日本臨床免疫学会会誌
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37 巻, 6 号
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総説
  • 河合 利尚
    2014 年 37 巻 6 号 p. 437-446
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      慢性肉芽腫症は,活性酸素産生障害により易感染性や肉芽腫をきたす原発性免疫不全症として知られている.近年,NADPH oxidase複合体で生成される活性酸素の多岐にわたる生理作用が明らかになり,本疾患では肉芽腫形成に代表される過剰炎症の病態の理解に繋がった.現在,過剰炎症の中心的役割を果たしている炎症性サイトカインを標的とした治療の開発が試みられている.モノクローナル抗体を用いた抗サイトカイン療法の安全性には課題が残されたが,今後も,細胞内シグナルの制御など分子免疫学の知見に基づいた治療法が検討されることになる.また,唯一の根治療法である造血幹細胞移植は,移植技術の進歩により治療成績が向上したが,HLA適合ドナーの存在が不可欠である.遺伝子治療は自己造血幹細胞を使用するため,欧米を中心にドナー不在の症例に対して臨床応用が拡大し,既に120例を超える原発性免疫不全症で行われた.この背景には,重篤な有害事象である遺伝毒性の機序が少しずつ明らかになり,遺伝子治療技術へ反映されていることもあげられる.今後,多施設国際共同臨床試験により大規模な臨床研究も準備されている.
  • 和田 泰三
    2014 年 37 巻 6 号 p. 447-453
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      遺伝子変異のreversionとは,ある疾患の原因遺伝子において,遺伝子変異が正常の配列に戻るか,あるいはもとの変異を代償するような変異が起こることである.近年,reversionによる体細胞モザイク(revertant somatic mosaicism)の存在が,さまざまな遺伝性疾患で報告されている.原発性免疫不全症においても報告数は増加し,さらに同一症例で異なる複数のreversionが検出される場合も報告され,reversionは決して稀な現象ではないと考えられるようになった.臨床的にreversionが注目されるのは,遺伝子変異の修復されたrevertant細胞が増殖優位性を示し,臨床症状の改善あるいは予想外の変化をもたらす可能性があるためである.またreversionは,異なった細胞系列において遺伝子変異が回復した場合に生体がどのような影響を受けるか解析するよいモデルとなる.本稿では,原発性免疫不全症におけるrevertant somatic mosaicismの最近の知見を概説し,その臨床的意義について論じたい.
  • 吉藤 元, 木下 秀之
    2014 年 37 巻 6 号 p. 454-461
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      膠原病に合併する肺動脈性肺高血圧症(PAH)は予後不良であり,早期からの治療介入が望まれる.ボーダーラインPAH(平均肺動脈圧21~24 mmHg)は「PAH予備軍」を選別するための概念である.ボーダーラインPAHへの治療介入の是非について議論の余地があるが,原因疾患が強皮症である場合には,予後が特に不良であり,また,強皮症に合併するボーダーラインPAHの42~55%が数年で確定PAHに移行するため,治療介入の必要性が示唆される.ただし強皮症はしばしば肺病変・左心病変・肺静脈病変を合併し,肺血管拡張薬投与の障壁となりうる.ボーダーラインPAHへの治療介入のエビデンスはほとんどなく,今後の臨床試験が望まれる.
  • 大村 浩一郎, 日和 良介, 荒瀬 尚
    2014 年 37 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      自己免疫疾患において自己抗体産生機序はまだまだ不明な点が多い.何故自己抗原に対する抗体ができてしまうのか,また何故DNAの様な非ペプチドに対する抗体ができるのか,十分な説明は現在の免疫学の知識では困難である.最近,我々は新たな自己抗体産生機序を報告した.すなわち,正しい立体構造をとれていない(ミスフォールドした)タンパクが小胞体の中でMHC class IIと結合し,タンパクのまま細胞表面に提示されるのである.提示された抗原はT細胞ではなく,抗原特異的B細胞を直接刺激する.これまでにβ2ミクログロブリンを欠いたHLA class I分子,IgG heavy chain(IgGH),mutationを入れたHELに関してMHCクラスII分子によるミスフォールドタンパクの抗原提示が示されている.さらに,IgGHの抗原提示においては関節リウマチの発症に感受性のあるHLA class IIは効率的にIgGHを細胞表面に提示しリウマトイド因子で認識されるが,感受性のないHLA class IIはIgGHを細胞表面に提示できなかった.このことから,疾患感受性HLAは自己抗原ペプチドとの親和性ではなく,ミスフォールドした自己抗原との親和性を反映しているという新たな可能性も示唆された.新たな自己抗体の産生機序として注目される.
  • 宮本 勝一
    2014 年 37 巻 6 号 p. 468-474
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      視神経脊髄炎(NMO)は,抗アクアポリン4(AQP4)抗体との関連が見出されて以来,多発性硬化症との病態の違いが明らかとなった.これにより,新たに臨床疫学調査が実施され,我が国のNMO関連患者数は約4400名と推計された.抗AQP4抗体陰性NMOの中にmyelin-oligodendrocyte glycoprotein(MOG)に対する抗体陽性例が存在することが報告され,この患者群は視神経炎の頻度が高く,治療反応性が良いことが特徴である.また,近年の研究成果により,NMOに対する新たな治療法が試みられており,抗IL-6療法や抗補体療法など他疾患に臨床応用されている治療法を用いた難治性NMOに対する治療が始まっている.
  • 浅野 善英
    2014 年 37 巻 6 号 p. 475-487
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/15
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症は血管障害と皮膚および内臓諸臓器の線維化を特徴とする膠原病で,その発症には免疫異常が関与している.その病因はいまだ不明であるが,本症は遺伝因子と環境因子の相互作用により発症する多因子疾患と考えられており,特に双生児研究の結果から環境因子の重要性が示唆されている.エピジェネティック制御で発現が変化している遺伝子は環境要因の影響を受けた疾病因子と考えられるが,転写因子Fli1は強皮症皮膚線維芽細胞において同機序により発現が抑制されており,その異常は線維芽細胞においてI型コラーゲンの発現を亢進させるのみでなく,血管内皮細胞やマクロファージにおいても強皮症独特の形質変化を誘導する.一方,転写因子KLF5は強皮症皮膚線維芽細胞においてエピジェネティック制御により発現が抑制されており,同細胞におけるCTGFの発現亢進に深く関与している.これらの転写因子の二重ヘテロ欠損マウスは4週齢で炎症・自己免疫,4-8週齢で血管障害,8-12週齢で皮膚線維化を生じ,間質性肺疾患や肺動脈性肺高血圧症も自然発症することから,これらの転写因子の発現抑制は強皮症の病態形成に極めて重要と考えられる.同マウスの病態および個々の転写因子が様々な細胞の形質に及ぼす影響を解析することにより,強皮症の病態理解と治療開発が進むことが期待される.
症例報告
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