日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の156件中1~50を表示しています
特別講演
Plenary Lecture
  • 審良 静男
    セッションID: Plenary1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    哺乳動物には2つのタイプの免疫システムが存在する。1つが自然免疫で、マクロファージ、白血球、樹状細胞などの食細胞が担当し、体内に侵入してきた病原体を貪食し分解する役割をもつ。もうひとつは、獲得免疫で、おもにT細胞やB細胞が関与し、DNA再構成により無数の特異性をもった受容体が作られ、あらゆる抗原を認識する、高次の免疫システムである。自然免疫は、従来まで非特異的な免疫反応と考えられ、哺乳動物においては獲得免疫の成立までの一時しのぎと考えられてきた。そのためこれまでの免疫研究は、獲得免疫に中心が置かれてきた。しかし、最近、自然免疫系の細胞も、Toll-like receptorと呼ばれる受容体を用いて病原体を特異的に認識して、炎症・免疫応答をひきおこすことが判明した。12のファミリーメンバーからなるTLRのそれぞれのノックアウトマウスもすべて作成され、それらの解析からほとんどのTLRの認識する病原体構成成分があきらかとなっている。TLR4 は、LPSシグナル伝達に関わる受容体で、TLR2は、グラム陽性菌のペプチドグリカンやリポプロティンを認識することが判明した。TLR1とTLR6は、TLR2とヘテロダイマーを形成することで異なるリポプロティンを認識する。TLR5は、鞭毛を認識する。TLR7は抗ウイルス剤imidazoquinolinesや1本鎖RNAを、TLR9は細菌やウイルス由来のDNA(CpG DNA)を、TLR3は2本RNAを認識することがあきらかとなった。このように、TLRは、細菌、真菌、原虫、ウイルス由来の成分によって活性化され、あらゆる病原体の体内への侵入を感知する受容体であることが判明した。さらに重要なことは、TLRを介しての自然免疫系の活性化が、獲得免疫の誘導に必須であることがあきらかになったことである。このため、従来の免疫理論の大幅な修正がせまられるようになり、感染症に対するワクチン、アレルギー疾患、癌免疫に対する考え方も大きく変化してきている。最近になって、さらにTLR以外にも病原体の侵入を感知する細胞質内に存在する受容体の存在もあきらかとなった。このように、生体はTLR依存的と非依存的システムを用いて、病原体の体内への侵入を感知し、それに続く炎症・免疫反応を誘導し、病原体に対処している。本講演では、自然免疫系による病原体の認識機構について述べてみたい。
  • 坂口 志文
    セッションID: Plenary2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    正常個体中に存在する制御性T細胞は、免疫自己寛容の維持、免疫応答の抑制的制御に枢要である。内在性制御性T細胞は、CD25分子を構成的に発現する。正常動物末梢CD4T細胞の約5-10%を占めるCD25T細胞を除去すると、甲状腺炎、糖尿病など様々な自己免疫病が自然発症してくる。このようなCD25CD4制御性T細胞の少なくとも一部は、正常胸腺で機能的に成熟した状態で産生される。制御性T細胞の末梢での維持にはIL-2が必須であり、CD25分子は単なる制御性T細胞のマーカーではなく、IL-2レセプターの構成分子として制御性T細胞機能に必須の分子である。一方、Foxp3は、制御性T細胞の発生、機能発現を制御するマスター制御遺伝子である。Foxp3は、胸腺、末梢のCD25CD4T細胞に特異的に発現しており、正常T細胞にFoxp3を発現させると、機能、表現型の点で内在性制御性T細胞と同等の制御性T細胞に転換できる。Foxp3CD25CD4制御性T細胞の量的・質的異常は、様々な自己免疫疾患/炎症性疾患の直接的原因となる。例えば、小児の免疫不全疾患であるIPEX(Immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked)症候群では、高頻度にI型糖尿病、甲状腺炎、炎症性腸疾患のみならず、重篤なアレルギー(皮膚炎、食物アレルギー)を発症する。また、内在性制御性T細胞のみならず、Foxp3遺伝子の導入により作製した制御性T細胞を用いて、自己免疫病、アレルギーなど様々な免疫疾患の予防・治療が可能である。一方、内在性制御性T細胞の除去あるいは機能操作は、自家腫瘍に対して有効な免疫応答を惹起できる。逆に、制御性T細胞の制御能を強化すれば、移植臓器に対する拒絶反応を抑制し、長期の移植免疫寛容を誘導できる。即ち、制御性T細胞は免疫自己寛容のみならず、自己/非自己に対する免疫応答の抑制的制御に重要である。本講演では、病的、生理的免疫応答制御における制御性T細胞の役割について、Foxp3の遺伝子制御に関する最近の知見を交えて議論する。また、制御性T細胞を用いた免疫疾患の治療、予防の可能性について論じる。
  • 山村 隆
    セッションID: Plenary3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    多発性硬化症(MS)は視神経、大脳、脊髄などに炎症病変を多発する自己免疫疾患であるが、先進諸国での増加傾向が明瞭なことから、生活習慣や環境要因との関係が見直されている。MS病態の理解や治療法開発は、動物モデルEAEを用いた基礎研究によって急速に進んだ。しかし、免疫学のパラダイムシフト(Th1/Th2ドグマの崩壊)に伴い、過去の定説の見直しが必要になっている。一方、より臨床的な問題としては、MSにおける治療薬反応性の多様性や、再発・寛解を規定する要因などが未解明である。本講演ではEAEとヒトMSの臨床材料の解析結果を対比しつつ問題点を整理し、マウスとヒトの自己免疫病態の相違点、ヒト免疫研究の重要性などを論じる。
     特に重点的に取り上げるのは、1)MS/EAEを惹起する病原性Th17細胞に関連する問題(Th17の性状、Th17の関与する病態、Th17を標的とする治療、Th17病態の増悪因子など)、2)MS/EAEを抑制する制御性細胞をめぐる問題(NK細胞の変調による再発はあるか?MAIT細胞の変調はMSの増加を説明するか?)、3)オーファン核内受容体NR4A2の MS病態における役割、などである。
     NR4A2は脳内黒質ニューロンの発達に関与する遺伝子で、家族性パーキンソン病の原因遺伝子として知られる。我々はMS患者T細胞でNR4A2が著明に発現亢進することを報告したが(Satoh et al. Neurobiol Dis 18:537-550, 2005)、EAEの脳内浸潤T細胞でも発現亢進を確認し興味を引かれた。最近になって、NR4A2がIL-17やIFN-γなど炎症性サイトカインの発現を誘導する転写因子であることが判明し、NR4A2を標的とする治療法開発が有望であることが明らかになった(論文準備中)。ヒト免疫疾患の研究において、血液リンパ球が治療法開発につながる情報を与えることの一例である。
シンポジウム
シンポジウム1 診療の壁を越える共通語‐IL-6を例として‐
  • 仲 哲治
    セッションID: S1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)を代表とする全身性自己免疫病、および関節リウマチ(RA)や多発性硬化症(MS)を代表とする臓器特異的自己免疫病から成る免疫難病の病因として、Th1, Th2やTh17などのTh細胞の分化異常が考えられている。また、これらTh細胞の分化は、IFN-γ, IL-12, IL-6およびIL-4などのサイトカイにより厳格に制御されている。事実, TNF-αやIL-6Rなどのサイトカインおよびその受容体に対する中和抗体を用いた抗体医薬品は臨床実地において、RAなどの免疫難病に対して非常に有効である事が知られている。しかしながら、抗体医薬品は主にサイトカインの活性を中和するため、効果的な治療薬である反面、正常組織への悪影響や、体液中や細胞表面に存在するタンパク質しか標的にできず、その特異性に問題点がある。そのために、サイトカインシグナル伝達阻害因子(SOCS)を用いたより特異的な治療法の開発が望まれる。今回、RAおよびMSに焦点を当て、その疾患モデルマウスであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)におけるTh17の役割とTh17分化に対するIL-6のvivoでの役割について論じ、そしてIL-6シグナル伝達を阻害するSOCS-1, SOCS-3のRAやMSなどの免疫難病への応用について論じたいと思う。
  • 沖山 奈緒子, 杉原 毅彦, 横関 博雄, 宮坂 信之, 上阪 等
    セッションID: S1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)は、膠原病内科、皮膚科、神経内科で診察されており、まさしく診療科を超えた疾患であることから、その分、研究が遅れてきた。
     我々は、骨格筋内のC蛋白が、遺伝学的研究の容易なB6マウスでも免疫原性が高いことを見出し、組換えC蛋白をマウスに免疫することで新たなPMモデル(C-protein induced myositis(CIM))を確立することに成功した。CIMマウスの筋組織は、PMと同様に、筋傷害の場である筋内膜にCD8T細胞が多く浸潤してパーフォリンを放出しているなど、細胞傷害性CD8T細胞が筋傷害の原因と考えさせる点で、従来のPMモデルマウスとは一線を画している。実際にCD8T細胞を前処置により除去すると筋炎は軽快し、CIMマウス由来のCD8T細胞の養子移入で、ナイーブマウスに筋炎が発症する。
     一方、様々な炎症に関与することが知られるInterleukin(IL)-6は、PM/DMの筋組織中に浸潤する炎症細胞に発現され、CIMマウス炎症筋組織の免疫組織学的解析でも、炎症細胞にIL-6発現が認められた。また、IL-6欠損マウスでは、野生型マウスと比較してCIMの発症頻度が低く、筋炎の程度も軽かった。そこで、IL-6阻害薬である抗IL-6受容体抗体(MR-16)を、免疫時から投与(100-200mg/kg、腹腔内投与)すると、CIMは抑制された。
     近年、IL-6は、自己免疫反応の鍵となるTh17の誘導に重要な分子であることが明らかにされ、我々もIL-17のCIM病態への関与を検討中である。しかし、MR-16の効果は、筋炎発症後(免疫7日目)からの投与でも免疫時投与と同様に認められたことから、IL-6は、自己反応性T細胞誘導以外の病態でも重要と考えられ、よりよい治療標的となると思われる。
  • 岡野 栄之
    セッションID: S1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    ケモカインと幹細胞のホーミング・動員、炎症性サイトカイン、単球由来細胞の多様な機能、幹細胞の同種移植に伴う免疫学的拒絶反応の制御、抗体医薬を含めた生物製剤による再生誘導など炎症と再生の接点が明瞭となってきている。私達も、特に脊髄損傷の急性期および亜急性期における炎症制御が再生戦略において重要な役割を果たすことを示してきた。脊髄損傷後には脊髄血液関門の破綻により血液中より大量のマクロファージの流入がみられ、これが脊髄損傷後の治癒過程を阻害する一因となっている可能性が指摘されている。我々は、以前脊髄損傷に対する抗IL-6受容体抗体(MR16-1)の有効性を報告してきたが、1)炎症細胞浸潤の経時的な変化、2)ケモカインの発現、3)主要な炎症細胞である単球系の細胞の分画、4)血液由来のマクロファージの特性、5)二次損傷と組織修復過程に与える影響の解析の結果から抗IL-6受容体抗体の発揮する治療効果にこのような炎症細胞浸潤の制御が寄与していることを明らかとした。この炎症反応によって脊髄損傷後亜急性期(1~2週)において誘導されると考えられる反応性アストロサイト(reactive astrocytes)と呼ばれる細胞は、グリア瘢痕形成やコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)のような神経軸索伸長阻害因子を発現することから傷害された神経系の修復を阻害する「悪玉細胞」であると専ら考えられてきたが、反応性アストロサイトは損傷周辺部から中心部へと移動し、障害部位を取り囲み、炎症細胞を脊髄の他の部分から隔絶することを示し、「反応性アストロサイト・善玉説」を提唱するに至った(Okada et al., Nature Medicine, 2006)。またこの善玉としての反応において、STAT3が中心的な役割を果たすことが明らかになった。
  • 平澤 博之, 織田 成人, 松田 兼一, 野村 文夫
    セッションID: S1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    ICUに入室している重症例が呈する敗血症性ショックなど多くの病態は、全てその背景にhypercytokinemia(HC)が存在するといっても過言ではない。しかし従来cytokine血中濃度を測定し、それに基づいて治療方針を決定し、HC対策を行うという治療方針は行われて来なかった。その理由としてはcytokineの血中濃度を日常臨床で有用な形で測定する方法が得られなかったからである。我々は本学中央検査部と共同でchemiluminescent enzyme immunoassay (CLEIA)法を用いたIL-6迅速測定法を導入し、ICU患者においてIL-6血中濃度を連日測定している。この方法により採血後約30分でIL-6血中濃度を知ることができ、それに基づいて治療方針を決定出来るようになった。特に全身性炎症反応症候群(SIRS)なる病態概念やその重要性が確立し、かつSIRSの根底にあるものはHCであることが明らかになるにつれて、IL-6血中濃度測定の意義は更に大きいものとなった。  IL-6血中濃度はICU入室症例のmodalityやmortalityとも良く相関した。またPMMA膜hemofilterを用いたcontinuous hemodiafiltration (PMMA-CHDF)は、持続的、かつ効果的に血中より各種cytokineを除去すること、さらにHCにより引き起こされる各種の病態の治療に有効であることをわれわれは報告してきたが、その開始時期、終了時期、効果判定にもIL-6血中濃度測定は極めて有用であった。最近ではcytokine産生に関わる遺伝子多型の有無をもチェックし、その結果を基にtailor-madeのHC対策も施行している。  以上、IL-6血中濃度測定はcritical care medicine領域でも極めて有用であることを我々自身のデータに基づいて報告する。
  • 横田 俊平
    セッションID: S1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)は、弛張熱、リウマトイド疹、関節炎を主徴とする慢性関節炎のひとつであり、約8%の患児は高熱が続いた末に予後不良となると共に身長の伸びが停止し骨粗鬆症が進行する。病勢に一致して血清IL-6/IL-6レセプター(R)の高値が認められ、実験的にもIL-6 transgenic mouseではs-JIA患児と同様な所見を呈する。そこでヒト化抗IL-6Rモノクローナル抗体(tocilizumab)によりこの過剰なIL-6/IL-6Rを遮断したところ、急速な病勢の鎮静化と身長の伸び、骨粗鬆症の改善が認められた。現在、第二相治験(open-label)と第三相治験(double-blind, placebo-controled)が終了し、さらに48週を越える長期的検討(extension study; open-label)を行っている。Tocilizumabの投薬は、1回8 mg/kgを2週間に1回の点滴静注で行った。48週時点の改善率をJIA core setでみると、JIA30, JIA50, JIA70それぞれは100%, 95%, 90%であった。当初治験参加した50例のうち48例が1年以上の継続投与を行っており、tocilizumabの著しい効果と安全性を示していた。この結果はさらにs-JIAは炎症性サイトカインのうちIL-6が主として拘わっていることが明らかになり、またモノクローナル抗体による単一分子の遮断により病態そのものが終息することから、炎症病態に拘わるIL-6の役割について改めてその重要性が明らかになった。またin vitroの検討でも、IL-6が成長軟骨の幹細胞の分化を抑制することが示され、成長、骨粗鬆症の進行にIL-6が拘わっていることが示された。
  • 吉崎 和幸
    セッションID: S1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    IL-6が多分野疾患に関与することは医師、研究者らによって示されている。ヒト化抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)によるキャッスルマン病、関節リウマチ等への有効な治療結果はIL-6が慢性炎症性疾患の病態形成に中心的役割を果していることを示唆する。本治療はIL-6単独阻害であるため、病態におけるIL-6の意義を明らかにし得ると考えられる。
    関節リウマチでは様々な細胞が活性化され、様々なサイトカインやケモカインが産生されて、その結果、例えば急性期蛋白が発現する。この事実を知らない者はいない。しかしながら炎症におけるその発現機序を知る者もいない。今回IL-6分子のみを阻害することによって正常値化したことからCRP及びSerum amyloid A (SAA)の細胞内レベルでの発現機序の解明を試みた。肝細胞を用いたin vitroでの研究ではあるが、あえてIL-6を含む複数のサイトカイン刺激の系を用いて解析した。その結果、これらの急性期蛋白の発現にIL-6が必須であり、特にSTAT3の活性化が中心で、同時にSTAT3の新たな転写機序によって発現することを明らかにした。このことは単にin vitroにおける新たな所見であるばかりでなく、炎症生体内での転写機序の可能性を示唆し、転写レベルでの疾患病態を示していると考えられる。更に転写因子の複合体形成様式から、形成阻害による新たな治療へのアプローチも考えることができる。トシリズマブによる治療では細菌、ウイルスの易感染が1つの不利益である。新たな治療法が可能になればこの問題も解決できるものと思われる。また今やCRP、SAAは単なる炎症マーカーというばかりでなく、慢性炎症の増悪因子でもある。従ってIL-6阻害療法に加えてこの新たな治療が展開されたならばIL-6阻害とは異なる方面からの慢性炎症性疾患への治療の可能性も考えられる。
シンポジウム2 免疫機序で語る異分野疾患‐免疫学的病態‐
  • 江頭 健輔
    セッションID: S2-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    動脈硬化性疾患と炎症:動脈硬化性疾患(再狭窄、急性心筋梗塞、脳梗塞)の責任病変部位において活動性の慢性炎症(単球・マクロファージの接着浸入・活性化)が顕著に生じ、その結果C反応性蛋白や単球走化性促進因子(monocyte chemoattractant protein-1、MCP-1)などの炎症マーカーが上昇することから、同疾患は慢性炎症に起因すると考えられている。
    炎症は動脈硬化性病変の新たな治療ターゲット:冠動脈インターベンションは国内で年間20万人に実施されている。再狭窄に対して画期的抑制作用を有する薬剤溶出ステントが登場したが、最近その副作用(遅発性血栓)が懸念されている。一方、急性心筋梗塞の責任病変である「不安定プラーク」に対する確立した治療法はない。 我々は独自に単球/マクロファージのケモカインであるMCP-1の機能を変異型MCP-1(7ND)を用いて抑制することによって再狭窄・動脈硬化が抑制されることを霊長類などの実験動物を用いて明らかにしてきた。これらの成績から、抗炎症が動脈硬化病変の重要な治療ターゲットとなることが明らかとなった。
    炎症制御による生体吸収性遺伝子溶出ステントの開発:臨床応用に向けて、7ND遺伝子溶出ステントを開発し、新生内膜抑制効果を明らかにした。また、炎症の成立に中心的役割を果たす転写因子NF-kBを抑制するNF-kBデコイ溶出ステントを創製し、その有効性を確認した。NF-kBデコイをステント治療直後に冠動脈内に投与する臨床試験を行い、その安全性を明らかにした。
    結論と展望:炎症が動脈硬化性疾患の成因に中心的役割を果たすこと、抗炎症が動脈硬化性疾患に対する新しい治療対策になることが明らかとなった。また、抗炎症的に働く遺伝子溶出ステントが再狭窄抑制だけでなくプラーク安定化をもたらす「より優れた」「安全性の高い」次世代医療機器となる可能性が示された。
  • 乾 直輝, 須田 隆文, 千田 金吾
    セッションID: S2-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
      肺および気道における免疫機構の特色は、豊富な血流を介した抗原のみならず、外来性の病原微生物や異物などの吸入抗原に対しても効率的に免疫反応を働かせる必要があるため、気道粘膜における免疫機構が発達してきた点にある。今回の発表では、気道粘膜免疫の誘導組織としての気管支関連リンパ組織(bronchus-associated lymphoid tissue : BALT)およびその構成成分であり強力な抗原提示細胞である樹状細胞(dendritic cell: DC)に焦点を当てる。
     BALTは,細気管支粘膜下にみられるリンパ濾胞で,抗原特異的な分泌型IgA 抗体産生細胞を気道に分布させるための誘導組織として気道の粘膜免疫の中心的な役割を担っている。このBALTの発生,過形成には持続する外来性の抗原刺激と感作Th2細胞から産生されるIL-4などのサイトカインが重要であり、BALTが発生・顕在化すると、IgA循環帰巣経路の誘導組織として吸入抗原を積極的に取り込み、抗原特異的なIgA抗体産生を誘導する。我々は健常ヒトでは存在しないBALTが,びまん性汎細気管支炎,慢性過敏性肺炎,膠原病関連肺疾患において顕在化することを明らかにし、病態との関連性を解明した。
     また、抗原に対して効率的に免疫応答が働くために、DCが集積し活性化され、T細胞へ効率的に抗原提示を行う必要がある。肺では大部分のDCが肺胞および気道上皮直下間質に存在し、他の細胞と協調しながら免疫応答を進めているが、我々は肺DCが脾DCや他の抗原提示細胞と比較し強力なIgA誘導能を持つことを示した。呼吸器疾患や病態におけるDCの存在と機能を検討では、びまん性汎細気管支炎で細気管支領域の粘膜下組織に主として成熟したDCが集族し、small airwayにおける抗原提示に中心的な働きをしていた。またBCG誘導肺肉芽腫病変では、肉芽腫周囲にBCG投与14日まで増加するDCが観察され、更にこのDCはnaive及びBCG特異的T細胞刺激能を有した。
  • 片山 一朗
    セッションID: S2-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    アトピ-性皮膚炎{AD}を症候群としてとらえる考え方が提唱されアレルギー機序(Extrinsic)と非アレルギー機序(Intrinsic)による病態の存在が認知されるようになりつつある。気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアトピー疾患も含め、今後診断、治療の考え方に大きな影響を与えることが予想される。ADの場合アレルギーの立場からはIgE / IL4 / IL5が関与するI型即時アレルギーないし、LPR, VLPRの解析と平行して、Th2ケモカインのTARCやMDCなどの血清レベルがAD単独群の重症度と相関するという報告がなされ、その産生細胞や病態との関連性が検討されている。さらに最近IL2ファミリーに属するTSLPと呼ばれる新規サイトカインがAD病変部ケラチノサイトで強く発現していることが報告された。TSLPは皮膚ケラチノサイトや肺線維芽細胞などのストローマ細胞より特異的に産生されることが明らかにされ喘息の発症にも関与することが報告されている。非アレルギー性の機序としては,自然免疫に関与する抗菌ペプチドがAD病変部で発現低下が見られること、ブドウ球菌由来SpAによりIL18のケラチノサイトからの産生誘導とIgEの産生増強が見られることが報告されている。痒みのメカニズムの新しい知見として、肥満細胞由来のヒスタミンに加え、トリプターゼにより活性化されるPAR2受容体の役割が明らかにされた。また皮膚バリア機能を担うフィラグリン遺伝子の遺伝多形が喘息を合併するADの発症、進展に関与することが報告され、人種間での変異部位の異同が検討されている。バリア機能異常は皮膚過敏性、痒み感覚の異常などと密接に関与するのみでなく、アレルゲンの侵入を介してIntrinsicからExtrinsicタイプへの移行に大きな役割を果たしていると考えられ、その制御が重要となる。このような考え方は喘息、鼻炎にも共通する点があると考えられ、異分野間での論議が要求される。
  • 日比 紀文
    セッションID: S2-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    クローン病(CD)は10代後半から20歳代に好発する原因不明の慢性炎症性腸疾患で、本邦でも患者数は増加傾向にある。原因として遺伝因子や環境因子が絡み合い、免疫学的異常を生じて発症する多因子疾患と考えられている。現在までにNOD2、OCTN、DLG5、TNFSF15、IL-23Rなどの疾患感受性遺伝子が同定された。特に細胞内病原体認識分子であるNOD2遺伝子の変異がCD発症と相関することが報告されて以来、これまでの獲得免疫機構の研究に加えて遺伝的背景と自然免疫との関連が注目されるようになった。CDモデルとして用いられるIL-10欠損マウスや他の多くの腸炎自然発症マウスでは、腸内細菌の存在が腸炎発症に必要である事実も自然免疫の関与を示唆している。免疫学的異常についてはTh1優位の免疫異常が存在することが判明している。我々も、CDではマクロファージからのIL-18の産生が亢進していること、腸管粘膜固有層単核球からのIFN-g産生が亢進していることを報告している。しかし、腸管局所での自然免疫と獲得免疫のcross talkについてはこれまで未解明であった。我々は腸管局所マクロファージが腸内細菌認識において恒常性維持に重要な働きをしていること、さらにIL-10欠損マウスではこの腸管マクロファージの細菌認識機構の異常により、細菌刺激に対しIL-12およびIL-23が過剰産生されることを見出した。CDにおける腸管マクロファージの機能異常についても、CDの腸管マクロファージは腸内細菌刺激に対し過剰なIL-23を産生することを突き止めた。このIL-23はT細胞やNK細胞からのIFN-g産生を促し、Th1への過剰なシフトを引き起こしていると考えられる。このようにマウスモデルやCDでは、腸内細菌に対するマクロファージの異常応答がTh1/Th17型の免疫応答を誘導し腸炎発症に関与していると考えられ、この異常反応の制御が新たな治療ターゲットになりうると思われる。
  • 高原 史郎
    セッションID: S2-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    臓器移植・組織移植における究極の目標は、免疫抑制剤なしに移植臓器(組織)が生着する免疫寛容の導入である。現在の非特異的免疫抑制療法での腎臓移植で10年生着率75%、肝臓移植で10年生着(存)率70%、心臓移植で10年生着(存)率70%を達成しているが、意図的に免疫抑制剤を完全に中止して免疫寛容を達成できている症例はごく僅かである。では、このごく僅かの免疫寛容成功例はどのようにして達成したのであろうか?そして将来、意図的に免疫寛容を導入するにはどのような方法があるのか?今回のシンポジウムで概説する。 (1)現在成功している免疫寛容導入法 1)小児の肝臓移植では10%以上の症例で免疫寛容が達成されている。これは肝臓自身が造血組織でもあるため結果的に免疫寛容が導入されている。ただし実際に非特異的免疫抑制剤を中止している症例は少ない。 2)5例の生体腎移植において、以下の免疫抑制メニューで免疫寛容の導入に成功し、かつ長期生着に成功している。1)ドナーからの骨髄移植+2)レシピエント胸腺へのradiation+3)cyclophosphamide(60mg/kgX2)+4)レシピエントへの抗CD20抗体+5)9-14ヶ月間のcalcineurin 阻害剤投与。免疫寛容が達成された患者ではドナーとのキメラ状態が達成されていた。 しかしこの方法では骨髄移植が必要であり、腎移植での普及は困難である。 (2)将来、実用化の可能性のある免疫寛容導入法 1)抗CD28抗体:動物実験において、抗CD28抗体(super-agonist)のみの投与で免疫寛容が成立している。 2)ブタから人間への異種移植における免疫寛容:ハーバード大学のK.Yamadaらの研究グループは、ブタからサルへの異種間腎移植において免疫寛容導入に成功した。
シンポジウム3 分子・細胞をターゲットとしたImmunological intervention
  • 竹内 勤
    セッションID: S3-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    TNFが種々の炎症性疾患、免疫疾患に関与する事が示され、それを標的とする治療薬が開発されてきた。TNF抑制の作用点としては、1)de novo産生抑制、2)mRNA安定性調節、3)細胞からの遊離抑制、4)TNF活性の中和、5)受容体との結合阻害、6)受容体からのシグナル阻害、など多段階での制御の可能性がある。この中で、実際、ヒト疾患に使用され劇的な治療効果をもたらしたのは、標的であるTNFと強力に結合してその活性を抑制する生物学的製剤であった。臨床応用された3つの生物学的製剤、キメラ型抗TNFア抗体インフリキシマブ、2型TNF受容体-Ig融合蛋白エタネルセプト、ヒト型抗TNFア抗体アダリムマブは、関節リウマチ、小児関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、乾癬、そしてベーチェット病の眼病変に対する適応があり、さらなる広がりを見せている。製剤による治療効果の差異や特徴を、製剤のPK/PD、作用点、投与ルート、併用薬などから考察し、関節リウマチに対する治療成績を基に議論したい。有効性の予測は臨床的には困難な事が多いが、RNA診断による予測の取り組みや、in vitro TNF産生アッセイ系などの有望と考えられる予測方法について紹介したい。また、感染症など、標的分子の生理的作用と関連した副作用について、それが出現する理論的背景を概説し、日本において行なわれた全例市販後調査の結果をもとに、議論を深めたい。
  • 田中 良哉
    セッションID: S3-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患では、B細胞は活性化されて自己抗体やサイトカインを産生すると同時に、抗原提示細胞としてT細胞を活性化し、病態形成過程で中心的な役割を担う。したがって、B細胞は治療標的として注目され、B細胞抗原CD20分子に対するキメラ抗体リツキシマブは、米国ではTNF阻害療法抵抗性RAに承認されている。SLEに対してもリツキシマブを用いた臨床試験が各国で展開される。本邦でも、リツキシマブは神経精神ループスやループス腎炎を呈した治療抵抗性SLE 19例に対して奏功し、14例で寛解導入を齎したとのパイロットスタディに引き続き、第2/3相試験を実施中である。一方、一定の割合でリツキシマブ無効例が存在すること、抗キメラ抗体、血栓症併発、進行性多発性白質脳症やB型肝炎再燃などの問題点も明らかになった。斯様な点をクリアするため、ヒト化CD20抗体オクレリズマブやヒト型CD20抗体オファツズマブがRAに、抗CD22抗体エプラツズマブがSLEを対象に臨床試験が実施される。さらに、B-T細胞相互作用の制御を目的としたCTLA4-Ig複合蛋白アバタセプトは米国でRAに承認され、抗BLyS抗体ベリムマブやTACI-Ig融合蛋白アタシセプトも、欧米で自己免疫疾患に対する試験が進行する。また、CD20抗体療法は、血管炎症候群、皮膚筋炎、シェーグレン症候群でも有効性が高く評価されが、その作用機序としては、B細胞分化を制御してナイーブB細胞の再構築を生じたと同時に、共刺激分子を発現するメモリーB細胞を優先的に除去して、B-T細胞間相互作用を制御した可能性が示唆される。以上、B細胞を標的とした生物学的製剤が好成績を挙げるに従い、B細胞の基礎的、病態的意義を再考する契機にもなり、病態解明や治療にブレークスルーを齎すものと期待される。
  • 針谷 正祥
    セッションID: S3-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    免疫応答の抗原特異性を担うT細胞は自己免疫疾患における重要な治療標的の一つである。T細胞標的治療は、1)T細胞表面分子、2)T細胞シグナル伝達経路、3) T細胞の分化・増殖に関わるサイトカイン、4) T細胞由来サイトカインとその受容体、を標的とする治療に分類される。治療標的となるT細胞表面分子には、T細胞表面マーカー、T細胞受容体、共刺激分子、T細胞増殖に関わるサイトカイン受容体などが含まれる。すでに自己免疫疾患に臨床応用されているT細胞標的治療としては、関節リウマチ(RA)に対するabatacept、RAおよび全身性エリテマトーデスに対するtacrolimusが、また、現在開発中のT細胞標的治療としてはIL-12、IL-15、IL-17に対する抗サイトカイン療法等が挙げられる。abataceptはヒトcytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 (CTLA4)とヒトIgG1-Fc部分からなる融合蛋白質で、米国および欧州でRA治療薬として既に承認されている。Methotrexate抵抗性活動性RA患者を対象としたAIM試験では、治療開始6ヵ月後のACR20、50、70達成率はabatacept群(placebo群)で68(40)%、40(17)%、20(6.5)%、TNF阻害薬抵抗性RA患者を対象としたATTAIN試験では6ヵ月後のACR20、50、70達成率はabatacept群(placebo群)で50(20)%、20(4)%、10(2)%であり有意な臨床症状の改善効果が示されている。比較的頻度が高い有害事象として感染症、神経症状、消化器症状が報告されている。本シンポジウムではabataceptを中心に自己免疫疾患におけるT細胞標的治療の現状と問題点を議論する。
  • 羅 智靖
    セッションID: S3-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     アレルギー炎症のメインストリームであるIgE-FcεRI-マスト細胞枢軸を遮断する分子標的薬として,IgE-FcεRI高親和性結合を阻害するヒト化抗ヒトIgE抗体が製品化された。 この抗ヒトIgE抗体(omalizumab)は,花粉症やアレルギー性喘息の重症例で効果が高くその経済効果が期待されている。FcεRIを介して抗原・IgE複合体により活性化されたマスト細胞は,即時型アレルギー反応の実効細胞として働くだけでなく,自ら産生するサイトカインなどを介して慢性炎症を惹起する。一方でマスト細胞は鼻粘膜や気道粘膜でB細胞と相互作用し局所のIgE産生を増強すると,今度はIgEそのものがマスト細胞上のFcεRIの発現を増強し,抗原に対して過敏に過剰に反応するという「アレルギー増悪サイクル」が形成される。 またFcεRIはマスト細胞,好塩基球のみならず,ランゲルハンス細胞,単球/マクロファージ,活性化好酸球や好中球,血小板などの炎症細胞,さらに気道平滑筋にまで発現しているいことが明らかになって来ており,IgE結合の遮断は,IgEによるこれらの細胞の活性化を抑制することになる。またomalizumabはIgE産生へと分化したIgE+B細胞にアポトーシスを誘導し,IgE産生を抑制する。IgEのFcεRIへの結合部位はCε3ドメインにあり,omalizumabはこの部位に対するマウスモノクローナル抗体のCDRを遺伝子工学的にヒトIgGに移植した(95%がヒトIgG)ものを改変しているので,ヒトに対する抗原性が残存している筈である。2007年になって米国FDAから,およそ39,500例の投与患者の中からその0.1%にアナフィラキシーが出現したことが報告され,警告が発せられ,さらに抗原性の低減が要求されている。IgE-FcεRI高親和性結合の阻害はアレルギー治療の有望な戦略であることは間違いなく,外に可溶化ヒトIgEレセプターや,ヒト化抗FcεRIα鎖抗体あるいは,小分子の結合阻害薬などがあり,また最後に若干紹介したい。
  • 中西 憲司
    セッションID: S3-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    従来、アレルギー性炎症はTh2応答が原因で、Th1応答はIFN-γを産生して抗アレルギー作用を発揮すると考えられた。この様な定説に反して、私達はTh1細胞もまた気道過敏性(AHR)を誘導することを見いだした。Th1細胞は抗原刺激を受けるとIFN-γを産生する。ところが、抗原+IL-2+IL-18刺激を受けると、IFN-γとともに、気管支喘息の原因となるIL-13、更にIL-3、GM-CSF、RANTESなども産生する。ヒトTh1細胞の場合も同様である。この様なTh1とTh2サイトカインを同時に産生する特殊なTh1細胞をスーパーTh1細胞と呼ぶ。私達は、抗原特異的メモリーTh1細胞を有するマウスに、OVA+IL-18を経鼻投与するとスーパーTh1細胞が誘導され、気管支周囲の好酸球浸潤とAHRが誘導されることを報告してきた(Sugimoto et al., J Exp Med, 2004)。以下、私達は、Th1型気管支喘息モデルを作製し、病原体成分で誘導されたIL-18が原因で気管支喘息が誘導され、IL-18の阻害で抑制されることを見いだしたので報告する。
     正常マウスをOVAとフロイント完全アジュバントで免疫し、能動型Th1マウスを作製した。OVA単独の経鼻投与だけでは気管支喘息を発症しないが、OVA+IL-18を投与すると、IFN-γとIL-13が産生され、前者が原因でAHR、後者が原因で肺繊維化が起こる。次に、病原体成分(LPS)を経鼻投与し、内因性IL-18依存性のTh1型気管支喘息が誘導されるか検討した。その結果、OVA+LPS投与でもAHRが誘導され、抗IL-18抗体でIL-18を中和すると、AHRが抑制された。この実験系は上気道感染で増悪するヒト気管支喘息の実験モデルと考えられることから、感染増悪型気管支喘息は、IL-18の阻害で抑制される可能性が示唆された。
シンポジウム4 特異抗原をターゲットとしたImmunotherapy
  • 岡田 全司
    セッションID: S4-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    1998年、米国CDC及びACETは新世代の結核ワクチン開発の必要性を発表した。しかしながら、BCGワクチンに代わる結核ワクチンは欧米でも臨床応用には至っていない。我々はBCGワクチンを凌駕する強力な結核予防ワクチン(HVJ-エンベロープ/Hsp65+IL-12 DNAワクチン)を開発した。 マウスの系ではBCGをはるかに凌駕する結核ワクチンは少ない。結核免疫を強く誘導するヒト結核菌由来のHsp65蛋白をコードするDNAを用いた。プライム・ブースター法を用い、Hsp65 DNA+ IL-12 DNA (HVJ-エンベロープベクター)のワクチンはBCGよりも1万倍強力な結核予防ワクチンであることを明らかにした。このワクチンは、結核菌由来のHSP65蛋白抗原特異的な、CD8陽性キラーT細胞の分化を増強し、IFN-γ産生T細胞の分化も増強した。抗原特異的なキラーT活性とワクチン活性は相関し、IFN-γ産生細胞の増強もワクチン効果が相関した。肺の結核病理像の改善効果も示した。 このワクチンはマウスで多剤耐性結核菌に対しても治療ワクチン効果を示した。 さらに、ヒト結核感染モデルに最も近いカニクイザル (Nature Med. 1996)を用い、このワクチンの強力な有効性を得た。カニクイザルにワクチン接種後ヒト結核菌を経気道投与し、1年以上経過観察した。免疫反応増強及び胸部X線所見・血沈、体重の改善効果が認められた。また、生存率改善・延命効果も認められた。 BCGワクチン・プライム-DNAワクチン・ブースター法を用いた群は100%の生存率を示した。一方、BCGワクチン単独群は33%の生存率であった。成人に対して切れ味の鋭い強力な新しい結核ワクチンが切望されているが、BCGワクチンは乳幼児でほぼ全員に施診されていることよりHSP65DNA+IL-12DNAワクチンが強力な成人ワクチンとなることが示唆された。
  • 清野 宏
    セッションID: S4-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    ボーダレス化、グローバル化していく状況は、我々が新興・再興感染症の驚異に常に曝される結果を生んでいる。その対策に向けた一つの大きな柱として、粘膜免疫システムを駆使した次世代ワクチン開発が期待されている。宿主に必須な生理的機能を果たす呼吸器、消化器に代表される組織・臓器は、常に外部環境に直接暴露され病原微生物の侵入経路であり、この表面を覆う粘膜には柔軟かつダイナミックな「粘膜免疫機構」が存在している。粘液と上皮細胞層による物理的バリア、そして、抗菌分子・ペプチド・TLR・NODなど豊富な自然免疫関連分子・物質を用いた粘膜面特有な物理的・化学的・生物的・免疫的バリアを構築している。さらに、腸管・呼吸器粘膜面に存在するパイエル板、鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)は、抗原取り込み細胞として知られているM細胞が高頻度で存在するFAEと呼ばれる特殊な上皮細胞層に覆われており、獲得免疫誘導の場として存在している。このM細胞を起点とする巧妙なMALTを介した汎共通粘膜免疫誘導システム(CMIS)を作動させることで、感染防御に必要な抗原特異的分泌型IgAや傷害性T細胞の誘導・制御を行っている。つまり、粘膜免疫機構はユニークな自然免疫・獲得免疫を駆使して外界と対峙する第一線のバリアを形成している。粘膜免疫誘導ネットワークを駆使・応用したワクチン投与は全身系にも効果的に抗原特異的免疫応答を惹起することから、粘膜ワクチンは生体免疫系が有している二段階構えの防御システムを効果的に作動させる事が出来る。この巧妙かつダイナミックな粘膜免疫システムを基盤としたワクチン開発が新規の感染症予防・対策戦略に結びつけていく事が重要である。
  • 岡 芳弘, 坪井 昭博, 川瀬 一郎, 杉山 治夫
    セッションID: S4-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    WT1は癌遺伝子としての働きを有し、また、多くの種類の造血器腫瘍や固形癌で発現していることを我々は見出した。また、我々や他のグループにより、その遺伝子産物であるWT1タンパクは高い免疫原性を有し癌抗原として機能することが示された。これらのことは、WT1タンパクは特異的癌免疫療法の標的抗原として適していることを示唆する。これらを背景として、我々は、WT1を標的とした癌免疫療法(癌ワクチン)の開発に着手した。同定されたCTLエピトープとなるWT1ペプチドをWT1ワクチン臨床試験(つまり、translational research)として癌患者に投与すると、多くの患者でWT1特異的免疫反応が誘起された。さらに、白血病細胞の減少や固形癌の縮小などのclinical responseが観察された患者も存在し、WT1ワクチンは将来の癌治療の有望な選択肢の一つであることが示唆された。今後、癌ワクチンの効果をさらに増強させるための研究が重要であることはもちろんのことであるが、癌ワクチンは抗癌剤ほどの即効性は期待し難いため、癌ワクチンの最適投与settingや抗癌剤との併用に関する検討も臨床的に重要な課題である。
  • 西村 泰治
    セッションID: S4-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    ヒトの肝細胞癌組織と正常組織におけるcDNAマイクロアレイ解析により、肝細胞癌に高発現する遺伝子としてGlypican-3 (GPC3)を同定した。GPIアンカー膜蛋白質であるGPC3は、肝細胞癌患者の約40%の血清中に検出される新規癌胎児性抗原であり、αフェト蛋白、PIVKA-IIにつぐ肝細胞癌の第3の腫瘍マーカーとして有用であることを示した(BBRC 306: 16, 2003)。さらにGPC3の癌免疫療法への応用をめざして基礎研究を行い、以下のような成果を得た。マウスにGPC3ペプチドを負荷した骨髄細胞由来樹状細胞を投与した後に、マウスGPC3を発現させたマウス大腸癌細胞株を移植することにより、自己免疫現象などの有害事象を伴うことなく、著明な腫瘍の増殖抑制ならびにマウスの生存期間の延長を誘導できた(Clin. Cancer Res. 10: 8630, 2004)。また、我々はマウス胚性幹 (ES) 細胞から樹状細胞(ES-DC)を分化誘導する方法を開発しているが(Blood 101: 3501, 2003)、マウスGPC3を発現するES-DCを樹立しマウスに免疫したところ、GPC3発現マウス癌細胞株に対する in vivo 抗腫瘍効果の誘導が観察された(Cancer Res. 66: 2414, 2006)。さらに、HLA-A2トランスジェニックマウスや、癌患者の血液検体を利用して、HLA-A2あるいはA24によりヒト・キラーT細胞に提示されるGPC3ペプチドを2種類同定した。これらのペプチドで癌患者のリンパ球を刺激することにより、GPC3発現ヒト肝細胞癌細胞株を傷害するヒト・キラーT細胞を誘導できた (Clin. Cancer Res. 12: 2689, 2006)。これらのHLA拘束性GPC3ペプチドを用いた肝細胞癌の免疫療法に関する臨床試験を、国立がんセンター東病院で医師主導型探索医療として開始した。
  • 石井 保之
    セッションID: S4-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    現在、様々な花粉症や通年性アレルギー性鼻炎を対象とするアレルゲン特異的Immunotherapyもしくは減感作療法が、根本的な治療法として実施されている。しかしながら、長期間の通院治療を要することや作用機構が解明されていないことなどから、一般にお普及していないのが現状である。我々は免疫制御機構を利用したスギ花粉症治療ワクチンの研究を進めている。ワクチンの組成物として、まず生体内でアレルゲン特異的に免疫制御機構を誘導することを目的に、アレルゲンタンパク質と制御性細胞活性化分子を包含した免疫制御リポソームを考案した。モデル実験として、卵白アルブミン(OVA)とNKT細胞を活性化するCD1dリガンドを封入した免疫制御OVAリポソームをOVA免疫したマウスに投与した結果、追加免疫で惹起される二次的なIgE抗体産生が有意に抑制されることを確認した。これらのマウスは、数ヶ月後のOVA追加免疫においてもIgE抗体の上昇が認められなかったことから免疫制御OVAリポソームは長期間免疫寛容を誘導できることが示唆された。免疫制御OVAリポソームを投与されたマウスの脾臓細胞を解析した結果、樹状細胞やマクロファージ以外に、B細胞にも免疫制御OVAリポソームが取り込まれ、V14 NKT細胞との会合でIL-10を産生され、制御性細胞を誘導することが示唆された。現在、スギ花粉症ワクチンとして、アナフィラキシーの危険性がないように設計された組換えCryj 1-C。ryj 2融合蛋白質を封入した免疫制御リポソームを製造し、その薬効を確認している。本ワクチン投与によって、スギ花粉飛散前にアレルゲン特異的な免疫制御機能を高めておくことができれば、スギ花粉飛散期のIgE抗体産生が抑制され、免疫寛容の誘導が持続すれば、その後のアレルギー症状の軽減と長期的な治療効果が期待できる。
ランチョン教育講演
  • 田中 良哉
    セッションID: L-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     関節リウマチ(RA)は滑膜炎を病変の主座とし、しばしば関節外症状を併発する全身性自己免疫疾患である。RAの治療目標は疾患制御と関節破壊の進展抑制であり、メトトレキサート(MTX)を中心とした抗リウマチ薬による治療を基本とする。しかし、抗リウマチ薬では関節破壊進行を十分に抑制できないことが明らかになり、病態形成過程で中心的な役割を担うTNF-αを標的とした生物学的製剤が導入され、本邦では4年前に抗TNFαキメラ抗体インフリキシマブが市販された。
     インフリキシマブの登場は、RA治療に大きな変遷を齎した。本邦に於けるRECONFIRMスタディでは、インフリキシマブとMTXの併用により平均約10年罹患のRA患者の3割に寛解導入を可能にした。また、早期RAに対するインフリキシマブ療法を評価したASPIREスタディでは、高率な寛解導入により関節破壊を制御できることが報告され、早期からの使用が強調されるに至った。さらに、本治療による心血管障害抑制を介する生命予後の改善が報告される。即ち、インフリキシマブとMTXの使用によりRAの治療目標が、臨床症候の改善に留まらず、(1)寛解導入、(2)関節破壊進行制御、(3)生命予後改善にパラダイムシフトした。
     さらに、早期RAを対象としたBeStスタディでは、MTX+インフリキシマブで臨床的寛解導入後に50%の症例がインフリキシマブを中止して4年間寛解を維持し、17%は治療フリーにまで至った。インフリキシマブの中止後の寛解維持については、本邦でも評価が進行する(RRRスタディ)。
     以上、インフリキシマブの適正使用により、RA治療のゴールとしての臨床的寛解、画像的寛解、そして、両者の上に成り立つ完全寛解(治療フリー)の可能性が現実味を帯びてきた。インフリキシマブのポテンシャルを最大限に活かし、完全寛解を「目指した」治療の実践こそが、新たなる課題であると思われる。
  • 高柳 広
    セッションID: L-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     骨格系と免疫系の細胞は、サイトカインをはじめ多くの制御因子を共有し、骨髄という共通の微小環境で分化増殖する。このため、免疫の異常は骨代謝に大きな影響を与える。T細胞は、破骨細胞分化因子RANKLを介して関節リウマチなど炎症性骨破壊の病態に関与するが、最近、自己免疫病態に深く関わるTh17細胞がT細胞活性化と骨破壊をつなぐ破骨細胞誘導性T細胞サブセットであることが明らかになった。
     また、破骨細胞分化を制御するRANKLをはじめ、免疫グロブリン様受容体、ITAMシグナル、破骨細胞マスター転写因子であるNFATc1など、多くの破骨細胞制御分子が免疫制御分子でもあることから、破骨細胞など骨の細胞と免疫細胞が共通のメカニズムで制御されることが解明された。今後、免疫疾患や骨疾患の治療において骨免疫学的な視点がますます重要性を増すと考えられる。
  • 廣畑 俊成
    セッションID: L-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     ベーチェット病は、再発性口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼病変を4大主症状とする原因不明の症候群である。特殊な場合を除き、一定の部位の炎症が慢性に持続するのではなく、急性の炎症が反復し、増悪と寛解を繰り返しつつ遷延した経過をとるのが特徴である。特殊病型として、腸管ベーチェット、血管ベーチェット、神経ベーチェットの3型があり、本症の臨床においては眼病変の治療とともに極めて重要なウェートを占める。
     本症の病因は不明であるが、HLA-B51と関連した遺伝的素因と何らかの外因が発症に関与すると考えられている。
     本症の病態形成にあたっては、Tリンパ球の異常反応に基づくサイトカインの産生に基づくと考えられる好中球の機能(活性酸素産生能・遊走能)の亢進が重要であると考えられている。患者Tリンパ球をin vitroで刺激培養すると、対照群に比して、特に連鎖球菌抗原や大腸菌抗原に対して過剰に反応してIL-6やIFN-γを産生する。同様に、患者Tリンパ球は対照群Tリンパ球は反応し得ないような低濃度のスーパー抗原Staphylococcus enterotoxin(SE)BやSEC1に対して反応して、IFN-γを産生するが、低濃度あるいは高濃度の抗CD3抗体に対する反応性は対照群と差がない。従って、ベーチェット病患者のTリンパ球の過敏反応性は、抗原レセプターを介したシグナル伝達の異常によるものと考えられる。本症の治療を考える上で、上記のような病態を頭に入れておくと理解し易い。すなわち、コルヒチンは好中球の機能を抑制し、免疫抑制薬のシクロスポリンはTリンパ球の活性化を抑制することにより、ベーチェット病の病態形成を阻害するものと考えられる。
    一部の患者には、痴呆様の精神神経症状が見られ、治療抵抗性で徐々に進行し、ついには人格の荒廃をきたしてしまう(慢性進行型神経ベーチェット)。慢性進行型神経ベーチェットでは髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すのが大きな特徴で、メトトレキサートの少量パルス療法が有効であることが示されている。
  • 山中 寿
    セッションID: L-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年、関節リウマチ(RA)の薬物治療は大きな進展を遂げた。生物学的製剤をはじめとする新たなクラスの薬剤が投与可能となったことは進歩に大きく寄与したが、多くの疫学的研究の結果として、RAに対する治療戦略自体が大きく変わったことも忘れてはならない。確固たる治療戦略に基づき、適切な治療薬を選択することが、治療学を進歩させ、病に苦しむ患者に対しての恩恵となることは疑いない。
    しかしながら、これらの臨床的エビデンスの多くは海外発のものであり、国内の臨床現場にそのまま応用できるか否かに関しては、考慮が必要な場合がある。特に、薬剤の至適投与量や安全性に関しては人種差が意外に大きいことも知られており、注意を要する。
    日本の臨床医にとって必要なのは、日本人のRA患者において新しい治療戦略や新しい治療薬が有用であるかどうかの情報である。したがって、日本のリウマチ診療におけるエビデンス作りが非常に重要である。
    東京女子医大膠原病リウマチ痛風センターでは、2000年からIORRA(J-ARAMIS)と名付けた大規模なコホート研究を実施している。IORRAに集積された膨大なデータを分析することにより、現在のリウマチ診療における問題点や、unmet needsが見えてくる。
    現在のRA治療では、生物学的製剤などの強力な治療薬により疾患活動性を制御し、関節破壊進行を防止することによって長期的QOLの改善をはかること(Cure)が強調されている。しかしながら、既に長期にわたり罹患し、関節変形の進んでいる患者に対しては、疼痛管理を始めとする短期的QOLの改善を目指すこと(Care)もまた必要である。後者はともすれば忘れがちであるが、その重要性が減ずることはない。
    本年6月、コキシブ系COX-2選択的阻害剤「セレコキシブ」が我が国においても臨床使用が可能となった。安全性の高いNSAIDが登場したことにより、RA治療のCareの部分が更に安全かつ容易になることが期待される。今後、これらの薬剤が日本人においてどれくらい有用であるかを検証することが必要になるが、IORRAのシステムを用いた検討を考えているところである。
    RA診療におけるエビデンス構築について、IORRAデータを中心に解説する。
  • 石黒 直樹
    セッションID: L-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチは免疫学的な異常を背景に起こる疾患である。主症状は関節炎、関節破壊で、これに由来する障害が患者を苦しめる。関節病態の主役は滑膜の増殖性変化であり、多量に産生される分解系酵素が関節軟骨を破壊する。病態を反映するマーカーとして種々のものが考えられているが、大きくは (1)診断マーカー:鑑別診断に有用、必ずしも病勢を反映する必要はない。リウマチ因子が代表。(2)病勢マーカー:病状の把握に有用、すべてが鑑別診断に使用できる訳ではない。CRP、血沈等が代表的、に分類可能である。本来ならば関節リウマチの病態を反映して、その両方に用いることが出来るマーカーが優れる。現在、その条件を比較的良好に満たす候補としてMMP-3が考えられる。MMP-3は関節リウマチでは増殖した滑膜細胞により産生され、それが血液中に流れ出した物と考えられる。関節内ではMMP-3は効率よく関節軟骨基質を破壊できる能力を持つので、血清中MMP-3に反映される病状は関節破壊が進行している最中と理解できる。講演では関節リウマチ関節軟骨破壊でのMMP-3の役割とそれを低下させる治療は関節保護の観点からは重要である。血清中MMP-3の低下が確実に行われれば、関節破壊は最小限に留まる可能性がある。近年の生物学的製剤による治療はそれを可能としつつある。
ワークショップ
ワークショップ1 臨床免疫学の将来を示唆するミッドウィンターセミナー
  • 山本 元久, 苗代 康可, 山本 大輔, 五十嵐 央祥, 村上 佳世, 小原 美琴子, 鈴木 知佐子, 山本 博幸, 高橋 裕樹, 篠村 恭 ...
    セッションID: W1-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Mikulicz病(MD)や自己免疫性膵炎(AIP)は、腺組織中へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする疾患である。これらの疾患概念の認識が急速に普及し、報告数も増加している。そこで我々は、当科におけるIgG4-related plasmacytic disease40例の臨床的特徴を解析した。 【対象・方法】当科を受診し、高IgG4血症及び組織中にIgG4陽性形質細胞浸潤を確認し得た40例を対象とし、腺分泌機能、血清学的評価、合併症、治療内容、予後について検討した。 【結果】男性は11例、疾患の内訳は、MD 33例、Kuttner腫瘍3例、IgG4関連涙腺炎4例であった。唾液腺分泌能低下は27例、涙腺分泌能低下は24例にみられた。抗核抗体陽性は6例、抗SS-A抗体陽性は1例のみ、低補体血症を呈したのは12例であった。また5例にAIP、6例に間質性腎炎、後腹膜線維症の合併を認めた。臓器障害を有する症例はPSL40~50mg/日、涙腺・唾液腺腫脹のみの症例はPSL10~30mg/日から治療が開始され、速やかに腺腫脹及び分泌機能の改善が得られた。観察期間は最長16年であるが、3例で再燃を認めた。 【結論】IgG4-related plasmacytic diseaseを全身性疾患ととらえ、涙腺・唾液腺などの局所病変を契機に診断された場合も、臓器障害合併を念頭に積極的な全身検索を行う必要がある。また治療は腺分泌能の改善が期待されるため、積極的にステロイド治療を行うのが望ましいと考えられる。
  • 中里 款, 野々村 美紀, 宮坂 信之, 上阪 等
    セッションID: W1-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    目的)アデノウイルスベクターを用いたサイクリン依存性キナーゼ(CDKI)関節内遺伝子治療は関節リウマチ(RA)モデルマウスに著効する。しかし、アデノウイルスベクターは安全性に問題があるために臨床応用が困難である。近年、TNF阻害薬などの組み換え蛋白生物学的製剤がRA治療に広く用いられている。CDKIが細胞内でCDK活性を抑制して細胞周期の進行を停止させることから、細胞膜透過型CDKIタンパクの開発を目的とする。 方法)細胞膜透過性ドメイン(TAT-PTD)融合p27Kip1 CDKIタンパク(TAT-p27)を作成する。精製条件により立体構造の異なる変性・非変性型の産物をそれぞれRA滑膜線維芽細胞(RSF)の培養上清に添加し、導入効率、増殖抑制能、細胞傷害性を検討する。またCDKIはRAにおける関節破壊に関与するプロテアーゼMMP-3の産生を抑制することが報告されているため、上清中のMMP-3を測定する。 結果)TAT-p27は濃度依存的にRSFの細胞内に導入された。TAT-PTDに関する過去の報告とは逆に、非変性型は変性型より導入効率が高く、RSFの細胞増殖抑制およびMMP-3の産生抑制においても変性型の8-16倍の比活性を示した。すべての投与条件においずれのTAT-p27もRSFへの細胞傷害性を示さなかった。 考察)TAT-p27はRSFの細胞内に導入され、細胞増殖、MMP-3産生を抑制する。非変性型TAT-p27は変性型より導入効率、活性がともに高い。今後は非変性型TAT-p27のin vivo RAモデルへの応用を図りたい。
  • 鈴木 勝也, 瀬戸山 由美子, 鈴木 美由紀, 吉本 桂子, 亀田 秀人, 津坂 憲政, 天野 宏一, 竹内 勤
    セッションID: W1-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]自己免疫疾患における制御性T細胞(Treg)の量的質的異常が報告され、その病因的役割が注目されている。他方、新たなT細胞活性化阻害薬およびTNF阻害薬が上市され、その高い有用性が認められている。しかしながら、これらの治療薬のTregへ与える影響については十分解明されていない。 [方法]健常人およびRA患者末梢血からT細胞を分離後、抗CD3/抗CD28抗体、T細胞活性化阻害薬(Tacrolimus)および抗TNFalpha抗体(Infliximab)等を用い各種条件下で培養。FOXP3陽性Treg割合、T細胞表面分子発現およびサイトカイン産生量を測定した。またRA患者における治療薬投与前後の末梢血Tregの割合を測定した。 [結果]in vitroの系では健常人およびRA患者ともTregの割合に有意な変化を認めたが、RA患者における治療薬投与前後の比較ではTregの割合の変化は有意ではなかった。 [結論]治療薬が制御性T細胞(Treg)へ影響を与えている可能性があるが、その臨床的意義についてはさらなる検討が必要と考えた。
  • 高橋 令子, 伊藤 貴子, 石井 智徳, 岡 友美子, 高澤 徳彦, 石井 恵子, 平林 泰彦
    セッションID: W1-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織の濾胞樹状細胞など免疫担当細胞中にヒトパルボウイルスB19(B19)が存在することを認め、またin vitroで、単球系細胞株U937 にB19が感染することを明らかにしてきた。本研究は、in vitro で、B19とヒト単球由来樹状細胞 (MDDC) の関係を検討した。 方法は、1.健常人由来MDDC培養液中にB19含有血清添加したものとしないものを用意し、MDDCの細胞表面マーカーの発現をFACSにて比較した。また、上清中のIL-12濃度をELISAにて比較した。 2.MDDC培養液中にB19含有血清添加したものとしないものを用意し、MDDCとautoもしくはalloのCD4T細胞のリンパ球混合試験(MLR)を行った。 3.共焦点顕微鏡で、蛍光標識したB19の細胞内分布を観察した。 結果は、1.MDDCにB19含有血清添加したものにおいて、CD83の発現が低下した。LPS刺激下MDDCにB19含有血清添加すると、IL-12の産生が上昇した。 2.LPS刺激下MDDC培養液中にB19含有血清添加すると、MLRが亢進した。 3.蛍光標識したB19は、MDDCのearly endosome markerとmergeした。 上記の結果は、in vitroでB19が樹状細胞の成熟、抗原提示などの機能に影響する事を明らかにし、RA患者の滑膜組織中樹状細胞におけるB19の役割を示唆する。
  • 濱口 儒人, 藤本 学, 長谷川 稔, 松下 貴史, 竹原 和彦
    セッションID: W1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】非選択的エンドセリンレセプター拮抗剤であるボセンタンの免疫調整剤としての役割を検討した。【方法】肺高血圧症を伴う全身性強皮症10例に対し、ボセンタンを投与した。投与前後で血清を採取し、Th1サイトカインであるIL-2、IL-12、IFN-γ、Th2サイトカインであるIL-4、IL-6、IL-10をELISA法により測定した。また、ボセンタンの臨床的効果を検討するため、投与前後で心エコー上での推定右室圧、6 分間歩行距離(6MWT)、血漿BNP濃度を比較した。【結果】平均観察期間は5.8ヶ月であった。推定右室圧は投与前の49mmHgから37mmHgへ有意に低下した。6MWTではボセンタン内服後に平均14%、約61m歩行距離が延長し、血漿BNP濃度は低下する傾向があった。Th2サイトカインであるIL-6、IL-10はボセンタン投与前後で変化はなかった。一方、Th1サイトカインであるIL-12はボセンタン投与により有意に上昇した。IL-2、IL-4、IFN-γは測定感度以下だった。ボセンタン投与後の血清IL-12濃度と推定右室圧は負の相関を示す傾向があった。【考察】過去の我々の検討で、IL-12の上昇は臨床症状の改善とともにみられることが明らかになった。ボセンタンはサイトカインバランスをTh2からTh1にシフトさせている可能性があり、ボセンタンにはエンドセリン拮抗剤としての作用のみならず、免疫調整剤としての機能も有していることが示唆された。
  • 藤木 文博, 岡 芳弘, 川勝 真衣, 坪井 昭博, 原田 ゆきえ, 中島 博子, 李 哲雨, 西田 純幸, 白方 俊章, 保仙 直毅, 川 ...
    セッションID: W1-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目 的】我々は現在WT1ペプチド(CTLエピトープ)による癌の免疫療法の臨床試験を行っており、これらの患者検体を用いて、担癌患者における癌抗原に対する免疫応答の解析を行っている。我々は最近、HLA class II分子に結合しWT1特異的Th1-typeCD4陽性T細胞を誘導可能なWT1332ペプチドを同定した。しかし、担癌患者体内にWT1332特異的CD4陽性T細胞が存在するかどうか、また、そのようなWT1332特異的CD4陽性T細胞の働きに関しては未知である。そこで今回、リアルタイムPCRを用いて、WT1332による刺激により患者末梢血中のCD4陽性T細胞のIFN-γ、およびIL-10の発現量が変化するか検討した。【結果】担癌患者のCD4陽性T細胞におけるspontaneousなIFN-γの発現は健常人と比べて有意に高かった。また、IL-10に関しては健常人と比べて有意な差は認められなかった。さらにWT1332刺激に対しての反応は、IFN-γを発現するものやIL-10を発現するものなど様々であった。WT1ワクチンの前後で比較すると、ワクチン前に比べてワクチン後でCD4陽性T細胞におけるWT1332ペプチド刺激特異的なIFN-γの発現が増加する傾向があること、また、IFN-γとは反対に、ペプチド刺激特異的なIL-10の発現はワクチン後に減少する傾向があることが見出された。
  • 知念 寛, 小林 拓, 久松 理一, 日比 紀文
    セッションID: W1-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年の研究により、マウスの腸管には、lineage marker陰性、c-kit陽性(lin- c-kit+)の免疫担当細胞の前駆細胞が存在することが知られている。しかしヒトの腸管にこのような細胞が存在するかについては明らかにされてはいない。 今回我々はヒト成人の腸管粘膜内にもlin- c-kit+細胞が存在していることを明らかにした。これらの細胞の表面抗原の発現はT/NK共通前駆細胞と酷似していた。また、RT-PCRによる解析では、NK細胞の分化において重要なId2、PU.1、SpiB1などの転写因子が胸腺細胞と比較して高発現していた。 このlin- c-kit+細胞をin vitro で培養したところ、その多くはCD3- CD56+ c-kitdim の未熟NK細胞と考えられる細胞へと分化した。我々は、このlin- c-kit+細胞より培養分化させたNK細胞を、ヒト成人の末梢血中、腸管粘膜固有層中、腸管上皮間中のNK細胞と比較した。培養分化させたNK細胞は末梢血中のそれとは表面抗原の発現やサイトカイン産生能、細胞傷害活性の程度などで異なっていたが、腸管内のそれとはほぼ一致していた。 このlin- c-kit+細胞をRAG-2KOマウスに移入すると、マウス腸管粘膜に生着したがNK細胞へは分化しなかった。この細胞を移入したマウス腸管より分離したヒトlin- c-kit+細胞をヒトサイトカイン存在下で培養するとNK細胞へと分化した。 我々は更に腸管内NK細胞と炎症性腸疾患との関連について検討し、クローン病では腸管内のNK細胞が増加していること、そして腸管でのNK細胞の分化が亢進していることを明らかにした。 以上のことから、ヒト成人の腸管粘膜は独立したNK細胞の分化の場であり、腸管内のNK細胞は粘膜免疫の恒常性維持に関与していると考えられた。
  • 高橋 尚美, 森尾 友宏, 松本 健治, 齋藤 博久, 南木 敏宏, 宮坂 信之, 東 みゆき, 水谷 修紀
    セッションID: W1-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    ICOS欠損症は世界的にも稀な疾患で、発症年齢が高いことや、一般的なCVIDと同様の、感染の反復や低IgGが見られる程度で、場合によっては重篤な症状が見られないために、その発見は未だ少ない。本症例は、本邦における初めてのICOS欠損症として同定された。 姉は現在40歳で、2001年に虫垂炎、肺膿瘍、卵巣嚢胞を起こし、検査にて低ガンマグロブリン血症を指摘された。感染の反復、低IgG、B細胞の減少によりCVIDと診断された。また、炎症性腸疾患、乾癬様湿疹および間接リウマチなどの自己免疫疾患を合併している。CD20細胞は3%程度でCD27+δ-細胞は減少、CD4細胞ではCD45RA+細胞が増加、T細胞レセプターレパトアに大きな偏りはない。FACS解析にて刺激後のICOS発現が欠如しており、配列解析により、exon2にhomoで1塩基欠失があり、細胞外領域にて終止コドンが形成されることが明らかになった。ICOS遺伝子に同じ変異を持つ弟は、IgGは611mg/dlで、明らかな易感染性はないが、外耳道炎、蜂窩識炎を反復し、抗菌薬の静注を必要とすることがある。 ICOS-ICOSリガンドのシグナルはcollagen-induced arthritisなどの関節炎、そのほかの自己免疫疾患にて重要な働きを示すことが示唆されており、この症例における関節リウマチの発症機構解析についても紹介する。
ワークショップ2 自己抗原・自己抗体‐診断・治療への展開‐
  • 阪口 薫雄, 戸田 哲平, 前田 和彦, 五十嵐 英哉, 桑原 一彦
    セッションID: W2-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     自己抗体産生は自己免疫疾患における病因、病態と関連している。自己抗体産生B細胞は正常では末梢のリンパ組織ではほとんど活性化されず、自己抗体を体内に増加させる事は無い。このように生体ではT細胞における選別によるばかりでなく、B細胞の選別も行われていて、その結果末梢での自己トレランスが成立している。自己反応性のB細胞が骨髄などの中枢のリンパ組織で排除される、あるいはB細胞抗原受容体(BCR)の改変(receptor editing)によって、末梢のB細胞は自己抗原に反応しないものとされている。
     自己免疫疾患ではこのようなBCR改変の変化が起こっている可能性が提起されている。本研究では自己免疫疾患New Zealand Black(NZB)マウスをモデルとして、自己免疫疾患とBCRのreceptor editingに因果関係が存在するのかどうかを検証した。NZBマウスでは確かに、BCRのreceptor editingに必要な免疫グロブリン遺伝子の再構成をeditingする為に必要なRAG1の発現が変化していて、この事が自己抗体産生B細胞を生み出す原因となる可能性が示唆された。我々は、これに関連する機能分子を末梢のリンパ組織で発現する分子群に着目して解析を行っている。
     自己抗体産生は免疫難病の重要な研究テーマであるが、その分子機序の解明に有力な情報を提供する。
  • 佐藤 毅, 藤井 隆夫, 吉藤 元, 野島 崇樹, 大村 浩一郎, 臼井 崇, 三森 経世
    セッションID: W2-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>抗核抗体の病原性を明らかにすることを最終的な目的とし,MRL/lprマウス脾細胞から抗核抗体を産生するB細胞ハイブリドーマ(HD)を分離した.<方法>30週齢のMRL/lprマウス脾細胞を用い,ミエローマ細胞SP2/0-Ag14との融合を行った.HAT選択培地下で生存したB細胞HD培養上清が認識する核抗原を1)HeLa細胞を抗原としたRNA免疫沈降法(RNA-IPP),2)リコンビナント蛋白を抗原としたELISA,3)培養細胞抽出物を抗原とした免疫ブロット法(IB)によりスクリーニングした.<結果>抗核抗体を産生するHDが3種類(Hy11,64,104)得られた.1)Hy11上清はRNA-IPPで5.8SリボソームRNAを沈降したが,ヒトリボソームP抗原を固相化したELISAでは陰性であった.2)Hy64上清はRNA-IPPで陰性,ELISAでは全U1RNP/U1RNP-70Kに反応したが,ヒトHeLa細胞を用いたIBでは45kDaに反応し70K蛋白のアポトーシス産物であるU1RNP-70Kapopを認識すると考えられた.3)Hy104上清はRNA-IPPでU1RNAを沈降,ELISAで全U1-RNP/U1RNP-Cに反応し,C蛋白を認識する抗体と考えられた.<結語>これまで報告のないモノクローナル抗U1RNP-70Kapop抗体を含め,SLEと関連する抗核抗体を産生するハイブリドーマを単離した.
  • 小川 文秀, 清水 和宏, 小村 一浩, 原 肇秀, 室井 栄治, 佐藤 伸一
    セッションID: W2-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    Purpose: For protecting oxidative injuries, cell contains multiple antioxidant mechanisms. Methionine sulfoxide reductase A (MSRA) is one of the antioxidant enzyme peptides, which repairs oxidized methionine, methionine sulfoxide, into methionine. Recently, MSRA is suggested to play a protective role against oxidative stress including ischemic/hypoxic injury. Methods: Serum anti-MSRA autoantibody (Ab) levels were examined in 70 patients with SSc by ELISA. Results: Serum anti-MSRA Ab levels were significantly elevated in SSc patients compared to normal controls (mean ± SD; 0.70 ± 0.29, n=70 vs. 0.52 ± 0.15, n=23; p<0.01). Regarding the disease subset, anti-MSRA Ab levels were similar between patients with diffuse cutaneous SSc (n=40) and those with limited cutaneous SSc (n=30). Concerning clinical correlation, anti-MSRA Ab levels significantly increased in SSc patients with pulmonary fibrosis (p<0.05), cardiac involvement (p<0.05), or decreased total antioxidant power (p<0.05) compared with those without pulmonary fibrosis, cardiac disease, or decreased total anti oxidant power. Furthermore, anti-MSRA Ab levels correlated negatively with %VC (r=-0.37, p<0.05) and %DLco (r=-0.26, p<0.05), and positively with renal vascular resistance determined as the PI value (r=0.31, p<0.05). MSRA activity was significantly inhibited by anti-MSRA Ab in the serum of SSc patients. Conclusion: These results suggest that anti-MSRA Ab contributes to the development of the disease severity and activity in SSc by inhibiting one of the antioxidant repair enzymes, MSRA.
  • 唐澤 里江, 増子 佳世, 尾崎 承一, 西岡 久寿樹, 遊道 和雄, 加藤 智啓
    セッションID: W2-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    目的 プロテオミクスを用いて、全身性血管炎患者における抗内皮細胞抗体(AECA)の対応抗原の同定を行う。 方法 ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびHeLa細胞からの抽出蛋白を2次元電気泳動で分離し、血管炎患者血清でWestern blot(WB)を行い、HUVECのみに染まったスポットを内皮細胞特異的自己抗原の候補蛋白として検出・同定し、臨床的意義について検討を行った。 結果 約150個のAECAの対応抗原候補蛋白を検出し、そのうちの同定し得た蛋白は63個であった。その1つは、抗酸化酵素であるPeroxiredoxin2(Prx2)であり、抗Prx2抗体陽性率は血管炎患者で61%(高安動脈炎で88%)、健常人で4%であり、とりわけ大型血管炎で陽性率は有意に高値であった。間接蛍光抗体法にてPrx2がHUVECの細胞膜表面に表出し、更にHUVECのみならず他の血管内皮細胞に発現していることをcell lysateを用いたWBにて証明した。また、抗Prx2抗体は血管内皮細胞からの炎症性サイトカインの分泌を亢進させた。臨床的には、抗Prx2抗体陽性患者血清では陰性患者血清に比べTATおよびDダイマーが有意に高値であり、抗Prx2抗体価は経時的評価にて疾患活動性との相関を認めた。 考察 今回、我々が初めて同定したPrx2に対する自己抗体は血管炎に特異性が高いマーカーと考えられ、血管炎の病態形成に関与している可能性が示唆された。
  • 中川 久子, 堀田 哲也, 吉田 修也, 片岡 浩, 保田 晋助, 渥美 達也, 小池 隆夫
    セッションID: W2-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    背景:インターフェロン(IFN)関連遺伝子のうち、tyrosine kinase 2 (TYK2)とinterferon regulatory factor 5 (IRF-5)の一塩基多型(SNPs)が欧米人集団においてSLEと強く関連することが報告された。 目的:日本人SLEおよび抗リン脂質抗体症候群(APS)患者におけるTYK2およびIRF-5のSNP解析を行い、疾患との関連を検討する。 方法:健常人212人、SLE患者251名(うち42名がAPS合併)、42名の原発性APS患者末梢血からゲノムDNAを抽出した。TYK2のexon 8のSNP(rs2304256)ならびにIRF5のintron 1のSNP (rs2004640, G/T)の判定にはTaqMan genotyping assayを用いた。 結果:健常人におけるTYK2のSNP(rs2304256)のPhe/Phe (A/A)、Phe/Val (A/C)、Val/Val (C/C)の頻度はそれぞれ13.2%、47.6%、39.2%であり、Pheアリル(Aアリル)頻度は37.0%であった。TYK2においては健常人群とSLE群およびAPS群の間に有意な差は認められなかった。IRF-5のSNP (rs2004640)の頻度は、健常人群においてG/G、G/T、TTはそれぞれ45.3%、40.6%、14.2%であり、Tアリルの頻度は34.4%であった。SLE群、APS群におけるTアリルの頻度はそれぞれ41.4%と48.0%であり、両群とも健常人コントロールと比較し有意にTアリルの頻度が高かった(p=0.039とp=0.003)。 結論:日本人集団においてはTYK2のSNPは欧米人と異なりSLEとの関連が認められなかったが、IRF-5に関しては欧米人と同様にSLEとの関連が認められた。SLEの発症に及ぼす遺伝子多型の影響は人種によって異なる可能性が示唆された。さらにIRF-5のSNPはSLEのみならずAPSとの関連があることがはじめて明らかとなった。
  • 田中 枝里子, 石井 優, 梅下 光子, 成川 太希夫, 松下 正人, 片田 圭宜, 大島 至郎, 佐伯 行彦
    セッションID: W2-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]早期関節リウマチの診断は実際困難であるのが現状である。抗CCP2抗体を用いて早期関節リウマチ(RA)診断における有用性を検討した。[対象および方法]2年以内に発症した診断不確定関節炎(UA)患者を対象に1年間追跡した。初診時の血液で、抗CCP2抗体、IgM-RF、CARF、MMP-3、CRPを測定しRAの診断能を比較検討した。[結果]146人が対象となり、期間中18人がRAを、54人が非RA疾患(他の関節症)を発症した。抗CCP2抗体のRA診断能は、感度83.3%、特異度93.0%、診断効率91.7%であり他の単独のバイオマ-カ-と比較して高値であり、バイオマ-カ-の組み合わせにおいても同等で高値であった。またバイオマ-カ-陽性例において抗CCP2抗体の平均濃度はRA患者では非RA患者において有意に高かった(RA:163.7±138.4U/ml, 非RA:55.2±72.0U/ml, p=0.017)。[結論]抗CCP2抗体は単独でもRAの早期診断に役立ち、さらにその濃度も診断に有用であることが示唆された。
ワークショップ3 T細胞サブセット(Th1, Th2, Th17, NKT)と炎症
  • 今井 康友, 安田 好文, 林 伸樹, 松本 真琴, 善本 知広, 水谷 仁, 中西 憲司
    セッションID: W3-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    水酸化アルミニウム(Alum)はTh2をvivoで誘導するが、その機序は不明である。マウス骨髄細胞由来樹状細胞(DC)をAlumで刺激して培養上清中のサイトカインを測定したところ、Caspase-1依存性にIL-1β, IL-18などの分泌がみられた。次に、卵白アルブミン(OVA)単独、またはOVA/Alumと共に培養することでパルスしてOVA-DCとOVA/Alum-DCを得た。これらをマウスのfootpadに皮下投与して免疫した。OVAを皮下投与するとOVA/Alum-DCで著明なOVA特異的IgEの上昇がみられたがOVA-DCでは軽度であった。OVAの吸入暴露において、OVA/Alum-DCでは、メサコリンに対する気道過敏性の上昇、気管支肺胞洗浄液中の好酸球の増加、肺病理標本での炎症細胞浸潤がみられた。このようにAlumと抗原でパルスしたDCを皮下投与することでin vivoでTh2を誘導できたが、同様の実験をCaspase-1 KOマウス由来のDCを用いて行ってもTh2を誘導することができた。このことから、Caspase-1で活性化されるサイトカインの補助無しにTh2が誘導されることが明らかとなった。
  • 李 小康, 北沢 祐介, 東 治人, 猪阪 善隆, 高原 史郎
    セッションID: W3-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]我々は、SuperagonistCD28抗体を用いたin vivoでの優位的にTregを増やし、ラット心移植後グラフトの生着延長効果について報告してきた。今回はラットのGvHDモデルを加えて、活性化Foxp3陽性Tregの動態をターゲットとし、当該抗体の免疫抑制機序について検討した。
    [方法と結果] SuperagonistCD28抗体を投与3日後の6週齢LewisラットおよびNaïveラットの脾臓・リンパ節からT細胞を精製分離し、F1(Lewis x DA)ラットにそれぞれ移植した。抗体投与ラット由来のリンパ球による宿主の局所・全身のGvH反応が顕著に抑制された。宿主ラット末梢血中のFoxP3陽性Treg細胞を経時的に測定したところ、その割合が高水準に維持されことが明らかになった。また、心移植後5日目のグラフトの組織学検討を行い、抗体治療後浸潤リンパ球のFoxP3陽性率が高かった。さらに移植後ラット末梢血中のFoxP3陽性Treg細胞の割合も顕著に増加していた。
    [考察と結語] SuperagonistCD28抗体よりin vivo で優位的に増殖した細胞がGvH反応に対して抑制効果は末梢血中FoxP3陽性Treg細胞の高水準維持されたことによることを示唆した。また、当該抗体の投与によるグラフト生着延長効果は、末梢血中のみならず、グラフト中浸潤細胞のFoxP陽性Treg細胞による免疫抑制が関与していることが示唆された。今後、移植領域においてこの抗体の新しい免疫抑制剤として期待されたい。
  • 平田 真哉, 福島 聡, 松永 雄亮, 池田 徳典, 春田 美和, 植村 靖史, 千住 覚, 西村 泰治
    セッションID: W3-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    自己免疫疾患の治療において、全身的な免疫抑制を伴わない抗原特異的な免疫抑制が求められている。一方で、多くの自己免疫疾患について、その標的となる抗原は、未だ不明であったり、あるいは複数の抗原が標的となったりしていることが知られており、抗原特異的免疫抑制による治療法の開発を困難にしている。我々は、これまでにマウスのES細胞から樹状細胞(ES-DC)を分化誘導する手法を開発してきた。この手法を用いて、マウスES細胞に自己抗原遺伝子であるMyelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) p35-55ペプチドとT細胞抑制性分子のTRAIL遺伝子を導入し、in vitroでDCへ分化させた細胞(ES-DC-TRAIL/MOG)をマウス個体へ投与することにより、MOGペプチドで誘導された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を予防することができた。さらに、ES-DC-TRAIL/MOGを投与された個体は、EAEを誘導できる別の抗原であるMyelin Basic Protein (MBP)ペプチドあるいは蛋白で誘導されたEAEの発症さえも予防できた。そして、この予防効果には、CD4+CD25+制御性T細胞の関与が認められた。以上の結果は、抗原特異的な制御性T細胞の誘導による組織抗原特異的な免疫抑制療法という新たな可能性を示唆していると考えられる。
  • 阿部 淳, 石川 昌, 上羽 悟史, 鈴木 淳, 松島 綱治
    セッションID: W3-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)の量的、質的異常が多くの自己免疫疾患の背景に存在することが明らかとなりつつある中で、全身性エリテマトーデス(SLE)におけるTreg動態については不明な点が多く残されているのが現状である。我々は、加齢に伴ってヒトSLEに酷似した症状を呈する(NZB x W)F1(BWF1)マウスを用いて、その病態形成過程におけるTregの解析を行った。予想に反して、ループス腎炎発症後のBWF1マウスでは、in vitroで正常な抑制能を示すFoxp3陽性Tregが発症前のマウスに比して増加していた。さらに、B細胞濾胞内およびその近傍に局在することや表面分子の発現パターンから、加齢BWF1マウスのTregは高い活性化状態にあることが示唆された。一方、BWF1マウスの病態形成にはB1細胞が重要な役割を果たすことが知られており、我々は過去にB1細胞が自己反応性CD4陽性T細胞を活性化する可能性を見出している。最近の研究からTregも自己反応性T細胞集団であると考えられるため、この視点からB1細胞によるCD4陽性T細胞への影響をさらに解析したところ、B1細胞によって活性化されたCD4陽性T細胞の一部がFoxp3を発現することが明らかとなった。以上より、ループス腎炎発症後のBWF1マウスにおけるTregの増加に、B1細胞が関与する可能性が示唆された。
  • 片岡 浩, 川瀬 義明, 堀田 哲也, 保田 晋助, 渥美 達也, 小池 隆夫
    セッションID: W3-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】CD25+CD4+制御性T細胞(Treg)は、特異的にFoxp3遺伝子を発現し、末梢免疫寛容の維持に寄与している。Tregと非制御性T細胞(non-Treg)との異常バランスは、強皮症におけるnon-Tregの関与する線維化を進展させる可能性がある。表面マーカーによるTregとnon-Tregとの区別には、CD25 およびFoxp3の発現量と逆相関するCD127(IL-7Rα)が有用である。本研究では、強皮症患者末梢血におけるTregとnon-Tregのバランスについて検討した。 【方法】19名(うち女性16名)の強皮症患者および30名(うち女性22名)の健常人末梢血よりCD4+T細胞を分離し、CD25、CD127、Foxp3の発現をフローサイトメトリーにて検討した。 【結果】CD4+T細胞におけるCD25+細胞の割合、CD25+CD4+T細胞におけるFoxp3+細胞の割合、およびCD25+CD127lowT細胞におけるFoxp3+細胞の割合は、いずれも強皮症患者において低下していた(それぞれ4.00±1.77% vs 5.17±1.39%, p=0.014、70.93% (34.6-100%) vs 91.87% (44.76-100%), p=0.0006、59.5±17.5% vs 81.0±10.9%, p=0.012)。 【結語】強皮症患者末梢血においてCD25+CD4+T細胞およびCD127lowCD25+CD4+T細胞におけるFoxp3+細胞が減少しており、Tregがnon-Tregに対し相対的に減少していた。この異常バランスが強皮症の病態形成に関与していると示唆された。
  • 横手 裕明, J. Ludovic Croxford, 水澤 英洋, 大木 伸司, 三宅 幸子, 山村 隆
    セッションID: W3-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】多発性硬化症(MS)をはじめとする自己免疫疾患の発症には、遺伝的素因と環境的素因が関係しているといわれている。後者として、近年、腸内フローラが種々の自己免疫疾患やアレルギー疾患において注目されている。そこで我々は、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて、腸内フローラの変化が宿主に及ぼす免疫学的影響について検討した。 【方法】C57BL/6Jマウスに腸管非吸収性の抗生物質を7日間経口投与したのち、腸内フローラの変化をDNAマイクロアレイにて調べた。また、腸管膜リンパ節(MLN)からリンパ球を分離し、T細胞のサイトカイン産生及び増殖能について比較・検討した。さらに、MOG 35-55 ペプチドでEAEを誘導し、臨床スコアと病理所見を検討した。 【結果】抗生物質投与により腸内フローラは著明に変化していることがわかった。免疫学的には、抗生物質投与群ではMLN由来のT細胞の増殖能は低下し、TNF-α、IFN-γ、IL-17などの炎症性サイトカインの産生は有意に抑制されていた。また、同群ではEAEが有意に軽症化した。 【考察】抗生物質投与による腸内フローラの変化が腸管上皮や抗原提示細胞などを介して宿主の腸管免疫システムを修飾し、さらに腸管膜リンパ節を介してsystemicな免疫システムに影響を及ぼしている可能性が示唆された。
feedback
Top