日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
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6学会合同特別シンポジウム
免疫疾患のトピックスと将来展望
  • 山本 一彦
    セッションID: SS-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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    マウスを中心とした基礎免疫学は急激な進歩を遂げている。免疫学には、未だに分からないことが山積しており、これらを推進することは重要である。しかし、基礎免疫学で見出された多くの事実をヒトの免疫システムの理解と疾病・病態の理解に結びつけ、より理想的な治療法の開発を推進するには、ヒトの免疫を研究するシステムを確立し、マウスからヒトの免疫学へのトランスレーションする研究を推進しなければならない。ヒトの免疫システム全体を理解しないで、マウスで見出されたある局面のみをヒトに応用することは、一点突破主義とも言え、多くの危険をはらんでいる。 免疫学は生物学的な重要性とともに、自己免疫疾患、感染、癌、移植、アレルギーなど多くの疾病が関与する研究領域である。我が国は基礎免疫学の領域では世界をリードする研究者が多い。一方、ヒトの免疫学に関しては、研究者の数を含めて十分とは言えない。 ヒト免疫学を確立し、推進するための幾つかの推進すべき方向性としては、例えば、1)免疫が関係する疾病のゲノム解析と遺伝子発現解析の推進やデータベース化、2)ヒト免疫担当細胞の試験管内の機能解析の推進、3)ヒト化マウスなど新しい研究システムの開発の推進、4)生物学的製剤など新しい治療法とその反応性の解析法の推進、5)研究者に提供する試料バンクの継続的な推進、などが考えられる。
  • 山村 隆, 荒浪 利昌, 大木 伸司, 三宅 幸子
    セッションID: SS-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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    多発性硬化症(MS)は代表的な中枢神経脱髄疾患であり、動物モデル実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)や患者サンプルを用いた免疫学的研究、さらにはゲノムワイド関連解析の結果から、病態に中枢神経抗原に対する自己免疫応答が主要な役割を果たしていることは確実である。実際、新たに開発された新薬(Natalizumabなど)の臨床治験の結果は、自己免疫性リンパ球の移動を抑制することによってMSが軽快することを示した。一方、MSは全身性自己免疫疾患と異なり、1型インターフェロンが有効であるという特徴がある。MSにおけるインターフェロンレスポンダーとノン・レスポンダーの違いとして、前者では主にTh1細胞が関与し、後者ではTh17細胞が介在するという意見があるが、まだ充分な検証は進んでいない。本講演では, MSの末梢血T細胞の遺伝子解析、T細胞ケモカインおよびサイトカイン発現パターン、B細胞分画解析など、MS病態の全体像解明とテイラーメイド医療の開発に一歩でも近づこうとする我々の取り組みを紹介する。特にMS末梢血T細胞での発現亢進が確認されているNR4A2分子(Doi et al. PNAS 2008)のTh17病態における役割や、MSにおけるB細胞の役割について、我々の研究室の成績をもとに討議する。
  • 日比 紀文
    セッションID: SS-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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    狭義の炎症性腸疾患(IBD)はクローン病(以下CD)と潰瘍性大腸炎(以下UC)に分類される。我が国の患者数は増加傾向にありCDで3万人、UCで13万人を超えた。IBDは遺伝的素因、環境因子、腸内細菌と宿主との関係などが複雑に関与し腸管の免疫学的バランスが崩れ慢性炎症が持続すると考えられている。近年のGWASの結果から多くのIBD疾患感受性遺伝子が同定されている。伝子操作マウスを用いた研究からは腸管免疫の破綻により腸炎が発症すること、腸炎発症には腸内細菌の存在が必須であることが報告されている。いっぽうでこれらの結果をもってしてもいまだヒトIBDの病態を完全に説明することはできていない。CDは全消化管に発症しうる全層性炎症を特徴とする疾患で腸管局所ではTh1優位の免疫異常が存在する。我々は腸管局所Msが腸内細菌認識において恒常性維持に極めて重要な働きをしていること、さらにCDの腸管Msは腸内細菌刺激に対し過剰なTNFα、IL-23を産生し病態に関与していることを明らかにした。いっぽうUCは直腸から連続するびまん性粘膜炎症が特徴であるが、臨床病理学的特徴の一つとしてIgG産生型形質細胞浸潤を認める。この現象の意味は謎であったが我々の研究からこの細胞群はある特定のケモカイン受容体を介して腸管にホーミングし免疫複合体を形成して病態に関与している可能性が解明されつつある。
  • 島田 眞路
    セッションID: SS-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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    Th17細胞の登場によって現在までTh1病とされていた疾患がじつはTh17病と考えられるようになってきた。尋常性乾癬が代表的皮膚疾患であるが、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病などもTh17病であることが明らかになってきた。アトピー性皮膚炎もTh17の関与が報告されている。アレルギー性接触皮膚炎もT細胞が重要な役割をはたすことはかわりがないが、effectorT細胞はCD4+T細胞であるTh1からCD8+TCI細胞に変遷し、最近ではTh17細胞やNK細胞がeffectorとの報告もある。また抗原提示細胞(APC)としてはランゲルハンス細胞(LC)がeffectorT細胞生成に重要な役割をはたすものとされていたが、最近regulatory(抑制的)な役割をはたす可能性があることが報告された。これはランゲルハンス細胞を消失させるテクニックが開発されたことによる。これによりあらたなAPCとしてランゲリン+樹状細胞(DC)の役割が注目されている。ヒトに同様の細胞が存在するかどうかも今後の課題である。われわれはヒトLCのHIV感染における役割を明らかにしている。ヒトHIV感染では真皮DCよりもLCが重要である。CD4,CCR5を介して感染するのでこれらの分子は予防・治療のターゲットとなりうる。
  • 早川 智
    セッションID: SS-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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     泌尿生殖器粘膜は固有の粘膜免疫系を形成する. 特に女性生殖器は精密な内分泌支配を受け,病原体を拒絶しつつも同種異個体に由来する精子、さらに妊娠時には胎児胎盤を受容するという特性を有する. 従ってその理解はHIVやクラミジア、HPVなどの性行為感染症や不妊・流早産など異常妊娠の診療に重要である。進化生物学的には、子宮内で胎児・胎盤を育てる真胎生というシステムは単孔類を除く大部分の哺乳類で見られるが,哺乳類特有ではなく,他の脊椎動物門のみならず一部の無脊椎動物にも存在する.一方、特異免疫系は軟骨魚類のレベルで進化したシステムであり,真胎生を行う脊椎動物は父親由来の抗原を有する胎児に対する寛容の成立が重要な課題となる.  母子免疫寛容は1953年にMedawarが問題提起を行って半世紀の間、生殖免疫学の主要課題であったが、近年,制御性T細胞やIDO, non classical MHCなど拒絶回避機構の多くが解明されるに至った.興味深いことにその多くは悪性腫瘍が拒絶を免れるために使用するメカニズムと一致している.悪性腫瘍の立場からすると,新たな免疫回避を発明するよりは,胎児胎盤が母体の拒絶を免れるシステムを用いたほうが効率がよいということになる.この事実から,脊椎動物における悪性腫瘍の頻度増加は胎児胎盤の生着を許すような抑制性免疫システムの進化に依存する,言い換えれば進化の上でのトレードオフになっているのではないかという仮説を導くことができる.
  • 河上 裕
    セッションID: SS-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
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    私たちが先駆的に行ったT細胞認識ヒトがん抗原の同定は、患者体内での抗腫瘍免疫動態の測定を可能にし、免疫によるがん細胞排除に至る各段階での問題点が明らかになりつつある。また免疫学の進歩により、新しい免疫制御法の利用が可能になってきた。がん免疫療法開発では、標準治療後にがんワクチンなどの簡単な方法で再発予防や延命を目指す方向と、標準治療では効果が得られない進行がんに対して腫瘍縮小や治癒を目指す方向がある。特に後者では抗腫瘍免疫応答ネットワークの総合的制御が重要である。我々は、1)がん細胞の増殖や生存に関与し、がん幹細胞にも発現するヒトがん抗原の同定、2) 内在性がん抗原に対して免疫誘導を起こす生体内腫瘍破壊法の開発、3) がん特異的T細胞を誘導する樹状細胞の制御法の開発、4) ヘルパー/キラーT細胞の体内増殖活性化法の開発、5) がん細胞による免疫抑制抵抗性の分子機構の解明と克服法の開発などの要素技術の開発とその適切な組み合わせによる効果的ながん免疫療法の開発を進めている。世界的にも、単純ながんワクチンだけでなく、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体による免疫増強や培養T細胞を用いた養子免疫療法などが進められている。最新の養子免疫療法では、進行悪性黒色腫に対して93例中20例に長期CRが認められ、治癒効果が期待されている。現在、企業も積極的に免疫療法の開発に参画している。
合同シンポジウム
合同シンポジウム1 免疫疾患の治療の進歩
  • 山岡 邦宏, 田中 良哉
    セッションID: S1-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患等のリウマチ性疾患の治療において、炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤によりパラダイムシフトがもたらされた。しかし、生物学的製剤にても寛解に至る症例は3割程度であり、治療効果が乏しい症例や投与経路の煩雑さや高価であることが治療導入・継続の障害となることがある。サイトカインがその生物活性を発揮する上では細胞内チロシンキナーゼの活性化が必須であるが、この分子を標的とした経口内服可能で半減期が短い、低分子化合物が最近注目されている。現在、上市に最も近い経口低分子量化合物であるtofacitinibは Janus kinase (JAK)を特異的に阻害し、RAを対象とした臨床試験では生物学的製剤に匹敵する治療効果を認めている。本邦で行われている第II相試験では、治療開始2週目の早期から効果がみられ、12週目には9割以上の症例に治療効果を認め、約4割で寛解を達成していた。当科症例の解析では、2週目より、疾患活動性、CRP、MMP3はいずれも用量依存性に低下していた。その作用機序については不明な点が多いが、我々がRA患者リンパ球を用いた検討では、投与開始早期にはリンパ球に作用し、IFN-gとIL-17産生を抑制する効果を有する結果を得ている。以上の如く、経口低分子量化合物によるJAK阻害の高い有用性が明らかとなっており、リウマチ性疾患の次世代治療薬となることが期待されている。
  • 藤原 一男
    セッションID: S1-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    視神経脊髄炎(NMO)は、この疾患に特異なアクアポリン4(AQP4)抗体の発見以後、その臨床像は単なる視神経脊髄炎よりも広く、AQP4抗体が病原性を持ち、免疫介在性アストロサイトパチーであることがわかってきた。NMOは重篤な神経障害を起こしうるので、早期の診断と治療が必要である。NMOの急性増悪期にはステロイドパルス療法が無効の場合は速やかに血漿交換療法を行うことでしばしば改善が期待できる。またステロイドパルス療法も早期に行えば神経障害を抑制できることが視神経炎のOCT解析で明らかになった。NMOの再発予防には免疫抑制療法が有効であり、ステロイドの有効な投与法が解明されてきた。また様々な免疫抑制剤と共に、抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)の有効性が報告されている。最近NMOの再発やAQP4抗体産生へのIL-6の関与が報告され、抗IL-6療法への期待も大きい。さらに実験的研究では、IgG1に属するAQP4抗体は補体を活性化しAQP4をendfeetに高密度に発現しているアストロサイトを破壊するが、抗C5a抗体(エクリズマブ)の有効性が示されつつある。また自己造血幹細胞移植やAQP4抗体の抗原結合阻害物質の開発なども行われている。免疫治療のみならず神経後遺症への対症療法の重要性も認識されてきた。本講演では、NMOの病態解析における最新の知見を紹介し治療の現状と課題を論じたい。
  • 長沼 誠, 渡辺 守
    セッションID: S1-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)は10-20代に発症し再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性腸疾患である。これまでの治療の中心は5-アミノサリチル酸製剤とステロイドであったが、この5年で炎症性腸疾患に対する治療法は劇的に変化している。その変化をもたらしたのは抗TNFa抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)と本邦で開発されたタクロリムスである。これらの治療は単に臨床的に治療効果をもたらしたのみならず、腸管の粘膜治癒を得られることが明らかになっている。これまでの海外の成績および自験例より、粘膜治癒をもたらすことにより1)ステロイド減量・離脱効果、2)再燃率の低下、3)入院率の低下、4)腸管切除率の低下に寄与することが明らかになっている。これらの劇的な治療効果により、これまで治癒することがないと考えられてきた炎症性腸疾患が「治る時代」になる可能性も期待されている。本シンポジウムではUC、CDに対する抗TNFa抗体製剤、タクロリムスの治療成績・粘膜治癒効果・長期予後・安全性について、自験例および厚生労働省班会議研究からの結果を中心に発表する。さらに我々が試みている免疫調節薬、抗体製剤の新しい治療法の工夫や抗TNFa抗体製剤効果減弱例に対する治療法の選択についても紹介する予定である。
  • 横関 博雄
    セッションID: S1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    成人発症の重症型アトピー性皮膚炎の患者が増加して社会現象の一つにもなっていたが、免疫抑制外用薬の開発により沈静化してきている。一方、重症アトピー性皮膚炎の一部の症例では依然、既存の治療法のみでは改善せず長年にわたり緩解、増悪をくり返すことがあり治療に苦慮する。遺伝子治療である核酸医薬の一つとして、おとり型核酸医薬(デコイ)が開発され、冠動脈疾患などに対する遺伝子療法として幅広く試みられている。また、最近、アトピ性皮膚炎の患者の治療にNFkBデコイ軟膏が開発され現在治験段階になっている。一方、私達の教室でもIL-4, IL-13の重要な転写調節因子であるSTAT6に対するデコイ軟膏を作製して、重症のアトピー性皮膚炎患者への臨床応用も試みられ良好な結果が得られている。さらに、RNA干渉は近年注目されている現象であり、ターゲットとなる遺伝子と同一の配列を持つsiRNAを導入することにより標的遺伝子がノックダウンされる現象である。最近、STAT6をターゲットとしたsiRNAを開発し接触アレルギー、アレルギー性鼻炎のモデルマウスを用いて炎症を抑制しうることを明らかにしたのでこの干渉RNAによる核酸医薬療法も紹介したい。今回、皮膚科領域におけるアレルギー疾患への核酸医薬の有効性について述べ臨床的応用の展望を語りたい。
  • 上田 龍三, 石田 高司
    セッションID: S1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    2011年は患者会の働きもあり、HTLV-1関連疾患の予防、研究にとって行政が大きく動いた年となった。予防に関してはHTLV-1抗体検査を妊婦検診に追加したこと、HTLV-1関連疾患に対して疫学的な実態把握、病態解明、発症の予防、新規医薬品の開発、診断・治療法の開発・確立等にわたる戦略的な研究を支援する総合的な対策を講じたことである。  我々は治療困難なT細胞リンパ腫の研究の延長線で、ケモカインレセプターCCR4がATLや末梢性T細胞リンパ腫に高頻度に発現している事、CCR4発現が臨床上では免疫不全に関与し、独立した予後因子となりえる事等を見出した。in vitro, in vivoにおける前臨床研究において、抗CCR4抗体がCCR4発現Tリンパ腫、特にATLに有効な治療手段となりえる実験成果に基づき、企業と臨床治療研究を推進してきた。日本で開発した癌に対する抗体療法として、日本で初めてヒトに投与し(First in Human;臨床第1相試験)、安全性、有効性が評価でき、更に、昨年登録終了した第二相試験でも26例中13例に奏効(奏効率50%)と、期待を上回る治療効果が得られた。現在、希少医薬品指定を受け、再発・再燃CCR4陽性ATLに対する承認申請中である。初発ATLに対する化学療法との併用療法の治験の登録も本年6月に終了しており、標準的治療法の確立していないATLの新規治療法として期待が寄せられている。  我々の経験から本邦でのトランスレーショナル・リサーチ(TR)の問題点、世界のがんに対する抗体療法の趨勢などを論じたい。
合同シンポジウム2 免疫疾患の病態解明と診断の進歩
  • 戸倉 新樹
    セッションID: S2-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    Th17細胞は生体防御において重要な役割を果たし,その機能が過剰に発揮された場合,自己免疫疾患を誘導し,様々な炎症状態を惹起させる。Th17細胞はIL-17のみならずIL-22を産生し,皮膚においてはIL-22受容体が表皮ケラチノサイトに存在する。IL-17とIL-22が協調的に作用して,サイトカイン,ケモカイン,抗菌ペプチドなどがケラチノサイトから産生される。Th17細胞は乾癬の病態に深く関与する。歴史的に乾癬の病態に関わるT細胞サブセットの概念は,Th1からTc1に変化し, そしてTh1に揺り戻し,現在はTh17細胞と進展している。IL-22はIL-17とともにSTAT3の活性化,IL-8の産生亢進,抗菌ペプチドの産生促進など乾癬にとって重要な事象に深く関与する。Th17細胞の機能維持のためにはIL-23が重要であり,IL-23は樹状細胞の一つであるTIP-DCによって産生される。TIP-DCの活性にはTNF-αがautocrine的に働く。乾癬に加え,Th17細胞はアトピー性皮膚炎や一部の薬疹の病態形成にも重要な役割を担う。特に好中球が表皮に集合するacute generalized exanthematous pustulosis (AGEP)という薬疹型では、薬剤に反応したTh17細胞が表皮ケラチノサイトに働き駆けIL-8産生を促し、微小膿疱を形成することが考えられる。
  • 三宅 幸子
    セッションID: S2-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    自然リンパ球は、皮膚や腸管、呼吸器系など外来侵入物と接触する部位に多く存在し、外来侵入物にたいする免疫応答の最前線に位置する。自己免疫疾患の発症要因として以前から環境因子があげられているが、近年、腸管細菌叢が自己免疫疾患の発症や病態に深くかかわっていることが明らかとなり、自然リンパ球の関与にも注目が高まっている。Mucosal-associated invariant T (MAIT)細胞は腸管粘固有層やパイエル板に多く存在するためその名が冠せられた自然リンパ球である。MAIT細胞はMajor histocompatibility molecule related 1 (MR1)に拘束され、T細胞受容体にインバリアントVα19(マウス)、Vα7.2(ヒト)を発現する。他のT細胞と同様に胸腺で選択をうけるが、MAIT細胞の成熟および増殖にはB細胞や腸管細菌叢に依存する。MAIT細胞はIFN-γやIL-17を産生する能力を有し、細菌感染防御に寄与することが最近明らかとなった。本シンポジウムでは、動物モデルを用いたMAIT細胞の自己免疫病態における機能解析について、さらに多発性硬化症、視神経脊髄炎、関節リウマチ、全身性エリテマドーテスなどの自己免疫疾患におけるMAIT細胞の動態と機能について報告する。
  • 金井 隆典, 筋野 智久, 三上 洋平, 佐藤 俊朗, 松岡 克善, 矢島 知治, 久松 理一, 日比 紀文
    セッションID: S2-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】腸管慢性炎症性疾患においてTh1、Th17細胞がともに必須に関与し、かつ、CD4+CD25+ Treg細胞は直接的にTh1とTh17細胞を抑制すると考えられてきた。今回、IBD腸炎モデルを用い、Th17、Th1細胞の産生誘導と細胞間競合、TR細胞との関連、各細胞間の可塑性について包括的に検討した。【方法】1) RORγt GFPレポーターマウスLy5.2+ CD4+CD45RBhigh T (RBhigh)とWild typeマウスLy5.1+ TregをRAG2KOマウスに移入した(単独とTreg共移入群)。2) 単独移入群大腸CD4+細胞からGFP+、GFP-細胞を分離し、RAG2KOマウスに再移入した(GFP+、GFP-移入群)。3) RBhigh細胞移入腸炎マウスおよびIL-10 KO腸炎マウスのLP CD4+細胞を採取し同時に新たなRAG-2 KOマウスに移入した。【結果】1) 単独移入群ではTreg共移入群に比し、Th1細胞の増加を認め、Treg共移入群ではTh17とTh17/Th1細胞比率の増加を認めた。Treg共移入群ではT-betを発現せず、単独移入群ではTh17とTh17/Th1細胞においてもT-betの発現を認めた。2) GFP+、GFP-移入群とも腸炎を発症し、GFP+移入群でRORγt-T-bet+ Th1細胞 (alternative Th1)の出現を認めた。3) 共移入群大腸でCD4+ T細胞は共存し、IFN-γとIL-17産生能は単独移入群CD4+ T細胞に比し有意に低下した。【結語】慢性大腸炎においてTh17→Th17/Th1→alternative Th1経路とTreg細胞がTh17/Th1→alternative Th1細胞間を阻害することを発見し、Th1とTh17細胞がいずれも慢性大腸炎に必須である免疫病態の複雑性の一端を解明した。
  • 西村 孝司
    セッションID: S2-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    ヘルパーT細胞を軸とした癌免疫応答の制御―基盤研究から次世代癌ワクチン、H/K-HELPの発見まで 西村孝司 北海道大学遺伝子病制御研究所 免疫制御・ROYCE’健康バイオ 我々は担癌宿主における強い免疫抑制を打破して,抗腫瘍免疫を増強するためにはヘルパーT細胞を軸とした免疫応答制御,特にTh1主導免疫の導入が重要であることを提唱して来た。この基盤研究を臨床研究に結びつけるために癌抗原ヘルパーエピトープとキラーエピトープを人工的に結合させたHelper/killer hybrid epitope long peptide (H/K-HELP)を世界に先駆け開発し、ヒト癌抗原(MAGE-A4、Survivin)H/K-HELPを用いた癌ワクチン治療の第I相臨床試験を実施した。H/K-HELP-Survivinワクチン治療によりTh1依存的癌特異的免疫応答が誘導され,制癌剤治療耐性、放射線治療耐性の再発頸部リンパ節転移乳癌患者においては、評価対象病変が画像上完全に消失した。またH/K-HELP-MAGE-A4を用いた大腸癌の肺転移症例においても、癌特異的Th1依存的免疫反応が誘導され転移病巣の増大が抑えられた。癌抗原ヘルパーエピトープとキラーエピトープを人工的に結合させた40merのロングぺプチドH/K-HELPは8-9アミノ酸のショートぺプチド癌ワクチンに比し,より強い,持続的なTh1依存的癌特異的免疫を生体内で誘導し,より有効な癌治療効果を示した。従って,ロングぺプチドH/K-HELP癌ワクチン治療は次世代癌ワクチンとして取り組むべき重要課題であると考えられる。
  • 齋藤  滋
    セッションID: S2-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    異物である胎児を許容するために、妊娠中にトレランスが誘導されると考えられている。事実、トレランスを誘導する制御性T細胞(Treg)は妊娠時に子宮で増加し、異常妊娠である流産や妊娠高血圧腎症(Preeclampsia)では低下する。しかし胎児抗原特異的Treg細胞(F-Ag Treg)が増加するかは解明されていない。我々はBALB/c×DBA/2の交配でDBA/2に発現するMls Ia抗原がT細胞受容体Vβ6で認識されることを利用して、CD4+Foxp3+Vβ6+Ki67+細胞を、胎児抗原を認識し増殖しているTreg細胞とした。F-Ag Treg細胞は着床前のday 3.5に子宮領域リンパ節で増加し、着床後は子宮内で増加したが、表在リンパ節や脾臓での変化はなかった。またF-Ag Treg細胞はCCR5、CCR4を高発現しており、これらのTreg細胞はヒト流産子宮でも減少していた。  子宮に存在するリンパ球は主にNK細胞である。T細胞、B細胞を欠損するNOD/SCIDマウスをアロ交配した際、抗CD25抗体を投与すると流産率は著明に上昇した。我々は妊娠子宮にはCD25+NK細胞が著増し、これらNK細胞がTGFβやIL-10 を産生することを認めた。さらにNOD/SCIDマウスにBALB/c由来CD4+CD25+細胞を除去したリンパ球を輸注しTreg欠損マウスを作製し、アロ交配させると流産率が増加したが、その際妊娠子宮から分離したCD25+NK細胞を輸注すると流産率が減少した。つまり妊娠維持にはTregとNKregが重要な役割を果たすことが判った。
  • 上阪 等, 細矢 匡, 岩井 秀之, 村上 洋介, 宮坂 信之
    セッションID: S2-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    臨床免疫学は、関節リウマチ(RA)病態理解に基づく生物学的製剤開発を通じて治療革命をもたらした。しかし、低完全寛解率、易感染性、投与ルートが弱点である。我々は、その克服をめざし新発想による治療法を模索してきた。ひとつは、滑膜線維芽細胞の細胞周期を制御してパンヌス増生を抑制する方法である。先ず、滑膜でのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害分子強制発現が、次いで、抗癌剤として臨床試験に供された低分子CDK阻害薬が、リンパ球機能を保ちつつ、RA動物モデルの治療に著効することが明らかにした。さらに、CDK4/6阻害薬はAP-1活性の抑制を通じて、軟骨破壊酵素MMP-3の産生も低下させるので、非免疫抑制的デュアル抗リウマチ効果を持つといえる。他方の戦略は、マクロファージ上に発現し、炎症性サイトカイン産生を増幅するTriggering Receptor Expressed on Myeloid Cells(TREM)-1を標的とする。この分子の阻害は細菌排除能を落とさずに過剰な炎症性サイトカイン産生を抑制する。TREM-1はRAや動物モデルの滑膜マクロファージにも高発現していた。我々は、未知であったTREM-1リガンドを同定し、その抗体を作成して、RA動物モデルの治療に使用して好い治療効果を得た。TREM-1阻害による穏やかで広いサイトカイン抑制も新たな治療戦略である。
分子標的薬のエビデンス・レビュー
  • 竹内 勤
    セッションID: E-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     本レビューでは、2010-11年に報告されたサイトカインを標的とする以下の生物学的製剤に関する最新情報について概説する。1)IL-1betaに対する抗体(canakinumab)、2)IL-6に対する抗体(sirukumab [CNTO136], ALD-518、CDP6038), 3)IL-17Aに対する抗体(secukinumab, LY2439821)4)IL12/23(p40)に対する抗体(ustekinumab, briakinumab)、5)IL23に対する抗体(LY2525623)、6)IL23p19に対する抗体、7)IL-17R (AMG827), IL-23Rに対する抗体、8) Interferon-alphaに対する抗体 (sifalimumab, rontarizumabなど)、9)BAFF標的(抗BAFF抗体 belimumab、LY2127399、 TACI-Ig atacicept)、10)GM-CSF受容体に対する抗体(CAM-3001)。各製剤の開発状況、研究デザイン、さらには有効性•安全性に関してデータが公表されている製剤については、優越性•課題などにつて議論したい。
  • 高崎 芳成
    セッションID: E-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     遺伝的および環境的因子が絡み合いながら発症する全身性エリテマトーデス(SLE)の病態生理は非常に多様ではあるものの、多彩な自己抗体の産生とその抗体自体、もしくは抗体と抗原が結合した免疫複合体により多臓器の障害がもたらされるという考えは広く受け入れられている。一方、関節リウマチ(RA)もSLEと同様に遺伝的および環境的因子が相互に関与しながら進展するが、どのような課程で病体形成に関与するそれぞれの抗原特異的な免疫応答が誘導されるかは未だ明らかではない。しかし、これまでの研究により一連の免疫異常にはT細胞やB細胞の質的および量的な異常が深く関与していることが示されている。ステロイドや免疫抑制薬では“絨毯爆撃”的に一連の活性化細胞を攻撃し、病態の沈静化を目指してきたが、近年の研究の進歩によりこれら免疫担当細胞の異常を引き起こす内外の分子の実態が明らかにされ、それを特異的に制御する治療の可能性が示唆されている。
     一連の新規治療は主としてBおよびT細胞関連分子を標的とするものに分類され、さらにサイトカイン、細胞内刺激伝達分子および細胞膜表面分子に対する標的療法にわけられる。B細胞膜表面分子を標的とした治療としては抗CD20抗体、rituximab、抗CD22抗体、epratuzumab、さらにT細胞膜表面分子に対する標的療法としては抗CD154抗体、BG9588、やCTLA4-Ig、abataceptなどが知られているが、本講演ではこれら一連の細胞膜分子を標的とした治療の最近の知見についてレビユーする。
  • 田中 良哉
    セッションID: E-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    代表的な自己免疫疾患である関節リウマチの治療では、サイトカイン等を標的とする生物学的製剤が導入され、画期的な効果を齎した。しかし、生物学的製剤でも臨床的寛解導入率は3割にすぎず、より高い寛解率を目指す必要がある。また、生物学的製剤は点滴か注射での使用に限定され、安全性や価格の問題も残る。そこで、比較的廉価で、かつ、生物学的製剤と同様の有効性を有する低分子量化合物の開発が注目されてきた。特に、炎症性免疫疾患では、多様なシグナル伝達経路の活性化が病態形成に関与し、それらは同時に治療標的としてのポテンシャルを有する。また、生物学的製剤は細胞間の相互作用を制御するが、低分子量化合物ならば特定の立体構造を構成できるようなデザインが可能で、その結果、細胞内のシグナル伝達分子に、鍵と鍵穴の関係のようにピタッと嵌って阻害することも可能となる。現在、関節リウマチを対象として免疫担当細胞のシグナル伝達に重要な役割を担うチロシンキナーゼを標的とした経口Jak阻害薬であるtofacitinib、経口Syk阻害薬fostamatinibの臨床試験が進行しているが、p38を標的とした治験では芳しい結果が示されなかった。今後、数多の低分子量経口シグナル阻害薬の開発が進展し、難治性の自己免疫疾患の新たな治療革命を齎すものと期待される。本講演では、現在注目されている低分子量化合物の新展開についてエビデンスを基に有効性と安全性の双方から概説する。
教育講演
モーニング教育講演
  • 熊ノ郷 淳
    セッションID: MS-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    セマフォリンは、1990年代初頭から「神経ガイダンス因子」とされてきた分子群である。我々は2000年にSema4D/CD100の遺伝子を単離したのを契機に、免疫で機能する一群の分子群(免疫セマフォリン)の存在を明らかにしている。現在セマフォリンは、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、多発性硬化症などの免疫疾患や、骨粗鬆症、心臓の突然死の原因など、種々の疾患の「鍵分子」であることが明らかになり、疾患治療の新たな創薬ターゲットとしても注目されている。今回のシンポジウムでは主としてセマフォリンの代表的な受容体の一つであるPlexin-A1を取り上げ、セマフォリンの細胞移動制御における役割について紹介する。
    Plexin-A1は免疫系では樹状細胞に発現している。我々はPlexin-A1の免疫系での役割を明らかにする目的でplexin-A1欠損マウスを用いた免疫解析を行ったところ、Plexin-A1欠損下では樹状細胞のリンパ節への移動が障害されていた。更にイメージング等の詳細な解析により、樹状細胞が微小リンパ管を通過する過程において、リンパ管から分泌されるSema3Aが樹状細胞の後端部に作用し、non-muscle actomyosin contractionを誘導することにより、樹状細胞移動を制御していることも示された。

    (参考文献)
    1) Nogi T et al. Nature 467:1123-7. 2010.
    2) Takamatsu H, et al. Nat Immunol. 11: 594-600, 2010.
    3) Suzuki K. et al. Nat Immunol. 9:1725, 2008.
    4) Suzuki K.et al. Nature446, 680-685, 2007.
    5) Takegahara N. et al. Nat Cell Biol. 8, 615-622, 2006
  • 湯浅 慎介
    セッションID: MS-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    The direct reprogramming of somatic cells to produce induced pluripotent stem (iPS) cells represents a recent prominent advance in stem cell biology. iPS cells have strong potentials for regenerative therapy and innovation of the human inheritable disease models. Initially, human dermal fibroblasts were used to derive human iPS cells. However, recent studies have shown that other human somatic cells, such as keratinocyte stem cells, adipose stem cells, dental stem cells, neural stem cells, and hematopoietic stem/progenitor cells, can be used for this purpose. But it is difficult to obtain somatic stem cells. Terminally differentiated T cells can be easily obtained from peripheral blood and proliferated upon activation by plate-bound anti-CD3 monoclonal antibody and recombinant IL-2. Sendai virus (SeV) which is a negative-sense, single-stranded RNA virus that does not integrate into the host genome, was efficiently transfected into the activated T cells. In the present study, we show that the combination of activated T-cell cultivation and a temperature-sensitive mutated SeV that encodes human OCT3/4, SOX2, KLF4, and c-MYC allows the generation of human iPS cells easily, efficiently, and safely within 1 month. T cell-derived iPS cells are expected to be used in the clinical setting.
ランチタイム教育講演
  • 岩倉 洋一郎
    セッションID: LS-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    これまでHTLV-IトランスジェニックマウスやIL-1レセプターアンタゴニスト欠損マウスなどは病理像が関節リウマチとよく似ており,良い関節リウマチモデルである.これらのマウスの関節炎局所で, IL-1やIL-6、TNF、IL-17などの炎症性サイトカインや、一部のC型レクチンの発現が亢進していたことから,これらの遺伝子を欠損したマウスを作製して病態形成における役割を検討した.その結果,HTLV-IマウスはIL-6依存的に,IL-1レセプターアンタゴニスト欠損マウスはTNF依存的に関節炎を発症している事が分かった.また、IL-17は滑膜細胞に作用して,種々の炎症性サイトカインの発現を誘導するほか,自己抗体の産生を促進したり,破骨細胞分化を誘導したりするなどの活性を有しているが, IL-17欠損により両方のモデルで発症が抑制されることがわかった.IL-1やIL-6、TNF、IL-17は近年,これらの活性を抑える事によって,関節リウマチを治療できる事が報告されている.また、デクチンー1、-2などのC型レクチンレセプターはTh17細胞分化に於いて重要な役割を果たしており,別のC型レクチンレセプターのDCIRは免疫系の恒常性を保つ上で重要な役割を果たす事が分かり,新たな治療標的として注目される.本講演ではこれらの分子の関節リウマチの病態形成における役割について話したい.
  • 吉村 昭彦
    セッションID: LS-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    消化管においては大量の腸内細菌が存在するために細菌の侵入に対しては早急に炎症を惹起して菌を排除しなければならない。一方で食物に対しては経口免疫寛容現象と言われるように免疫は抑制されている。消化管免疫ではこのような相対する反応を制御しなければならない。このバランスにはヘルパーT細胞が重要な役割を果たし、消化管内には炎症を起こすエフェクター細胞であるTh1やTh17、および抗炎症に働く抑制性T細胞Tregが大量に存在する。Tregは主にIL-10とTGFβを介して抗炎症作用を引き起こす。IL-10はSTAT3を活性化し主にマクロファージや樹状細胞等の自然免疫系の細胞の活性化を抑制し、TNFαなどの炎症性サイトカインの分泌や副刺激分子の発現を抑制する。一方TGFβはSmad転写因子を活性化し主にヘルパーT細胞に作用してそのTh1,Th2への分化を抑制する。しかしTregが存在しないRag欠損マウスでも消化管における自然免疫系の細胞の活性は抑制されており、Tergに依存しない免疫抑制機構の存在が示唆される。我々は腸上皮細胞や繊維芽細胞の培養上清、あるいは腸上皮抽出液中にマクロファージや樹状細胞からの炎症性サイトカイン産生を強力に抑制する物質が存在することをつきとめた。精製の結果この分子はプロスタグランジンE2(PGE2)であることがわかった。Rag欠損マウスはPGE2の産生を抑制するCOX阻害剤(NSAID)処理によって重篤な腸炎を発症した。PGE2がTregのシステムと独立して個体でも消化管の免疫抑制に重要な役割を果たすことを明らかにした。参考文献 (1) Ichiyama et al. Immunity May 2011 in press (2) Chinen et al. Nature Commun 2,E190, 2011
  • 谷口 克
    セッションID: LS-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    NKT細胞は、自然免疫系と獲得免疫系を繋ぐシステムで、がんや病原体に対する防御免疫および自己免疫発症制御や移植免疫維持などの免疫制御という相対する免疫反応の制御に関わる。防御反応においては、NKT細胞は活性化に伴って産生されるIFNgによりアジュバント作用を発揮し、強い抗腫瘍効果を出す。NKT細胞のアジュバント作用は、1)未熟樹状細胞と反応し、成熟樹状細胞へ変化させる事で免疫不全を改善し、2)NK細胞の活性化により、MHC分子を失ったがん細胞を殺し、3)CD8キラーT 細胞を活性化し、MHC分子を発現しているがん細胞を殺すため、強い抗腫瘍効果が期待できる。
    これまでに標準治療後の平均余命が7−8カ月といわれる17名の進行肺がん患者(第_III_B、_IV_期)に対して、第_I_・_II_相の臨床試験を試行し、初回治療だけしか行っていないにも関わらず、60%の患者の生存期間の中央値は、31.9カ月(残りの40%は9.7ヶ月)であった。さらに、治療効果の高かった患者は、生体内に存在するNKT細胞の数が多いこと、IFNg産生が高いことも明らかとなったこ。
    の治療法は、極めて効果が高い治療法であるとはいえ、適応できるのは全体の1/3にすぎず、3分の2の患者は体内に存在するNKT細胞の数が少ないため、効果が低い状況となっている。患者から採取したNKT細胞からiPS細胞を作製し、そのiPS細胞から産生したNKT細胞を体に戻すことで、治療効果の大きな改善が期待できる。
  • 清野 宏
    セッションID: LS-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    粘膜免疫システムは、病原微生物と共生微生物に対しては全く相反する積極的排除(又は活性)と無視無応答(又は抑制)を惹起し免疫学的恒常性を維持している。その中核的役割を果たしている腸管関連リンパ組織(GALT)、咽頭関連リンパ組織(NALT)、涙管関連リンパ組織(TALT)では、その組織形成誘導細胞の特徴や組織形成関連分子依存性などに関して異なり、粘膜免疫の多様性が垣間見られる。腸管では、共生細菌に代表される外部環境と粘膜系自然・獲得免疫による内部環境の間に上皮細胞層が存在し、その三者間での免疫生物学的相互作用が、健常時から炎症時、寛解時に至る過程において作動している。当研究室では、「腸内共生細菌、上皮細胞、腸管免疫系細胞」の三者間相互作用を分子、細胞、個体レベルで明らかにすべく検討を進めている。例えば、腸管関連リンパ組織の代表格であるパイエル板内外における細菌プロファイルの精査を行ったところ、パイエル板内には腸内フローラの一部である日和見細菌群が存在し、これらの細菌群に対して宿主免疫系は、抗原特異的IgAに代表される粘膜免疫応答を選択的に誘導し、「組織内共生」という新しい相互依存性関係を構築している事が示唆された。さらに、粘膜系自然免疫系細胞による上皮細胞フコシル化による共生細菌ニッチ制御、粘膜系マスト細胞による炎症制御など新知見を得ており、その成果の一部を紹介する。
  • 黒崎 知博
    セッションID: LS-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    従来、Bリンパ球の一番重要な仕事は、プラズマ細胞へと分化し、抗原特異的な抗体を産生することと考えられてきた。しかし最近の研究は、制御性B(regulatory B)リンパ球の存在等、Bリンパ球自身が、樹状細胞・Tリンパ球に働きかけ、免疫反応・免疫病態を積極的に制御するメカニズムが存在することが示されつつある。 このセミナーでは、抗体の機能発現機構、Bリンパ球を介する免疫制御機構に関して、最近の進歩を概説したい。
  • 松島 綱治
    セッションID: LS-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    今日の生物製剤、とりわけ抗体治療はRAなどの慢性炎症・自己免疫疾患ならびに癌治療に大きな変革をもたらした。しかしながら、未だに多くの慢性炎症性・自己免疫、アレルギー疾患などに新たな医薬、治療法が求められているのも事実である。本教育講演では、私達の協和発酵キリンとのアレルギー疾患ならびにヒト成人T細胞白血病リンパ腫に対するCCR4抗体の共同臨床開発と骨髄移植(Allo-HSCT)に伴うGVHDのCD4抗体による軽減とGVL/T温存による癌治療について紹介する。免疫抑制剤の進歩にも関わらずAllo-HSCTの5年生存率は、未だに50%である。これは、GVHDに伴う造血障害・免疫システム再構築遅延による感染症、新たに生着したドナー由来Tリンパ球による自己免疫応答様慢性GVHD、原疾患の再発などによる。私達は、最近マウスモデルにてGVHDに伴い造血幹細胞ニッチとしての骨芽細胞が破壊されB細胞を中心として免疫・造血障害が起こり (骨髄GVHDと命名)、CD4抗体を移植直後に投与するとGVL/T効果を損なうことなく骨髄GVHDを軽減できる事を見いだした。CD4抗体によりAllo-HSCT を安全で有効な治療法として確立する事ができれば、腎細胞癌・乳癌などの固形腫瘍、SLEなどの自己免疫疾患に対して現在よりはるかに多く実施されることが期待される。
イブニング教育講演
  • 高柳 広
    セッションID: ES-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチにおける骨破壊はリウマチ治療における最大の課題である。関節リウマチの滑膜では、炎症に伴いヘルパーT細胞が浸潤し、破骨細胞と呼ばれる骨吸収細胞が活性化する。近年、破骨細胞を誘導するT細胞サブセットは、IL-17を多量に産生するTh17細胞であることが明らかになった。IL-17は滑膜線維芽細胞に作用して破骨細胞分化因子RANKLを誘導するだけでなく、滑膜炎を増悪させ炎症性サイトカインの産生を促進する。TNF-α, IL-1, IL-6 などの炎症性サイトカインは、RANKL発現をさらに高める一方、RANKL反応性を高めることで相乗的に破骨細胞分化を活性化する。このように、RANKLや炎症性サイトカイン、Th17の分化を担うサイトカインは、骨破壊の効率よい治療標的となる。さらに、関節リウマチ骨破壊の研究から発展した骨免疫学について概説する。
  • 小安 重夫
    セッションID: ES-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
     CD4陽性T細胞は、樹状細胞によって抗原刺激を受ける際に、周囲の細胞から供給されるサイトカインの種類によって異なる機能を持つTh細胞へ分化する。Th1細胞は主としてマクロファージ、NK細胞、細胞傷害性T細胞の活性化を伴う炎症を誘起する。一方、Th2細胞は、好酸球や肥満細胞の活性化を介した炎症を誘起する。一方、近年明らかにされたTh17細胞は、好中球の動員を介して炎症を誘導する。これらの炎症は、微生物や寄生虫の感染時の感染体の排除に重要であるが、制御不能になると様々な自己免疫疾患や炎症性疾患の原因となる。また、炎症の制御にはやはりCD4陽性細胞を起源とする制御性T細胞(Treg)、マクロファージ、樹状細胞などからの抗炎症性サイトカインが重要である。  演者らのグループはこれまでに、脂質リン酸化酵素であるフォスフォイノシタイド3キナーゼ(PI3K)が樹状細胞からのサイトカイン発現調節に重要な役割を果たすこと、特にTh1の誘導に重要なIL-12の発現がPI3Kによって負に制御されることを明らかにしてきた。さらに、PI3Kの下流でmTORとGSK3βがそれぞれ独立に炎症性サイトカインであるIL-12と抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現を制御することも明らかにしている。さらに、Th17分化においては、T細胞に発現するPI3K-Akt-mTOR経路が重要であることも明らかにしている。これらの知見をもとに、PI3K-Akt-mTOR経路の阻害剤を用いて,Th1反応やTh17反応の制御に成功している。本講演では、これまでの研究を紹介したい。
ワークショップ
ワークショップ1 新しい標的分子と疾患制御
  • 山岡 邦宏, 前島 圭佑, 久保 智史, 園本 格士朗, 齋藤 和義, 田中 良哉
    セッションID: W1-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ(RA)の治療では、サイトカインにより活性化される細胞内チロシンキナーゼの一つであるJanus kinase (JAK)を阻害標的とした、tofacitinibが臨床試験において早期より高い有効性を示している。しかし、その作用機序は不詳である。今回、当科での治験参加症例では、投与開始後2週目にて疾患活動性、MMP-3とCRPは容量依存性に低下を認め、12週目まで改善傾向を維持していた。特に、末梢血CD4+T細胞よりのIL-17産生は、治療効果が乏しかった一例を除き、すべての症例で低下していた。また、RA患者滑膜由来CD4+T細胞のIL-17とIFN-g産生は、tofacitinib添加により細胞死を誘導することなく抑制されたが、滑膜線維芽細胞と単球に対する直接的効果は見られなかった。更に、RA患者滑膜と軟骨を免疫不全マウスに移植したex vivoモデルマウスでは、tofacitinib投与により血清中のヒトIL-6とIL-8の低下がみられ、滑膜の軟骨浸潤も抑制された。これらの結果より、tofacitinibはJAKが重要な役割を果たすCD4+T細胞に直接作用することによりIL-17産生を抑制し、更に間接的に滑膜からのIL-6とIL-8産生を制御することで滑膜の軟骨への浸潤を抑制すると考えられた。
  • 定 清直
    セッションID: W1-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    Sykは、血液・免疫系の組織に発現する非受容体型チロシンキナーゼで、マスト細胞のヒスタミン放出やマクロファージのファゴサイトーシス、破骨細胞の活性化、さらにB細胞の分化にエッセンシャルな役割を担っている。また前骨髄球性白血病や自己免疫疾患(特発性血小板減少性紫斑病)の病態、真菌やウイルス感染への関与も報告されている。Sykには10カ所の自己リン酸化部位があり、それぞれの生理的役割が既に明らかにされている。Syk阻害薬開発の試みは1994年に報告されたピスエタノールを皮切りに、これまで様々な化合物が報告されたがいずれも臨床治験には到達しなかった。近年、新しいSyk阻害剤が開発され、アレルギー性鼻炎や関節リウマチ治療への有効性が脚光を浴びている。細胞レベルでの阻害、具体的には細胞内基質タンパク質のチロシンリン酸化の阻害を指標とするアプローチにより開発されたこれらSyk阻害剤は、臨床での応用が目前に迫っている。Sykは様々な生体内の現象を司る非常に重要な分子であるため、関連する疾患の分子標的治療薬開発において最も核心的な分子であるといえる。一方、Sykはその幅広い機能を持つがために、阻害薬投与による血小板凝集阻害や免疫不全による易感染性が懸念され、副作用への十分な配慮が必要であるといえる。
  • 善本 知広
    セッションID: W1-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    IL-33は2005年にIL-1βやIL-18と同様、IL-1 ファミリーに属する新規サイトカインとしてクローニングされた。その受容体は長い間そのリガンドが不明であったST2である。IL-1β/IL-18が細胞質内で前駆体の形で産生され、caspase-1によって活性化型となって産生されるのに対し、IL-33は細胞核内に存在し、細胞壊死あるいは組織傷害によって生理活性を有する分子量33kDaの全長型で産生される。ST2はTh2細胞とアレルギー担当細胞(好塩基球、マスト細胞、好酸球)上に発現することから、アレルギー性炎症の発症にIL-33は重要な役割を演じている。実際我々は、日本人のスギ特異的アレルギー性鼻炎患者では血清IL-33値が正常コントロールに比較して高く、一塩基多型解析からIL-33遺伝子領域に花粉症と相関のある遺伝子多型が存在することを明らかにした。その他、この1~2年の研究でIL-33は様々な疾患(関節リウマチ、炎症性腸疾患、動脈硬化、虚血性心疾患、神経疾患、敗血症など)の発症に関与することも報告されている。本ワークッショップでは、IL-33の構造と産生機序、IL-33の標的細胞とその生理作用、そしてIL-33が関与する疾患を紹介する。最後に、最近我々が明らかにした花粉症の発症機序におけるIL-33の役割と、IL-33を標的とした新規アレルギー治療法を紹介したい。
  • 千葉 健治
    セッションID: W1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    リン脂質メディエーターであるスフィンゴシン 1-リン酸 (S1P) と,その受容体の1サブタイプであるS1P1受容体は,リンパ球の体内循環,特にリンパ球がリンパ節などの二次リンパ組織から体内循環系へ移出される過程で必須の役割を果たしている.世界初のS1P 受容体調節薬であるFTY720 (fingolimod) は,再発寛解型の多発性硬化症 (MS) 患者を対象とした第三相臨床試験において,MSの標準的な治療薬であるインターフェロン-βを上回る再発抑制効果が明らかにされ,経口投与が可能な新規MS治療薬として,米国,ロシア,欧州などで承認された.FTY720はスフィンゴシンキナーゼによってリン酸化体に変換され,S1P1受容体に作用し,受容体の内在化と分解を誘導することで機能的アンタゴニストとして作用する.この作用に基づいて,FTY720はTh17細胞などの自己反応性リンパ球のリンパ節からの移出を抑制し,炎症部位への浸潤を阻止することによって,MSやその動物モデルである自己免疫性脳脊髄炎において治療効果を発揮すると考えられる.本シンポジウムでは,自己免疫疾患治療の新しい標的分子としてのS1P1受容体について,S1P受容体調節薬,FTY720の作用メカニズムとMSにおける治療効果を基に概説する.
  • 住友 秀次, 藤尾 圭志, 岡村 僚久, 庄田 宏文, 澁谷 美穂子, 岡本 明子, 山本 一彦
    セッションID: W1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    Egr-3は、T細胞の分裂を抑制すると報告されている転写因子である。我々が行ったマウスを用いた解析によると、Egr-3は、重要な抑制性サイトカインであるIL-10とTGF-β1の産生を誘導していた。Egr-3は、遅延型過敏反応(DTH)を抗原特異的に抑制していた。また、Egr-3は、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を抑制していた。さらに、我々は、ヒト扁桃でEgr-3を発現し、Egr-3依存性に膜型TGF-β1を高発現するT細胞集団を同定した。我々は、このEgr-3発現細胞集団の、TGF-β1産生新規制御性T細胞としての機能を解析し、その結果を発表する。
  • 森信 暁雄, 三崎 健太, 三枝 淳, 熊谷 俊一
    セッションID: W1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAi)は抗腫瘍薬として開発されたが、近年その免疫調節作用が注目され、若年性特発性関節炎に対して臨床試験が行われている。 私達は、HDAiの抗リウマチ作用を多角的に検討し以下を明らかにしてきた。1) HDAiは関節リウマチ患者滑膜細胞(RASF)の増殖を抑制した。さらに、Fas刺激によるアポトーシスを促進させ、この作用はFasシグナル調節因子であるFLIPの発現低下によると思われた。2) 11種類あるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の発現を定量すると、RASFではOASFに比べHDAC1の発現が増加しており、HDAC1とHDAC2をknockdownすると細胞増殖は低下した。3) ヒト単球細胞から破骨細胞への分化を抑制した。4) ヒト樹状細胞細胞からのIL-12やIL-6の産生を低下させ、Th1細胞への分化を抑制した。5) SKG関節炎マウスにHDAiを投与したところ、予防的投与では発症を抑制し、治療的投与では病勢の進行を抑えた。HDAi投与マウスでは、IL-17産生低下、Treg増加、樹状細胞の供刺激分子の発現低下をみた。培養マウス樹状細胞にHDAiを作用させると、IDO産生増強、T細胞刺激能低下、サイトカイン産生低下など制御性樹状細胞様の形質を誘導した。 HDAiは動物、滑膜細胞、破骨細胞、樹状細胞レベルで抗リウマチ作用を有していた。今後の臨床試験の進行が期待される。
ワークショップ2 遺伝子多型・遺伝子異常
  • 河野 肇
    セッションID: W2-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    自己炎症性症候群CAPS(Cryopyrin-associated periodic syndrome)の責任遺伝子としてNLRP3 (NLR family, pyrin domain containing 3, NALP3, cryopyrin)は同定された。NLRP3はcaspase 1活性化機構である多分子複合体インフラマソームの構成分子の一つであり、機能亢進型変異によりインフラマソーム活性化を通じてIL-1β産生過多を来たし、自己炎症性疾患を引き起こす。またNLRP3インフラマソーム活性化はpyroptosisによる細胞死を導く。最近の研究の進展により、NLRP3インフラマソームはウイルス、細菌、真菌に対する生体防御機構としてIL-1β活性化に重要な役割を果たしていることが判明した。さらに、尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶に対する急性好中球性炎症に必須であることも明らかとなった。また、βアミロイドによる急性炎症反応にも関与しており、さらには動脈硬化における粥状硬化巣において形成されるコレステロール結晶を認識し、炎症を惹起する機構に関与することや、高血糖によるストレス反応に重要な役割を果たすことなども判明し、動脈硬化や2型糖尿病などの慢性炎症性疾患においてもその病態への関与が示唆されている。このように、自己炎症性症候群CAPSの責任遺伝子NLRP3は、我々の生体に危険が及ぶ際には、外敵のみならず内因性の異常をも覚知しインフラマソーム活性化を通じてIL-1β依存性炎症を惹起する分子であることが明らかとなってきた。
  • 右田 清志, 山崎 聡士, 和泉泰衛 和泉泰衛, 宮下賜一郎 宮下賜一郎, 井田 弘明, 上松 一永, 古賀 智裕, 川上 純
    セッションID: W2-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    家族性地中海熱(FMF)は、周期性発熱と漿膜炎発作を特徴とする遺伝性の自己炎症疾患である。FMFの責任遺伝子として、MEFVが同定され、その変異がFMFの原因と考えられている。MEFV遺伝子産物Pyrinは、炎症において中心的役割を果たしているインフラマゾームの関連蛋白である。最近、一部の炎症性疾患において、MEFV遺伝子変異が報告されており、MEFV遺伝子がFMF以外の病態にも関与していることが示唆されている。今回、我々は、不明熱患者、分類不能関節炎患者 計142名においてMEFV遺伝子解析を行った。その結果約67%において、何らかのMEFV遺伝子変異が確認され、14名が典型的FMFであった。また12名が不完全型(FMF variants)と考えられた。また自己免疫疾患の確定診断がついているにも関わらず原因不明の発熱、関節炎が遷延している症例の一部においてMEFV遺伝子変異が確認された。MEFV遺伝子変異(多型)は、日本人に比較的高頻度にみられることより、典型的FMFに加え、一部の症例において、MEFV遺伝子変異が、既存の自己免疫、炎症疾患の病像を修飾している可能性が考えられた。FMFの全国調査の結果とあわせて報告する。
  • 有馬 和彦, 井田 弘明, 金澤 伸雄, 吉浦 孝一郎
    セッションID: W2-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】生体の重要な機構を担う蛋白質は半減期の短いものが多い。細胞内蛋白質はダイナミックで繊細な生成と分解の調節を受けており、個別の蛋白質の半減期を適正な長さに調節する事は生体維持に必須の機構である。 ユビキチン–プロテアソーム分解系は非リソソーム系タンパク質分解系の最も主要な機構である。 中條-西村症候群は原因不明の全身性炎症性疾患である。常染色体劣性遺伝形式を示す。
    【目的】本症候群の原因遺伝子変異の同定を目的とした。
    【方法】遺伝子解析の同意が得られた8名の患者及びその家族の遺伝子を用いて、SNPマイクロアレイと直接塩基配列解読を行なった。不死化培養細胞のプロテアソーム機能解析は、グリセオール濃度勾配による超遠心分画と蛍光基質を用いた蛋白加水分解機能測定を行なった。ユビキチン化蛋白質の検出は特異抗体を用いたWestern Blottingと免疫組織学的検出を行なった。
    【結果】プロテアソームのサブユニットをコードする遺伝子領域にアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を同定した。培養細胞においてプロテアソーム複合体の会合異常と遺伝子量効果を伴うプロテアソーム機能低下を認めた。患者由来培養細胞ではユビキチン化蛋白質の蓄積を認めた。
    【結論】中條-西村症候群はプロテアソーム機能不全症であった。ヒト炎症性疾患におけるプロテアソーム研究の発展に貢献することが期待される。
  • 寺尾 知可史, 大村 浩一郎, 山田 亮, 高橋 めい子, 川口 喬久, 三森 経世, 松田 文彦
    セッションID: W2-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ(RA)は全世界で有病率0.5-1%の慢性炎症性関節炎であり、RA発症の約50%を遺伝因子で説明可能と考えられている。HLA-DRB1は全人種共通の最も強いRA疾患感受性遺伝因子であるが、RA全遺伝因子の1/3-1/2ほどの影響に留まる。非HLAのRA疾患感受性遺伝因子は全ゲノム関連解析を中心に30以上が発見・報告されてきたが、人種特異的なものも多く、一つ一つの寄与率も小さい。関連が示された遺伝因子の機能的役割は不明なものが多い一方で、一部の因子に関しては転写における役割やタンパクのアミノ酸置換およびそれがもたらすタンパクの機能的変化、下流のシグナル経路における影響などが示されている。また、近年、HLA-DRB1遺伝子やPADI4,PTPN22に関しては遺伝因子としての役割のほかに環境因子との関わりによる病態への関与が明らかになってきた。また、これまでのRA遺伝子解析によって、RAの病型、特にRA疾患特異性の高い抗環状化シトルリン化ペプチド抗体の有無で分けられた二群の遺伝的背景が異なることも明らかになってきた。
    このワークショップでは、RAの遺伝因子研究の歴史と現状、これまでの遺伝因子の機能解析がもたらしたRA病態解明における進展、それらの将来の展望を概説する。
  • 中川 久子, 保田 晋助, 藤枝 雄一郎, 堀田 哲也, 渥美 達也, 小池 隆夫
    セッションID: W2-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    β2-Glycoprotein I(β2GPI)は抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome;APS)の主要な対応抗原である。自己抗体が動静脈血栓症や妊娠合併症などの臨床症状を引き起こす機序については不明の点が多いが、抗β2GPI抗体がannexin II、Toll-like receptor、ApoER2やゲルゾリンと複合体を形成したβ2GPIと結合する事で血管内皮細胞、単球や血小板の異常な活性化を誘導するとの報告がある。 β2GPIの遺伝子多型のうち、Ser88Asn、Leu247Val、Cys306Gly、Trp316Serが抗β2GPI抗体と関連すると報告されている。当科で発見されたβ2GPI 379T/-(β2GPI Sapporo)は、フレームシフトによりexon 6でstop codonが入り、ホモ変異でβ2GPI欠損となる。ヘテロでは血清中のβ2GPI濃度が低値を示すことが明らかになっている。本研究は、β2GPI 379T/-と抗β2GPI抗体の関係について検討した。 対象は健常人428名、APS135 名、SLE294名とし、TaqMan genotyping法を用いて解析した。その結果、ヘテロ欠損の割合は健常人で3.0%に対しAPS患者では7.2%であった(p=0.0025, Odds 3.29)。さらに抗β2GPI 抗体の有無で検討した結果、抗β2GPI抗体陰性群のヘテロ欠損頻度1.3%に対し、抗体陽性群では8.8%と有意に高頻度であった(p=0.0124, Odds 8.83)。β2GPI 379T/-は抗β2GPI抗体の産生に関連し、さらにAPS発症のリスクとなっていた。
  • 相葉 佳洋, 城下 智, 吉澤 要, 梅村 武司, 小森 敦正, 右田 清志, 八橋 弘, 石橋 大海, 中村 稔
    セッションID: W2-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】欧米人の原発性胆汁性肝硬変(PBC)の発症との関連が報告されたCTLA4、IL12A、IL12RB2、IRF5、染色体17q12-21領域の一塩基多型(SNP)と日本人PBCの発症や病態形成との関連を検討した。【方法】PBC患者449症例と健常人371症例を対象とし、CTLA4SNPs (rs231775, rs231777, rs3087243, rs231725)、IL12A SNPs (rs574808, rs6441286)、IL12RB2 SNP (rs379056)、IRF5 SNPs (rs7808907, rs13242262, rs10488630)、17q12-21 領域のSNPs (IZKF3 SNP:rs9303277, GSDMB SNPs : rs12450091, rs7216389)の遺伝子型を解析した。【結果】17q12-21 領域のSNPsはPBC発症と有意な関連を認めた(IZKF3 rs9303277:p=2x10-4, GSDMB rs7216389:p=6x10-4)。また、CTLA4 SNPsはPBC発症(rs3087243:p=0.001)、進行(rs231725:p=0.001)、抗gp210抗体産生(rs231777:p=0.006)と有意な関連を認めた。【結論】17q12-21領域とCTLA4の遺伝子多型は、日本人PBCにおいても病態形成に関与していることが示唆された。
ワークショップ3 自己抗体
  • 濱口 儒人, 藤本 学, 竹原 和彦, 山田 秀裕, 桑名 正隆
    セッションID: W3-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】抗ARS抗体は抗Jo-1抗体をはじめ8種類が報告されている。これらの抗体陽性例は、間質性肺炎、発熱、関節炎、レイノー症状、Mechanic’s handなどの共通した臨床症状を有し、抗ARS抗体症候群と呼ばれる。しかし、各抗ARS抗体は特徴的な臨床像を持つことも示唆されている。【目的】抗ARS抗体症候群を抗体別に分類し、その臨床的特徴、経過、予後について検討した。【方法】当科で免疫沈降法を施行して抗ARS抗体を同定した患者165例を、抗Jo-1抗体(Jo-1:59例)、抗EJ抗体(EJ:38例)、抗PL-7抗体(PL-7:29例)、抗PL-12抗体(PL-12:18例)、抗KS抗体(KS:13例)、抗OJ抗体(OJ:8例)の6群に分類し、各群における臨床症状を検討した。【結果】いずれの群も90%以上に間質性肺炎を認めたが、関節炎の頻度はOJで他群に比べ有意に低かった。筋症状はJo-1、PL-7、EJと相関したが、PL-12、KSでは低頻度だった。ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候はKS、OJで低かった。爪上皮出血点に差はみられなかった。間質性肺炎で発症した場合、Jo-1、EJ、PL-7はPL-12、KS、OJに比べ高頻度に経過中に筋炎を発症した。5年生存率はいずれの群でも90%以上だった。Jo-1、PL-7では半数以上に再燃を認めたが、OJは他群に比べ再発の頻度は低かった。【結語】抗ARS抗体症候群において個別の抗ARS抗体を同定することは、臨床症状、経過を推測する上で有用であることが明らかにされた。
  • 中嶋 蘭, 井村 嘉孝, 瀬戸 美苗, 村上 昭弘, 小林 志緒, 細野 祐司, 湯川 尚一郎, 吉藤 元, 川端 大介, 大村 浩一郎, ...
    セッションID: W3-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体は最も高頻度に認められる筋炎特異的抗体であり、疾患の診断・分類・治療方針の決定に有用である。しかし日常臨床において全ての抗ARS抗体をルーチンに測定することはできない。そこで同抗体を簡便に検出するため、5種のARS抗原(Jo-1, PL-7, PL-12, EJ, KS)を混合し、抗ARS抗体を一度に検出できる新規ELISAを開発した。【方法】リコンビナントARS抗原を大腸菌(Jo-1, PL-12, EJ, KS)もしくはHi-5細胞(Pl-7, OJ)に発現させた。OJ以外は免疫ブロット・ELISAで各々の対応抗体との反応が確認され、それらを混合してELISAを作成した。膠原病患者241例、特発性間質性肺炎(IIP) 62例、健常人30例の血清を用いてスクリーニングを行い、RNA免疫沈降法に対する感度特異度を検定した。【結果】新規ELISAの感度、特異度は各々97.5%、99.3%であった。抗ARS抗体はPM33%(19/57)、DM28%(13/46)、IIP11%(7/62)、SLE2%(1/49)、RA2%(1/49)で検出された。【結語】5種の抗原を混合した新規抗ARS抗体検出用ELISAを開発し、RNA免疫沈降法と同等の性能を確認した。PM/DMおよびIIP患者において抗ARS抗体を簡便にルーチンに測定できるようになると考えられる。
  • 坪井 洋人, 中村 友美, 松尾 直美, 飯塚 麻菜, 松本 功, 住田 孝之
    セッションID: W3-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】SSにおいて、抗M3R抗体の機能を明らかにする。 【方法】 1)M3RのN末端、第1、2、3細胞外ループのペプチドを抗原としたELISAで、SS42例、健常人(HC)42例の抗M3R抗体を測定した。 2)ヒト唾液腺上皮(HSG)細胞株を抗M3R陽性SS、陰性SS、HC由来IgGで12時間共培養し、塩酸セビメリン刺激後のCa2+-influxに対する影響を検討した。 3)M3Rの第2ループで免疫後のM3R-/-マウス由来脾細胞を骨髄腫細胞株と細胞融合し、抗M3Rモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製した。培養上清から抗M3Rモノクローナル抗体を精製し、HSG細胞株を用いて、Ca2+-influxに対する影響を検討した。 【結果】 1)すべてのエピトープに関して、HCと比較してSSでは抗体価、抗体陽性率ともに有意に高値であった。 2)N末端、第1ループに対する抗体陽性SSのIgGはCa2+-influxを増強したが、第2ループに対する抗体陽性SSのIgGは抑制した。第3ループに対する抗体陽性SS、抗M3R抗体陰性SS、HCのIgGは影響しなかった。 3)異なるCDR3領域を有する2種のハイブリドーマが作製できた。2種の抗M3Rモノクローナル抗体は、共にCa2+-influxを抑制した。 【結論】SSにおいて、第2細胞外ループに対する抗M3R抗体は、唾液分泌低下に関与する可能性が示唆された。 
  • 高橋 裕子, 芳賀 しおり, 石坂 幸人, 三森 明夫
    セッションID: W3-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    アンジオテンシン阻害酵素 2(ACE2:ACEホモログ)は、ACE作用に拮抗して血管保護に働く。我々は、膠原病の収縮性血管病変に、ACE2阻害が関与する仮説を立て、患者血清中にACE2阻害自己抗体を証明した。すなわち、精製ヒトリコンビナントACE2によるELISAで、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、四肢末端壊死の患者(SLE, SSc, MCTD)で抗体の高値陽性17人/18、対照患者24人で低値(p<0.0005)、健常者28人で陰性であった。血清ACE2活性は、抗ACE2抗体価と逆相関し(R2 = 0.55)、患者血清IgG分画は、in vitro ACE2活性を抑制した。末端壊死が進行中のSLE 1例では、ステロイド治療+血漿浄化/DFPPにより抗ACE2抗体消失、血清ACE2活性欠損の回復をみた(Takahashi, et al: Arthritis Res Ther, 2010)。その後、新たなPAH 3人で抗体高値を確認した一方、非血管病にも高値例(7/54)を認めたが、それら血清IgG分画にはin vitro ACE2阻害作用がなかった。さらにランダムペプチドライブラリー法で得た抗体の反応部位候補2ヶ所の合成ペプチドで血清を吸収し、4患者で抗ACE2抗体価低下、in vitro ACE2阻害活性の低下をみた(p<0.05)。現在、抗ACE2-MAbによる動物モデルを作成中である。
  • 堀田 哲也, 中川 久子, 保田 晋助, 渥美 達也, 小池 隆夫
    セッションID: W3-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    抗リン脂質抗体症候群 (APS)は種々のリン脂質結合蛋白を対応抗原とする抗リン脂質抗体 (aPL) が血中に存在し、各種動静脈血栓症や妊娠合併症など多彩な臨床症状と呈する自己免疫疾患である。基礎疾患を持たない原発性APSと他の自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する二次性APSに分類される。  APSの原因はいまだ明らかではないが、APS患者やaPL陽性者に家族集積性が見られることもあり、遺伝的要因の関与が示唆されている。これまで、他の自己免疫疾患と同様にHLAとAPS患者やaPL陽性者との関連が報告されてきた。また、aPLの主要な対応抗原であるβ2-GPIの遺伝子多型との関連も示唆されている。さらに、aPL陽性者が必ずしもAPSを発症するわけではないことから、血栓のリスク遺伝子を評価することは一次予防の点でも重要である。 また、近年SLE患者において、従来の候補遺伝子アプローチに加え、全ゲノム関連解析(GWAS)による網羅的な遺伝子探索が欧米を中心におこなわれ、疾患感受性遺伝子が次々と報告されている。そのうちのいくつかのものは、自己免疫疾患共通の疾患感受性遺伝子である可能性も報告されている。SLEとAPSは合併することが多く、共通した疾患感受性を有する可能性も高いことから、SLEの新規疾患感受性遺伝子に関してAPSにおける検討も必要である。 本ワークショップでは、aPL陽性者やAPS患者における遺伝子多型について自験例を中心に報告する。
ワークショップ4 疾患モデルを用いた病態解明
  • 天野 浩文, 安藤 誠一郎, 箕輪 健太郎, 金子 俊之, 河野 晋也, 仲野 総一郎, 渡辺 崇, 石原 直樹, 天野 恵理, 森本 真司 ...
    セッションID: W4-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)は、多彩な自己抗体の産生と多臓器障害を特徴とするが、B細胞が自己成分、特に核酸や関連するタンパク質に対する抗体を産生する。SLEの疾患モデルのひとつであるBXSBマウスでは、Yaa (Y-linked autoimmune acceleration)遺伝子変異が疾患を増悪させるが、本来X染色体上に存在するtlr7,tlr8をはじめとする十数個の遺伝子を含む領域がY染色体上に転座し、維持されてきたものであることが明らかにされている。Yaa遺伝子はB細胞に発現しB細胞抗原受容体(BCR)のシグナルを増強していることが知られ、またYaa遺伝子変異による影響で脾臓の脾臓のマージナルゾーンB (MZB)細胞が著明に減少していることなどから、SLEとB細胞の異常が密接に関わっていると考えられる。さらにYaa遺伝子を保有するC57BL/6マウスでは、B細胞に発現するFcγレセプターIIb(FcγRIIb)の影響を受けて自己抗体を産生し、自己免疫病を発症する。われわれは、BXSBマウスにおいてBCRシグナル、あるいはFcγレセプターの遺伝子改変マウスの実験を行った結果、それらがMZB細胞や自己免疫疾患に大きく影響を与えることが判明した。これまでの報告と合わせ、SLEにおけるB細胞の免疫異常について考察する。
  • 永尾 圭介
    セッションID: W4-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    ランゲルハンス細胞は表皮唯一の樹状細胞であり、皮膚免疫のセンチネルと考えられているが、そのin vivoの機能をサポートするデータはほとんど存在しない。さらに、近年皮膚には新しい真皮樹状細胞サブセットが発見されるなど、個々の皮膚樹状細胞サブセットの機能を見分けることが容易ではなくなってきた。我々はこれまで遺伝子銃を利用した免疫法でランゲルハンス細胞が細菌抗原特異的Th2液性免疫(IgG1)を誘導し、真皮樹状細胞サブセットとは異なる免疫応答を司ることを報告した。しかし、この実験は皮膚のバリアを故意に回避し、免疫能のみにフォーカスした人工的なセッティングであった。その後ランゲルハンス細胞が表皮タイトジャンクションを貫いて蛋白抗原を獲得しうることを証明したが、その免疫学的結果は不明であった。今回我々は蛋白抗原を用いてランゲルハンス細胞がタイトジャンクションを通して獲得した抗原に対しIgG1反応を誘導することを証明し、実験的Staphylococcal scalded skin syndromeにて防御的な液性免疫を誘導しうることを明らかにした。このTh2型液性免疫応答は、抗微生物免疫のみならず、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の経皮感作に重要ではないかと考えている。
  • 近藤 裕也, 田原 昌浩, 坪井 洋人, 高橋 智, 松本 功, 住田 孝之
    セッションID: W4-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/20
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】転写因子T-betの発現が自己免疫性関節炎に与える影響を明らかにする。【方法】1)C57BL/6、T-betトランスジェニック(T-bet Tg)マウスにおいてコラーゲン誘導関節炎(collagen induced arthritis;CIA)の発症率、重症度を比較した。2)抗原であるII型コラーゲン(collagen type II;CII)の投与後、所属リンパ節からリンパ球を採取し、CIIとともにin vitroで培養後、サイトカイン産生、転写因子発現をELISA、定量PCRで解析した。3)in vitroでCD4+T細胞をTh-17分化条件で培養し、サイトカイン産生、転写因子発現などをFACS、定量PCRで評価した。【結果】1)T-bet TgでCIAの発症率、重症度が著明に低下した。2)T-bet TgにおいてCII反応性のT-bet発現亢進とRORγt発現抑制を認め、IL-17産生が有意に低下した。3)T-bet TgおよびT-bet TgとIFNγ-/-マウスを交配して作成したT-bet Tg x IFNγ-/-でIL-17産生細胞の減少およびRORγt発現の抑制を認めた。【結論】T-betの過剰発現は、IFNγ非依存的に抗原特異的なTh17分化を制御することで自己免疫性関節炎を抑制したことが示唆された。
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