日本臨床免疫学会会誌
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36 巻, 1 号
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訂正記事
総説
  • 岩田 恭宜, 古市 賢吾, 和田 隆志
    2013 年 36 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      慢性腎臓病から末期腎不全に至り,維持透析を必要としている患者は依然として減少しない.慢性腎臓病の進展機序を考えるとき,慢性炎症から線維化へ至る過程において,炎症促進系因子,免疫抑制系因子が複雑に関与しながら病態を形成しているものと考えられる.それらの因子の中で,骨髄由来細胞に着目すると,これまでの多くの報告が,炎症性マクロファージ(Mφ)をはじめとする炎症促進系細胞に関するものであった.近年,Mφの分画に,炎症促進系(M1)のほかに,免疫抑制系(M2)の分画が存在することが明らかとなり,種々の臓器において炎症の抑制,組織の修復に関与していることが報告されている.また新たな細胞分画であるMyeloid derived suppressor cell(MDSC)も同定され,その免疫抑制能に関しても検討がなされている.本稿では,これら免疫抑制性細胞の進行性腎障害における意義について,概説する.
  • 澤 新一郎
    2013 年 36 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      自然リンパ球は抗原受容体を持たず,迅速なサイトカイン産生性を持つリンパ球として近年概念が提唱されたリンパ球群であり,NK細胞,NH細胞,RORγt陽性細胞に分類される.マウス粘膜組織に存在するRORγt陽性自然リンパ球はCCR6+c-kithighIL-7Rαhigh細胞群と,CCR6NKp46+細胞群に大別される.前者はリンパ組織の形成機能を持ち,後者はIL-22を産生し,腸管上皮バリア機構の維持に寄与する.ヒト胎児の腸管,扁桃腺,リンパ節においても,NKp44陰性およびNKp44陰性陽性RORγt陽性自然リンパ球が存在する.また,クローン病患者腸管組織におけるRORγt陽性自然リンパ球の増加が確認されており,病態形成におけるRORγt陽性自然リンパ球機能が注目されている.
  • 桑名 正隆
    2013 年 36 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      強皮症(SSc)では線維化病変に加えてレイノー現象など末梢循環障害を高率に伴うが,そのメカニズムは明らかでない.血管生物学の進歩により,骨髄に存在する血管内皮前駆細胞(EPC)が末梢血に動員され,傷害血管にホーミングして成熟血管内皮へと分化する脈管形成の機転が成人の血管修復に重要な役割を果たすことが注目された.私たちはSSc患者末梢血中のEPCが減少し,血管内皮への分化能が障害されていることを報告し,SSc血管病変の形成機序として「EPC異常による血管修復不全」という新たな病態概念を提唱した.その後,EPCは多様な細胞集団であることが明らかにされ,それまでの研究成果の見直しが必要となった.私たちが解析していた細胞は「真のEPC」ではなく,血管新生促進血球系細胞(PHC)中のCD34+CD133+CD309+CD45dimCD14未分化PHCで,その異常が血管病変形成の要因のひとつであることは間違いない.一方,CD34dimCD133CD309dimCD45+CD14+単球系PHCはSSc末梢血で増加し,血管新生促進活性,線維芽細胞への分化能が高く,むしろ線維化病態への関与が示された.これらEPC異常の是正はSScの末梢循環障害に対する新たなストラテジーとなる可能性があるとともに,その機序の追究はSSc病態解明のブレイクスルーとなることが期待される.
  • 阿部 淳, 松田 明生
    2013 年 36 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      川崎病におけるIVIG療法の効果について,その詳細な機序は未だ不明な点が多い.初回IVIG療法に不応の患者も20~30%いるので,冠動脈瘤の発症を予防するためには早期に治療反応性を予測する必要がある.私共は,DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイリングの結果から,川崎病急性期には好中球数が増加するのみならず,polycythemia rubra vera 1など顆粒球の分化段階に特異的な遺伝子を発現して質的にも異なることを明らかにした.これに対応して血清中のG-CSF濃度も,IVIG不応群では反応良好群に比べて有意に高く,これらの因子が治療反応性の予測マーカーになると考えられた.さらに,IVIG療法で用いられる濃度のIgGがTNF-α刺激を受けたヒト冠動脈血管内皮細胞に直接作用して,G-CSFやIL-6などのサイトカイン産生発現を強く抑制することを明らかにした.このIgGの抗炎症作用は,これらのサイトカインの転写活性化因子であるC/EBP-δの産生抑制と並行してみられることから,血管内皮細胞における炎症反応増幅機構の抑制に関与している可能性が示唆された.
第40回総会ポスター賞受賞記念論文
総説
  • 花見 健太郎, 中野 和久, 田中 良哉
    2013 年 36 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    神経系及び神経伝達物質が免疫系のみならず,骨代謝へも影響を与えている事が近年報告されている.代表的な自己免疫性炎症疾患である関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis ; RA)の罹患関節では破骨細胞による骨吸収亢進の病態が形成されるが,中枢神経障害を合併するRAでは麻痺側の骨破壊抑制が知られている.しかしながら,神経系と骨破壊病態におけるメカニズムに関しては十分には解明されていない.中枢神経における主要な神経伝達物質であるドパミンは,D1~D5のサブタイプを持つ7回膜貫通型の受容体を介してシグナルを伝達する.我々はこれまでにヒト単球由来樹状細胞でのドパミン合成・貯蔵とナイーブT細胞への放出機構とTh17分化偏向の機構,RA滑膜においてはD1様受容体阻害がIL6-Th17軸を抑制して関節破壊抑効果を示す事などを解明してきた.本稿では神経系と骨代謝との関連について概説し,ドパミン受容体シグナルによるヒト破骨細胞への直接的な影響について検討を行った結果も報告する.
  • 岩崎 由希子, 藤尾 圭志, 岡村 僚久, 柳井 敦, 山本 一彦
    2013 年 36 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      IL-10は炎症・自己免疫応答を抑制するサイトカインとして知られており,近年報告が相次いでいる誘導性制御性T細胞(Treg)の抑制能の一端を担うサイトカインとしても重要である.Type1 regulatory T (Tr1)細胞は,IL-10産生を特徴とするIL-10産生制御性T細胞の中でも代表的なものである.Tr1を特徴づける細胞表面マーカーや分化誘導機構については未解明の部分も多いが,近年IL-27がT細胞にIL-10産生を誘導し,Tr1を誘導し得るサイトカインとして注目されてきている.また,既に我々が報告しているCD4+CD25lymphocyte activation gene (LAG-3)+ Treg(以下LAG3+ Treg)は末梢で誘導されるTregであり,やはりIL-10がその制御活性に重要である.LAG3+ Tregにおいて,T細胞にanergyを誘導する働きをもつ転写因子Egr-2の発現亢進が確認され,Egr-2のCD4+ T細胞への強制発現によりLAG-3発現およびIL-10産生が付与されることを我々は見出しており.Egr-2がLAG3+ Tregの抑制能付与において重要な働きをする可能性が示唆されている.本稿では,Tr1およびIL-27誘導性IL-10産生に関する知見について概説し,LAG3+ Tregについて紹介すると共に,自己免疫疾患の新規治療応用への可能性について考察する.
症例報告
  • 古川 加奈子, 前島 悦子, 一ノ瀬 正和
    2013 年 36 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は34歳の女性.1999年8月,23歳時に朝のこわばり,両膝関節および右第2, 3指metacarpophalangeal joint(MP)関節の腫脹および圧痛,C-reactive protein(CRP)上昇,rheumatoid factor(RF)高値より関節リウマチ(RA)と診断された.ブシラミン(BUC)300 mg/日の内服で寛解を維持していたが,26歳時に関節痛が増悪し,メトトレキサート(MTX)8 mg/週が追加投与され,症状は軽快した.その後,BUCの処方は中止となった.31歳時に両膝関節,両手関節,右第2, 3指MP関節腫張および圧痛が出現し,CRPが5.44 mg/dlと上昇し,RAの活動性が亢進した.インフリキシマブの併用が3 mg/kgで開始され,RAはコントロール良好となった.出産の約2年前にあたる32歳の時に,挙児希望のためインフリキシマブをエタネルセプト25 mg/回×2回/週に変更した.変更後も寛解が維持されたので,MTXを中止しエタネルセプト単独療法とした.翌年3月に妊娠を確認し,妊娠中のRAに対する治療はエタネルセプト継続投与とした.この間,RAのコントロールは良好で,同年10月に3192 gの男児を出産した.出産児のApgar Scoreは良好であった.生物製剤投与下での計画的な妊娠出産は今までに報告が少なく,貴重な症例と思われ報告する.
  • 永嶋 早織, 野澤 智, 木澤 敏毅, 菊地 雅子, 宮前 多佳子, 今川 智之, 稲葉 裕, 里 龍晴, 橋本 邦生, 相田 典子, 横田 ...
    2013 年 36 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      発熱と強い下肢痛筋痛を伴った慢性再発性多発性骨髄炎の1例を経験した.症例は11歳1か月の男児.10歳5か月頃から左鎖骨の自発痛を繰り返し認めた.10歳11か月時に発熱,右第1趾の腫脹・疼痛,下肢の疼痛が出現した.血液検査では筋原性酵素の上昇はなく,MRI検査から多発性筋炎が疑われた.筋生検では筋間質に炎症細胞の浸潤を認めた.11歳時より左鎖骨部の腫脹,皮膚の発赤が出現し,MRI検査にて骨髄炎が疑われた.左鎖骨の骨生検と細菌培養を行い,病理組織像は慢性炎症性変化で,細菌培養は陰性であった.FDG-PET/CTにより左鎖骨を含む多発性の骨病変を認めたことから,慢性再発性多発性骨髄炎(chronic recurrent multifocal osteomyelitis ; CRMO)と診断した.FDG-PET/CTでは大腿・下腿の筋にも集積を認め,画像的に筋炎の併発と診断した.非ステロイド性抗炎症薬とビスホスホネートにより症状は軽快したが,軽度の炎症反応が残存した.慢性再発性多発性骨髄炎に間質性筋炎を合併した報告はなく,症例の蓄積が必要である.
Case Report
  • Hirokazu TAKAOKA, Atsushi HASHIMOTO, Shinichi NOGI, Kanako IWATA, Hide ...
    2013 年 36 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
      A 46-year-old man, who had had sinusitis, developed bilateral omalgia, petechiae on his lower extremities and a congested right eye. A blood test detected elevated serum C-reactive protein level. Computed tomography incidentally found an acute lesion of thalamic hemorrhage without neurological symptoms and no specific therapy was given at the time. Thereafter, he developed vertigo, vomiting and pneumonia for which antibiotics were ineffective. He was referred and admitted to our hospital. Further, aural and renal lesions, and presence of serum proteinase 3-antineutrophil cytoplasmic antibody (PR3-ANCA) confirmed his diagnosis of granulomatosis with polyangiitis (Wegener's) (GPA). With corticosteroid and cyclophosphamide therapy, his symptoms disappeared in two months along with faded PR3-ANCA. Afterward he showed neither new cerebral lesion nor symptom. This is a rare case of GPA manifested with asymptomatic intracerebral hemorrhage. It should be noted that GPA could cause various manifestations in central nervous system such as a fatal or an asymptomatic hemorrhagic lesion, which might respond to immunosuppressive therapy.
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