潰瘍性大腸炎患者では,大腸杯細胞に対して,流血性および細胞性の自己免疫が成立していると考えられる.本症は,直腸からの上行性連続病変が特徴で,病変部と正常部の接合面(境界部)が,病態の解明上,重要である.この部で杯細胞に対するimmunocompetent cellのattackが起こり,局所粘膜防御が破綻し,病変が上行する.一方, secretory component (SC)とIgAは局所粘膜防御のうえで重要な因子である.著者らは,本症患者11例につき,大腸の内視鏡的病変部,境界部正常部の各生検組織を得て, SC, IgA,大腸杯細胞粘液の3者の分布を螢光抗体法で観察した.その結果,正常部,境界部では大腸杯細胞粘液は減少していないが, SCとIgA,とくにIgAが減少し,病変部では, SC, IgA,大腸杯細胞粘液すべてが減少していた.したがって,この3者は,相互に関連し,潰瘍性大腸炎の大腸粘膜防御に関与していると考えられた.
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