日本臨床プロテオーム研究会要旨集
第1回日本臨床プロテオーム研究会
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
要旨集表紙
プロローグ
  • 西村 俊秀
    p. 6-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    ゲノム解読プロジェクトは,予想外にも一応の早期終結をみたが,ポストゲノムの中心となる蛋白質とその機能の解明はより困難なテーマである.これまで、ある時点で発現している蛋白質全体のスナップショットをとることは不可能と考えられていた.このスナップショットは,“Proteins expressed in compliment of genome”という意味の造語としてPROTEOME(プロテオーム)と名づけられたのは1995年である.約30,000ヒト遺伝子から発現される蛋白質の種類は200,000以上ともいわれる.蛋白質の種類と発現量はヒトの状態により大きく変化する.当然,病気か健康かにより異なる.蛋白質は細胞内分子機械の主要な部品として,複合体を形成したり,他の複合体へメッセージを送ったり,細胞分裂を制御したり,組織の成長をコントロールしたり,酸素の運搬や感染を防御したりして,体の主な機能を担っている.人が病気になったとき,遺伝子にもどってこれらをすぐに変えることは困難である.もちろん,遺伝子治療は幾つかの疾患について新たな光明を投げているが,心臓疾患,精神疾患,感染症,また多くの生活習慣病といわれるような多因子性疾患についてはほぼ無力と思える.遺伝子をどうにかするよりも,疾患メカニズムを担う機械としての蛋白質を制御するほうが論理的である.従って,医療において蛋白質ほど重要な分子は他にはない. 今日のプロテオーム解析技術の進歩は著しい.ヒト疾患のメカニズム解明や治療に関する臨床研究がいよいよ本格的に展開されようとしている時期に本研究会が立ち上げられた意義は大きいと考える.臨床プロテオミクスの進展により,分子レベルでの証拠に基づいた個別医療・早期診断などが実現され,今後の医学への貢献を確信する.プロテオミクスの始まりから臨床プロテオミクスへの道筋を述べ,研究会での諸先生による講演のプロローグとしたい.
研究発表
  • 小寺 義男, 川島 祐介, 佐藤 守, 前田 忠計
    p. 6-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    癌,心臓病,脳卒中、糖尿病、老人性痴呆症など様々な疾病に活性酸素が関与しているといわれている。しかし、タンパク質の酸化傷害と疾病の関係はほとんど明らかにされていない。特にアルギニン残基,リジン残基が酸化傷害を受けて導かれる修飾(カルボニル化)に関しては、様々な疾病にともなう蓄積量の増加は報告されているが、酸化傷害タンパク質によって導かれる疾病のメカニズムを詳細に調べた研究はない。 2002年に我々の研究グループの大石、前田はアガロース二次元電気泳動を使ってカルボニル化されたタンパク質を網羅的に定量分析する方法を開発した。この方法を糖尿病モデルラットに応用した結果、糖尿病特異的に酸化傷害を受けたタンパク質が数多く存在していること、また、存在量は少ないが激しく酸化傷害を受けたタンパク質が存在していることがわかった(Free Radic. Biol. Med. 34: 11-22, 2003)。そこで我々は、組織ならびに体液中に含まれるカルボニル化されたタンパク質を濃縮検出して同定し、酸化傷害部位の特定を可能にする酸化傷害タンパク質検出用タグTOP (Tags for oxidized proteins)の開発を行っている。このTOPを用いて人為的に酸化傷害を与えたペプチドを精製し、定量分析することに成功した。
  • 下重 美紀, 廣橋 説雄, 山田 哲司
    p. 8-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    Wntシグナル経路の伝達因子である-cateninは家族性大腸腺腫症の原因遺伝子として同定されたがん抑制遺伝子であるAPC (adenomatous polyposis coli)の不活化により細胞内に蓄積し、蓄積したβ-cateninは転写因子であるT-cell factor-4 (TCF-4)を活性化することで大腸がんの前駆病変である腺腫形成を生じることが考えられている。そこで、-cateninが転写因子であるT-cell factor (TCF)-4と結合することにより生じる転写活性を抑えることで変化するタンパク質プロフィールをモデル細胞にて検討した。 [方法]ヒト大腸がん細胞(DLD1)にN末端の-catenin結合部位を欠きdominant negative様作用を示すTCF4BΔ30をテトラサイクリン調節性プロモータにより厳密に発現をスイッチングした2群の細胞を用い、質量分析計を用いた同位体標識(ICAT)法にて蛋白質発現プロファイルの差を網羅的に検索した。 [結果・考察] -cateninへのTCF-4の結合を競合的に阻害することにより、その発現が2倍以上増減する125の蛋白を同定した。機能分類解析により、これらの蛋白にはnucleic acid binding protein, cytoskeletal protein, oxydoreductaseが大部分を占めていることが明らかとなった。これらの発現変動は大腸がんの発生や進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
  • 藤ノ木 政勝
    p. 8-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    ヒトも含めた哺乳動物において、その精子は射精された直後の状態では卵と受精する事はできない事が知られている。輸卵管膨大部付近で採取された精子や数時間の培養された精子は卵と受精する事ができるようになっており、この精子の性質の違いを「受精能獲得」と呼んでいる。受精能を獲得した精子は、頭部で先体反応を、尾部で超活性化を起こしている。受精能獲得は主にタンパク質リン酸化・脱リン酸化によって調節されていると言われているが、精子タンパク質の可溶化には幾つかの難点があり充分な解析が行なわれているとは言い難い。そこで本研究ではまず精子の可溶化法を検討し、次いで受精能獲得の過程で起こっているタンパク質リン酸化・脱リン酸化の検出を行なった。  モデル動物として受精能獲得の表現型が明確なハムスターを用いて実験を行なった。精子は5M尿素、1Mチオ尿素を含む溶液で頭部の核を除く全構造体が可溶化できた。得られた精子可溶化液から電気泳動-ウエスタンブロッティングもしくはIMAC-SELDIプロテインチップシステムによってリン酸化もしくは脱リン酸化タンパク質の検出を行なった。その結果、71種類の受精能獲得に伴って経時的にリン酸化・脱リン酸化されるタンパク質を検出した。  今回、核を除く全精子タンパク質を可溶化し、受精能獲得の過程で起こる精子タンパク質のリン酸化・脱リン酸化を網羅的に検出した。射精後から受精可能になるまでに起こる精子の反応は受精能獲得だけではなく、今回の検出では厳密に受精能獲得のみに関わっているリン酸化・脱リン酸化だけを検出した訳ではない。従って、今後は今回検出したリン酸化・脱リン酸化タンパク質について精子内でのどの反応と関連があるのか検討を行なっていきたいと考えている。そしてこれらの結果として受精能獲得を調節するシグナル伝達機構が理解されるものと期待している。
  • 大石 正道, 小寺 義男, 前田 忠計, 古舘 専一, 朝長 毅, 野村 文夫, 車 英俊, 頴川 晋
    p. 10-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    近年、疾患プロテオミクスにおいては、臨床への応用がますます求められるようになってきている。すなわち、新規疾患マーカーの発見や、発症メカニズムの解明、そして創薬ターゲットの探索などである。我々は、等電点電気泳動にアガロースゲルを用いた二次元電気泳動(アガロース2-DE)法を用いて蛋白成分を分離・精製し、ゲル内消化後LC-MSによって蛋白質を同定する手法を用いて、主に分子量10万以上の高分子量蛋白質を対象に、内分泌疾患や糖尿病、各種がんなどにおいてプロテオーム解析を行ってきた。原因不明の遺伝性侏儒症ラットrdwのプロテオーム解析においては、原因遺伝子がチログロブリンであると特定することができ、発症に至るメカニズムを解明することができた。また、前立腺癌細胞LNCaPのアンドロゲン非依存性獲得に伴うプロテオーム変化を調べたことから、前立腺癌の新規マーカー蛋白質の発見につながった。さらに、手術検体を用いた大腸癌の癌部・非癌部の比較によって、大腸癌特異的に発現の変化を認める蛋白質を多数同定することができた。それらの中には、癌部・非癌部間で分子量の異なる興味深い蛋白質も検出され、癌特異的な翻訳後修飾を受けている可能性が示唆された。
  • 水上 民夫
    p. 10-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    酵母は真核生物のモデルシステムとして広く利用されている。本研究では、細胞周期・細胞増殖プロセスにおける酵母と哺乳動物細胞の高度な相同性に着目し、酵母を抗癌剤探索のツールとして利用した。本研究プロセスは、フォワードケミカルゲノミクス・プロテオミクスの方法論をもとに、(1)特定の創薬標的やパスウェイにより誘導される表現型を酵母宿主で構築し、その表現型に影響を与える活性化合物を取得する、(2)活性化合物の標的タンパク質を同定・確認するという、2ステップから構成される。ここでは、細胞周期を標的とする抗癌剤リード化合物の探索を目的として、サイクリンA1遺伝子の出芽酵母への導入・過剰発現により、cdc28リン酸化酵素活性の昂進を通じて、誘導される増殖停止の表現型に着目し、その表現型を回復させる化合物を取得した結果、新規のプロテアソーム阻害剤と同定した事例を報告する。
  • 坂井 和子, 細井 公富, 関島 勝, 荒尾 徳三, 西村 俊秀, 秋元 信吾, 大川原 正, 水上 民夫, 加藤 治文, 西尾 和人
    p. 12-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    ケミカルプロテオミクスによる新規な標的分子の探索は治療におけるバイオマーカーや創薬標的分子の発見へとつながると考えられる。われわれは、もっとも古い分子標的薬であるタモキシフェン、代謝拮抗剤5-フルオロウラシル, EGFRチロシンキナーゼ阻害剤について、分子プローブを合成し結合タンパク質の分離、同定を試みた。タモキシフェンは、標的であるエストロゲン受容体に加えて、特異的なタンパク質が検出された。5-フルオロウラシルの分子プローブに対する特異的なタンパク質は見出されなかったが、5-フルオロウリジンの分子プローブでは、特異的な結合タンパク質のバンドが再現性よく見出された。チロシンキナーゼ阻害剤は、ATPのアフィニティカラムに対してチロシンキナーゼ阻害剤を拮抗的に作用させ、構造の似通っている化合物間での異なった結合タンパク質が分離されている。現在、MALDI/TOFMSによるタンパク質の同定を行っている。同定された、タンパク質は、新たな治療標的となる可能性がある。(当研究は創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業の一部として実施している。)
  • 目野 浩二, 藤本 宏隆, 谷川 哲雄, 石井 俊, 片桐 拓也, 内田 和彦
    p. 12-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    Molecular biomarkers are biological molecules that are indicators of physiologic state and also of change during a disease process like cancer. Mass spectrometry-based protein/peptide expression as diagnostic biomarkers has been reported. To identify sensitive and accurate diagnostic biomarkers, differential peptide/protein profiling using blood is required. Here we established comprehensive and sensitive analytical platform using automated 2-dimensional LC-MALDI-TOF MS and identified several peptide biomarkers which discriminate liver caner and non-cancer disease. Serum samples were pretreated and peptides (Mr<10,000) fractions were obtained and separated by two-dimensional HPLC; strong cation exchange (SCX) for the 1st dimension and reverse phase (RP) for the 2nd dimension. The separated samples were spotted onto three MALDI targets automatically. More than 10,000 fractions were analyzed automatically by MALDI-TOF MS in reflector mode. Our system identified angiotensin II as a spike in processed serum at 1nM concentration. Huge data of the peptide expression profiles generated from mass spectrometry were analyzed by the differential analysis tools originally developed by us. Without re-purification of peptides, sequential analysis by MSn on MALDI-QIT-TOF MS revealed that some of these biomarkers were post-translationally modified. Analysis of human serum from liver cancer patients and non-cancer patients by our system revealed several differentially-expressed peptides. Our analytical platform for comprehensive differential peptidomics may useful for identification of the novel biomarkers which may improve the early diagnosis of cancer.
  • 川村 猛, 川上 隆雄, 平野 隆, 荻原 淳, 京野 完, 鈴木 友晴, 安養寺 久栄, 金沢 光洋, Hsia-kun Tu, 秋元 信 ...
    p. 14-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    バイオマーカー探索を目的とする臨床プロテオーム研究では一般に疾患群と正常群の全タンパクの発現量を比較し疾患特異的なタンパク質群の同定を行う。 定量法としてもっともよく使われている手法が2次元電気泳動を用いたものであり、これは古典的な手法であるがタンパクの発現量を視覚的に捕らえられ理解しやすく翻訳後修飾などの変化も検出できる。タンパク質での定量法としては他にSELDI-TOF MSなどを用いたマススペクトルの比較などがある。これに対しタンパク質をトリプシンなどで消化した後にペプチドレベルで比較する手法もあり、これはHPLCを用いた自動化がしやすくゲルを用いないため高感度の測定が出来る。ペプチドレベルの解析では疾患群と正常群由来のペプチドを異なる質量数の安定同位体ラベルしする安定同位体ラベル法が主であるが消化したペプチドをノンラベルで定量するラベルフリー定量法もある。これらの手法のについて特徴と我々が行っているラベルフリー定量法を用いた臨床プロテオーム解析について述べる。
  • 川崎 ナナ, 橋井 則貴, 伊藤 さつき, 原園 景, 松石 紫, 川西 徹
    p. 14-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
    会議録・要旨集 フリー
    関節リウマチ患者や各種自己免疫疾患モデルマウスにおいて、血清中のIgGの糖鎖構造異常が発見され、自己免疫疾患とIgG糖鎖生合成異常の関係が指摘されている。また、糖鎖生合成関連酵素をノックアウトしたマウスでは、ヒト自己免疫疾患に類似した腎障害を発症することが報告されている。我々は、自己免疫疾患と糖鎖異常の関連性を明らかにするため、全身性エリテマトーデス(SLE)ループス腎炎発症モデルマウスと正常マウスの腎臓を用いて、タンパク質発現解析、並びに糖鎖差異解析を行った。 はじめに、2D-DIGEによりタンパク質発現解析を行ったところ、SLEモデルマウス腎臓では100kDa付近の比較的分子量の大きい膜タンパク質の発現が低下していることが明らかになった。そこで、腎臓膜画分と可溶性画分からN結合糖鎖を切り出し、重水素置換2-アミノピリジンによる誘導体化とLC/MSnによる定量的糖鎖プロファイリングを用いて糖鎖の違いを調べた。その結果、SLEモデルマウス腎臓の膜画分では糖鎖結合量が減少し、可溶性画分では糖鎖結合量が増加していることが明らかになった。 以上のことから、SLEモデルマウス腎臓では、膜糖タンパク質の発現が低下している可能性が示唆された。
  • 車 英俊, 鎌田 裕子, 柚須 恒, 鷹橋 浩幸, 大石 正道, 小寺 義男, 前田 忠計, 頴川 晋
    p. 16-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    【目的】等電点電気泳動にアガロースゲルを用いた二次元電気泳動(アガロース2-DE)法により新たに発見した前立腺癌バイオマーカーの有用性を免疫組織学的に検討した。 【方法】前立腺癌細胞株LNCaPに発現している蛋白質をアガロース2-DE法によって網羅的に解析しLC-MS/MSで同定を行って2-DEマップを作成した。この中から前立腺癌での発現が報告されていないものを新規バイオマーカー候補とし、そのアミノ酸配列情報から合成したペプチドを用いてポリクローン抗体を、一部はモノクローン抗体を作成した。ウエスタンブロットで発現の確認をした後、患者の了解を得た手術検体を用いて免疫組織学的検討を行った。 【結果】前立腺全摘除検体を免疫組織学的に検討した結果、ポリクローン抗体を作成したタンパク質TT902と、モノクローン抗体を作成したタンパク質P5.2が前立腺癌の細胞質で発現が増加していた。また、モノクローン抗体を作成したタンパク質P2.5は前立腺癌細胞の核で濃染された。特にTT902に注目して解析したところ、RT-PCRとin situ hybridizationにてTT902はmRNAレベルでも発現が増加していることが示された。 【結語】高分子量プロテオミクスにより発見した新規前立腺癌マーカー候補の組織内発現を確認した。特にTT902は遺伝子レベルから前立腺癌で発現の増加を確認しており、有望なバイオマーカーであると考えられる。
  • 藏滿 保宏, 高島 元成, 横山 雄一郎, 飯塚 徳男, 岡 正朗, 沖田 極, 坂井田 功, 中村 和行
    p. 16-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    我が国における年間の肝細胞癌(HCC)による死亡者数は3万人を超しており、約200万人のC型肝炎ウイルス(HCV)キャリアが存在していると予想されている。HCCによる死亡者の約8割がHCV感染に由来していると考えられ、我が国でHCC対策を考える際にはHCV感染との関係が重要となる。我々は、HCV感染者でHCCに罹患した患者の癌部組織と非癌部組織から蛋白を抽出して、二次元電気泳動と質量分析によプロテオーム解析を行った。ATP synthetase β chain、α-tubulin、glutamine synthetase、GRP75、GRP78、HSC71、HSP60、HSP70.1、phosphoglycerate mutase1、triosephosphate isomeraseの10種類の蛋白の発現が増強しており、aldolase、arginase 1、enoyl-CoA hydratase、ferritin light chain、ketohexokinase、serum albumin、smoothelin、tropomyosin βchainの8種類の蛋白の発現が減弱していた。さらに、新しいバイオマーカーの開発を目的として、HCC組織の蛋白に反応する自己抗体の検出を患者血清を用いたウェスタンブロッティングによって行った。陽性となったスポットのうち4スポットが癌部で増強しており、その中の3スポットは非担癌患者血清ではほとんど検出できなかった。これらを同定したところ、HSP70.1、 superoxide dismutase、 peroxiredoxinであった。HCC患者の血清中にこれらと反応する自己抗体の検出される頻度がそれぞれ7/15、6/15、5/15であったのに対してコントロールである非担癌患者血清ではそれぞれ1/5、0/5、1/5であった。
  • 平野 隆, 荻原 淳, 川村 猛, 川上 隆雄, 大平 達夫, 前田 純一, 菅 泰博, 片場 寛明, 秋元 信吾, 坪井 正博, 西村 俊 ...
    p. 18-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    臨床応用可能な腫瘍関連蛋白質の同定を目的に2次元電気泳動法および質量分析によるプロテオーム解析を,肺癌を材料に行ってきた。 【2次元電気泳動法による肺癌組織の解析】原発性肺癌は発生母細胞のちがいから形態学的に大きく4種類の組織型に分類されている。組織型ごとに特有の蛋白質発現パターンがないか検討し、各組織型特異的と見られる蛋白質(組織分化関連蛋白質)を同定した。これらの組織分化関連蛋白の発現に基づき肺癌を分類することは腫瘍の生物学的特性をより反映した分類になる可能がある。また、この解析によって同定されたnapsin Aは原発性肺腺癌に高発現し、II型肺胞上皮および一部の尿細管で発現する。しかしながら腫瘍細胞では原発性肺腺癌と一部の大細胞癌でのみ発現し、腎癌をはじめとした他臓器腺癌での発現は認めなかった。またnapsin Aは肺腺癌患者血漿中でも検出されたが、肺炎症性疾患でも高値を示すため肺腺癌早期診断のバイオマーカーとはなりえなかった。 【肺腺癌患者血漿の解析】肺腺癌早期診断のバイオマーカー探索を目的に腺癌患者血漿と正常者血漿の蛋白質発現の比較解析を行った。血漿中のアルブミン、グロブリンを除去後LC-MS/MSによる解析を行い、両群間で強度的に統計学的に有意差のあるシグネルを検出し、蛋白質分子の同定まで行った。複数のバイオマーカー候補は検出されるもののいずれも古典的な血漿蛋白質が多く、tissue leakageと考えられる蛋白質分子の検出はかなり困難であった。古典的な血漿蛋白質の存在は極微量のtissue leakageによると考えられる蛋白質の解析を困難にしている。LCの多次元化などが課題として考えられる。
  • 渡部 芳子, 小櫃 由樹生
    p. 18-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    高齢化社会を迎え、大動脈瘤の罹患率は著しく増加している。しかし当疾患は自覚症状に乏しく、偶然の発見が殆どである。大動脈瘤を発見する手段として、画像診断は時間的・物理的に多くの集団へのスクリーニングには不向きであり、血液マーカーが発見されればその有用生は高いと期待される。研究の目的は、患者の血漿から発現蛋白質を検出・同定・定量することにより、真性大動脈瘤の発生・拡大に関与する蛋白質群と疾患との関係を比較解析することである。 これまでに大動脈瘤発生に関わる蛋白質を特定するため、患者血漿と健常者血漿との比較解析を行った。しかし健常者から得られた解析結果は、群内での検出シグナルのばらつきが多く好ましい比較対象とならなかった。つぎに瘤拡大に関わる蛋白質を特定する目的で、大動脈瘤患者内で瘤拡大傾向を示す群(10例)と瘤径不変で経過している群(7例)との比較を行った。全サンプルからアライメントされたシグナルは9934個で、そのうち2群間で有意差(p<.001)を示したものが719個存在した。そのうち277個が、有効と考えられる測定領域内に存在した。さらにその中には、特に群間判別が高いと期待されるシグナルが102個認められた。今後これらのシグナルが示す蛋白質が何であるかの同定解析を行い、同定された蛋白質の臨床的意義を追究する予定である。
  • 武内 徹, 中西 豊文, 清水 章
    p. 20-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    膠原病は自己成分に対し免疫寛容が破綻し全身諸臓器に慢性炎症を来たす難病で、患者血清中には多くの自己成分に反応する自己抗体が含まれる。膠原病の病態は多彩で、その中でも臓器特異的な自己抗体を解析することは膠原病の病因や病態を解明する上で重要である。 我々は、膠原病の代表的な疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)血清中にみられる自己抗体をプロテオミクスにより解析するために、1)二次元電気泳動とMS、あるいは2)免疫沈降法で精製した試料の一次元電気得動とMSとの組み合わる二つの手法で行った。抗原は市販の肺癌および腎癌患者由来の腫瘍組織抽出蛋白およびHEp-2細胞株抽出液を用いた。抽出蛋白を二次元電気泳動し、PVDF膜に転写し、患者血清と反応させた後、HRP標識抗ヒトIgG抗体を用い化学発光法で自己抗体を検出した。また、電気泳動したゲルを銀染色し、先に行ったウエスタンブロットの結果と一致するスポットを切り出し、ゲル内でトリプシン消化し、MALDI-TOF/MSにて解析した。また、患者血清より精製したIgGから患者IgGセファロースを作成し、抽出タンパクと免疫沈降した。免疫沈降で得られた試料を電気泳動し、銀染色を行った後、得られたバンドをMS解析した。その結果、自己抗原としてαエノラーゼ、β-アクチン、protein phosphatase、セロトニンレセプターが得られた他、腎癌由来細胞抽出蛋白(50kDa、pI7.5-8.0)および肺癌由来の細胞抽出蛋白(30kDa、pI5-5.5)に特異的に反応する蛋白をそれぞれ認めた。 膠原病の病態は多彩で、診断だけでなく病因や病態の把握のためにバイオマーカーが必要であり、これらバイオマーカーの解析にプロテオーム解析が有用であると考えられる。
  • 大野 芳正, 大堀 理, 秋元 信吾, 川村 猛, 西村 俊秀, 橘 政昭
    p. 20-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    目的】前立腺癌の増殖、進展に関わるタンパクを同定し、ホルモン治療に対する反応性との関連を検討することを目的とした。 【対象と方法】組織学的に前立腺癌と診断された15例対象とした。年齢(中央値)は74才、病期は、B4例、C9例、D2例である。治療開始前およびホルモン治療後(血清PSA値0.1ng/ml以下の時点)に採取した血清を用いてプロテオーム解析を行い候補タンパクをスクリーニングした。同定されたタンパクについて血中濃度を測定し、治療経過との関連を検討した。 【結果】治療前血清PSA値は2.7~630(中央値55.6)ng/mlで、組織診断におけるGleason sumは、7:4例、8:5例、9:6例であった。ホルモン治療前後の血清プロテオーム解析により18のタンパクが発現差異のある候補タンパクとして同定された。これらの候補タンパクうちtransferrin (Tf)、transthyretin (Tthy)、apolipoprotein A1 precursor (Apo A1)、tumor necrosis factor receptor (TNFR) について治療前後の血清濃度を測定したところ、Tf、Tthy、Apo A1ではホルモン治療後に上昇傾向を示した。Apo A1は治療前130.1±22.2mg/dlに対してホルモン治療後148.2±19.8mg/dlと有意に上昇していた (p=0.0261)。TNF-R1、-R2は治療前後でほとんど変化を認めなかった。15例中5例に治療経過中血清PSA値の上昇傾向を認めたが、これらのタンパクとの関連は明らかでなかった。 【結論】ホルモン治療開始後にApo A1が上昇することが示されたが、ホルモン治療(ホルモン不応性)との関連については今後さらなる追跡が必要であると考えられた。
  • 本田 一文, 林田 康治, 広橋 説雄, 山田 哲司
    p. 22-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    目的】早期診断が困難な膵がんのスクリーニングに使用できる診断法の開発を目的として、高分解能4重極ハイブリット質量分析装置を用いたSELDI-QqTOF-MS(surface-enhanced laser desorption /ionization high-resolution hybrid quadrupole time of flight mass spectrometry)法で膵がん患者と健常対象者の血漿プロテオーム解析を行った。 【方法と結果】学習セット142例(膵臓がん72例、健常者72例)の解析の結果から、両者を感度97.2%、特異度94.4%で判別する4本のペプチドピークを抽出した。さらに学習セットとは異なる78例の検証セットを用いて盲検したところ、感度90.9%、特異度91.1%で診断することができた。さらにCA19-9との組み合わせにより早期膵臓がんを含めて100%検出することが可能であった。 【まとめ】本診断法は、定量性と再現性に優れ、またCA19-9とは相補的であるため、膵がんのスクリーニングに応用できる可能性があると考えられた。今後大規模な多施設共同研究にてその有用性を検証する計画である。
  • 逢坂 由昭, 本田 一文, 林田 康治, 土田 明彦, 青木 達哉, 山田 哲司
    p. 22-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    【目的】我々は進行食道癌の治療成績を改善する目的でlow dose CDDP+5Fu+radiationによる術前化学放射線療法(PCRT)を積極的に行っている。しかしGrade 2-3の奏効例には予後の改善が見られるが、Grade 0-1のPCRT無効例では副作用による不利益のみを受ける結果となった。このため治療前血清を用いてプロテオーム解析を行い、PCRTの治療効果が予測できるか検討した。 【方法と結果】1998~2002年にPCRT施行後に手術を行った42例(平均年齢61.9歳、stage II/III/IV: 7/29/6)を学習セット27例と検証セット15例に分割した。学習セットの治療前血清を高精度のSELDI-QqTOF-MS法を使用しPCRTの効果を100%判別する4つのペプチドからなる血清プロテオームパターンを抽出した。このパターンは検証セット15例を有効例適中率100%、無効例適中率90.9%、判別率93.3%で診断することが可能であった。 【考察】治療前血清を用いたプロテオーム解析により食道癌化学放射線療法の効果予測による個別化治療の可能性が示唆された。
  • 岡野 哲也, 弦間 昭彦, 清家 正博, 小久保 豊, 片岡 清子, 近藤 格, 山田 哲司, 工藤 翔二, 広橋 説雄
    p. 24-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    【目的】EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるgefitinibは、非小細胞肺癌の既治療例に対して20-30%程度の奏効率を認めたが、一方で重篤な肺毒性の存在が明らかとなった。今回、肺癌細胞株を用いたプロテオーム解析にて、gefitinib感受性因子の検索を試みた。 【方法】当科で樹立した、gefitinib感受性である肺腺癌細胞株と高転移株でgefitinib耐性を有する細胞株2株を用いて、382の抗体を用いたAntibody array ( clonetech )と二次元電気泳動(2D-DIGE)を用いたタンパク質の発現プロファイルにより、gefitinib感受性因子のスクリーニングを行った。 【結果】Antibody array 解析では、gefitinib耐性株において50のタンパク質の発現亢進が認められた。それらのタンパク質には、EGFRシグナル伝達系の分子が含まれていた。また、2D-DIGEによる約2000のタンパク質スポットの発現解析をもとにした統計学的解析と質量分析にて、gefitinib感受性に関わる因子の可能性がある12のタンパク質を同定した。
  • 西尾 和人, 荻原 淳, 秋元 信吾, 笠原 寿郎, 曽根 崇, 木村 英晴, 平野 隆, 西村 俊秀, 加藤 治文
    p. 24-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/08/17
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    金沢大学グループで実施された化学療法未施行進行非小細胞肺癌に対するゲフィチニブ単剤治療の第Ⅱ相試験において、ゲフィチニブ投与前の患者血清サンプルをLC-MS/MSによる解析をおこなった。効果、治療予後に関連するマーカー蛋白質を同定し、leave-one-out等によりマイニング効果の汎用性の確認をおこなっている。同マーカーはゲフィチニブのみならず、EGFR-TKIの治療効果、肺がん患者の予後を予測するマーカーである可能性がある。Cross-validationとマーカーに対する抗体によるキット化戦略について提示する。
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