子育て研究
Online ISSN : 2189-7581
Print ISSN : 2189-0870
13 巻
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  • 三浦 茉莉, 伊藤 麻里, 北島 正人
    2023 年13 巻 p. 3-13
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    少子高齢化が進んでいる我が国において子育て支援は重要である。養育者に支援が届かない場合の理由 は様々あるだろうが、養育者が支援を求めない、あるいは求められないことも理由の1 つであろう。本研 究では、自分の相談行動に対する自他の認知と対象関係に着目し、これらの特性と被援助志向性および子 育てに関する援助要請(被援助志向性および被援助行動)との関連を明らかにし、さらなる支援を必要 とする養育者に向けた効果的な支援の手がかりを探るために、乳幼児養育者152 名に質問紙調査を行った。 その結果、被援助志向性/子育て被援助志向性/子育て被援助行動と、自分の相談行動に対する自他の認 知の間には有意な正の相関が、被援助志向性と対象関係「親和不全」「希薄な対人関係」の間には有意な負 の相関が認められた。これより、子育て場面に限らない全般的な被援助志向性や子育て被援助志向性が低 い、また子育て被援助行動が少ない養育者に対する支援の工夫として、①支援者が相談に対して否定的な 言動を控えること、②相談行動についての捉え方の変化を促す心理教育や、SST などを通した援助要請ス キルを高めるトレーニングを義務教育や母親学級等で行うこと、③相互理解やサポートの授受を含むよう な対人交流ができるような機会を提供し、養育者と持続的な関係を築いたり、養育者が他の養育者や支援 機関ともつながれるような仲介をしたりすることが有用だと考えられた。
  • インドの子どもの権利擁護活動とソーシャルワーカーの役割
    茶谷 智之
    2023 年13 巻 p. 14-24
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/09/28
    ジャーナル フリー
    ソーシャルワーカーには民主主義の制度から実質的に排除される人々の利害に沿って問題解決を図る権 利擁護活動が求められている。その対象のなかでも子どもは、問題解決に自らの要望や希望を反映するこ とが難しい。そのためソーシャルワーカーによる代弁や、自己決定と意見表明の支援などが重要となる。 しかし、それらの活動では、自らの活動が本当に子どもの利害に沿ったものなのかという子どもの声をめ ぐるジレンマを抱えうる。そこで本稿は、子どもの権利擁護活動が盛んなインドの貧困地域においてNGO 職員が行う活動を分析する。その際、子どもの声に沿った問題解決が行われたか否かではなく、その活動 が子どもを取り巻くモノの意味にもたらす変容に着目した。事例ではNGO 職員が子どもの声を十分に汲 み取らないまま活動が行われたからだ。本稿の分析によると、NGO 職員は子どもに不利益を生じさせる人 とモノとの関係性のありように働きかけ、貧困地域の公園や建物に付帯するモノの意味の再編を試みるこ とで、遊びや教育にかかる権利の実質を左右していた。それを踏まえて、一般的に子どもの声が重視され ることは自明であるが、子ども以外の関係者の利害が絡む可能性のある子どもの声の反映よりも、子ども の権利と深く関連するモノの意味の再編を目指す活動と捉える視座への転換が、権利擁護活動におけるソー シャルワーカーの役割を捉える上で重要であることを示した。
  • 母親自身が支援につながること・当事者を支援につなげるための働きかけ
    竹元 雅也
    2023 年13 巻 p. 26-42
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/10/01
    ジャーナル フリー
    ひきこもり支援は、家族への支援から始まることが多い。家族支援では、家族関係の再構築や当事者の 来談に向けた働きかけの模索が焦点になる。一方で、そもそも家族や当事者が支援につながることの難し さや当事者への関わりを変えることの困難さも存在する。本研究では、ひきこもり当事者の母親1 名とそ の子どもであるひきこもり当事者1 名へのインタビューを行い、支援につながるプロセスや当事者への関 わりが変化するプロセスを複線径路・等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling: TEM)の方法 を用いて明らかにした。その結果、社会的方向づけ(SD)などが影響し、過保護・過干渉などの一方的で 不適切な関わりにならざるを得ないひきこもり当事者を抱える母親の様子が捉えられた。そうした母親の 心境の理解に努めながら、支援者が長期的な視点で粘り強く関わることで、等至点(EFP)として導出さ れた〈子どもが支援につながる〉ための有用な支援となると考えられた。また、支援につながることがで きた後には、母親の子どもを大切に思う気持ちを、子どもの立場に立った対話的な関わりとなるよう支援 することで、セカンドEFP〈子どもなりの自立を見届ける〉に至る可能性が示唆された。
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