日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌
Online ISSN : 2433-7854
Print ISSN : 2433-7846
2 巻, 2 号
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総説
  • 伊藤 泰介
    2019 年 2 巻 2 号 p. 245-251
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
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     瘢痕性脱毛症は, 脱毛症疾患のなかで最も病態理解がむずかしいと思われる。そのため病態に即した治療がなく, 患者も再生不可能な脱毛症状に対して精神的なダメージが大きい。原発性瘢痕性脱毛症は, 病変部に浸潤する免疫細胞によって, リンパ球性, 好中球性, 混合性に分類される。本稿では, これら分類に沿って, 瘢痕性脱毛症のなかでいくつかの疾患について免疫的側面からみた病態理解を試み, 今後の治療開発の方向性を見いだすことを目的とした。そんななか, 円板状エリテマトーデス (DLE) に対してヒドロキシクロロキンが有効性を示すことは画期的である。また毛孔性苔癬はバルジ領域へのリンパ球浸潤によるものであろうことはかなり確かなこととなりつつあり, 今後のさらなる病態解明と治療開発の展開が期待できる。

  • 下村 裕
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 2 号 p. 252-256
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     遺伝性毛髪疾患は, 円形脱毛症や男性型脱毛症のような多因子疾患と, 基本的に1つの遺伝子の変異によって発症する単一遺伝子疾患に大別される。単一遺伝子疾患は, 毛髪症状のみを呈する非症候性の群と, 症候群の1症状として毛髪症状を呈する症候性の群に分類される。後者の群は200種類以上の異なる疾患から構成されているが, それらのなかの複数の疾患で何らかの免疫異常をきたすことが知られている。免疫異常を伴う遺伝性毛髪疾患の原因遺伝子は, 毛包の発生・分化だけでなく, 免疫系や表皮のバリア機能の維持などにも重要な役割を果たしている。

  • 長谷川 瑛人, 阿部 理一郎
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     スティーブンス・ジョンソン症候群 (SJS) /中毒性表皮壊死症 (TEN) は薬剤やウイルス感染などが原因で, 発熱や広範囲の紅斑, 粘膜疹などをきたす疾患である。これらはまれではあるが, 高い致死率を有する重篤な疾患である。SJS/TENの病態にはいまだ不明な点が多いが, 最近の研究でその病態も徐々に明らかにされつつある。SJS/TENは表皮細胞や粘膜上皮細胞の細胞死による, 表皮や粘膜上皮の壊死性変化を特徴とする。この細胞死はこれまでアポトーシスによると考えられてきたが, 表皮細胞のformyl peptide recepter1を介してプログラムされたネクローシスであるネクロプトーシスも関与していることが明らかになった。また最近, 厚生労働省科学研究班からSJS/TENの診療ガイドラインが発表され, SJS/TENの治療成績の向上が期待される。

  • 強皮症
    浅野 善英
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     全身性強皮症に対して承認されている生物学的製剤はないが (2018年5月現在) , フレソリムマブ (ヒト型抗TGF-β1, β2, β3抗体) , トシリズマブ (ヒト化抗IL-6受容体抗体) , リツキシマブ (キメラ型抗CD20抗体) において, その有用性を示唆する臨床試験や症例集積研究の結果が報告されている。フレソリムマブでは, 治療による皮膚硬化の改善と休薬による皮膚硬化の悪化が示されており, TGF-βが本症の重要な線維化誘導因子の一つであるとする従来の病態仮説を支持する結果が得られている。トシリズマブでは第 II 相試験において皮膚硬化の改善傾向が示され, 間質性肺疾患については進行を抑制する可能性を示唆するデータが得られており, 現在第 III 相試験が進行中である。リツキシマブについては皮膚硬化と間質性肺疾患に対する有用性を示唆する症例集積研究が複数報告されており, 現在わが国において多施設共同医師主導治験が進行中である。分子標的薬による治療は病態理解の一助ともなるため, 生物学的製剤による治療の進歩とともに病態に立脚した治療戦略の発展が期待される。

  • 原 博満
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 2 号 p. 272-280
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     アレルギー性接触皮膚炎は, ニッケルやコバルトなどの金属や, ハプテンとよばれる感作性化合物に反応するT細胞によって引き起こされる遅延型過敏反応である。T細胞のプライミングには, 抗原 (接触アレルゲン) を提示する樹状細胞 (DC) の自然免疫受容体を介した活性化/成熟が必要であるが, 構造的に多様な感作性化合物がどのような機構でDCを成熟させるのかに関しては不明な点が多かった。われわれは, 感作性化合物の刺激によってDCから分泌されるIL-1シグナルが, ハプテン特異的T細胞のプライミングに重要であることを見いだした。感作性化合物はimmunoreceptor tyrosine-based activation motifs (ITAM) を介してSykを活性化し, SykシグナルはCARD9-BCL10複合体-NF-κB経路を介したPro-IL-1α/βの発現誘導と, 活性酸素産生を介したNLRP3インフラマゾームの活性化を誘導する。これによりDCからIL-1が分泌されることが化合物による接触感作に重要であることが明らかとなった。

  • 門野 岳史
    原稿種別: 総説
    2019 年 2 巻 2 号 p. 281-286
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     アトピー性皮膚炎の病態にはIL-4を筆頭に種々のサイトカインが関与し, これらを標的とする新しい生物学的製剤や低分子阻害薬といった分子標的薬による治療法が登場しつつある。近年発売された抗IL-4Rα抗体であるdupilumabは単剤での使用で, IGAスコアの減少やEASI-75の達成率がプラセボ群より有意に勝り, またステロイド外用薬と併用した場合は1年にわたって高い効果を維持していた。また, 抗IL-31R抗体であるnemolizumabは第 II 相試験においてアトピー性皮膚炎の搔痒を有意に抑制した。また, 外用薬としては, PDE4阻害薬であるcrisaborole, OPA-15406, E6005などがあり, 一定の効果をあげている。またJAK阻害薬の外用薬としてtofacitinibやJTE-052の開発も進められている。これ以外にもさまざまな分子標的療法が試みられており, 今後の展開が期待される。

  • 内田 洋平, 金蔵 拓郎
    2019 年 2 巻 2 号 p. 287-294
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     円形脱毛症の病態についてはさまざま論じられているが, 近年, 毛包の免疫特権 “Immune privilege” の破綻により生じる自己免疫疾患という概念が提唱されており, 円形脱毛症も自己免疫疾患の一つとして受け入れられている。毛包のImmune privilegeを形成するおもな要素として, 毛包上皮における, 1) 免疫担当細胞の活性化にかかわる分子や遊走を促す分子の低発現, 2) 抑制性分子の恒常的な発現があげられ, IFNγはImmune privilegeの破綻を強力に誘導する。円形脱毛症の病変部において, NKG2D+IFNγ産生細胞 (おもにCD8+T細胞) の数が増加しており, これらの自己反応性T細胞を中心として, 円形脱毛症の免疫学的病態が説明されている。

  • 日本接触皮膚炎研究班 (JCDRG) 研究成果報告
    関東 裕美
    2019 年 2 巻 2 号 p. 295-303
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     接触皮膚炎患者の原因究明にパッチテストは有用であり, われわれの研究班では適切な試薬供給の目的で原因アレルゲンを選択しその貼布至適濃度を検討してJapanese StandardAllergen (JSA) として標準化してきた経緯がある。2015年夏よりわが国でも世界的に標準化されたパッチテストパネルが試薬として購入可能となり, 多くの臨床医が容易にパッチテストを行えるようになった。金属, ゴム, 化粧品, 防腐剤, 薬剤, 樹脂, 植物アレルゲンなど最近3年間の陽性率の結果を報告する。従来のアレルゲン陽性率に比べ金属アレルゲン, 特に金アレルゲン陽性率が高くなっている点が各施設で問題になり, 研究班では金陽性患者達の生活背景について詳細な検討を始めている。今後もわが国接触アレルギーの原因物質の指標となるJSA陽性率を集計し検討していきたい。

研究
  • 室田 浩之, 田原 真由子, 高橋 彩, 片山 一朗
    原稿種別: 研究
    2019 年 2 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     ドライスキンの管理では保湿外用剤の使用, 皮膚の恒常性に配慮した洗浄など, 日常的なスキンケアが重要である。時代の流れとともに, 入浴の作法や皮膚の洗浄方法は変貌し, 乾燥肌をもつ患者のスキンケア手法も変化しつつある。その実態を明らかにすることで, 時代背景に則したスキンケア方法の提案が可能になると考えた。われわれは皮膚科を受診したドライスキンを有する患者を対象に, 洗浄, 入浴, 保湿外用剤に関するアンケートを行い, 石鹸・洗浄剤の選択や使用方法, 洗浄の際に用いる道具, 入浴習慣, 保湿外用剤の使用方法の傾向に関する集計を行った。その結果, 比較的多くの患者が, 洗浄剤を泡立てずに手で直接皮膚に塗って用いているなどの実態が判明した。今回の調査では比較対照群の設定がないため, これらの結果がドライスキンを伴う患者に特異的な実態とはいえないが, 適切な皮膚洗浄方法の指導内容に示唆を与えると期待される。

症例
  • 足立 厚子, 大塚 晴彦, 山野 希, 濱岡 大, 井上 友介, 沼田 充, 佐々木 和美, 喜久川 真記
    原稿種別: 症例
    2019 年 2 巻 2 号 p. 310-316
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     眼鏡先セルおよび鼻パッドに一致したアレルギー性接触皮膚炎 (ACD) の57歳女性の症例を経験した。紫外線吸収剤2-ethylhexyl-4-methoxycinnamate (商品名Parsol MCX®) は, 主としてサンスクリーン剤に含まれ, 光アレルギー性接触皮膚炎 (PACD) の原因となることが多い。しかし自験例では, 眼鏡先セルおよび鼻パッドに含まれていた2-ethylhexyl-4-methoxycinnamateがACDを起こしていた。さらに同成分のパッチテストが陽性で, 光パッチテストは陰性であったこと, トランス体である同成分に実験室で紫外線を照射し, シス体とトランス体の割合が約1 : 2となったもののパッチテスト陽性所見と, 照射前のトランス体のものとのパッチテスト陽性所見が同程度の強さであったことからもPACDが否定され, ACDと診断された。これまでに同様の報告はない。紫外線吸収剤は製品劣化予防の観点から近年さまざまな製品に含まれているため, 同様の症例の増加が予想される。

  • 足立 厚子, 大塚 晴彦, 山野 希, 濱岡 大, 井上 友介, 小林 征洋
    原稿種別: 症例
    2019 年 2 巻 2 号 p. 317-322
    発行日: 2019/04/30
    公開日: 2019/06/15
    ジャーナル 認証あり

     多種の魚摂取や, 魚コラーゲンペプチド入り美容ドリンク剤飲用によって, 口腔アレルギー症候群や, 運動が加わると食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こした22歳女性の症例を経験した。測定しうるすべての魚に対する特異的IgE (CAP FEIA法) が陽性であるとともに, プリックテストにて検査したすべての魚, 魚加工品, 美容ドリンク剤および美容ドリンク剤主成分の魚コラーゲンペプチドに強陽性を示した。ELISA法にて自験例の原因アレルゲンは, 主要アレルゲンであるパルブアルブミンではなくコラーゲンであると診断した。コラーゲンペプチドは家畜由来と魚由来とがあり, 産業原料として粉末や水溶液で流通している。コラーゲンペプチドは食品やドリンク剤のみならず, 化粧品にも多く含まれる。魚類アレルギー患者では注意が必要である。

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