自己リンパ球混合培養反応autologous mixed lymphocyte reaction (AMLR)は, in vitroで自己の非T細胞に対して自己のOKT4 T細胞が反応する現象であり,その反応が免疫学的特異性と免疫記憶を具備していることからリンパ球の細胞間相互作用における免疫networkのモデルとして注目されている.
本論文では, IgA腎症患者におけるAMLR,健常人リンパ球とのallogeneic MLRおよび自己赤血球ロゼット形成autologous rosette formation (ARF)を調べるとともに,患者末梢血中のT cell subsetsとAMLRとの相関について検討した.
対象および方法: IgA腎症患者16名,健常人20名の末梢血より比重遠沈法にて単核球を採取したのち,その一部をplastic Petri dishに移し37°C, 60分間温置してplastic表面に付着する細胞とplastic表面に付着しない非付着細胞を得た.
Petri dishに付着しなかった細胞群は,ヒツジ赤血球とrosetteを形成させたのち,比重遠沈法によりT細胞を精製した.このT細胞群は, OKT8 monoclonal抗体とウサギ補体で処理してOKT4細胞に分画し, AMLR, allogeneic MLRの反応細胞として,マイトマイシン処理された自己の非T細胞あるいは健常人の非T細胞と混合培養した. ARFは,末梢血リンパ球をCon Aとともに72時間,前培養したのち,自己赤血球を加えてロゼット形成能を観察した.末梢血中のT cell subsetsは, monoclonal抗体のOKシリーズのうち補体結合能を有するOKT3, T4, T8を用いmicrocytotoxicity testにより全細胞に対する死細胞を算定した.
成績: IgA腎症患者のAMLRの反応性は,健常人のAMLRに比較して著明に低下した(p<;0.001).
反応細胞に患者のOKT4
+細胞,刺激細胞を健常人の非T細胞としてMLRを実施したときの反応性は患者のAMLRの成績と有意差をみとめなかったが,逆の場合のMLRの反応は,健常人におけるallogeneic MLRの反応性と一致した.自己赤血球ロゼット形成率は,患者リンパ球で著しく低下していた(p<0.001).患者の末梢血T cell subsetsは, OKT3
+, T4
+細胞の著明な低下をみとめたが, OKT8
+細胞に変化はみとめなかった.
結論:今回, IgA腎症患者においてAMLRの反応性の著明な低下,末梢血リンパ球中のOKT4
+細胞およびARF形成率の著明な低下がみとめられたが, AMLRは,その反応細胞がOKT4
+細胞に限極されていること,自己赤血球ロゼット形成細胞がAMLRにおける反応細胞の一部である可能性も報告されていることから推測すると, IgA腎症患者の免疫応答は, OKT4
+細胞の反応系に異常があることが示唆された.
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