日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
40 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 岩田 洋平, 赤松 浩彦, 長谷部 祐一, 長谷川 靖司, 杉浦 一充
    2017 年 40 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      創傷治癒は人体が外界からの脅威を防御する上で,重要なプロセスである.骨髄幹細胞や脂肪組織由来幹細胞が新たな治療ターゲットとして近年期待が高まっているが,より有用で新しい治療薬の開発のためには皮膚内在性幹細胞の創傷治癒における役割の詳細な解明が不可欠である.p75NTR(CD271)は皮膚幹細胞のマーカーとして知られており,マウス皮膚創傷治癒モデルを用いて,表皮および真皮幹細胞の動態を免疫染色,Realtime RT-PCR,FACSでの解析を行ったところ,表皮および真皮のCD271+細胞は創傷治癒過程の進行に伴い増殖し,CD271細胞と比較すると様々なサイトカイン,細胞成長因子を産生することで創傷治癒に重要な役割を果たしていることが示唆された.実際に慢性潰瘍患者の創傷部の皮膚では,表皮・真皮CD271+細胞が健常人と比較して著明に減少していることが明らかになった.本総説では,皮膚内在性幹細胞の創傷治癒過程での役割に焦点を当て,概説する.

第44回総会ポスター賞受賞記念論文
  • 竹島 雄介, 岩崎 由希子, 岡村 僚久, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2017 年 40 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      細胞の代謝制御の重要性は,癌細胞においてエネルギー産生を解糖系に依存する現象がWarburg効果として報告されたことに始まる.近年,免疫担当細胞における代謝の制御が細胞の分化や機能において鍵となるという知見が蓄積されつつあり,免疫担当細胞が休止状態から活性化状態に入る際には,酸化的リン酸化に依っていたエネルギー産生から,解糖系に依存したエネルギー産生へと大きな代謝状態の変化を要することが明らかとなっている.特にT細胞においては,ナイーブT細胞からエフェクターT細胞への分化過程における代謝制御の研究がより詳細に解明されており,免疫代謝の分野では最も研究が進んだ分野となっているが,B細胞や骨髄球系の細胞においても特徴的な代謝制御が明らかにされつつある.現在,全身性エリテマトーデスを始めとする自己免疫疾患において,免疫担当細胞における代謝変調は慢性的な免疫系の活性化の結果としてばかりでなく,疾患の引き金としても極めて重要であると考えられている.本稿では,全身性エリテマトーデスにおける代謝制御について,T細胞およびB細胞を中心に概説し,病態と如何に関わっているか,更には将来的な治療ターゲットの可能性について考察する.

  • 荻田 千愛, 松井 聖, 岸田 大, 矢崎 正英, 中村 昭則, 賀来 智志, 槇野 秀彦, 田所 麗, 東 幸太, 壺井 和幸, 谷 名, ...
    2017 年 40 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

    背景:家族性地中海熱(familial mediterranean fever = FMF)とは,持続時間が1~3日と比較的短い周期性発熱と無菌性の漿膜炎を主徴とする単一遺伝性自己炎症性疾患である.地中海沿岸地域で最も有病率が高いが,本邦でも責任遺伝子であるMEFV(Mediterranean fever)の同定による遺伝子解析にて,近年より多数の症例が報告されている.当科の外来でも短期間の発熱や腹痛発作を繰り返す症例においてはFMFの診断加療を行なっている.対象:自己免疫性疾患,感染症,悪性腫瘍を除外した上で周期性発作と考えられる症状を繰り返した症例を対象とした.いずれも補助診断として遺伝子解析を施行している.結果:7例の症例がTel-Hashomer criteria基準を満たし,且つMEFV遺伝子変異が検出された.全員が女性であり,半数が月経時に発作症状を認めた.コルヒチンの使用量には差があるも,いずれも効果を得ている.結論:周期性のある症状や,不明熱と称される症例においては除外診断をした上で,FMFを疑い,コルヒチンの効果判定並びに遺伝子解析を行う必要性がある.

  • 廣田 智哉, 坪井 洋人, 高橋 広行, 浅島 弘充, 太田 賢, 若佐 雄也, 松本 功, 高岩 文雄, 住田 孝之
    2017 年 40 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

    目的:Glucose-6-Phosphate-Isomerase(GPI)のAltered Peptide Ligand(APL)を米穀に発現させ,GPI誘導関節炎(GIA)に対する経口予防投与の有効性および抑制機序を検討することを目的とした.方法:GPIペプチドのT細胞エピトープのアミノ酸配列の一部を置換したAPLコンストラクトを遺伝子導入してAPL12発現米(APL12-TG)を作成した.GIAを誘導前にAPL12-TGを経口予防投与し,GIAマウスにおける関節炎の重症度・発症率および足関節の組織所見,血清抗GPI抗体産生および鼡径リンパ節のmRNA発現,脾臓・鼡径リンパ節・腸間膜リンパ節のIL-17産生および脾臓CD4+T細胞のmRNA発現,脾臓CD4+CD25+T細胞のFoxp3発現およびGITR発現を評価し,非遺伝子導入米(Non-TG)と比較した.結果:GPIペプチドのAPLコンストラクトを遺伝子導入したキヌアカ米でAPLペプチドの発現が確認された.Non-TGと比較して,APL12-TG群では関節炎の重症度,足関節の炎症細胞浸潤,血清抗GPI抗体産生,鼡径リンパ節のBAFF mRNA発現,脾臓・鼡径リンパ節のIL-17産生が有意に抑制された.さらに,脾臓CD4+T細胞のGITR mRNA発現,脾臓CD4+CD25+T細胞のFoxp3発現・GITR発現が有意に上昇した.結論:APL12-TGの経口予防投与により,脾臓の制御性T細胞におけるFoxp3発現・GITR発現が上昇し,IL-17産生および抗GPI抗体産生の抑制を介してGIAが抑制された.

  • 宮寺 浩子, 野口 恵美子, 溝上 雅史, 徳永 勝士
    2017 年 40 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      ヒト白血球抗原(human leukocyte antigens(HLA))遺伝子は様々な免疫系疾患と非常に強く関連することが知られている.近年,HLAの解析技術の進展およびHLAの遺伝子型推定法(imputation)の開発により,HLAと疾患との関連をより大規模に行うことが可能となりつつある.一方,HLAが疾患と関連する機序については十分に解明されていない点が多く残されており,今後,より多数のHLAアリルの機能性を明らかにする必要がある.その一つの試みとして著者らはHLAクラスII結合ペプチドの探索および結合性の評価を多数のアリルについて行うためのアッセイ系を開発している.本稿では,その研究背景と測定法の概要を紹介する.

  • 宮本 昇, 金関 貴幸, 廣橋 良彦, 塚原 智英, 菊池 泰弘, 佐藤 昇志, 鳥越 俊彦
    2017 年 40 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      がん幹細胞(cancer-stem cell or cancer-stem like cell, CSC)の存在が様々な腫瘍で確認されている.がん組織における割合は極めて少ないものの,これらの細胞は生体内における腫瘍増殖の起始点となり,再発・転移の原因として注目されている.CSCはがん根治を考えるうえで欠かせない細胞成分であるが,non-CSCに比べ化学療法や放射線療法さらに分子標的薬といった治療法に耐性を示すことが問題であった.当研究室では,CSCを標的とした免疫応答解析のために,これまで抗原性に優れたがん幹細胞特異抗原を複数同定している.ペプチド誘導した細胞傷害性T細胞(CTL)はいずれのケースでもin vivoモデルで効果的に腫瘍増殖を抑制する.即ち,CTLはCSCを識別可能であり,同時にCSCを標的とした効果的ながん免疫治療の開発が期待できる.本稿では明らかとなってきたがん幹細胞免疫応答に焦点をあて,CSCの単離法とCTL抗原の同定について概説する.

  • 夏本 文輝, 庄田 宏文, 藤尾 圭志, 大津 真, 山本 一彦
    2017 年 40 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      多能性幹細胞は無限の自己増殖能と個体を形成するすべての細胞種へ分化可能な多分化能を有する幹細胞である.人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いることで,ヒト胚性幹細胞(ES細胞)に関連する倫理的な問題点を克服し,多能性幹細胞を用いた難治性疾患の病態解析や治療薬開発への応用が可能となった.iPS細胞から分化させた細胞によるin vitroにおける疾患モデルは,治療や環境因子に影響されない経時的解析が可能であり,また容易に採取不能な細胞を反復して実験可能となり,ヒト患者由来細胞における多様な研究を可能としている.単一遺伝子の異常による疾患におけるiPS細胞研究は行われているが,著者らは多因子疾患である自己免疫疾患の病態解明へのiPS細胞を用いたアプローチを検討している.著者らは全身性エリテマトーデス(SLE)姉妹例末梢血からiPS細胞を樹立した.そして樹状細胞へ分化誘導することによってSLEのin vitroの疾患モデルの作製を試みた.今後のゲノム,エピゲノム解析と組み合わせることで,SLE病態の再現と解明,創薬研究への応用を目標としている.

  • Tsubasa MIYAUCHI, Tomonori YAGUCHI, Yutaka KAWAKAMI
    2017 年 40 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      Efficacy of immune checkpoint inhibitors such as PD-1 antibody for colorectal cancer remains to be proved except in microsatellite-instability-high (MSI-H) cases. While the objective response rate of MSI-H cases was 40%, that of microsatellite-stable (MSS) cases was 0%, showing that response rate to immune checkpoint inhibitors varies even among the microsatellite status. Some possible mechanisms that confer each patient variation in the response to immunotherapy should be considered. We focused on the combination of inter-patient heterogeneity and intra-tumor heterogeneity as a determining factor of immune reaction. An example of intra-tumor heterogeneity is the low expression of tumor antigen by CD271+ cells in melanoma. It is not surprising that similar mechanism exists in CRC. Other related intra-tumor heterogeneity includes EMT and autophagy, both molecular mechanisms that are thought to promote immune-evading phenotype. Besides the microsatellite status, inter-patient heterogeneity in response to tumor immunity includes hypermutator phenotype, which is driven by POLE mutation, intrinsic cytokine production, and microbiota in the gut.

  • 南宮 湖, 長谷川 直樹, 別役 智子
    2017 年 40 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      非結核性抗酸菌(Nontuberculous Mycobacteria: NTM)による感染症は日本・世界で患者数が増加している.NTM症はその臨床像により播種性NTM症と肺NTM症に分類され,その発症メカニズムは病態により大きく異なることが予想される.播種性NTM症については,IFN-γ/IL-12軸を中心とするTh1型細胞性免疫の先天的シグナル伝達異常により発症することが分子レベルで詳細に解明されている.また,最近はIFN-γに対する自己抗体を介した後天的免疫異常による播種性NTM症が注目されている.肺NTM症は軽快と増悪を繰り返しながら徐々に進行するが,その経過には宿主・病原菌両者の関与が推察され,宿主の疾患感受性遺伝子の存在が疑われている.肺NTM症の疾患感受性遺伝子に関して,Single Nucleotide Polymorphism(SNP)解析やマイクロサテライトマーカーを用いた解析が行われてきたが,その再現性や生物学的意義など今後検討,検証すべき課題は多い.次世代シークエンサーの登場により,網羅的解析技術が急速に発展している現在,肺NTM症の疾患感受性遺伝子に関する新たな発見が期待される.

  • Daiki KATO, Tomonori YAGUCHI, Takashi IWATA, Kenji MORII, Takayuki NAK ...
    2017 年 40 巻 1 号 p. 68-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/23
    ジャーナル フリー

      Immune checkpoint blockade (ICB) and adoptive cell therapies (ACT) with antigen-receptor gene-engineered T cells have been shown to be successful for a limited number of patients with solid tumors. Responders to ICB therapy typically have T cell-inflamed tumors. Thus, it is important to develop strategies that convert non-T cell-inflamed tumors to T cell-inflamed tumors. Although chimeric antigen receptor transduced T (CAR-T) cell therapy targeting hematological malignancies demonstrated durable clinical responses, the success of gene-engineered T cell therapies in solid tumors is hampered by a lack of unique antigens, antigen loss in cancer cells, and the immune-suppressive tumor microenvironment (TME) of solid tumors. However, gene-engineered T cells possess strong killing activity and cytokine production capacity, which can induce antigen spreading and modulate the TME of non-T cell-inflamed tumors seen in non-responders to ICB therapy. Immune responses against cancer are highly heterogeneous, not only between tumor types, but also within a patient or between different patients with the same type of cancer, indicating that personalized immunotherapy should be employed, based on the immune status of the individual patient. Here, we offer our perspective for personalized combination immunotherapy for solid tumors based on ACT and ICB therapies.

症例報告
feedback
Top