臨床神経生理学
Online ISSN : 2188-031X
Print ISSN : 1345-7101
ISSN-L : 1345-7101
49 巻 , 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 髙崎 浩壽, 末廣 健児, 石濱 崇史, 鈴木 俊明
    2021 年 49 巻 3 号 p. 119-123
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    誘発筋電図のF波を用いて, 健常者を対象に観察課題の相違による脊髄前角細胞の興奮性変化について検討した。F波は, 右小指外転筋より導出した。測定の流れは, 閉眼にて安静時のF波を1分間測定し, 4分間の休息後, パソコン画面の映像を見せながら再度F波を1分間測定した。課題は, 右小指の運動映像 (課題A), 右小指・環指・中指・示指の運動映像 (課題B), 課題Bにおいて小指以外の手全体を軽くぼかした運動映像 (課題C) とした。安静時を1とした観察時の振幅F/M比相対値を算出し課題間で比較すると, 課題Bと比べて課題A・課題Cで有意に高い値を認めた。この結果から, 課題A・課題Cでは, 当該筋が作用する小指の運動に視覚的注意が向けられていたことにより, 対応する脊髄前角細胞の興奮性は増大した可能性が示唆された。

症例報告
  • 長岡 和磨, 降籏 隆二, 久保 英之, 鈴木 正泰, 権 寧博, 内山 真
    2021 年 49 巻 3 号 p. 124-130
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性。X−10年頃より夜間の中途覚醒時に小動物が天井の鴨居を走るなどの幻視が出現した。X−5年頃からは夜中に大声を出す, 就寝中にベッドから転がり落ちるなどの異常行動がみられた。経過中に他院で薬物治療を受けたが改善は乏しかった。精査加療目的にX年10月紹介受診。終夜睡眠ポリグラフ検査で無呼吸・低呼吸指数36.0回/時間であり, 筋活動の低下を伴わないレム睡眠を認めた。ドパミントランスポーターシンチグラフィーは両側基底核の集積低下は正常下限であり, α–シヌクレイノパチーに属する神経変性疾患の初期として矛盾しない所見であった。123I-MIBG心筋シンチグラフィーで心臓/縦隔比の低下を認めた。病初期のため持続的で著明な記憶障害は認めないものの, レビー小体型認知症の初期と診断した。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して, CPAP治療を導入し, レム睡眠行動障害に対してクロナゼパム, レビー小体型認知症に対してドネペジル塩酸塩による薬物療法を行い, 症状の改善を認めた。治療経過よりCPAP治療の導入は, レム睡眠行動障害の異常行動に対する薬物治療の反応性を改善した可能性が考えられた。今後レビー小体型認知症による認知機能低下がより顕在化する可能性に注意する必要があると考える。

短報
  • 石坂 章江, 木村 英紀, 木田 耕太, 森島 亮, 清水 俊夫
    2021 年 49 巻 3 号 p. 131-138
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    神経伝導検査 (NCS) は神経筋疾患の診療における有力なツールである。医師が診断に必要な神経や検査法を選択しNCSを依頼する。臨床検査技師は, 依頼内容を把握し, また検査中に得られた波形を判断しながら必要な検査を追加する。そこで全ての技師が適切な追加検査を行えることを目指し, 第一段階として正中神経NCSについての独自のチャート式マニュアルを考案した。正中神経NCSでは, 比較的よく遭遇する手根管症候群とMartin Gruber吻合に注目し, これらを適切に鑑別できるように留意してマニュアルを作成した。これにより, 初学者でも必要な追加検査が施行可能となり, 検査中の心理的負担の軽減, 検査時間の短縮, 技師間での検査方法の標準化につながる可能性がある。

特集 「臨床脳波の現状と未来:clinical toolかresearch topicか?」
  • 池田 昭夫, 小林 勝弘
    2021 年 49 巻 3 号 p. 139-140
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー
  • 夏目 淳, 伊藤 祐史, 白木 杏奈, 城所 博之
    2021 年 49 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    脳波を患者の検査として用いる場合に, 臨床研究と臨床検査の境界は明確ではない場合がある。汎用性を持って施行可能なのか, 診断や治療方針の決定などに用いられるのかが研究か診療かの指標になるだろう。本編では, 小児の脳波検査において研究からclinical toolとして確立されてきた, または確立していく可能性のある手法について解説する。amplitude-integrated EEG (aEEG) は新生児領域で広く発作検出の臨床目的で使われており, 小児のICU脳波モニタリングでも用いられている。高周波律動も, デジタル脳波の普及に伴い用いられるようになった手法で, 頭皮脳波でも評価されている。脳波を他のモダリティと組み合わせることも脳波の新しい活用法である。脳波–機能的MRI同時記録は, 脳波活動に伴う血流変化をMRIで可視化し, てんかん焦点, ネットワークの解明に用いられている。

  • 前原 健寿, 稲次 基希, 橋本 聡華, 清水 一秀
    2021 年 49 巻 3 号 p. 145-151
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    脳神経外科領域における頭皮脳波clinical toolとresearch topicの検討では, 頭皮脳波か頭蓋内皮質脳波か, てんかん等の病態診断・治療か正常脳機能解明かを考慮する必要がある。両者の明確な線引きは困難だが, clinical toolとしての確立した評価は保険診療報酬の対象かも目安となる。てんかんの診断, 治療は脳外科医にも重要で, 頭皮脳波には多くの診療報酬が算定されている。臨床的には, てんかんの診断, 外科治療のための脳波検査や焦点診断としての役割が重要である。皮質拡散脱分極への応用も報告されている。さらにRNSの導入によりヒト脳波活動研究のさらなる発展が期待される。脳機能解析では電気刺激による脳機能マッピングから脳波活動のdecodingさらにBMIへの発展が期待されている。研究の分野では, 海馬のrippleを用いたtranslational researchが注目を集めている。

  • 重藤 寛史
    2021 年 49 巻 3 号 p. 152-157
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    脳波検査は画像検査や血液・生化学検査などでは検出できない脳機能異常を検出できるため, てんかん, 睡眠障害, 意識障害の診断に威力を発揮する。動画を同時に記録できることで症候との関連をみることができるようになったことや, 長時間記録が可能となり短時間記録では抽出できなかった異常を検出できるようになったことは臨床的意義が大きい。デジタル技術とアンプの高性能化により, 高周波および低周波の脳波活動が記録できるようになり, 研究分野でも新たな知見が得られるようになってきた。長時間生体信号モニターとしての脳波, 脳波解析への機械学習の導入, 遠隔医療・教育ツールとしての試用など新たな研究領域への広がりもみせている。これら, 脳神経内科領域における脳波の臨床上の有用性と, 将来的に有望な研究のトピックスを提示する。

  • 刑部 有祐, 和田 知紘, 松本 貴智, 三浦 至, 矢部 博興
    2021 年 49 巻 3 号 p. 158-161
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/05/31
    ジャーナル フリー

    精神科領域の疾患には, 身体的要因が大きいものと心理的要因が大きいものがある。身体的要因が大きい疾患は脳波異常を呈すことが多く, 主に心理的要因による疾患は原則として脳波異常を来さない。身体的要因が大きい疾患である, 単純ヘルペス脳炎や抗NMDA受容体脳炎等に伴う器質性精神障害では, 幻覚妄想状態を呈し他の精神疾患との鑑別が問題となるが, 高率に脳波異常を呈すため, 脳波がスクリーニングとして有用である。一方, 主に心理的な要因による解離性・転換性障害や心因性非てんかん性発作もまた多彩な精神症状を呈すが, こちらは原則として脳波異常を来さないことが鑑別の手がかりとなる。また, いまだ詳細な病態が解明されていない統合失調症などの内因性疾患については, 脳波異常の頻度が比較的高いことが知られているものの, 臨床における有用性は乏しい。一方, ミスマッチ陰性電位 (MMN) などの事象関連電位の分野において, これらに対する病態解明やバイオマーカー探求の試みが行われている。

その他
feedback
Top