日本臨床免疫学会会誌
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35 巻, 6 号
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総説
  • 田中 陽子, 浅原 弘嗣
    2012 年 35 巻 6 号 p. 447-454
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      MicroRNA(miRNA)は生物の発生やガンをはじめとした様々な疾患に関与していることが明らかになってきている.タンパク質の遺伝子配列をもたないSmall RNAにRNA干渉という役割があることが明らかとなり,生体内ではタンパク質の遺伝子配列内外にコードされたmiRNAが遺伝子発現調節に大きな役割を担っていることが明らかにされてきた.いくつかあるSmall RNA群の中でもmiRNAはとりわけ注目され,生合成から機能,標的遺伝子の解析が進められ,miRNAを利用した核酸創薬が開発されている.関節リウマチ(RA, rheumatoid arthritis)や変形性関節症(OA, osteoarthritis)についてもmiRNAの疾患への関与に対して多くの研究が進められており,RAではmiRNA-146a, 155, OAでは軟骨の発生も含めmiR-140の研究が多く報告されている.本稿では現在RAまたはOAにおいてどのようなmiRNAについて解析が行われているかをまとめた.
  • 石橋 大海, 下田 慎治
    2012 年 35 巻 6 号 p. 455-462
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      PBCは組織学的に小胆管の破壊をきたす慢性非化膿性破壊性胆管炎に特徴づけられる.しかし,PBCの成因は何か,なぜ女性優位であるのか,なぜ胆管が選択的に障害されるかなど未だ謎は多い.感染微生物あるいは化学物質xenobiotics等の刺激が,遺伝素因を有する個体においてPBC発症の誘因となることが想定される.胆管上皮細胞の組織障害は自己免疫反応により生じると考えられているが,病初期においては,自然免疫の活性化が鍵を握っている.胆管上皮細胞はToll様受容体(TLR)を含めて自然免疫システムを有し,PBCにおいてはPAMPsに対する過剰反応が胆管障害の原因とされる.胆管は,NK細胞を含む免疫細胞の遊走にあずかるフラクタルカイン(CX3CL1)と周囲環境をTh1シフトするいくつかのケモカインを産生し,ターゲットとなる胆管上皮細胞は,ケモカインによる誘導で浸潤した免疫細胞によって自己免疫反応を増強する.胆管周囲に集まる浸潤細胞の中でも,単球とNK細胞の役割は異なり,TLR4リガンドで刺激されたNK細胞は,TLR 3リガンドで刺激された単球によって産生されたインターフェロンαの存在のもと,自己胆管上皮細胞を破壊する.このような新らたに得られる知見で,PBC発症の不思議も明らかにされつつある.
  • 橋本 求, 三森 経世
    2012 年 35 巻 6 号 p. 463-469
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      IL-17を産生するヘルパーCD4 T細胞(Th17細胞)は関節リウマチ(RA)などの様々な自己免疫性疾患の病態に重要な役割を果たす.IL-17は,好中球やマクロファージ,線維芽細胞,破骨細胞などに作用し,慢性炎症を惹起し,骨破壊を促進することで関節炎に寄与する.近年の自然発症のRAモデルマウスを用いた研究により,TLRやC-type lectin receptor,補体,ATPなど様々な自然免疫の活性化が,マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に作用しIL-6やIL-23などのサイトカイン産生を介して,Th17細胞分化誘導を促し,自己免疫性関節炎を惹起するメカニズムが明らかとなってきた.ヒトRAにおけるTh17細胞の役割については未だ定まっていないが,自然免疫の活性化とTh17細胞の分化誘導は,少なくとも一部のRA患者において関節炎の発症にかかわっていると考えられる.これらの研究は,RAの発症メカニズムの解明やRA発症の予防,早期治療につながると考えられる.
  • 舟久保 ゆう
    2012 年 35 巻 6 号 p. 470-480
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus : SLE)は若年女性に好発する慢性炎症性の自己免疫疾患である.SLE患者は動脈硬化性心血管病による死亡率および罹病率が高く,画像診断では若年齢から潜在性動脈硬化が進んでいることも明らかになった.動脈硬化は血管内皮傷害を発端に炎症性細胞やメディエーターが関与した血管の慢性炎症と認識されており,SLEにおける動脈硬化発症・進展過程にも慢性炎症や免疫異常の関与が示唆されている.SLEの動脈硬化危険因子として脂質異常症,高血圧,耐糖能異常といった古典的心血管危険因子だけでなく,高CRP血症,高ホモシスチン血症,高疾患活動性,炎症性サイトカイン,血管内皮傷害,自己抗体や治療薬などが候補にあがっている.今後はSLE患者でも動脈硬化リスクを評価する必要があり,さらに動脈硬化の予防戦略と最適な治療法の確立が期待される.
  • 堀田 哲也
    2012 年 35 巻 6 号 p. 481-494
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
    ・抗リン脂質抗体症候群(APS)は抗リン脂質抗体(aPL)と呼ばれる自己抗体が産生され,動脈血栓症,静脈血栓症,習慣性流産などを引き起こす自己免疫疾患である.
    ・診断基準に含まれる抗リン脂質抗体には,抗カルジオリピン抗体,抗β2グリコプロテインI抗体,ループスアンチコアグラントがあるが,抗プロトロンビン抗体も新たな抗リン脂質抗体として注目されている.
    ・各種aPLを測定し,aPLの陽性の多寡を定量化することで,APSの診断のみならず患者のリスク評価を行うことが可能となった.
    ・APSの病態の解明が進むにつれて,新たな治療戦略として,p38MAPK, NF-κBなどのシグナル伝達物質の阻害薬,接着分子であるP-selectin,外因系凝固因子である組織因子,補体の活性化など制御する薬剤への注目も高まっている.
  • 北郡 宏次, 川端 大介
    2012 年 35 巻 6 号 p. 495-502
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      SLEにおいてB細胞は自己抗体産生,自己抗原の提示,サイトカイン産生や共刺激分子を介するT細胞活性化などを通じて病態に中心的な役割を果たしている.近年IL-10を産生しT細胞機能を負に制御するB細胞集団が同定され,SLEにおいてもこの制御性B細胞の異常が病態に関与する可能性が示唆されている.現在SLEに対して,B細胞を標的とする治療法であるB細胞除去療法やB細胞活性化制御薬に期待が集まっているが,その有効性,安全性は今後慎重に検証される必要がある.SLEの病因・病態は極めてヘテロであるため,患者個々の免疫異常に見合った治療法を選択できるような時代の到来が待たれる.
  • 中村 稔
    2012 年 35 巻 6 号 p. 503-510
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      原発性胆汁性肝硬変(PBC)の発症には,家族集積性や双生児による研究から強い遺伝的素因の関与が示唆されていたが,近年,欧米人を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により,PBC疾患感受性遺伝子としてHLA領域の遺伝子多型の他に,IL12/IL12Rシグナル伝達,TLR/TNFα-NFkBシグナル伝達,B細胞の成熟・分化,上皮細胞の分化・アポトーシスなどに関連する計21の遺伝子多型が報告された.本邦においても,国立病院機構肝ネットワーク研究班,厚生労働省難治性疾患克服研究事業“難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班に登録されたPBC 1,327名と健常者1,120名のDNA検体を用いて全国規模のGWAS共同研究を実施し,日本人PBCの発症に関わる新規疾患感受性遺伝子を2個(TNFSF15, POU2AF1)同定した.これらの遺伝子は欧米人で報告されたPBCの疾患感受性遺伝子(IL12A, IL12RB2, SPIB)とは異なっていたが,免疫応答においては同一のシグナル伝達系やリンパ球の分化・成熟の経路に位置しており,集団間で疾患感受性遺伝子が異なっていてもPBCの疾患発症経路は共通であることが示唆された.また,欧米で同定された21個の疾患感受性遺伝子の内10遺伝子(CD80, IKZF3, IL7R, NFKB1, STAT4, TNFAIP2, CXCR5, MAP3K7IP1, rs6974491, DENND1B)が日本人でもPBCの疾患感受性遺伝子であることが確認された.複数の集団での疾患感受性遺伝子の比較検討は疾患発症機構の解明のための重要な手がかりとなることが期待される.
  • 横田 俊平, 菊地 雅子, 野澤 智, 木澤 敏毅, 金高 太一, 門田 景介, 宮前 多佳子, 森 雅亮
    2012 年 35 巻 6 号 p. 511-519
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      発熱は炎症性疾患の存在を示唆するひとつの重要な徴候である.炎症病態の大半は感染により誘導されるが,多くの疾患の基盤に炎症が存在することも忘れてはならない.また,自己炎症症候群の病因の研究から,発熱のメカニズムへのアプローチがすすんだ.すなわち,炎症とは炎症性サイトカインのひとつの機能であり,発熱そのものもIL-1βとIL-6の協調的機能であることが基礎的研究から明らかになった.ところで,臨床場面では不明熱と診断される例は依然ある.基盤となる疾患としてリウマチ性疾患の鑑別が重要であるが,稀な感染症や良性・悪性腫瘍などもあり,最近ではFDG-PETの診断的有用性が強調されている.さらに,近年になりリウマチ性疾患に対する生物学的製剤の導入がリウマチ治療にパラダイム・シフトとも言うべき変化をもたらしたが,その臨床的効果と同時に,ひとつのサイトカインの阻害が炎症全体を終息に導くことから,炎症についての考え方に与えた影響は計り知れない.さまざまな炎症,炎症病態の諸相についてさらなる検討が必要である.
症例報告
  • 久野 春奈, 小谷 卓矢, 武内 徹, 和倉 大輔, 和倉 玲子, 兪 明寿, 槇野 茂樹, 森脇 真一, 花房 俊昭
    2012 年 35 巻 6 号 p. 520-525
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      症例は72歳男性.2008年11月より両肩・手指の関節炎が出現.手指関節のレントゲン検査で,傍関節骨粗鬆,関節裂隙狭小化,骨末端の嚢胞性変化を認め,手指関節の造影MRI検査で,造影された滑膜の増殖と骨融解の所見を得たため関節リウマチと診断した.関節リウマチに対し,2008年12月よりMTX 4 mg/週による治療を開始し,2009年2月よりAdalimumab(ADA)40 mg/2週を導入したところ,関節炎の著明な改善を得た.以後,関節リウマチは臨床的寛解を維持していたが,2010年4月より両手掌,足趾,四肢,鼠径部に水疱と鱗屑を伴う比較的境界明瞭な紅斑が出現した.皮膚生検により乾癬様皮疹と診断し,ADAを中止したところ4ヶ月の経過で皮疹は改善した.抗TNF剤による乾癬様皮疹は稀であるが,注意するべき副作用であり,文献的考察を加え報告する.
  • 堀内 清華, 石黒 精, 中川 智子, 庄司 健介, 永井 章, 新井 勝大, 堀川 玲子, 河合 利尚, 渡辺 信之, 小野寺 雅史
    2012 年 35 巻 6 号 p. 526-532
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      IPEX(immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, and X-linked)症候群は1型糖尿病や甲状腺機能低下症などの多発性内分泌異常,難治性下痢,易感染性などを主症状とし,転写因子forkhead box P3(FOXP3)遺伝子の変異による制御性T細胞の欠損や機能低下を原因とするX連鎖性の原発性免疫不全症である.1型糖尿病,甲状腺機能低下症に難治性下痢を合併し,IPEX症候群と考えられた12歳女児例を報告する.患児は10歳時から下痢が遷延化し,著明なるいそうが認められた.12歳時に行われた消化管内視鏡所見と病理所見からクローン病と診断され,5-アミノサリチル酸製剤に加えてプレドニゾロン,アザチオプリン,インフリキシマブによる治療を要した.その結果,便性の改善ならびに炎症反応の低下など一定の治療効果が認められたが,プレドニゾロンの減量により下痢が増悪して体重も減少し,治療法の選択に難渋した.患児は2歳時に1型糖尿病を,3歳時に甲状腺機能低下症を発症しており,難治性腸炎とあわせてIPEX症候群でみられる臨床像を呈していた.ただ,本症例ではCD4+CD25+ T細胞中のFoxp3の発現は低下していたがFOXP3遺伝子には異常を認めなかった.過去の報告においてFOXP3遺伝子に変異のないIPEX症候群例では易感染性を認める場合が多いが,本症例では反復する細菌感染は認められなかった.
Case Report
  • Mineto OTA, Kenchi TAKENAKA, Mafuyu TAKAHASHI, Kenji NAGASAKA
    2012 年 35 巻 6 号 p. 533-538
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル フリー
      We describe 3 siblings who suffered from marked eosinophilia with organ involvement. One sibling, who experienced cervical lymphadenopathy and peripheral neuropathy with eosinophilia (5,834 cells/μL) following bronchial asthma, was diagnosed with Churg-Strauss syndrome (CSS) according to the criteria of the American College of Rheumatology. Another sibling, who suffered from severe asthma with persistent polyarthritis and eosinophilia (2,496 cells/μL), was also diagnosed with CSS according to the criteria of the Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare. The remaining sibling, who had eosinophilic pleuritis with peripheral blood eosinophilia (699 cells/μL), did not fulfill the widely used criteria for CSS or hypereosinophilic syndrome (HES) ; however, he fit the newly proposed criteria for HES. Glucocorticoid treatment relieved their symptoms. Although the diagnoses and the criteria used for diagnosis differed between the siblings, all 3 patients showed common features such as eosinophilia with organ involvement that required treatment, indicating the possibility of familial eosinophilia (FE). Furthermore, the clinical features observed differed substantially from those of previously reported FE patients, therefore, these 3 siblings may be affected by a type of FE distinguishable from those previously described.
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