臨床神経生理学
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47 巻 , 3 号
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原著
  • 高谷 恒範, 重松 英樹, 本山 靖, 中瀬 裕之, 川口 昌彦
    2019 年 47 巻 3 号 p. 131-138
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    術後の神経機能障害は, 患者の機能的予後に関わる重大な問題であり, その予防のため脳・脊髄手術において術中神経モニタリングが実施されている。術前のチェックリストとして, ①術中神経モニタリング用手術安全チェックリストの導入, ②術中波形変化時の対応チェックリスト導入を行った。導入によって術中神経モニタリングの偽陽性率は, 12.06%から0.94%に低下した。上記のチェックリスト導入により, 多職種間の情報共有と, その対応の標準化が可能であった。また, 非専門技術 (コミュニケーション, チームワーク, リーダーシップ, 状況認識, 意思決定など) の部分でモニタリング技師における個人差を補うことができ, より信頼度の高い術中神経モニタリングが実施可能となった。しかし, 専門技術 (波形判読など) としてのコントロール波形・モニタリング波形の認識の違いは, 改善の余地を認めた。今後, 技師間差をなくすため, 専門技術としての波形認識のトレーニングも必要と考える。

  • 石井 洋平, 小路 純央, 森田 喜一郎, 佐藤 守, 加藤 雄輔, 中野 慎也, 近藤 昭彦, 内村 直尚
    2019 年 47 巻 3 号 p. 139-147
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    近赤外線分光法 (NIRS) は, 統合失調症をはじめとする精神疾患の精神生理学的指標として広く用いられている。本研究では, 独自に考案した単一事象関連NIRS計測法 (K-SERD) を用いて, 統合失調症患者におけるしりとり課題時の脳血流変動の特徴について, 健常者と比較検討し, 本計測法の有用性について検討した。統合失調症患者, 健常者 (各40名) を対象に単一しりとり課題を連続して20回以上実施し, その加算平均化したデータを解析した。その結果, 統合失調症群は健常群に比べて, 前頭前野領域および頭頂連合野領域において, 有意な低活性が認められた。また, 統合失調症患者のPANSSを用いた臨床症状評価としりとり課題時の脳活性値との間に有意な相関関係が認められた。以上より, しりとり課題遂行中の K-SERD による NIRS 計測は, 統合失調症患者の認知機能を反映する精神生理学的指標として有用であり, 臨床症状との関連は患者の機能的転機を予測するのに役立つことが示唆された。

「臨床神経生理学が精神疾患の治療において果たす役割—update—」
  • 石井 良平, 吉村 匡史
    2019 年 47 巻 3 号 p. 148
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
  • 畑 真弘, 石井 良平, 青木 保典, 池田 俊一郎, 池田 学
    2019 年 47 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    世界的な高齢化の進展に伴い, 認知症の患者数は上昇の一途を辿っている。脳波はこれまで認知症の日常臨床においては, てんかんやせん妄, 意識障害などを除外するための補助診断として用いられてきた。認知症研究においては, 最近の画像研究の急速な進歩に伴い, 脳波はやや後れを取ってきた感は否めない。しかし, その高い時間分解能, 低侵襲性, 安価な設備や運用コストなどの利点が評価され, 近年脳波の重要性が高まっている。また新たな定量的脳波解析法の進歩も伴って, 脳波による認知症の早期診断に有用な新たな知見が蓄積されつつある。今回我々は, 脳波検査とその定量的な解析法の進歩が, 認知症の早期診断とその病態生理解明にどの程度迫りつつあるのか, 自験例を交えながら紹介したい。

  • 樋口 悠子, 住吉 太幹, 立野 貴大, 川﨑 康弘, 鈴木 道雄
    2019 年 47 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    事象関連電位 (ERPs; event-related potentials) の測定は統合失調症の治療における改善のメカニズムを探索する一手法として有力である。本稿ではERPsを統合失調症患者の治療に応用した研究について紹介する。 (1) オランザピンを投与後P300のLORETA (low-resolution electromagnetic tomography) 解析で表される発生源電流密度の増加に伴い, 臨床指標 (言語記憶, QOLなど) の改善が見られた。 (2) ペロスピロン単剤へ切り替えでスクリプト課題の得点が改善した。P300を測定したところ左上前頭回の電流密度の増加が認められた。 (3) 精神病発症リスク状態の患者にペロスピロンによる薬物療法を行ったところ, P300振幅 (Fz, Cz), 臨床症状および認知機能が共に改善し, 良好な社会的転帰が得られた。

  • 池田 俊一郎, 西田 圭一郎, 吉村 匡史, 北浦 祐一, 木下 利彦
    2019 年 47 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    定量脳波検査は非侵襲でありながら神経細胞の活動電位を測定できるという点で数多くの脳画像研究に応用され, 多くの解析方法が利用されている。その中でもLehmannらによって発表されたMicrostate segmentation解析は, 脳波計測から得られたデータをクラスター解析し, ほぼ安定したtopographyが連続して出現する区間やその切り替わり方を解析することで, 脳活動の電気的最小単位であるMicrostate segmentationを決定する解析手法である。このmicrostateの一連のマップの時間的変化は情報処理過程の特定の「段階」や「内容」を反映しているといわれ, Lehmannらは「思考の原子 (the atoms of thought) 」として, 意識の内容を形作る基本的なブロックであると提唱した。多くの研究では, 4つのマイクロステートトポグラフィを用いていることが多く, Microstate Aはright-frontal から left-posteriorにかけて, Microstate Bは, left-frontal からright-posteriorにかけて, Microstate Cはfrontal からoccipitalにかけて, Microstate Dは主に, frontal and medialにかけて広がるmappingとされている。近年, 脳波とfMRIとの同時計測データを解析することで, 各トポグラフィについてさらに生理学的意味が明らかになっている。まだ, 議論の余地はあるが, Microstate Aは聴覚回路, Microstate Bは視覚回路, Microstate Cは認知制御回路や一部のデフォルトモードネットワーク, Microstate Dは背部注意回路との関係が示唆されている。多くの神経疾患, 精神疾患において, マイクロステートの変化が指摘されており, 統合失調症の研究ではMicrostate Dの低下が指摘されたり, その他, 認知症, パニック障害, ナルコレプシーなど多くの精神疾患, 神経疾患でのマイクロステートの変化が報告されている。今後, さらに時間分解能が優れた検査法である脳波検査を全脳的に解析できるマイクロステート解析にて更なる病態生理の解明が望まれる。

  • —うつ病を中心に—
    西田 圭一郎, 吉村 匡史, 山根 倫也, 加藤 正樹, 木下 利彦
    2019 年 47 巻 3 号 p. 168-173
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    脳波は実臨床においては, てんかんの診断やせん妄の評価に使用される。研究においては時間分解能の高さ, 侵襲性の低さ, 安価なため臨床への応用の容易さ, といった点から, 脳機能測定のツールとして以前から用いられてきた。一方脳波の分野とは別に, 最近の画像研究の進歩に伴い, 脳の構造研究で精神疾患の正常からの逸脱が検出できるようになり, 精神疾患の発現型として関心を浴びている。近年, このような脳波以外の分野の研究の発展に伴い得られた新たな知見と, 上記特徴を有する脳波測定を組み合わせることで, 脳波解析の有用性が再び脚光を浴びるようになってきている。今回我々は, 脳波定量解析が実臨床への応用が可能であるか, 自施設におけるうつ病患者の脳波データの解析結果を元に, 治療予測の可能性について考察を行い, 将来の展望を述べたい。

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