日本臨床免疫学会会誌

リンパ球除去療法を受けた10人の自己免疫性疾患の患者(SLE 6人, RA 2人, PMおよびMCTD各1人)のうち5人に症状の改善が見られた.無効例は有効例に比して,治療終了14日後のIgMの上昇率が著明であった.
血漿交換療法を受けた14人の自己免疫疾患(SLE 8人, PSS 3人, PM 2人, RA 1人)のうち9人に症状の改善がみられた.症状別にレイノー現象,倦怠感,紅斑および関節痛は高率に改善した.有効例は無効例に比して,治療終了後のIgMの減少率が著明であった.臨床症状の改善推移は血清粘稠度に相関するように思われた. T Cell subset, PHA, Con AおよびIL-2に対するT細胞の反応は治療前および治療後において差がなかった.

抄録全体を表示

自己免疫疾患の病因は,骨髄の幹細胞レベルの異常に起因し,正常の幹細胞を移植することにより, T細胞, B細胞,マクロファージの機能が正常化し,血中の免疫複合体や自己抗体も減少して病変が著明に改善される.骨髄中のT細胞が完全に除去できれば, GVH反応も起こらずallogeneic bone marrow transplantationも可能であり,新しく分化してきたT細胞は骨髄donorのみならず,教育を受けた胸腺の主要組織適合抗原に対してtoleranceになっていることが判明した.それゆえ,骨髄移植は自己免疫疾患の根本治療として,将来ヒトへも応用されるものと考えられる.

抄録全体を表示

抄録を表示する抄録を非表示にする

厚生省特定疾患調査研究班「免疫不全症候群」の資料より,原発性免疫不全症候群症例のうち悪性腫瘍を合併したものについてまとめた.さらにその結果を米国のImmunodeficiency Cancer Registryの報告と比較した.
登録例683例中悪性腫瘍は20例に報告され,全例の2.9%に相当した.小児例に限ると, 17例であった.
Chediak-Higashi症候群とataxia-telangiectasiaにもっとも高い頻度が認められた.後者における頻度はICRのそれに近かったが, Wiskott-Aldrich症候群における頻度はわが国では低かった.
腫瘍としては, Non-Hodgkin lymphomaをはじめとするリンパ細網系のものを主とし,時に癌も認められた.これらの免疫不全症候群では小児例についてみると,一般健康児に比べ約500倍の腫瘍発生率を示したものと考えられ,高危険群であることが示された.

抄録全体を表示

PDF形式でダウンロード (206K)

J-STAGEへの登録はこちら（無料）