臨床神経生理学
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選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集「筋疾患と神経疾患の狭間の疾患」
  • 国分 則人, 清水 文崇
    2025 年 53 巻 3 号 p. 139
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
  • 安藤 孝志, 鈴木 将史, 勝野 雅央
    2025 年 53 巻 3 号 p. 140-150
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    多系統蛋白質症 (multisystem proteinopathy, MSP) は神経系や筋骨格系を含む多臓器に蛋白凝集体が出現し, 常染色体顕性形式で成人期に発症する遺伝性疾患の総称である。MSPの原因遺伝子は複数存在するが, 最も報告数が多いのがvalosin-containing protein (VCP) 遺伝子変異によるものでMSP1として分類されている。VCPは様々な組織に発現し, 多彩な細胞機能に関与することが知られている。VCP遺伝子の変異により, 封入体ミオパチー, 骨Paget病, 前頭側頭型認知症, 筋萎縮性側索硬化症など多彩な表現型が出現する。さらに, これらの古典的な表現型に加えて, 末梢神経障害も生じうることが報告されている。本稿ではMSPの概要や, VCP遺伝子変異によるMSP1でみられる各病態の臨床的特徴を解説する。

  • 濱口 眞衣, 国分 則人
    2025 年 53 巻 3 号 p. 151-154
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    一部の先天性ミオパチーは末梢神経障害を合併する。ミオパチーと末梢神経障害とが合併すると腱反射消失や感覚障害などのニューロパチー症状が前面に出て, ミオパチーの存在を見逃す恐れがある。われわれは四肢遠位筋優位の筋力低下や腱反射消失, 感覚障害など, 一見ニューロパチーのみで説明可能な臨床病像を呈したBAG3 related myopathyの親子例を経験した。本例はニューロパチーでは説明が難しい腰部傍脊柱筋の筋萎縮を呈し, 脱力・萎縮がみられる筋において針筋電図検査上MUP動員が保たれていたことから筋障害の合併に気付かれ, 筋生検にて確定診断に至った。骨格筋画像検査による筋萎縮分布の確認と針筋電図検査による萎縮筋のMUP動員の評価は, 隠れたミオパチー所見を検出するのに有用であり, 電気診断医の役割は重大である。

  • 大石 真莉子, 清水 文崇
    2025 年 53 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは, 原因不明の全身性炎症性疾患で非乾酪性類上皮肉芽腫病変を特徴とする疾患である。サルコイドーシスで障害されるのは主として肺や眼, 皮膚であり, 神経が障害される頻度は一般的に5%とされる。筋サルコイドーシスは神経よりさらに頻度が低いと考えられている。サルコイドニューロパチー, サルコイドミオパチーいずれも電気生理検査では確定診断は困難である。画像検査ではMRI, 18F-FDG/PET-CTが有用であり, 組織生検が確定診断には極めて重要となる。ただし, いわゆる肺, 眼, 心といったサルコイドーシス好発部位に症状や画像所見が無いニューロパチーやミオパチー症例についてはサルコイドーシスが鑑別診断に挙げられず, 見逃されている可能性があることを念頭に診療にあたる必要がある。

  • 大崎 裕亮, 中村 信元, 三木 浩和, 山﨑 博輝, 和泉 唯信
    2025 年 53 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    ALアミロイドーシスは免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイドが全身に沈着する疾患で, 神経筋障害を呈することがある。その臨床像を明らかにするため, 筋生検によりアミロイドミオパチーと組織診断し, 後に多発性骨髄腫と診断された自験例を筆頭に, 当院におけるALアミロイドーシス46例の診療録レビューを行った。ポリニューロパチーが8例に認められ, 生検による確定診断例はなかったが臨床像は既報告と合致した。四肢近位筋に及ぶ左右対称性運動障害を呈した例が, 組織診断を経た自験例以外に2例あり, 診療録からアミロイドミオパチーの可能性が示唆された。非特異的筋電図所見や正常CK値を示す例があり, 筋生検による診断に至らない例が潜在する可能性が示唆された。

特集「SEEG,判読と実践」
  • 岩崎 真樹, 松本 理器
    2025 年 53 巻 3 号 p. 167
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
  • 飯島 圭哉, 岡崎 洋介, 林 貴啓, 木村 唯子, 金子 裕, 岩崎 真樹
    2025 年 53 巻 3 号 p. 168-174
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    定位的頭蓋内脳波 (SEEG) は, てんかん外科においててんかん原性領域 (epileptogenic zone, EZ) を同定するための重要な手法である。SEEGから得られる代表的なバイオマーカーには, 発作時律動波の起始部 (seizure onset zone), 発作間欠期てんかん性放電 (irritative zone), 高周波振動 (HFO), 緩電位変動 (DC shift), スペクトログラムにおける特徴的パターン (fingerprintやictal chirps), Epileptogenicity Index (EI), Phase-Amplitude Coupling (PAC), エントロピー解析 (MSE) などがある。本総説では, 各バイオマーカーの特徴と解析手法を概説し, 当院での実践的取り組みについて紹介する。これらを総合的に活用することで, より精度の高いEZ同定が可能となり, 個別最適な外科治療に貢献すると考えられる。

  • クー ウイミン, 谷 直樹, 押野 悟, 貴島 晴彦
    2025 年 53 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    ステレオ脳波 (SEEG) を経て行うてんかん外科治療の有用性を担保するにはSEEGを正しく判読し, てんかん原性領域 (EZ) を推定する必要がある。本稿の前半は判読に必要な基本的な設定を含む「判読の準備」, 後半は目視と信号解析的な手法を含めて発作間欠期, 発作時の脳波パターンの「判読の実際」と大きく2項に分けてキーとなる文献をまとめた。特にSEEGを始めようとする先生方がSEEG判読の基本的なコンセプトを理解する参考になればと考えている。

  • 小林 勝哉, 菊池 隆幸, 澤田 眞寛, 下竹 昭寛, 安達 智美, 青山 慎平, 出村 彩郁, 松本 理器, 池田 昭夫
    2025 年 53 巻 3 号 p. 183-190
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    定位的頭蓋内脳波 (stereoelectroencephalography: SEEG) を用いたてんかん術前評価を行うにあたって, “anatomo-electro-clinical correlations”の概念に基づき, 頭皮上長時間ビデオ脳波モニタリングにより発作症候と脳波変化を統合的に解析することが重要である。さらに, マルチモダリティーな非侵襲的検査所見を組み合わせることで, てんかん原性領域を含む発作関連ネットワークの作業仮説を構築する。この仮説により深部電極の留置部位が決定されるため, その精度が最終的なSEEGによるてんかん原性領域の同定の成否を左右する。SEEGによる侵襲的術前評価においても, “anatomo-electro-clinical correlations”の視点から発作時脳波を判読, 解析する。特に早期の発作症候出現時点で脳波変化を示す領域に注目し, その後の発作症候と脳波の時間的・空間的な進展を詳細に解析する。発作時脳波の解析では, 通常の脳波変化 (1–60 Hz) に加えて, 時間周波数解析により発作時超低周波 (DC電位) および発作時高周波 (high-frequency oscillations: HFOs) も合わせて評価することが有用である。

  • どこまでわかるか, 治療にどう結びつけるか
    石﨑 友崇, 齋藤 竜太
    2025 年 53 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 2025/06/01
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    定位的頭蓋内脳波 (SEEG) は脳深部のてんかんネットワークを解析し, 発作起始領域 (SOZ) からてんかん原性ネットワーク (EN) の推定を可能にする。本総説ではSEEGの特性や発作時脳波のアルゴリズム解析手法を紹介し, てんかんネットワークの理論に基づいたSEEGの理解を深めることを目的とする。SEEGは広範なネットワークの評価に優れるが, 空間解像度が低いため, 硬膜下電極と異なりSOZの正確な同定には制限がある。従来の目視評価によるSOZの同定は, 観察者の恣意性やバイアスの影響を受けやすく, 高周波数帯域の神経活動を十分に考慮できないという課題がある。これに対し, Epileptogenicity indexなどのアルゴリズム解析が導入されENの特性をより客観的に捉える手法が発展しつつある。さらに, 機械学習を用いたアルゴリズム解析の発展も期待されており, 今後の技術革新によりENのより精緻な推定が可能になれば, てんかん外科手術の適応や治療戦略に新たな展望をもたらすことが期待される。

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