健常人9.7%,膠原病92.5%で, ELISA ANA (カットオフindex 11.5)の陽性率は健常人3.5%,膠原病80.2%であった. ELISA ANAはSLE, MCTD,原発性シェーグレン症候群で80%以上に陽性で, MCTDで高値を示した.疾患標識ANAs陽性の膠原病の92.5%にELISA ANAが発現.二種類以上発現した混合群で高値を示し,抗Topo IやJo-1単独陽性群では低値であった.疾患標識ANAs陽性の膠原病に対する感度,特異性はELISA ANAで92.5%, 88.3%, FANA (160倍)で99.0%, 70.4%であった. ELISA ANAは多量検体の迅速処理や抗体価の客観的定量化と時系列観察が可能で,膠原病への特異性が上昇し,膠原病のスクリーニング検査としてFANAよりも有用であった.
  • 戸田 京子, 熊谷 直樹, 岩渕 直人, 鈴木 達夫, 斎藤 英胤, 森實 敏夫, 日比 紀文, 石井 裕正, 土本 寛二
    1997 年 20 巻 5 号 p. 428-436
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    インターフェロン(IFN)療法を施行したC型慢性活動性肝炎(Chronic Active Hepatitis以下CAH)患者49例を対象に, in vitroにおける末梢血単核球の2-5 AS産生能をIFN療法前後に測定し,血清2-5 AS活性との関連性および血清中のC型肝炎ウイルス(HCV)の消失を指標とした治療成績との関係を検討した.
    CAH患者のIFN治療前の血清2-5 AS活性およびin vitroにおける無刺激時の単核球2-5 AS産生能は,健常人に比べ有意に高値を示したが,治療成績との間に一定の傾向は認められなかった.またIFN刺激時の単核球2-5 AS産生能は,健常人と同等の反応性が認められたが,治療成績との間には一定の傾向は認められなかった.しかしHCVのgenotype別に症例を検討した結果genotype II型の感染群では単核球のIFNに対する反応性が高い群ほど良好な治療成績が得られた(p<0.05).一方,血清2-5 AS活性では,この傾向は認められなかった. IFN治療終了後2カ月目の再測定では,治療により血清中のHCV-RNAの消失したCAH患者の無刺激時の単核球2-5 AS産生能は,依然として健常人より高値を示した.一方, IFN刺激による単核球2-5 AS産生能は,血清中HCVの非消失例では,消失例に比べ有意に低値を示した(p<0.001).また,血清中HCVが持続陽性で肝機能の改善も得られなかったいわゆる無効例では,治療前と比しても有意に低下していた(p<0.05).
    以上より, CAH患者のIFN治療前における無刺激時単核球の2-5 AS産生能は, HCVに対する生体内での反応を反映していると考えられた.また, IFN刺激時の単核球2-5 AS産生能は,測定時の生体のIFNに対する反応性を知る手がかりとなり,治療効果の予測およびIFNに対する反応性の変化を知る一つの指標となり得ると考えられた.
  • 矢原 健, 野田 智恵子, 宮野 章, 宮道 徹, 中山 雅弘, 篠原 康二, 木戸口 公一
    1997 年 20 巻 5 号 p. 437-441
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    先天性完全心ブロック(CCHB)の1例を報告する.患者は38歳女性,妊娠21週3日に胎児不整脈を指摘され当センター入院となった.患者は膠原病様症状はなかった.入院時検査成績では,抗核抗体,抗SS-A/Ro抗体,抗52 kDSS-A/Ro抗体陽性であった.しかし,抗60 kDSS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体は陰性であった.患者はCCHBの患児を出産し,患児は生後2カ月にペースメーカーを装着した.以上の結果より本例においては,抗52 kDSS-A/Ro抗体がCCHBの発症に関連あることを示唆する症例だと考えられた.
  • 染川 貴子, 高橋 徹, 牧口 祐介, 林 敏昭, 松野 桂喜, 高岡 朝子, 安達 正晃, 遠藤 高夫, 日野田 裕治, 今井 浩三
    1997 年 20 巻 5 号 p. 442-446
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性,高度の貧血のため当院紹介入院となった.血液検査では赤血球149万/μl,ヘモグロビン5.6g/dl, ヘマトクリット16.1%, MCV108flと大球性貧血が認められた.血清Vitamin B12 (VB12)は58pg/mlと低値を示した.上部消化管内視鏡検査では慢性萎縮性胃炎の所見であった.抗内因子抗体,抗壁細胞抗体陽性,シリング試験も陽性で悪性貧血と診断した.血清遊離T 3, T 4は正常範囲内であったがTSHは高値を示し,抗マイクロゾーム,抗サイログロブリン抗体陽性であり慢性甲状腺炎と考えられた.さらに内分泌学的検査を施行したところ,尿中17-OHCS低値,迅速ACTH負荷試験が低反応であり,潜在性の副腎皮質機能不全と診断した.本症例は多腺性自己免疫症候群のカテゴリーに入ると考えられた.
  • 石川 真紀, 舛本 俊一, 小国 孝, 兵頭 直子, 道堯 浩二郎, 堀池 典生, 恩地 森一
    1997 年 20 巻 5 号 p. 447-452
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性. 1988年4月より,高熱,リンパ節腫大,脾腫,皮疹が出現.近医での消炎鎮痛剤の投与にて軽快. 1991年6月,発熱時の皮疹が出現し,他医にて成人Still病と診断され副腎皮質ホルモン剤の投与を受けた.以後,緩解,再発を繰り返す. 1994年7月,高熱,皮疹,関節痛の増悪,フェリチン値の上昇を認め,ステロイドパルス療法を施行.トランスアミナーゼ値,ビリルビン値が著明に上昇し当院へ入院.入院後,汎血球減少を認め,骨髄穿刺を施行.組織球による血球貧食像を認め, hemophagocytic syndromeと診断するが,入院10日目に死の転帰をとった.
    成人Still病の経過観察中に重篤な肝機能障害をきたし, hemophagocytic syndromeを合併した1例を経験したので報告する.
  • 辻村 道将, 山路 健, 戸叶 嘉明, 菅原 正弘, 小林 茂人, 高崎 芳成, 橋本 博史, 廣瀬 俊一
    1997 年 20 巻 5 号 p. 453-456
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性.全身関節痛のため当科へ精査入院となった.赤痢感染後の関節痛,性別,関節炎の部位, HLA-B 27陽性より反応性関節炎と診断し,ジクロフェナムナトリウム75mg/日投与を開始したところ,関節痛は軽減した. HLA-B 27陽性患者は陰性患者に比べ,関節炎がより重症化し,しばしば慢性化するという報告があるが,本例はこれを示唆する症例と考えられた.
  • 牛山 理, 成清 武文, 長井 良憲, 多田 芳史, 鈴木 憲明, 大田 明英, 長沢 浩平
    1997 年 20 巻 5 号 p. 457-463
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    経過中,大腸の肉芽腫性壊死性血管炎によると思われる横行結腸穿孔をきたし,その後も治療抵抗性に大腸潰瘍が遷延しているウエゲナー肉芽腫症(WG)の1例を経験した.症例は58歳女性.著明な咽頭潰瘍を主訴に1994年12月当院に入院し,抗生物質抵抗性の肺浸潤影,腎障害, C-ANCA陽性などからWGと診断した.ステロイドパルス後,横行結腸穿孔をきたし,緊急開腹にて腸管・腸間膜の血管炎様肉眼所見を認めた.人工肛門を造設し,局所安静とステロイド+シクロフォスファミドで加療し咽頭・肺・腎所見は軽快したが,壊死性肉芽腫性血管炎に伴う大腸潰瘍が術後10カ月以上遷延している.統計上,消化管病変は, WGの初発および経過中の症状としてはほとんどみられないが,死因の約12%を占めており,治療ならびに経過観察においては充分注意する必要があると考えられた.
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