背景:血栓症と妊娠合併症は抗リン脂質抗体症候群(APS)の二大病態である.APS血栓症の診療は膠原病内科医や血液内科医が行うことが多いが,APS関連妊娠合併症の診療も抗リン脂質抗体(aPL)の測定・解釈等内科医の助言が求められることが多い.
目的:本邦における抗リン脂質抗体症候群関連妊娠合併症の診断・治療への内科医の関与について調査する.
方法:厚生労働省科学研究費補助金分担研究班にて,全国550名の日本リウマチ学会評議員及び日本血栓止血学会評議員に質問表を送付し結果を解析した.
結果:有効回答157/550通(28.5%)を得た.APS合併妊娠例は53/157施設(33.8%)で118.7例/年(2.24例/施設・年)が診断されていた.aPLの測定状況は,抗カルジオリピン抗体もしくはβ
2GPI依存性抗カルジオリピン抗体のいずれか1種以上とループスアンチコアグラント1種以上を測定している施設が128/157施設(81.5%)であったが,分類基準で定義されるaPLを全て測定した施設は2/157施設(1.3%)で殆どの施設で検査施行が不十分であった.治療は,33.1%042.3%の施設が方針を産科に委ねると回答した.治療法・期間に一定の見解を得なかった.
結論:内科医が診療に関わるAPS関連妊娠合併症は比較的少数であった.未診断例が多いと考えられるが,その一因に不十分なaPL検査の施行が挙げられる.APS合併妊娠の治療方針は産科医に委ねるという回答が多く,内科系の医師も診療に参加しやすい指針の整備が望まれる.
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