臨床神経生理学
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最新号
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特集「異なる職種による神経生理へのアプローチ」
  • 片山 雅史, 池田 拓郎
    2025 年 53 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
  • 脳波信号からの雑音除去—眼電図とtaVNSについて—
    伊賀崎 伴彦, イルハム ライス, 宋 佰俊, 高日 亜央衣
    2025 年 53 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    本稿では, 脳波信号に混入する外的・内的要因による雑音を除去し, 以降の解析精度を向上させる手法のうち, 眼電図および経皮的耳介迷走神経刺激 (taVNS) による雑音の除去について説明した。眼電図雑音については, 独立成分分析の効果を高めるために, 帯域パワーと相関係数を組み合わせた新たな方法を提案した。被験者の脳波データを用いた実験では, 99%の確度で眼電図成分の除去に成功し, 脳波信号の品質向上が確認された。taVNS雑音についても, 独自のモデルを用いた除去手法として, taVNSに起因する雑音の起点と終点を特定し, 雑音をモデル化することで, 雑音を効果的に排除できることを紹介した。結果, taVNS中の脳波信号解析が可能となり, taVNSが脳皮質活動へ与える即時的影響の評価に寄与する可能性が示された。このように, 状況に応じた適切なアプローチにより, 雑音除去の精度と脳波信号解析の信頼性の向上が期待される。
  • SEP (体性感覚誘発電位) の臨床応用
    所司 睦文
    2025 年 53 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    臨床検査技師からのアプローチとして, 体性感覚誘発電位 (SEP) 検査の臨床応用を概説した。脳梗塞を対象としたSEP検査は, 上肢および下肢SEPを実施することで, 感覚障害の電気生理学的な評価が可能となる。頸椎症等の脊髄疾患では正中神経刺激SEPと尺骨神経刺激SEPを併用することで, 脊髄分節レベルでの感覚障害の有無を評価できる。末梢神経障害のSEP結果は多彩である。感覚神経伝導検査で無反応な場合でもSEPのN20が観察されるケースでは, それを利用して感覚神経伝導速度を評価できる。パーキンソン病 (PD) で観察されたgiant SEP (巨大SEP) は発症年齢と関係した。
  • F波による随意運動評価
    鈴木 俊明
    2025 年 53 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー

    脳血管障害片麻痺患者の麻痺側F波は, 脊髄運動神経機能の興奮性を示す出現頻度, 振幅F/M比が筋緊張の程度, 随意運動機能との関係を認めるが, 廃用症候群での筋短縮で筋緊張が亢進しているような症例ではF波出現頻度, 振幅F/M比は亢進しないというミスマッチする場合がある。F波は刺激毎に波形が異なることが特徴であるために, F波の波形の種類を検討することで筋緊張の程度や随意運動機能とも関係する可能性がある。今後, F波の波形分析は随意運動機能の評価およびリハビリテーションの治療効果の一助になる可能性がある。

特集「睡眠時行動異常の鑑別」
  • 重藤 寛史, 鶴田 和仁
    2025 年 53 巻 1 号 p. 20
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
  • 睡眠関連摂食障害 Sleep related Eating Disorderについて
    中尾 紘一, 鶴田 和仁
    2025 年 53 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    睡眠時行動異常 (睡眠時随伴症) は, 眠りに入る間, 睡眠中, または睡眠からの覚醒中に生じる不快な身体事象や経験である。2014年に改訂された睡眠障害国際分類第3版 (International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed; ICSD-3) に基づき, 睡眠時随伴症Parasomniaは, ①ノンレム関連睡眠時随伴症Non-rapid eye movement sleep (NREM) -related Parasomnia, ②レム関連睡眠時随伴症rapid eye movement sleep (REM) -related Parasomnia, ③その他の睡眠時随伴症Other Parasomnia, ④孤発症状および正常範囲の異型症状Isolated Syndrome and Normal Variantsの4つに分類される。さらにNREM-related Parasomniaは, ノンレム睡眠からの覚醒障害として, 錯乱性覚醒Confusional Arousals, 睡眠時遊行症Sleepwalking, 睡眠時驚愕症Sleep Terrorsの3疾患と, 睡眠関連摂食障害Sleep related Eating Disorder (SRED) に分類される。特にNREM-related Parasomniaの一つであるSREDは, 夜間睡眠中もしくは半覚醒状態で無意識下での摂食行動を特徴とする稀な疾患であり, 診断が難しく, SREDの症例を経験することは少ない。本特集では, NREM-related Parasomniaの多様性について論じる。また当院で経験した2症例をもとに, 患者の行動記録や画像, 終夜睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography: PSG) 所見を提示し, SREDの臨床的特徴や診断上の課題について検討した。さらに, SREDと夜間摂食症候群 (Night Eating Syndrome: NES) との鑑別, 疾患の病態連続性や治療戦略について考察する。

  • 茶谷 裕
    2025 年 53 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    睡眠中にみられる運動は, 病的なものと正常亜型に分類することができる。American Academy of Sleep Medicineによる睡眠関連疾患国際分類第3版 (ICSD-3) (Sateia M et al: International Classification of Sleep Disorders. 3rd ed., American Academy of Sleep Medicine, 2014) によると, 前者には睡眠時随伴症および睡眠関連運動異常症の大半が含まれる。後者は睡眠関連運動異常症群のうち, 過度断片的ミオクローヌス (Excessive fragmentary myoclonus), 入眠時足部振戦および睡眠時交替性下肢筋賦活 (Hypnagogic foot tremor and alternating leg muscle activation), 入眠時ひきつけ (Hypnic Jerks) を指す。本稿では最初に睡眠随伴症について説明した。この中で睡眠時遊行症はてんかんのpost ictal confusionと鑑別を要する場合がある。次に睡眠関連運動異常のうちレストレスレッグズ症候群/睡眠時周期性下肢運動および睡眠関連律動性運動異常症について解説した。レストレスレッグズ症候群の治療においてはaugmentationに注意を払う必要がある。最後にナルコレプシー1型について自験例も交えて解説した。カタプレキシーをみる機会は多くないとしても, てんかん発作と誤認しないよう意識しておくことが重要である。定訳がないため著者訳
  • 重藤 寛史, 向野 隆彦
    2025 年 53 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー

    ノンレム関連睡眠時随伴症の覚醒障害, レム関連睡眠時随伴症のレム睡眠行動障害, 睡眠関連運動障害のひとつである周期性四肢運動障害は発作性に生じるため, てんかん発作との鑑別が必要になる。前頭葉てんかんは睡眠時に生じやすく, 過運動発作を生じる場合は錯乱性覚醒や睡眠時驚愕症との鑑別が必要になる。前頭葉てんかん含め, てんかん発作後に朦朧として歩き回る時は睡眠時遊行症との鑑別が必要になる。前頭葉てんかんの脳波では発作間欠期にてんかん性異常が出現するのは6割程度, 発作時には動きのアーチファクトが入るので局在異常を捉えられる割合は3∼4割程度にすぎない。睡眠時脳波にはてんかん性異常との鑑別が難しい所見もある。鑑別が困難な時には, 詳細な症状や発作頻度の問診, 症状出現時の動画記録, 睡眠ポリグラフや長時間ビデオ脳波モニタリングを用いた発作出現タイミングの把握, などが参考になる。

  • 谷口 充孝
    2025 年 53 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    睡眠中の異常行動 (パラソムニア) の診断では, てんかんと同様に時に精神科的問題による異常行動との鑑別が重要となる。2022年に改訂された国際疾病分類第11回改訂版 (ICD-11) で複雑性PTSD (Complex Post Traumatic Stress Disorder, CPTSD) という新たな精神疾患が記載された。様々な意見はあったが, 複雑性PTSDの診断基準における心的外傷体験はPTSDと同じく極めて驚異的で恐ろしい体験に限定された。しかしながら, この複雑性PTSDの疾患概念に触発され, 持続的, 反復的な逆境小児期体験 (adverse childhood experiences, ACEs) による多彩な精神症状が認められることが発信されるようになってきた。パラソムニアの鑑別診断では, 今後, 心的外傷体験も考慮することが重要な時代になってきた。
  • 中山 秀章
    2025 年 53 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    睡眠時異常行動を呈する疾患のひとつに閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)がある。特にレム睡眠行動障害(RBD)との関係では,OSA関連pseudo-RBDとOSAに合併するRBDによるものを考慮する必要がある。これらの鑑別には,病歴だけでは不十分で,睡眠ポリグラフ検査(PSG)所見や治療効果を踏まえることが重要である。また,OSAとRBDの合併例では,REM睡眠や,その睡眠相での呼吸イベントを生じにくくするなど相互に影響がある。まだ,十分に解明されていない点もあり,今後のさらなる研究が必要である。
特集「神経発達障害の病態を臨床神経生理学でどこまで解明できるか?」
  • 織部 直弥
    2025 年 53 巻 1 号 p. 54
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
  • 山室 和彦, 太田 豊作
    2025 年 53 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー

    注意欠如・多動症 (attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD) は, 不注意, 多動性, 衝動性を中核とする神経発達症である。ADHDには脳の生物学的機能不全が存在するとされ, さまざまな視点で研究が行われている。我々の研究グループでは, これまで事象関連電位 (event-related potential: ERP) の成分であるP300とミスマッチ陰性電位に着目し研究を行ってきた。現在, 小児期において使用できるADHD治療薬は4剤が上市されており, 安全に負担なく薬物治療を行ううえで, いずれの薬剤が適切に使用できるのかの使用薬剤の選択基準の確立が求められている。そこで, 小児期ADHD児でみられる脳波やERPの定型発達児との違いから, 我々が進めているP300による治療効果の反応性への予測に関する研究について概説する。

  • 幼児用MEGによるアプローチ
    菊知 充, 廣澤 徹, 吉村 優子
    2025 年 53 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    神経発達症の脳機能研究は, 生物学的メカニズムの解明を目指し, 近年大きく進展してきた。20世紀には神経発達症を含む精神疾患の診断基準が統一され, ある程度, 均一な診断が可能となった。さらに近年は脳機能測定技術が目覚ましく進歩し, 自閉スペクトラム症 (ASD) などにおける脳機能に関する多くの知見が得られている。しかし, これらの疾患は遺伝と環境の複雑な相互作用を反映しており, 臨床症状の多様性も影響して, 病態メカニズムの完全な解明には至っていない。これからも年齢や症状の多様性を考慮したデータの集積が必要であり, 神経発達症の診断・治療における生物学的指標の確立はまだまだ難題である。本総説においては, 現時点における幼児用脳磁図計 (MEG) による幼児期ASDの研究成果について報告すると同時に, 神経発達症の幼児期の脳研究の難しさについても考察する。
  • 久保田 雅也, 高橋 美智, 中村 由紀子
    2025 年 53 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー
    先天性無痛無汗症は温痛覚欠如, 発汗障害, 知的発達症, 神経発達症を特徴とする常染色体潜性遺伝の疾患である。温痛覚に関わる感覚神経 (無髄体性C線維と小径有髄線維Aδ) と発汗などを調節する無髄自律性C線維 (交感神経節後線維) は, 発生学的に欠如する。本症ではほぼ全員に両側Horner症候群を認めるため瞳孔計を利用して自律神経系の動態を解析し, 病態との関連を検討した。コントロールと比較すると初期瞳孔径は小さく, 縮瞳速度や散瞳速度は低値で交感神経に加えて副交感神経の機能的変容も認められた。交感神経は乳児期早期からの二項関係の成立に関与することや本症では痛み認知の欠如からくる独自の共感性が想定されることから, 発達の基底におけるoperating systemとしての自律神経系が知的発達症, 神経発達症の病態に何らかの関与があることが想定された。また, 本症と先天性無痛症との鑑別で初期瞳孔径が重要であること (本症では小さい) を指摘した。
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