日本臨床免疫学会会誌
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38 巻, 6 号
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総説
  • 田中 敏郎
    2015 年 38 巻 6 号 p. 433-442
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
      インターロイキン6(IL-6)は,多彩な作用を有するサイトカインで,病生物の排除や創傷治癒に役割を果たす.しかし,その過剰なまた持続的な産生は,炎症性疾患の発症や進展に関与することが示され,ヒト化IL-6受容体抗体トシリズマブが開発された.臨床試験での有効性,安全性評価を踏まえ,現在,トシリズマブは慢性炎症性疾患である関節リウマチ,若年性特発性関節炎,キャッスルマン病に対する治療薬として使用されている.また,世界で進められている臨床研究や試験により,IL-6阻害療法は,他の慢性炎症性疾患のみならずサイトカインストームを呈する急性全身性炎症性疾患に対しても有効な治療法となる可能性がある.
  • 園本 格士朗, 田中 良哉
    2015 年 38 巻 6 号 p. 443-447
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ治療はサイトカインを標的とした生物学的製剤の登場で劇的に進歩した.近年では低分子化合物である分子標的治療薬が精力的に開発され,Jak阻害剤トファシチニブが本邦でも使用可能となっている.トファシチニブは複数のサイトカインシグナル伝達を抑制し,高い臨床効果をもたらす一方,これまでの生物学的製剤と異なった副作用プロファイルを呈する.本稿では,特に帯状疱疹に関し,国内外の最新知見を紹介する.
  • 辻 典子, 閻 会敏, 渡邉 要平
    2015 年 38 巻 6 号 p. 448-456
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
      腸管免疫学や腸内細菌学が近年のトレンドとなり,暮らしへの応用が模索されている.本稿では,優勢な小腸常在菌である乳酸菌の核酸や,真菌を構成するβ-グルカンなど微生物成分が,食品成分としても腸管免疫に働きかけ,抗炎症機能や抗原特異的免疫応答の増強機能に直結する例を示す.乳酸菌は2本鎖RNAを豊富に含み,樹状細胞のエンドソームに存在するToll様受容体TLR3を刺激してインターフェロンβの産生を誘導する.さらに,このインターフェロンβの抗炎症機能がはたらき腸炎を予防する.TLR3遺伝子欠損マウスや無菌マウスなど腸内環境因子から適切な自然免疫刺激を受けない個体では,生体恒常性維持機能が未成熟となり,易感染や炎症の増悪が観察される.しかしこの可塑性は一方で,腸管を介した自然免疫シグナルの導入により,生理機能を改善できる可能性も示している.このような背景から,小腸における自然免疫シグナルの受容と伝達機構の解明は,健康維持や疾患の予防・治療技術の可能性を拡げると期待される.
原著
  • 奥 健志, 村島 温子, 大村 一将, アメングアル オルガ, 坊垣 暁之, 堀田 哲也, 保田 晋助, 金子 佳代子, 中西 功, 野澤 ...
    2015 年 38 巻 6 号 p. 457-465
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
    背景:血栓症と妊娠合併症は抗リン脂質抗体症候群(APS)の二大病態である.APS血栓症の診療は膠原病内科医や血液内科医が行うことが多いが,APS関連妊娠合併症の診療も抗リン脂質抗体(aPL)の測定・解釈等内科医の助言が求められることが多い.
    目的:本邦における抗リン脂質抗体症候群関連妊娠合併症の診断・治療への内科医の関与について調査する.
    方法:厚生労働省科学研究費補助金分担研究班にて,全国550名の日本リウマチ学会評議員及び日本血栓止血学会評議員に質問表を送付し結果を解析した.
    結果:有効回答157/550通(28.5%)を得た.APS合併妊娠例は53/157施設(33.8%)で118.7例/年(2.24例/施設・年)が診断されていた.aPLの測定状況は,抗カルジオリピン抗体もしくはβ2GPI依存性抗カルジオリピン抗体のいずれか1種以上とループスアンチコアグラント1種以上を測定している施設が128/157施設(81.5%)であったが,分類基準で定義されるaPLを全て測定した施設は2/157施設(1.3%)で殆どの施設で検査施行が不十分であった.治療は,33.1%042.3%の施設が方針を産科に委ねると回答した.治療法・期間に一定の見解を得なかった.
    結論:内科医が診療に関わるAPS関連妊娠合併症は比較的少数であった.未診断例が多いと考えられるが,その一因に不十分なaPL検査の施行が挙げられる.APS合併妊娠の治療方針は産科医に委ねるという回答が多く,内科系の医師も診療に参加しやすい指針の整備が望まれる.
  • 末松 栄一, 宮村 知也, 中村 真隆, 樋口 茉季子, 森 俊輔, 岩永 智陽, 郭 悠, 高濱 宗一郎, 南 留美, 山本 政弘
    2015 年 38 巻 6 号 p. 466-472
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
      大血管炎は巨細胞性動脈炎(GCA)と高安動脈炎に分類され,GCAはさらにcranial GCAとlarge vessel GCAの2つに分けられて議論されているが,本邦での検討は少ない。2006年1月より2015年3月まで当科にて診療を行ったGCA24例の臨床像を検討した.性別は男性6例,女性18例,平均年齢69.8歳(53~85歳)であった.GCAは,病変が側頭動脈に限局するcranial GCA(9例),側頭動脈と大動脈に病変が及ぶ全身型GCA(3例),側頭動脈には病変が無く大動脈のみに病変を認めるlarge vessel GCA(12例)の3群に分けられた.HLA-class1の検索ではHLA-A24をcranial GCA 1例,全身型GCA 3例,large vessel GCA 7例に認めた.HLA-B39はlarge vessel GCA 4例,HLA-B52はcranial GCA 1例,全身型GCA 1例,large vessel GCA 6例に認めた.抗リン脂質抗体に関しては抗カルジオリピン抗体IgG陽性を7例,抗カルジオリピンβ2GPI 抗体陽性を7例,ループスアンチコアグラント陽性を1例に認めた.病型別ではcranial GCA 4例,全身型GCA 2例,large vessel GCA 3例に陽性であり,血栓症との相関は認めなかった.GCAはHLA-class1発現の検索からは高安病と同じ遺伝的背景を持つことが推察され,血清学的に抗リン脂質抗体の陽性率が高いことが示された.またlarge vessel GCAは統一された診断基準がなく,今後の課題と考えられた.
症例報告
  • 安部 武生, 東 直人, 河野 友彰, 羽尾 裕之, 廣田 誠一, 荻田 千愛, 横山 雄一, 古川 哲也, 吉川 卓宏, 日野 拓耶, 斎 ...
    2015 年 38 巻 6 号 p. 473-479
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/27
    ジャーナル フリー
      症例は39歳,男性.血清陰性関節リウマチとしてメトトレキサートおよびプレドニゾロンで加療されるも治療抵抗性であった.経過中に心窩部痛,下痢,下血が出現し,当科入院.消化管内視鏡検査ではびまん性の粘膜障害が確認され,胃粘膜および結腸粘膜の病理組織学的検査によりAAタイプの消化管アミロイドーシスと診断した.一方,入院時の腹部CTで仙腸関節に関節裂隙の狭小化を認めた.腰椎可動域制限などの臨床像とMRIで仙腸関節炎が確認されたことにより,改訂ニューヨーク診断基準(1984年)に基づき強直性脊椎炎(AS)と診断した.絶食による腸管安静と抗生剤により消化器症状は改善したが,炎症反応は残存し,関節症状が悪化した.アダリムマブ(ADA:40mg/2週)を開始したところ,速やかに関節症状は改善し,炎症反応も陰性化した.6か月後に施行した下部消化管内視鏡検査では検索し得た範囲内では粘膜障害は改善し,病理組織学的検査でもアミロイド沈着は消失していた.ASに消化管アミロイドーシスが合併することは稀であり,確立した治療法はないが,ADAが有効である可能性があると考えた.
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