日本臨床免疫学会会誌
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29 巻, 6 号
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総説
  • 小川 文秀, 佐藤 伸一
    2006 年 29 巻 6 号 p. 349-358
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/31
    ジャーナル フリー
      我々の皮膚は常に外界からの様々な刺激にさらされている.その刺激の代表的なものとして太陽光線中の紫外線があげられる.紫外線は皮膚癌の発生の誘因となる他に,紫外線の曝露により皮膚には光老化と称される変化が生じてくる.光老化の特徴的な変化として皮膚表面のびまん性の色素沈着と深い皺があげられるが,その変化を特徴づけるものとして皮膚真皮におけるsolar elastosisと称される膠原線維・弾性線維の変化がある.この皮膚光老化には紫外線による酸化ストレスが深く関与していると考えられている.一方,酸化ストレスが関与する全身疾患の一つとしてとして全身性強皮症(systemic sclerosis ; SSc)があげられる.SScは全身の皮膚硬化を主徴とする膠原病であるが,レイノー症状をはじめとする血管障害も病態形成に深く関与していると考えられている.本稿では,酸化ストレスが皮膚に与える影響を光老化とSScに関して我々の研究結果とこれまでの研究知見を中心に概説する.
  • 田中 稔之, 梅本 英司, 宮坂 昌之
    2006 年 29 巻 6 号 p. 359-371
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/31
    ジャーナル フリー
      獲得免疫の中枢をになうリンパ球は全身を巡回して病原体の侵入に速やかに対応する.ナイーブリンパ球はリンパ節やパイエル板などの二次リンパ組織を循環して病原微生物の侵入を監視している.リンパ球は二次リンパ組織で抗原感作をうけると,活性化とともにその遊走特性をリプログラムして末梢の標的組織に移住してエフェクター機能を発揮する.感作T細胞の組織トロピズムの誘導には,二次リンパ組織に分布する組織特異的な樹状細胞が重要な役割をもつ.リンパ球の生体内動態は,リンパ球と標的組織の血管内皮細胞との多段階接着反応によって制御されている.例えば,リンパ節やパイエル板に局在する高内皮細静脈は,固有の血管アドレシンとリンパ球に働くケモカインを構成的に発現し,ナイーブリンパ球を選択的に動員する.一方,末梢のエフェクター組織の血管内皮細胞は,刺激応答性に細胞接着分子やケモカインを発現し,組織特異的なエフェクター細胞やメモリー細胞を動員する.また,リンパ組織や末梢組織からのリンパ球の遊出もスフィンゴシン-1リン酸やケモカインによって制御されることが示されている.本総説では,免疫系を機能的に統合する生理的なリンパ球の再循環や感作リンパ球の組織特異的な遊走制御機構について最近の知見を概説する.
原著
  • 佐々木 重胤, 久野 宗一郎, 村瀬 隆之, 山本 樹生
    2006 年 29 巻 6 号 p. 372-377
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/31
    ジャーナル フリー
      流産または死産をくりかえした抗リン脂質抗体陽性例における補体の変動を検討した.
      方法 2回以上流産または死産をくりかえした82例を対象とした.このうち抗核抗体陰性,自己免疫疾患のない2回以上流産または死産をくりかえしたもの58例を対照とした.抗リン脂質抗体は抗カルジオリピン抗体(ACA)と抗CL/β2-GPI抗体はELISA法,ループスアンチコアグラント(LAC)は希釈ラッセル蛇毒試験法(dRVVT法)によった.補体はCH50, C3, C4を検討した.82例中ACAは23例,抗CL/β2-GPI抗体は9例,LACは5例が陽性であった.58例はいずれの抗体も認めなかった.
      結果 ACA陽性例ではCH50, C3, C4の平均値±標準偏差はそれぞれ38.8±8.3 U/ml, 82.7±20.1 mg/dl, 18.5±5.7 mg/dlとなり抗リン脂質抗体陰性群では42.4±6.9 U/ml, 93.5±17.6 mg/dl, 21.1±4.6 mg/dlとなりACA陽性例群で有意な低下を認めた.抗CL/β2-GPI抗体陽性例,LAC陽性例でも抗リン脂質抗体陰性群に比し有意な低下を認めた.
      結論 ヒトにおいても2回以上流産または死産をくりかえした抗リン脂質抗体陽性例で補体価が低下することが判明した.
症例報告
  • 黒澤 るみ子, 梅林 宏明, 今川 智之, 片倉 茂樹, 森 雅亮, 相原 雄幸, 横田 俊平
    2006 年 29 巻 6 号 p. 378-383
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は7歳女児.6歳時に顔面・四肢の色素沈着,皮膚硬化,労作時呼吸困難があり前医に入院.症状・検査所見から,肺高血圧症を合併した全身性硬化症と診断され,7歳時に当科紹介入院.入院時,全身が褐色に色素沈着し,四肢の皮膚硬化,仮面様顔貌あり,手指・膝関節に屈曲制限,指尖部に潰瘍を認めた.Raynaud現象が陽性であった.抗核抗体は陽性であったが,その他の自己抗体は陰性であった.心エコー検査で肺高血圧症を認めた.入院後,メチルプレドニゾロン(mPSL)パルス療法および経静脈的シクロホスファミド(IVCY)パルス療法を開始し,後療法にプレドニゾロン(PSL)15 mg/日とミゾリビン(MZB)の内服を行った.約4ヶ月で皮膚硬化は改善し,四肢の屈曲制限もほぼ消失した.肺高血圧症は一時的に進行したが(増悪時肺動脈圧70 mmHg),経口PGI2製剤の内服,低流量酸素投与,抗凝固療法を開始し,肺動脈圧は34 mmHgと改善した.IVCYパルス療法は2年間行い,以後PSLとMZBの内服を継続しているが,病状は安定している.本症例は早期からmPSL療法・IVCYパルス療法を行い,肺高血圧症に対し経口PGI2製剤の内服を併用し,皮膚症状,肺高血圧症とも改善し,寛解を維持することが可能であった.
  • 山田 晃務, 半田 祐一, 上川 哲平, 町野 裕之, 鈴木 健司, 宮田 和則
    2006 年 29 巻 6 号 p. 384-388
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は,44歳女性.2002年8月多関節痛等出現.11月に多関節痛,白血球減少,抗ds-DNA抗体陽性,抗核抗体陽性,梅毒血清反応偽陽性などから全身性エリテマトーデス(SLE)の診断をうけた.ステロイドにて治療開始後も低補体血症続きコントロール不十分であった.2003年11月発熱,多関節痛,12月に肉眼的血尿,紫斑が出現.12月25日入院となった.破砕赤血球の存在,溶血,血小板減少性紫斑,頭痛,腎障害,発熱から血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を考えた.また,高フェリチン血症から血球貪食症候群(HPS)を疑い骨髄穿刺液検査を施行.マクロファージによる血球貪食像を認め血球貪食症候群も合併と診断した.メチルプレドニゾロンパルス療法を3日間,後療法にプレドニゾロン60 mgを開始.血漿交換も第1病日より開始した.血漿交換終了後TTPの再燃あり.血漿交換追加にて症状改善した.本症例ではvWF-CP (ADAMTS-13)活性の低下がみられ,抗vWF-CP抗体は陽性であった.TTP, HPSは共にSLEの重要な難治性合併症である.両病態が同時に合併しうることを念頭に置き,迅速に診断することが救命につながる.
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