日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
31 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
訂正記事
総説
  • 釜田 康行, 岩本 雅弘, 簑田 清次
    2008 年 31 巻 6 号 p. 424-431
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      肺高血圧症は,稀な疾患ではあるが進行性かつ難治性で治療に難渋する.膠原病でもしばしば肺高血圧症の合併を認めるが,その予後は極めて不良である.しかし,近年プロスタサイクリンであるエポプロステノールをはじめ,エンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタンや,ホスホジエステラーゼ-5阻害薬であるシルデナフィルなど,強力な血管拡張作用を有する薬剤が本邦でも使用できるようになった.これらの薬剤は運動耐容能をはじめ,循環動態,ADLの改善,さらには肺高血圧症の予後の改善が大いに期待できる薬剤である.本稿では肺高血圧症の治療薬のうち,最近本邦で認可されたエンドセリン受容体拮抗薬とホスホジエステラーゼ-5阻害薬について解説する.
  • 阿比留 教生
    2008 年 31 巻 6 号 p. 432-439
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      近年,抗CD3抗体などの生物学的製剤を中心に,ヒト1型糖尿病の分野においても,疾患の治癒・寛解を目指し治療法の開発研究がすすめられているが,安全性,経済性などの問題を抱えている.インスリンは,ヒト,NODマウスの1型糖尿病発症に関連した主要自己抗原である.膵島浸潤T細胞に反応せず,しかも,血糖降下作用を維持する変異インスリン(B鎖16位残基アラニン置換)のみを発現するNODマウスでは,インスリン自己抗体が発現せず,糖尿病も発症しない.NODマウスに,poly I:Cをアジュバントに,インスリンB鎖ペプチドを皮下投与すると,制御性T細胞だけでなく,攻撃側のeffector細胞も膵島内に誘導する.一方,インスリンB鎖16, 19位残基を置換したアナログペプチドを,コレラトキシンをアジュバントに経鼻投与すると,強力な糖尿病発症の抑制と高血糖からの寛解を誘導した.このように,膵島抗原を用いた免疫学的治療法は,投与ルートやアジュバント,補助療法に改良を加え,制御性T細胞を優位に誘導することより,今後,ヒト1型糖尿病において,安全な発症阻止,寛解誘導の治療法となる可能性がある.
  • 高木 智
    2008 年 31 巻 6 号 p. 440-447
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      Sh2b3/Lnkは,富プロリン部を含んだ多量体形成に働くN末端領域,PHドメイン,SH2ドメイン,チロシンリン酸化部位を持つ細胞内アダプター蛋白質であり,Sh2b1/SH2-BやSh2b2/APSとともにショウジョウバエから保存されているアダプター蛋白質ファミリーを形成する.lnk欠損により,B細胞過剰産生や造血幹細胞の著しい増幅および機能亢進が認められ,Sh2b3/Lnkが造血系細胞におけるサイトカインシグナルの抑制性制御分子であることがわかってきた.さらに,巨核球系前駆細胞での機能解析から,サイトカインシグナルとともに細胞接着に関与するシグナル制御系でも作用することが明らかになってきている.また,全ゲノム領域のSNPs解析から,Sh2b3/Lnkの多型が自己免疫性のI型糖尿病及びセリアック病の関連遺伝子として同定されており,免疫応答制御における役割,自己免疫病態形成への関与が注目される.本稿ではSh2b3/Lnkアダプター群を介する免疫担当細胞,造血幹細胞の維持・制御機構ついて論じ,それらを標的とした造血制御法の可能性についても紹介したい.
  • 熊野 浩太郎
    2008 年 31 巻 6 号 p. 448-453
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      ヒトパルボウイルスB19は,小児における伝染性紅斑の原因ウイルスであるが,その他にウイルス直接の障害として,溶血性貧血患者におけるaplastic crisisや免疫不全者における慢性赤芽球癆や胎児水腫の原因となる.また,免疫学的な機序として関節炎や急性糸球体腎炎を発症することが判明している.その他に,関節リウマチや,血管炎,血栓性微小血管障害などとの関連を指摘する報告もある.成人発症例では,関節炎の遷延化により関節リウマチとの鑑別や,補体の低下や自己抗体が検出されることから全身性エリテマトーデスとの鑑別も要する.このように様々な疾患との関連が報告されている感染症であり,また臨床面ではリウマチ膠原病疾患との鑑別を要する重要疾患である.
症例報告
  • 野澤 智, 原 良紀, 木下 順平, 佐野 史絵, 宮前 多佳子, 今川 智之, 森 雅亮, 廣門 未知子, 高橋 一夫, 稲山 嘉明, 横 ...
    2008 年 31 巻 6 号 p. 454-459
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      壊疸性膿皮症は,稀な原因不明の慢性皮膚潰瘍性疾患で小児例もわずか4%であるが存在する.クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患,大動脈炎症候群(高安病),関節リウマチなどに合併する例もあるが,本症単独発症例が約半数を占める.壊疽性膿皮症の標準的な治療であるステロイド薬,シクロスポリンに抵抗を示す難治例に対し,近年タクロリムス,マイコフェノレート・モフェチール,そして抗TNFαモノクローナル抗体の効果が報告されている.今回,壊疽性膿皮症の12歳女児例を経験した.合併する全身性疾患は認められなかったが,皮膚に多発する潰瘍性病変はプレドニゾロン,メチルプレドニゾロン・パルス,シクロスポリンなどの治療に抵抗性で長期の入院を余儀なくされていた.インフリキシマブの導入をしたところ潰瘍局面の著しい改善を認めた.最初の3回の投与で劇的な効果をみせ,投与開始1年3ヶ月後の現在,ステロイド薬の減量も順調に進み,過去のすべての皮膚潰瘍部は閉鎖し,新規皮膚病変の出現をみることはなく,経過は安定している.壊疽性膿皮症にインフリキシマブが奏効した小児例は本邦では初めての報告である.本症難治例に対するステロイドの長期大量投与は,小児にとっては成長障害が大きな問題であり,長期入院生活は患児のQOLを著しく阻害する.本報告により小児壊疽性膿皮症の難治例に対する治療に新しい局面を切り開く可能性が示唆された.
  • 吉田 周造, 小谷 卓矢, 武内 徹, 礒田 健太郎, 秦 健一郎, 渡辺 香子, 庄田 武司, 井上 徹, 槇野 茂樹, 花房 俊昭
    2008 年 31 巻 6 号 p. 460-464
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は55歳女性.2006年6月より両側下腿浮腫が出現し,増悪傾向のため11月11日当院受診.検査にて尿蛋白3+,血清Alb 2.5 g/dlであり,ネフローゼ症候群が疑われ11月14日当院入院.円板状紅斑,抗核抗体640倍,抗ds-DNA抗体16.8 IU/ml,腎生検にてループス腎炎ISN/RPS分類(class III (A/C)+V)の所見を得たため,全身性エリテマトーデスと診断した.Prednisolone 1 mg/kg/日にて治療を開始し,補体の上昇,抗ds-DNA抗体,免疫複合体の低下を認めたが,蛋白尿が持続したためAzathioprine 125 mg/日を併用した.しかし,蛋白尿の改善が不十分かつ骨髄抑制が出現したため中止し,Tacrolimus 3 mg/日を投与したところ,蛋白尿が著明に改善した.V型を含むループス腎炎による難治性蛋白尿にTacが著効した症例を経験したため報告する.
  • 金子 英樹, 駒野 有希子, 渡部 香織, 栢森 高, 高田 和生, 南木 敏宏, 宮坂 信之
    2008 年 31 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/31
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(SLE)の経過中に進行性多巣性白質脳症(PML)を発症した1例を経験したので報告する.症例は57歳女性.2000年SLEと診断され,2004年よりメチルプレドニゾロン16 mg/日を投与されていた.2005年9月,発熱,顔面・四肢の紅斑を生じ,当科紹介入院.播種性クリプトコッカス症と診断し,抗真菌薬の投与により軽快した.その後,多関節炎,四肢紅斑,低補体血症などSLEの再燃を認めたため,11月下旬よりプレドニゾロン40 mg/日に増量された.12月末より,失見当識,記銘力低下を生じ,脳MRIにて右前頭葉皮質下白質に占拠性病変を認めた.開頭脳生検による脳病理組織所見及びPCR法にて脳脊髄液中のJCウイルスDNA陽性を認めたことからPMLと診断した.PMLは中枢神経系に脱髄病変をきたす致死的病態であり,AIDS患者における日和見感染症として知られている.自己免疫疾患患者においても免疫抑制薬や生物学製剤使用に関連して,PMLを発症することが注目されている.SLEの経過中,亜急性の中枢神経障害,脳白質病変を認めた場合にはPMLを鑑別診断としてあげる必要があり,文献的考察を含めて報告する.
feedback
Top