臨床神経生理学
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48 巻 , 1 号
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原著
  • 阿部 達哉, 大熊 彩, 北尾 るり子, 平島 富美子, 木村 俊紀, 小森 哲夫
    2020 年 48 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    痙縮などの脊髄興奮性の増大に伴って, F波出現頻度 (F-wave persistence: FP) や振幅が増加することが知られているが, F波研究における生理的加齢の脊髄興奮性変化の知見は少ない。18〜93歳の健常対象者64名を若年群, 壮年群, 中年群, 高年群の4群に分け, 運動単位数推定 (motor unit number estimation: MUNE) とF波検査を行った。運動単位数, 単一運動単位電位の平均振幅, FP, CMAPに対するF波平均振幅の比 (F%M) を比較し, 年齢と各指標との相関を単回帰分析で検討した。さらに年齢に対するFPとMUNEの関連性を重回帰分析で検討した。MUNEは高年群で低下し, FPおよびF%Mは高値であった。MUNEは年齢と負の相関を認め, FPとF%Mは年齢と正の相関を認めた。また重相関の検討にてFPとMUNEはそれぞれ年齢との間に有意な相関を認めた。以上, 脊髄興奮性に生理的加齢性が影響している可能性が確認された。

症例報告
  • 青木 怜佳, 駒ヶ嶺 朋子, 国分 則人, 橋口 昭大, 高嶋 博, 平田 幸一
    2020 年 48 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    X-linked Charcot–Marie–Tooth disease type 1 (CMTX1) には亜急性増悪を示し免疫グロブリン大量静注療法 (intravenous immunoglobulin therapy; IVIg) が奏功する例の報告があり, 少なくとも一部において末梢神経の免疫学的脆弱性の存在が考えられている。症例は51歳男性, 46歳頃より躓きやすさが出現, 51歳時より約3か月の経過で右手の巧緻運動障害や歩行障害が進行した。槌趾のほか, 右母指球筋萎縮, 四肢筋の脱力と腱反射消失, 感覚失調を認め, 神経伝導検査では複合筋活動電位の時間的分散を含む脱髄所見を認めた。IVIgを行い症状は一旦改善したが, 徐々に増悪し53歳時に再度受診した。母親にも下肢優位の末梢神経障害を認めた。本人・母親にGJB1 P70S変異が確認されCMTX1の診断に至ったが, 初回IVIgへの反応性から再度IVIgを行うと明らかな改善が得られ, 亜急性増悪に免疫学的機序が関与すると考えられた。

特別寄稿
特集「睡眠に関連する異常運動・行動の臨床神経生理学」
  • 千葉 茂
    2020 年 48 巻 1 号 p. 23
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー
  • 立花 直子
    2020 年 48 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    終夜睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography, PSG) は, 1960–80年代には, 睡眠の生理学的研究の重要な武器であったが, その後, 臨床への応用が進み, 米国ではその実施をシステム化し, academic sleep centerの設立へとつながった。特に睡眠呼吸障害の有病率が高く, 循環器疾患や脳卒中の危険因子および悪化因子として働くことがわかってからは, この疾患に焦点を当てた形で大量のPSGが実施されるようになった。しかし, PSGは高コストであり, すべての患者に対応できないため, 呼吸に関する誘導のみ残した簡易型無呼吸モニタ検査の導入が近年進んでいる。ただし, 日本では, 当初からPSGが実施できる施設も人材も少数なため, 簡易型無呼吸モニタ検査に流れたという現場の事情がある。米国と日本とを歴史的に比較しつつ, 臨床神経生理学にPSGを取り戻すにはどうすればよいのかを考察した。

  • 白石 秀明
    2020 年 48 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    睡眠関連性発作は, 小児期に生じるてんかん症候群では非常に多い。小児期に生じる素因性焦点性てんかん (旧特発性局在関連性てんかん) では, 睡眠関連性の発作症状を持つ。また逆説的な表現において, 小児期において, 睡眠関連性発作を示した場合は, 小児期に寛解するSelf limited なてんかん (旧良性てんかん) が想像できる。このようなてんかん症候群では, 特に, 睡眠期に, 特有の脳波所見を持ち, 発作症状の特徴と併せて, 診断確定が可能であり, 適切な治療計画が構築できる。一方, 小児における難治性てんかんの中でも, 睡眠に依存した発作が多く生じる。特に, Lennox–Gastaut症候群, 徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん, Landau–Kleffner症候群においては, 睡眠時に特徴的な発作症状, 検査所見を示す。難治性の経過をたどる小児期のてんかん症候群では, 夜間発作が頻回に出現するため, 睡眠構築に異常を来すことが多い。また, 抗てんかん薬の使用や, 生活環境の問題において, 眠気が増した場合には覚醒時においても発作症状が増加し, 随伴して睡眠構築にも乱れが生じる。適切な治療のためには, 覚醒時の眠気を避け, 良い睡眠を得られるような睡眠構築の改善を図ることが重要である。小児期のてんかん症候群診断において, 睡眠に関連した, 発作症状, 脳波所見を始めとした検査所見を検討することは重要である。

  • 神 一敬, 板橋 泉, 中村 美輝, 中里 信和
    2020 年 48 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    焦点てんかんは, 焦点の局在により, 発作に対する睡眠の影響という点でそれぞれ異なった特徴がある。後頭葉てんかんは覚醒中の発作が多いのに対して, 前頭葉てんかんは睡眠中の発作が半数以上を占める睡眠てんかんの代表的疾患である。前頭葉てんかんでは, 焦点性間代発作, 非対称性強直発作, 過運動発作 (運動亢進発作) といった運動症状をきたす発作がみられる。睡眠中に異常運動・行動をきたすため, ノンレムパラソムニア (ノンレム睡眠からの覚醒障害群) との鑑別が問題となる場合があるが, 発作が一晩に複数回群発することがある, 運動症状がステレオタイプで無目的である, といった点が鑑別点として重要である。終夜睡眠ポリグラフ中にイベントが記録されれば, 前頭葉てんかんの発作はノンレム睡眠stage N2に起きることが最も多いのに対して, ノンレムパラソムニアはノンレム睡眠stage N3に起きる点が特徴である。

  • 加藤 久美
    2020 年 48 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    パラソムニア (睡眠随伴症) とは, 睡眠開始時, 睡眠中, あるいは睡眠からの覚醒時に生じる望ましくない身体現象であり, ノンレムパラソムニア, レムパラソムニア, その他のパラソムニアに分類されている。ノンレムパラソムニアには小児期に多い錯乱性覚醒, 睡眠時遊行症, 睡眠時驚愕症, 成人女性に多い睡眠関連摂食異常症が含まれる。錯乱性覚醒, 睡眠時遊行症, 睡眠時驚愕症は小児期に最初のエピソードが出現し, 小児期に多く成人では少ない。徐波睡眠からの覚醒で出現しやすいため, 徐波睡眠の多い夜間睡眠の最初の1/3–1/2に発現する。遺伝性が高く, 小児のノンレムパラソムニアの有病率は両親の有病率と関連することが報告されている。睡眠不足, 不規則な睡眠習慣, ストレス, 閉塞性睡眠時無呼吸, アルコール, カフェイン, 発熱疾患が誘因となりうる。近年, 注意欠如・多動症児にノンレムパラソムニアが多いとの報告がある。

  • 小栗 卓也, 立花 直子
    2020 年 48 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    レム睡眠行動異常症 (RBD) は, 「夢内容に一致した異常行動 (DEB) 」を主徴候とする睡眠関連疾患として知られている。しかしDEBはRBD以外のさまざまな病態でもみられ, 必ずしもRBDに特異的なものではない。またRBDの確定診断にはビデオ同時記録による終夜睡眠ポリグラフィ (vPSG) で「筋活動の低下を伴わないレム睡眠 (RWA) 」を証明することが必須であるが, RWAも同じくRBD以外の病態でもみられ, この所見のみで直ちにRBDと診断することはできない。本稿では, DEBおよび類似の現象を呈する病態, ならびに特発性RBD以外でRWAの出現する病態について解説する。またRBD/RWAと神経変性疾患との関連について, 現在の知見を述べる。

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