臨床神経生理学
Online ISSN : 2188-031X
Print ISSN : 1345-7101
ISSN-L : 1345-7101
49 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 本間 美桃子, 中野 泰伺, 岡崎 慎治
    2021 年 49 巻 6 号 p. 459-468
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    種々の実行機能は前頭前野内の異なる領域が担うとされるが, 推論を伴う問題解決課題遂行時における脳血流変化はこれまで検討されていない。このことをふまえ本研究では, 定型発達成人28名を対象とし, 全4ブロック計8題から構成される問題解決課題 (Crack-the-Code) の遂行を求めるとともに前頭前部よりNIRS計測を行った。その結果, 課題の難易度の上昇に伴い, 正答率の低下, 移動回数の増加, 反応時間及び所要時間, 評価時間の延長がみられた。脳血行動態では, 難易度が高いブロックで左DLPFC, 及びブロック内の課題後半で左右mPFCのoxy-Hb濃度変化量が有意に増加した。以上より, 難易度の上昇に伴い, 取り組みが試行錯誤的になることが遂行成績に反映されるとともに, 問題解決の処理全体に左DLPFCが関与することが示唆された。また, 複雑な問題解決では右mPFC領域を中心に前頭前野全体の処理への関与が示唆された。

  • 前田 美穂, 森 仁
    2021 年 49 巻 6 号 p. 469-473
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    反復神経刺激試験は神経筋接合部疾患の診断目的に使用されることが多い検査である。僧帽筋における同検査では筋等収縮のために筋の固定が必要だが, その固定は必ずしも容易ではない。正確にかつ簡便に僧帽筋記録での反復神経刺激試験を行うための記録法として, 僧帽筋中部を記録筋とする手法を報告する。探査電極を僧帽筋上部 (従来法) と僧帽筋中部に置き, 振幅の変動を比較した。固定は被験者が座位で椅子を掴む方法を用いた。3 Hz 10回連続刺激を行い, 第1反応に対する減衰率 (%) に関して連続差平均を用いて検討した。通常使用される僧帽筋上部記録・筋固定ありの方法では振幅が一定しない場合でも, 僧帽筋中部記録・筋固定なしでは振幅が一定し, 揺らぎが少ないことが示された。副神経の反復神経刺激試験において僧帽筋中部記録で筋の固定を行わない方法が有用である。

症例報告
  • 山﨑 博輝, 高松 直子, 野寺 裕之, 松田 拓, 牟礼 英生, 安田 宗義, 和泉 唯信
    2021 年 49 巻 6 号 p. 474-480
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    真の神経原性胸郭出口症候群 (true neurogenic thoracic outlet syndrome; TNTOS) は電気生理学的検査によるTh1優位のC8, Th1神経根障害の証明により診断するが, 詳細な障害部位やその機序についてはMRI等の画像検査での同定は容易ではない。今回われわれは, TNTOSにおける神経障害部位の評価に症状誘発肢位での神経超音波検査が有用であった1例を経験した。症例はTNTOSと診断した14歳女性で, 右母指球, 第一背側骨間筋および小指外転筋の萎縮と, 右上肢の挙上で増強する右前腕内側のしびれを示した。神経超音波検査では頸神経根, 末梢神経とも正常であったが, 鎖骨上窩 (肋鎖間隙) から右上肢を前方挙上させながら腕神経叢を観察することで, 長大化した右C7横突起先端部から伸びた線維性索状物 (fibrous band; FB) と中斜角筋による下神経幹の圧迫所見を確認した。手術にてFBを右C7横突起先端ごと除去し, 神経学的所見, 電気生理学的所見, 神経超音波所見ともに良好な回復を得た。

特集 「新しい脊髄・神経機能診断」
  • 安藤 宗治, 川端 茂徳
    2021 年 49 巻 6 号 p. 481
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー
  • 足立 善昭
    2021 年 49 巻 6 号 p. 482-489
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    脊髄や末梢神経の電気的活動によって発せられる微弱な磁場を, 体表面で検出することによって, それらの機能を非侵襲的に調べることのできる神経磁場計測システムの開発が進められている。近年, 技術レベルが実用に耐えられるようになり, 臨床応用も徐々に開拓されてきた。本稿では, 神経磁場計測システムの技術的な側面を概説し, 2020年度に稼働開始した最新の試作システムについて述べる。

  • 朴 正旭, 安藤 宗治, 板倉 毅, 幸原 伸夫, 谷口 慎一郎, 齋藤 貴徳
    2021 年 49 巻 6 号 p. 490-495
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    [目的] 神経磁界計測装置 (以下MNG) を用いた従来の肘部正中神経刺激後の頸髄神経誘発磁界の計測では上位頸髄の伝導は時間的分散の影響により確認が困難であった。そこで上腕近位部正中神経刺激の有用性に関して健常者で検討を行った。[方法] 対象は神経症状を有さない健常成人5名。上腕骨内側上顆から15–17 cm近位の上腕二頭筋-三頭筋間で正中神経に電気刺激を加え, 上位頸髄神経誘発磁界を測定。磁界強度や再構成電流の解析を行った。[結果] 5例全例で上位頸髄において神経活動に由来する磁界データを可視化することができた。肘部正中神経刺激時の磁界と比較して上腕近位部刺激では約1.5–2倍の増強を認めた。[考察および結論] MNGを用いた頸髄神経誘発磁界の報告は既にSumiyaらによって報告されている。従来の方法よりさらに中枢の上腕近位部刺激を行うことで上位頸髄磁界計測も可能になった。今後, 上位頸髄疾患の機能診断にMNGが有用な検査となることが期待される。

  • 橋本 淳, 川端 茂徳, 佐々木 亨, 足立 善昭, 大川 淳
    2021 年 49 巻 6 号 p. 496-502
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    神経磁界計測は, 単純X線やMRI等の画像評価では得られない神経機能評価をおこなえる画期的な手法である。われわれが開発中の神経磁界計測装置は, 非常に感度の高い磁気センサを用いることで, 脊髄など体表から深い位置にある神経でも無侵襲かつ詳細に評価できる。下肢末梢神経刺激後の胸腰椎の神経磁界計測では, 複雑な走行の腰部神経根に沿って流れる電流や, 全胸髄内を伝導する電流など, これまで無侵襲では評価しえなかった神経電気活動も高い空間精度で可視化できるようになった。腰椎疾患患者においても電流強度の減衰や伝導ブロック等による神経伝導評価が可能となり, 新たな機能評価法として有用と考える。神経磁界計測は, これまでにない非侵襲的かつ高い空間精度をもつ神経機能評価法として, 胸腰椎疾患における責任高位診断や経時的評価など, 今後の幅広い臨床応用が期待される。

  • 佐々木 亨, 川端 茂徳, 橋本 淳, 足立 善昭, 大川 淳
    2021 年 49 巻 6 号 p. 503-509
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    これまでにわれわれは, 末梢神経の機能評価に最適化した生体磁気計測装置を用いて, 神経磁界計測による上肢末梢神経の客観的機能評価法の開発に取り組んできた。今回, アーチファクト除去アルゴリズムの適応と, 空間フィルター法による等価電流の計算により, 手根管部正中神経, 肘部尺骨神経と腕神経叢部磁界計測に成功し, 末梢神経障害の詳細な障害部位診断が可能となった。本手法は, 周囲の骨軟部組織の影響を受けにくく, 高い空間分解能を有し, 簡便にインチングも可能であり, 従来の電位計測の偽陰性を軽減できる可能性が示唆された。単純X線画像やMRI画像などの形態情報と, 神経電流のインチングを重ね合わせることもでき, 術式決定にも有益となる可能性が考えられた。さらに, 軸索内電流と脱分極部の内向き電流を可視化することができ, 本手法は様々な末梢神経障害の診断や病態把握に役立つ新たなルーツとなることが期待される。

  • 朴 正旭, 安藤 宗治, 板倉 毅, 幸原 伸夫, 谷口 慎一郎, 齋藤 貴徳
    2021 年 49 巻 6 号 p. 510-514
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/22
    ジャーナル フリー

    [目的] 今回我々は神経磁界計測装置 (以下MNG) を用いて健常者の坐骨神経刺激–臀部坐骨神経活動の非侵襲的機能評価が可能であるかどうか明らかにした。[方法] 対象は神経症状を有さない健常成人10名, 平均年齢37歳であった。刺激神経は坐骨神経, 刺激強度は短趾伸筋–複合筋活動電位 (CMAP), 母趾外転筋–CMAPの最大上刺激 (平均24 mA) とし, 刺激頻度5 Hz, 刺激幅0.3 msとした。非ストレス, ストレス肢位でMNGを用いて臀部坐骨神経誘発磁界を測定した。検討項目は磁界強度, 推定電流強度, 伝導速度, 梨状筋交差部での伝導遅延の有無とした。[結果] 全例で臀部坐骨神経誘発磁界が記録された。磁界強度は平均130 fT, 推定電流強度は平均3.2 nAm, 推定電流の伝導速度は平均61.6 m/sであり, 伝導遅延も認めなかった。[考察および結論] 今回MNGを用いてストレス下においても坐骨神経刺激後臀部坐骨神経誘発磁界を得ることができた。

その他
feedback
Top