物質の同時定量方法として2方向ロケット法を試み,いくつかの物質の同時測定に応用し,良好な結果を得たので報告した.もっとも簡単なものはalbuminとIgGの組合せである.移動度も抗原性も異なる物質であり,たんにagaroseとagarの比を変え, electroendosmosisを適当に調節してやることによって分離定量が可能である.ついでC3PAとC3Aは,同一抗原性を有するが, agarにEDTAを添加することによって, C3PAのみ陽極側に移動し, C3Aは陰極側にひかれるので同様に分離定量が可能であった.
SCとSIgAの分離定量はheparin-Ca EDTAを添加することによって, SCの移動度をβ
1領域からα
1領域へ移動させた後, agarとagaroseを適当に混じることにより, SCとSIgAをそれぞれ,原点を中心に陽極側,陰極側に分けることによって達成された.このheparin-Ca EDTAの効果は, heparinのpolyanionとしての作用が関係していると考えられる.その理由は他の陰イオン界面活性剤でも上記のような電気移動度の相違が見出され,しかもこの移動度の変化は, pH,イオン強度の影響を強くうけるからである.
著者らは,この2方向rocket法を応用して志太地区において唾液による液性免疫不全症のmass screeningを3年間行ってきたが,乳児16,000名中IgA単独欠損症2名,乳児-過性低γ-globulin血症2名を見出した.唾液によるmass screeningは,試料採取の容易さ, SIgAの局所免疫の重要性を考えあわせると,今後さらに普及してよい方法と考えられる.
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