日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 1 号
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総説
  • 木下 浩二, 船内 正憲
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      ループス腎炎は,全身性エリテマトーデス(SLE)の主要な臓器障害であり生命予後に大きな影響を与えている. その治療には副腎皮質ステロイド薬やシクロフォスファミドなどの免疫抑制薬を使用し一定の効果をあげているが,しばしばそれらの副作用等により治療に難渋することがある.レチノイン酸は,ビタミンAの誘導体の総称であるが,細胞の分化増殖やアポトーシスに重要な役割を演じていることが知られている.以前から抗腫瘍効果に注目され急性前骨髄性白血病の治療に用いられているが,近年,レチノイン酸の持つ免疫調節作用を利用して,種々の動物モデルを用いた研究において自己免疫疾患や腎疾患にも治療効果を示すことが明らかになってきた.SLEにおいても,その自然発症モデルであるNZB/WF1マウスにレチノイン酸を投与することにより,生存期間を著明に延長させるとともに,蛋白尿の抑制,腎組織障害の改善効果が報告されている.さらに活動期ループス腎炎症例に対する臨床試験では7例中4例にネフローゼ症状および血清免疫学的異常の改善を認め,また重篤な副作用を認めなかったことから,レチノイン酸がループス腎炎の新しい治療薬となり得ることが示唆された.
  • 田村 直人
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      リウマチ性疾患は全身性の慢性炎症性疾患であり,多くの疾患で自己免疫異常がみられる.ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase : PI3K)は細胞の増殖や生存をはじめ様々な細胞機能に関与するが,PI3Kは免疫担当細胞においても重要な役割を示す.PI3K/Akt経路はT細胞やB細胞の活性化や増殖,制御性T細胞誘導などに関与する.SLEでは患者B細胞およびT細胞におけるPI3K/Akt経路の活性化がみられ,またループスモデルマウスではPI3K阻害薬が腎症を軽減させることなどから,病態への関与が示唆されている.また,関節リウマチ患者滑膜においてもPI3K活性化がみられるが,我々はコラーゲン誘発性関節炎マウスにPI3K特異的阻害薬ZSTK474を投与すると関節炎が抑制されることを報告した.ZSTK474はin vitroでリンパ球や滑膜細胞増殖を抑制し,さらにin vitroおよびin vivoにおける破骨細胞形成を阻害した.PI3Kは様々なリウマチ性疾患の慢性炎症や自己免疫異常の病態形成に関わっており,その阻害薬の今後の治療への可能性が期待される.
  • 森尾 友宏
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      分類不能型免疫不全症はCommon variable immunodeficiency (CVID)と呼ばれ,最も頻度の高い先天性免疫不全症,かつ最も頻度の高い抗体産生不全型免疫不全症である.今までに判明した責任遺伝子にはICOS, TACI, CD19, CD20, CD21, CD81, BAFF-Rなどがあるが,いずれもその頻度は低く,TACIではその変異が直接的にかつ単一で病態に関わっているかどうか不明である.臨床症状としては感染症,自己免疫疾患や悪性腫瘍の合併などがあり,成人型の免疫不全症としてきわめて重要な位置を占める.特に単一遺伝子異常に基づく,易感染性,自己免疫疾患・悪性腫瘍の発症という点で,様々な疾患の免疫異常基盤探索においても重要な疾患である.鑑別診断に加え,病態に応じた分類,責任遺伝子の究明,至適治療法の開発が重要である.
  • 横田 俊平, 菊地 雅子, 野澤 智, 木澤 敏毅, 金髙 太一, 宮前 多佳子, 森 雅亮, 西小森 隆太, 高田 英俊, ...
    原稿種別: 原著
    2012 年 35 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      クライオパイリン関連周期性発熱症候群(CAPS)は,自己炎症候群に分類される周期性発熱症候群のひとつである.重症度の違いにより家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS),Muckle-Wells症候群(MWS),新生児発症多臓器炎症疾患(NOMID)の3症候群が含まれる.臨床症状は蕁麻疹様皮疹,周期性発熱,中枢神経炎症,関節症状などであり,MWS,NOMIDは長期経過でアミロイドーシスを発症する例が多く,もっとも重症であるNOMIDは約20%が20歳までに予後不良となる.近年,発症のメカニズムが明らかにされ,NLRP3分子のpyrinドメインに1遺伝子の異常があり,インターロイキン(IL)-1βがつねに産生されるために生下時より炎症が持続する.そこで,CAPS患児を対象にヒト型抗IL-1βモノクローナル抗体(カナキヌマブ)の臨床試験をすすめた結果,著しい効果を示すことができた.有害事象には鼻咽頭炎,上気道炎,胃腸炎など一般的な感染症を認め,カナキヌマブにより炎症惹起因子であるIL-1βが阻害されるために感染に対する防御起点が発動できないことが推察された.感染病原体の深部への浸潤を誘導してしまう可能性がつねにあり,カナキヌマブ使用中は感染症に対して十分な注意を払う必要があろう.
第39回総会ポスター賞受賞記念論文
総説
  • 山本 元久, 西本 憲弘, 田邉谷 徹也, 苗代 康可, 石上 敬介, 清水 悠以, 矢島 秀教, 松井 美琴子, 鈴木 知佐子, 高橋 裕 ...
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      IgG4関連疾患は,高IgG4血症と腫脹または肥厚を呈する臓器への著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を特徴とする,慢性炎症性疾患である.代表的な疾患として,IgG4関連涙腺・唾液腺炎としてのミクリッツ病や自己免疫性膵炎(Type I)などが挙げられる.わが国では,2010年に血清IgG4測定が保険適応になり,高IgG4血症を契機に診断されるIgG4関連疾患の報告数が増加しているが,一方,IgG4関連疾患以外の疾患でも高値を呈し得ることが判明してきた.リウマチ性疾患領域ではChurg-Strauss症候群をはじめとする好酸球性疾患,稀に関節リウマチや全身性強皮症でも血清IgG4が高値を示す.一部の臨床の現場では混乱がみられるが,IgG4関連疾患の診断は血清所見のみではできず,組織および画像を含めた総合的な診断が必要であることを理解しなければならない.またIgG4関連疾患症例の治療経過を解析すると,血清IgG4値は治療効果を反映し,再燃を予測するマーカーにもなる可能性が明らかになった.ここではIgG4関連疾患の診断時および治療経過中の血清IgG4値測定の意義について,当科のデータを交え,詳述する.
  • 小荒田 秀一, 田代 知子, 末松 梨絵, 井上 久子, 大田 明英, 多田 芳史
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      RP105(CD180)はTLR(toll-like receptor)関連分子であるが,SLEにおいてRP105を欠損するB細胞(RP105(−)B細胞)が出現し,自己抗体を産生する.したがって,同細胞は,SLE治療の有力な標的となりうると考えられる.そのために,同細胞に特異的に発現する抗原の網羅的検索をDNAマイクロアレイ法とフローサイトメトリーで行った.マイクロアレイの結果,BCMA(B-cell maturation antigen)の発現が特異的に高いことが示唆された.FACS解析ではP105(−)B細胞はBCMAの発現が増強し,BAFF-R(B cell-activating factor belonging to the TNF family)の発現が低下していた.また,RP105(−)B細胞は高度に分化した後期B細胞のフェノタイプを示していた.同細胞はさらにサブセット1から5までの5つの新たなヒトB細胞サブセットに分類できた.活動性SLE患者では活性化B細胞(サブセット1)と早期形質芽細胞(サブセット3)が有意に増加していた.とりわけ,サブセット3は治療標的として有用である可能性がある.BCMAとそのリガンドを介したRP105(−)B細胞の生存維持と分化亢進がSLEの免疫異常や病態形成に影響を与えていると考えられ,BCMAを標的とした治療がSLEで有用である可能性が示唆される.
  • 庄田 宏文, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      Immunoglobulin Binding Protein (BiP)は熱ショック蛋白(HSP)70ファミリーに属するタンパク質で,生理的にはストレス応答蛋白として滑面小胞体に発現し,蛋白のfoldingを行うシャペロン蛋白である.BiPに対する自己免疫応答の報告は,関節リウマチ,全身性エリテマトーデスなどでみられ,主に血清抗BiP抗体が上昇するとの報告がある.我々のグループからは,新たにシトルリン化BiPに対する自己抗体が関節リウマチで出現することを報告した.抗シトルリン化蛋白抗体は関節リウマチの発症機序に密接な関与が推定されており,BiPに対する自己免疫応答の重要性が示唆される.また関節リウマチにおいては,BiPを認識するT細胞の報告もある.一方でBiPそのものには制御性活性があることが知られている.マウスモデルにおいてはBiPを認識するT細胞がIL-4, IL-10を産生し関節炎を抑制することや,BiPで刺激された樹状細胞は制御性活性を持つことが知られている.このようにBiPに対する免疫系の応答は多様であり,そのバランスが崩れることで自己免疫寛容が破綻することが,自己免疫疾患発症に繋がりうると考えられている.
  • 井上 明日香, 松本 功, 田中 陽子, 住田 孝之
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)は,関節滑膜を主病変部とする炎症性疾患であり,病因として異常増殖した滑膜細胞などから産生される炎症性サイトカインTNFαやIL-6の過剰な分泌が考えられている.近年このTNFαやIL-6をターゲットとした生物学的製剤が開発され,RAの治療に顕著な成績を上げている.glucose-6-phosphate isomerase (GPI)は関節炎自然発症モデルであるK/BxNマウスの自己抗原として同定されたユビキタスに存在する解糖系酵素である.この合成GPI蛋白をDBA/1マウスに免疫することにより早期に関節炎を惹起できる.このモデルを用いて関節炎病態に寄与する分子を探索するためにDNAマイクロアレイを試行したところ,TNFα-induced adipose-related protein (TIARP)が関節炎マウス脾臓で高発現することを明らかとした.さらに我々は,関節局所においてもその増強を認め,腫脹の程度に合わせて変動することを見出した.また我々はTIARPが脾臓CD11b陽性細胞(マクロファージ,好中球)ならびに関節の滑膜細胞に局在することを明らかとした.TIARPのヒトorthologであるsix-transmembrane epithelial antigen of prostate 4 (STEAP4)蛋白も,マウス同様にRA患者滑膜細胞に発現していた.本稿では,自己免疫性関節炎およびヒトRA病態において新規関節炎抑制分子と考えられるTIARP/STEAP4分子について概説し,我々の見出したTIARP/STEAP4の新たな機能について紹介する.
  • 岩田 慈, 山岡 邦宏, 新納 宏昭, 中野 和久, Sheau-Pey WANG, 齋藤 和義, 赤司 浩一, 田中 良哉
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      近年関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとした自己免疫疾患に対し,生物学的製剤の高い有効性が報告されている.一方で,低分子化合物は経口投与可能であり,また廉価となる期待などから注目を集めている.Sykは72 kDaのチロシンキナーゼで,B,T細胞,肥満細胞,マクロファージ,好中球,滑膜線維芽細胞などの免疫や炎症に関与する公汎な細胞に発現している.SykはBCR,TCR,FcR,インテグリンなどITAM領域を含む多鎖免疫レセプターのシグナル伝達において重要な役割を担う.近年,Syk阻害剤(fostamatinib)のRAをはじめとした,気管支喘息,特発性血小板減少性紫斑病などの自己免疫やアレルギー病態に対する有効性が報告され,SLEモデルマウスにおいても皮膚症状,腎障害の進展抑制効果がみられているが,その作用機序は依然不詳である.我々は,ヒト末梢血B細胞において,Sykを介したBCRシグナルは,TLR9,TRAF-6のoptimalな発現誘導に極めて重要で,結果として,効率的なCD40,TLR9シグナル伝達が齎されることを明らかにした.以上より,Sykは自己免疫疾患のB細胞依存性病態において重要な役割を担う可能性が示唆された.本編では,RAやSLEを中心に,自己免疫疾患に対するSyk阻害剤のin vitro,in vivoにおける効果について概説する.
  • 山岡 邦宏, 前島 圭佑, 久保 智史, 田中 良哉
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      樹状細胞(DC)は抗原提示能に最も優れた細胞でT細胞等の獲得免疫を活性化することで免疫反応の起点となる細胞である.Janus kinase(JAK)はサイトカインがその固有の受容体に結合後,細胞膜直下で活性化されるチロシンキナーゼである.JAK3は血球系細胞に発現が限局し,リンパ球の分化・増殖に必須の分子であることが良く知られているがDCにおける機能についてはあまり知られていない.我々は,JAK3欠損マウスではDCの分化や抗原提示能は野生型と違いを認めないが,IL-10の産生が亢進していることを明らかにした.さらに,JAK3が活性化する転写因子Stat6の欠損マウスにおいても同様のサイトカイン産生パターンが見られる事も見いだし,DCにおいてはJAK3-Stat6経路がIL-10産生を負に制御することを明らかとした.IL-4は細胞内においてJAK3-Stat6を活性化することが良く知られているが,関節リウマチ患者関節液中ではIL-4産生が亢進しており,IL-4によるIL-10産生抑制機構が病態の一つとして考えられる.さらには関節リウマチを対象とした臨床試験において高い治療効果を示しているJAK特異的阻害薬(tofacitinib)の一作用機序としてDCからのIL-10産生誘導の可能性が考えられた.
  • 溝口 史高, 上阪 等
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      近年様々な生理的・病的状態におけるmicroRNAの役割が明らかになってきている.特に免疫におけるmicroRNAの役割については詳細な検討が進められている.関節リウマチにおけるmicroRNAの報告は,免疫系における役割が報告されていたmiR-146とmiR-155が炎症性滑膜組織に発現することが報告されて以降,様々なmicroRNAの発現が病態に関与する可能性が報告されてきている.関節リウマチにおけるmicroRNAの役割についてはまだその一部が明らかとなったにすぎないが,今後さらに詳細な検討がなされることにより,新たな治療標的やバイオマーカーとしての役割が明らかとなることが期待される.
  • 中川 靖子, 片岡 浩, 栗田 崇史, 中川 久子, 保田 晋助, 堀田 哲也, 渥美 達也, 小池 隆夫
    原稿種別: 原著
    2012 年 35 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      シェーグレン症候群(Sjögren's syndrome;以下SS)は,外分泌腺に対する自己免疫反応による腺組織の破壊と機能障害から生じる眼・口腔などの乾燥症状を主症状とし,同時に抗SS-A・SS-B抗体などの自己抗体産生や高γグロブリン血症が認められる自己免疫疾患である.その背景として,SS患者末梢血B細胞の異常活性化や形質細胞への過剰分化が指摘されている.
      アダプター分子NF-kB activator 1(Act1)はCD40-B cell-activating factor belonging to the tumor necrosis factor family receptor(BAFFR)を介したB細胞の分化生存に対する抑制因子でありSSのB細胞異常活性化に関与する可能性が考えられる.Act1欠損マウスがヒトのSSに類似した臨床,病理所見,免疫異常を呈することは,これを示唆している.そこでSS患者の末梢血B細胞におけるAct1発現とSSの病態生理に関連が認められるかを検討した.
      その結果,SS患者末梢血B細胞におけるAct1mRNA発現が健常人に比べ有意に低下しており,その相対的発現量は血清IgG値と逆相関していた.このSS患者B細胞におけるAct1mRNA発現の低下により,CD40あるいはBAFFRシグナル経路の抑制解除によるB細胞の活性化および形質細胞への過剰分化が促進され,自己抗体産生や高γグロブリン血症などが生じ,SSの病態形成へとつながる可能性が考えられた.
  • 岩井 秀之, 上阪 等
    原稿種別: 総説
    2012 年 35 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      Triggering receptor expressed on myeloid cells (TREM)-1は免疫グロブリンスーパーファミリーの1つで,好中球,成熟単球やマクロファージに発現する.TREM-1はTLRを介した炎症反応を相乗的に増強する.マウスTREM-1の細胞外ドメインとヒト免疫グロブリンFc部位の融合蛋白投与によるTREM-1阻害により,実験的マウス腹膜炎モデルでの致死率改善効果や炎症性疾患における臓器障害の抑制効果が示された.近年,TREM-1は関節リウマチの病態への関与が示唆されている.TREM-1阻害は感染防御能を保持した関節リウマチ治療法となる可能性がある.本稿ではTREM-1の役割,そのリガンドを使用した新規抗リウマチ薬開発の試みについて述べる.
症例報告
  • 新井 千恵, 野澤 智, 原 拓磨, 菊地 雅子, 百村 芽衣, 木澤 敏毅, 田野島 玲大, 喜多 麻衣子, 横須賀 ともこ, 宮前 多佳 ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 35 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      早期新生児期に全身型単純ヘルペスウイルス(HSV)II型感染症を発症し,髄膜炎,ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)を併発した症例を経験した.症例は日齢14の男児.日齢7より無呼吸発作が出現し,活気の低下と易刺激性を認め,肝は腫大し,左上腕に水疱疹を認めた.定量的PCR法にて血漿,髄液,骨髄からHSV II型DNAが検出された.入院時血小板数の減少,低フィブリノゲン血症とフィブリン分解産物(FDP-E, D-dimer)の増加,PT/APTTの延長,高フェリチン血症,AST/LDHの著増,さらに骨髄にて活性化マクロファージによる血球貪食像を認め,HSVによるVAHSと診断した.HSV感染症に対して60 mg/kg/dアシクロビル(ACV),ビダラビン(Ara A)の投与,VAHSに対してパルミチン酸デキサメタゾン(Lipo-Dex)とシクロスポリンA (CyA)を併用し救命し得た.ACV長期投与にても血漿中のHSV-DNAの陰性化が得られず治療選択に苦慮した.新生児全身型HSV感染症ではVAHSに至ることも多く,抗ウイルス薬投与に加えVAHSに対する積極的な治療介入が重要であることが示唆された.
  • 津野 宏隆, 高橋 裕子, 吉田 祐志, 新井 憲俊, 中村 洋介, 八代 成子, 牧角 祥美, 山下 裕之, 金子 礼志, 狩野 俊和, ...
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 35 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
      生来健康な53歳の男性.2週間前から発熱,10日前から霧視,3日前から耳鳴,難聴,左手しびれ感を生じたため来院した.ぶどう膜炎,難聴,無菌性髄膜炎,高度の炎症反応(CRP 22 mg/dl)を認め全身性の炎症巣の存在が疑われた.神経伝導検査で多発単神経炎の所見,造影X線CT, PET/CTで大動脈壁の炎症が確認された.眼,耳症状と合わせCogan症候群と診断した.ステロイドパルス3日間の後,プレドニゾロン60 mg/日を3週間用い,2週毎に5 mg/日ずつ減量した.眼,耳症状,炎症反応は速やかに改善したが,末梢神経障害が残存したためγ-グロブリン大量静注療法(Intravenous immunoglobulin : IVIG, 20 g/日)5日間を施行した.Cogan症候群の聴力予後は一般に不良だが,FDG/PET/CTによる大血管炎の証明と早期診断治療により難聴への進行を阻止しえた症例であるため報告する.
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